歴ログ -世界史専門ブログ-

おもしろい世界史のネタをまとめています。

トルコの「売国奴」ダマド・フェリト・パシャ

トルコ建国の父ムスタファ・ケマル・パシャを逮捕しようとした男 ダマド・フェリト・パシャはオスマン帝国末期の政治家で、第一次世界大戦後に大宰相を務めました。 彼がなぜ売国奴と呼ばれているかというと、大戦に敗北したオスマン帝国の存続のために、イ…

『反知性主義』(新潮選書)−アメリカという国のかたちと「特殊性」について考える

本当の意味での反知性主義とは何なのか 『反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―(新潮選書)』森本あんり著(新潮選書)を読みました。 2015年初版の本なので少し古いのですが、かーなり面白かったです。反知性主義って日本では非常にネガティブな意…

【2023年9月版】世界史関連の新刊60冊

暑い夏に世界史関連本が豊作です 四半期恒例の世界史関連新刊の紹介です。 今回は2023年7月~9月の世界史関連新刊紹介です。 私のリサーチ力?も向上したのか、増えに増えて今回は60冊です。 今回は、新書、文庫、選書、学術書がとても多いです。

日本人の知らない「タイvsカンボジア」抗争の世界

知られざる東南アジアのライバル国 あまり日本人には知られていませんが、タイ人とクメール人(カンボジア人)の間には複雑で絡み合った愛憎感情があります。 今回はなぜタイとカンボジアは争うのか、何を争っているのか、SNSの投稿を中心にしたナラティブか…

世界史上の有名な10人の「傭兵隊長」

時には歴史を動かしてきた「雇われ指揮官」 昔も現代でも、戦争は正規軍のみが行うものではなく、国王や領主に雇われた傭兵が戦争で重要な役割を果たすケースが多くありました。 三十年戦争で傭兵団はピークを迎えて、その後は国民国家の正規軍が主力になっ…

オマーン帝国の歴史

インド洋交易を支配した帝国オマーン 帝国といえば、英仏独といったヨーロッパの国や、オスマン帝国、清帝国、ムガル帝国、ロシア帝国といった近代ユーラシアの大国、あるいはもっと時間がくだって、アッシリア帝国とかローマ帝国、ペルシア帝国を想像する方…

【現代メキシコ史】メキシコ革命は成功だったのか失敗だったのか

ラテンアメリカの中でいち早く近代改革を成し遂げた革命 メキシコと聞くと、危ない国というイメージを持っている人が多いかもしれません。日本のニュースで流れてくるメキシコの話題といえば、麻薬カルテルと軍隊の戦いとか、報復で市長が殺害されたとか、そ…

『琉球王国は誰がつくったのか』沖縄は海賊の島だった?

琉球王国形成の典型イメージを変える一冊 『琉球王国は誰がつくったのか 倭寇と交易の時代』(七月社 吉成直樹 著)を読みました。 文字通り沖縄の琉球王国の成立に関する著作です。 従来は、琉球王国は沖縄本土の農業社会の発展によって力をつけた支配者が…

「WWEとフェミニズム」ーアメリカン・プロレスにおける女性の歴史

ようやく男女平等が近づいたWWE アメリカのプロレス団体最大手WWEは、大きな変革期にあります。 「男女平等」の変革への動きです。 長い間、女性の試合は男子選手の試合の前座的扱いで、セクシーさを売りにしたスタイルが人気でした。しかし今は男子と同じく…

1935年アメリカ「ゴッホの耳」展示事件

ゴッホの耳を展示したとされる謎のいたずら事件 「ひまわり」「星月夜」「タンギー爺さん」などの絵画で知られるフィンセント・ファン・ゴッホは生前はあまり評価されませんでした。 画家として売れる見込みがたたずに次第に精神をやんでいき、とうとう自分…

「オーストリア継承戦争」「七年戦争」の流れを解説

戦争が比較的シンプルなものだった時代の感覚 戦争が今のように政治や経済、イデオロギーや宗教、少数民族問題や資源問題など複雑な問題を含むものになる前、18世紀の戦争はもっと戦争はシンプルなものでした。 ヨーロッパで行われる国家間戦争は、簡単に言…

【2023年6月版】世界史関連の新刊50冊

今期は企画本が多いです 2023年4月~6月の世界史関連新刊紹介です。 本記事はざっと流し読みをして気になる本をメモしていただくか、ブックマークして書店を訪れた際に見返すかして使っていただけるといいかと思います。今回も50冊あります。

中南米の未確定国境

意外と揉めてる中南米の国境線 国境線をめぐる争いは、カシミール(インドとパキスタン)や九段線(中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、インドネシア)など、我々の身近なアジアに非常に多いです。 そのため見過ごされがちですが、中…

毒殺された世界史の人物と動物28名と2匹

殺し方として非常に一般的な「毒殺」 食べ物や飲み物に毒を混ぜて人を殺害する方法は、刃物で切ったり首を絞めたりする方法に比べて力もいらず、比較的容易と考えられます。ただし毒殺といっても単にメシに毒を混ぜるだけではないようです。 歴史上、毒殺さ…

1936年アメリカ「未来の戦争」の退役軍人

未来の退役軍人も軍人ボーナスをもらえるはず! 「未来の戦争の退役軍人(Veterans of Future Wars)」は1936年にアメリカで起こった学生運動です。 不況の中で第一次世界大戦の退役軍人が「特権的な扱いを受けている」ことに不満を持った学生たちが、「未来…

