エチオピア音楽の素晴らしさを知っていただきたい
みなさんはエチオ・ジャズを聞いたことはありますでしょうか?
まじで、めっちゃいいんですよ!!
我々が普段聞き慣れてるジャズやボサノヴァとは一風違います。
エチオピア伝統の音楽とモダン音楽がフュージョンした、異国情緒に満ちたクールなサウンドなのです。
これから天気のいい初夏の季節にピッタリで、聞いていて気持ちよくなりますよ。
1. エチオ・ジャズとはなにか
エチオ・ジャズはエチオピアの伝統音楽にアメリカのジャズやラテン音楽をミックスしたもの。
後述するエチオピア人ミュージシャン、ムラトゥ・アスタトゥケによって作られ発展しました。
1950年代〜1970年代には、伝統的なエチオピア音楽を西洋の楽器や音響機器を使って演奏するスタイルが流行。ティラフン・ジェセスやアリ・ビッラのようなフォークミュージシャンが人気になりました。
以下は1970年代のティラフン・ジェセスの代表曲「Yetelash Yetela」ですが、シンプルな音楽コードにこぶしを効かせて歌うスタイルが日本の民謡や演歌にそっくりです。
ムラトゥ・アスタトゥケはこれまで以上に西洋の音楽様式を積極的に導入しつつも、
伝統的なエチオピア音楽と上手にフュージョンさせた独自の音楽体系を作り上げました。
エチオ・ジャズは1970年代にアメリカを中心にヒットを飛ばし、音楽大国・エチオピアの名を世界に広めました。
現在もアスタトゥケは欧米を中心に活動しており、また彼の薫陶を受けた若いエチオピア人ミュージシャンが世界中で活躍。
さらにはアスタトゥケにインスパイアされた欧米のミュージシャンも続々と登場しており、エチオ・ジャズはローカルに留まらずに世界的に広がっているのです。
2. 伝統的なエチオピア音楽
エチオピア音楽の成り立ち
エチオピア音楽の歴史は、エチオピアの国そのものの歴史でもあります。
その根底に流れるのは古代キリスト教の宗教音楽で、そこにエリトリア、ソマリア、スーダンなどの東アフリカ各地の民族の伝統音楽をミックスした音楽が発達しました。
8世紀ごろからイスラム勢力が東アフリカに進出し、イスラムの音楽が合流。現在まで受け継がれるエチオピア伝統音楽の基礎となりました。
エチオピア音楽の特徴
大きな特徴として、五音音階を用いたモードがあります。
1オクターブに5つの音が含まれる音階のことを指し、通常の西洋音楽は七音音階であるため、独特のリズムが生まれます。
ちなみに日本の演歌や民謡も五音音階です。
エチオピア伝統音楽に既聴感があるのものそのせいかもしれません。
クラル(Krar)
「クラル」と呼ばれる5〜6弦の弦楽器は広く東アフリカで用いられる伝統楽器で、エチオジャズに無くてはならないものです。
ワシント(Washint)
竹製の横笛で、これもエチオジャズに欠かせません。深みのある音色を出します。
シストゥルム(Sistrum)
この武器みたいな楽器はコプト教会の儀式に用いられる楽器で、その起源は古代パレスチナにまで遡ります。振ることでシャンシャンという金属音を鳴らします。
ケベロ(Kebero)
首からかけて両手で叩く金属製の太鼓。動物の皮が用いられます。
3. エチオ・ジャズの始祖ムラトゥ・アスタトゥケ
名門バークリー音楽学校に入学
ムラトゥ・アスタトゥケは1943年にエチオピア西部の町ジッマの裕福な家庭の生まれ。
両親は幼い頃から利発だった息子に期待し、
「お前は将来エンジニアになりなさい」
と言ってウェールズへ留学に出します。
ところが、アスタトゥケはエンジニアリングよりも音楽のほうに興味があったらしく、ウェールズとロンドンで音楽の勉強をした後、アフリカ人として初めてアメリカの名門バークリー音楽学校に入学。
この頃彼はラテン・ジャズに興味を持ち、アルバムを2枚リリースしています。
新たなエチオピア音楽の創造に向けて
1970年代の初め頃からアスタトゥケはエチオピア伝統音楽とジャズのミックスに取り組み始めます。
エチオピアの首都アディス・アベバとアメリカを行き来しながら、両国のミュージシャンのコラボレーションのセッティングに奔走。
また彼自身も作曲活動に意欲的に取り組み、1972年にアルバム「Mulatu of Ethiopia」をリリースしています。
これはその当時の曲です。
基本的に西洋の楽器が使われ、演奏コードにエチオピア伝統音楽が取り入れられています。
1974年にはアディス・アベバでレコーディングしたアルバム「Yekatit Ethio-Jazz」をリリース。この頃には既に彼の目指す伝統音楽とジャズのフュージョンが体系的には完成していたのでしょう。
地元のエチオピア人ボーカリストをゲストに招き、積極的にジャズとのコラボに参加させ人気を博しました。
2000年代に世界的ブームに
ところが、1980年代以降になるとアメリカでエチオ・ジャズのブームは終わってしまい、次第にアスタトゥケの存在は忘れ去られてしまいます。
再び陽の目を見たのが1990年代。
1998年にイランのレコードレーベルが1969-1974年代のアスタトゥケの作品の発掘しリリースしたことがきっかけで徐々に火が付き、2000年代に入ると世界的なブームとなりました。
特にヨーロッパに与えた影響は大きく、アスタトゥケは各地でライブ活動を行う一方でヨーロッパとエチオピアのミュージシャンとのコラボレーションをいくつも実現させています。
またエチオ・ジャズを演奏するヨーロッパ出身のミュージシャンも出現し、本国エチオピアでも高い評価を得ているのです。
日本でも2013年のフジロック・フェスティバルで、アスタトゥケの来日が実現しています。
さて、ここからはぼくがYouTubeで見つけたアスタトゥケの作品をいくつか紹介します。鳥肌モノのカッコよさです!
Emnete
Ebo Lala
Green Africa
[追記]
ブコメでおすすめいただいた、The Heliocentricsとのセッション「Blue Nile」。
これはヤバイ。くっそシビれる!
4. おすすめのエチオ・ジャズアーティスト
ここからは、ぼくの個人的に好きなアーティストを紹介します。
4-1. Imperial Tiger Orchestra
Imperial Tiger Orchestraはエチオ・ジャズ黄金期の音楽に魅せられた5名のスイス人で結成されたバンド。
2007年にアディス・アベバを訪れたメンバーは、当地で古いレコードをごっそり買い集め、それにインスパイアされながら2010年にアルバム「Adis Abeba」をリリース。その後2枚のアルバムをリリースしています。
主にヨーロッパでライブ活動を行っていますが、最近では本場エチオピアでも評価が高く、アディス・アベバを中心に南アフリカやモザンビーク、ジンバブエなどアフリカ各国を巡ってライブ活動を行っています。
Yadao
この曲はセカンド・アルバム「MERCATO」に収録されています。
初めて聞いた時、このグニャグニャだけど秩序あるメロディーに引き込まれて一気にファンになりました。
Shinet
これも「MERCATO」に収録されている曲なのですが、どことなくメロディーが沖縄音楽っぽい。
ボーカルの声をうまく楽器で再現しており、お祭りのザワザワ感を感じて気分が高揚します。
Le le le
2013年にリリースされたサード・アルバム「WAX」に収録されたハッピーで愉快な曲。バンドの成長と音楽の幅の広がりを感じる曲です。
「ポップ>ジャズ」ですがちