歴ログ -世界史専門ブログ-

おもしろい世界史のネタをまとめています。

韓国政府が強力なトップダウン型の産業育成を図った理由

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Image by Lakshmix

「漢江の奇跡」を支えた韓国政府の産業育成政策

ここ10年あまりの韓国の社会と国民意識の変化には激しいものがあります。

息詰まる社会と経済の打破のために、朴槿恵政権時代から「大陸側」へ接近し南北統一を目指す文脈が醸成されていましたが、現在の文在寅政権はさらに急進的にそれを推し進め、南北統一によって「民族による自存自衛」を掲げ、広い支持を集めています。

もとより韓国では反米感情は根強くあったのですが、それよりも反北朝鮮感情のほうが強かったので西側諸国に留まっていましたが、北との和解ムードの高まりの中で「自立強国」「東アジアのバランサー」国家を目指すようになっています。

その背景には、韓国が急速な経済発展を果たし国際的なプレゼンスが高まり、アメリカや中国、日本といった周辺の大国と台頭な関係になった、という自負があるからなのですが、一方でこれまで世襲政治家や資本家が牛耳ってきた富や権力を民衆に奪い返そうという「民主化運動」があります。

現在の韓国社会で「敵対視」されがちな、かつての韓国政府の経済政策の方針について、梁義模氏の論文を元にして紹介します。

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伝説的インド人クリケット選手と「英国スゴイ神話」

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イギリス人に愛されたインド人選手、クマール・シュリ・ランジットシン

インドはクリケットの強豪国で、2019年現在、イングランドに次いで世界ランキング2位です。

インドではクリケット・ワールドカップは大変な盛り上がりで、みんなテレビにかじりつき、インド代表の試合中はあらゆる街の機能がストップするそうです。インド代表がライバルのパキスタン代表に敗れると、怒りのあまりテレビをぶっ壊す奴が全土で続出するため、試合後はテレビ需要が高まるという嘘みたいな話もあります。

さて、そんなクリケット狂インド人のクリケットの先駆者的な存在が、20世紀初頭にイングランドで活躍したクマール・シュリ・ランジットシンです。彼は初めてイングランドの代表になり、イギリス人のチームメイトのみならず、ファンからも大変愛された男です。

ランジットシンの生涯からは、当時のイギリス人のインド人観、そしてエリートインド人にとって大英帝国とはどんな存在だったかが見えてきます。

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なぜアップルパイはアメリカを象徴するお菓子になったのか

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アメリカ人の愛国心を熱くする甘いリンゴのお菓子

1902年、ニューヨーク・タイムズ紙に以下のような文章が掲載されました。

(アップル)パイは我が国の強さと優れた産業創設の秘訣であり、我が国の繁栄である。英雄の食べ物である。食わないヤツは永久に負け犬である。

Pie is...the secret of our strength as a nation and the foundation of our industrial supremacy. Pie is the American synonym of prosperity. Pie is the food of the heroic. No pie-eating people can be permanently vanquished.

かなり強烈な文章ですが、アメリカ人の愛国心と素朴な感情をよく言い表しています。

アップルパイを上手に焼ける女性は良き妻とされるし、アップルパイの香りがしてこそアメリカの台所であるとされます。

ノリ的には日本人が「米を食わねえヤツぁ、日本人じゃねえ!」と言うのに似ています。上記の文のアップルパイの箇所を米に置き換えたら、気持ちが少し理解できるかもしれません。

「アップルパイのようにアメリカ的な」という慣用句すらあります。今回はなぜアップルパイがアメリカのシンボル的存在になったのかを見ていきたいと思います。 

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ビザンツ帝国の名君列伝

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 領土を広げ、財政を健全化させた名君たち

ビザンツ帝国はいつから成立したか、というのは難しい問題です。

ディオクレティアヌス帝がローマ帝国を東西に分けた時から。

コンスタンティヌス帝が都をローマからコンスタンティノープルに移した時から。

テオドシウス帝が息子たちに帝国を東西に分けて相続した時から。

など複数の説があります。ビザンツ帝国はローマ帝国の延長上にある国家なので、どれが正解ということではなく解釈の問題です。

今回はビザンツ帝国の名君と呼ばれる人のピックアップなのですが、テオドシウス帝以降の皇帝で名君と呼ばれる人たちをピックアップしていきたいと思います。 

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トイレの中で死んだ歴史上の偉人たち

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安心できる場所であり危険な場所でもあるトイレ

越後の龍こと上杉謙信が春日山城の厠で倒れ、そのまま息を引き取ったことは有名な話です。トイレは部屋よりも温度が低く気温差によって発作を起こしやすいし、1人になるので発見も遅れるためか、現代でもトイレで死亡する人は多いです。まして温便座などない昔のこと。火鉢で火を起こすくらいはやったかもしれませんが、死亡者は多かったはずです。

加えて、トイレでは1人になる上にあまり身軽に動けない場所なので、暗殺するには絶好のタイミングだったはずです。

今回は「そうだったという説もある」というのも含めて、トイレで死んだとされる偉人たちを紹介します。

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世界史の「僧侶戦士」7名

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「信仰のために敵を倒す」僧侶兵士

中世日本には僧兵という集団がありました。

延暦寺や根来寺などが有名ですが、広大な荘園領を持つ寺院の警備や、他の勢力との武力紛争に対応し、彼らの存在によって寺院は守護大名に匹敵する強大な力を持ちました。

似ているものに、中世ヨーロッパの騎士団があります。テンプル騎士団や病院騎士団、チュートン騎士団が有名ですが、聖地の守護や巡礼者の警護、さらには異端者への攻撃をその任務としました。

 こういう集団をリストアップしても面白いのですが、今回はもともと本業が僧侶で、訳あって武装し活躍した人をピックアップしてみたいと思います。

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なぜガイルはアメリカ人に絶大な人気があるのか

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(C) Capcom USA

アメリカ人が考える「格好良さ」を体現したガイル

ストリートファイターシリーズの主要な登場人物の一人であるガイル。
日本を始め多くの国のファンにももちろん人気があるのですが、アメリカではなぜか別格扱いされています。主役級のリュウに匹敵するか、それ以上の人気を誇ります。
なぜガイルはアメリカで人気なのか、アメリカ文化史や社会史の観点から考察していきたいと思います。
なお、この記事はある程度ストリートファイターシリーズについて知っている前提で書きます。ストリートファイターシリーズやガイルについての基本的な説明は省いてお話しします。あらかじめご了承ください。

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