「タラ戦争」イギリスとアイスランドの漁業紛争

200カイリ排他的経済水域策定のきっかけとなった紛争 タラ戦争(The Cod War)は、主にイギリスとアイスランドとの間で戦われた、タラなどの水産資源をめぐった紛争です。 第一次から第三次まで断続的に争われたこの紛争で死者は出ませんでしたが、この紛争…

政変で死んだ世界史の「幼児王・少年王」

政権末期や政変時に担ぎ出される幼児王・少年王 世界史ではよく幼児や子どもで王に担ぎ出されるケースがあります。 政治対立が起こり一触即発の場合に、幼い王を擁立させて角が立たないようにするという場合があり、これはこれで衝突を避ける政治的なテクニ…

エスカレーターの歴史

垂直移動に革命をもたらしたエスカレーター エスカレーターはエレベーターと並んで、都市の人々の「垂直移動」に革命をもたらした製品です。 エスカレーターの登場によってより短時間に大人数の人々を建物の上・下の階層に移動させることができるようになり…

「良妻賢母」とされる皇族・王族の女性たち

夫や子を陰から支えた「徳のある」妻たち かつては女性のあるべき姿として「良妻賢母」が理想とされました。 夫の出世や大成のため、息子の健全な成長のため。自らを律し、贅沢は慎み、家の発展のために献身的に働くことが女性として最も理想的な生き方であ…

1858年ブラッドフォードお菓子中毒事件

ヒ素の入ったお菓子が売られ21人が死亡 1858年の「ブラッドフォードお菓子中毒事件」は、イギリスのブラッドフォードでヒ素が使われたお菓子が屋台で売られ、それを食べた20人以上が死亡、200人以上がヒ素中毒になったという、身も毛もよだつような事件です。…

【2023年3月版】世界史関連の新刊50冊

今期は企画本が多いです 2023年1月~3月の世界史関連新刊紹介です。 本記事はざっと流し読みをして気になる本をメモしていただくか、ブックマークして書店を訪れた際に見返すかして使っていただけるといいかと思います。今回も50冊あります。

「ホロコーストの生き残り」を主張した詐欺師

自らホロコーストの生き残りと称して売り込みをした人々 第二次世界大戦の重大な戦争犯罪としてホロコーストが挙げられます。 対象となったユダヤ人が非常に身近にいるためか、欧米では現代でも非常に関心が高いテーマであり、書籍、小説、映画などになって…

不幸な死に方をした独裁者の妻・愛人

権力の渦中で死んだ独裁者の女たち 権力に憧れるのは男だけではありません。 豪華な宮殿や調度品に囲まれ、最高級の料理や衣服を楽しむ生活。下々の者をコマのように使える快感。常に讃えられ崇められる自己肯定感。独裁者のファーストレディであることは、…

ノルウェーの歴史(後編)-どうやってノルウェーは先進国になったのか

中立国から西側、環境・人権先進国へ ノルウェーの歴史の後半です。 前半では豪族が割拠する地域がキリスト教をコアにして中央集権化した後に、デンマークやスウェーデンとの協調の後に統合されていく様子をまとめました。 まだご覧になっていない方はこちら…

ノルウェーの歴史(前編)-ヴァイキングの民、国家を作る

近隣諸国と複雑な合従連衡をした「北欧の田舎国」の歴史 2021年のノルウェーの国民一人当たりのGDPは世界第4位。福祉国家や環境先進国、人権国としても知られ、日本人が羨む「北欧先進国」です。 しかし長らくノルウェーは近隣のデンマークやスウェーデン、…

落雷に打たれて死んだ歴史上の人物10人

とても低い確率の事故で死んだ有名な人もいる 落雷に当たる確率は100万分の1だそうです。 普通に生きている分には「まずない」事象であると言えます。ただ可能性はゼロではなく、日本では年間約10名ほどが落雷で死亡しているそうです。宝くじに当たるくらい…

【論争】サーン・アバスの巨人は古代遺跡かニセモノか

Photo by PeteHarlow イングランドの地上絵は古代遺跡か17世紀に作られたものか サーン・アバスの巨人(Cerne Abbas Giant)は、イングランド・ドーセットのサーン・アバス村の丘にある地上絵。あまり観光資源のないドーセット地方の中で有名な観光スポット…

2022年読んで良かった「ベストブック」10冊

2022年度に読んで面白かった個人的ベストを発表します 早いものでもう年末です。今年度は「働き方改革」の人類史という本を執筆&出版したのですが、そのために読書の種類がやや偏ってる感が否めません。とはいえ、「これはすごい」という本はいくつもありま…

【2022年12月版】世界史関連の新刊50冊

今月は歴史専門書の数が多いです 2022年10月~12月の世界史関連新刊紹介です。 本記事はざっと流し読みをして気になる本をメモしていただくか、ブックマークして書店を訪れた際に見返すかして使っていただけるといいかと思います。今回も50冊あります。

「十字軍」で活躍した10の修道騎士団

異教徒との闘いで神に奉仕した騎士団 「騎士団」は現在にも存在する組織です。 しかし実際に戦闘をするわけではありません。 例えばマルタ騎士団は世界各国で医療活動を行う「国土なき主権体」であるし、金羊毛騎士団は世界の王族に授けられる栄誉勲章となっ…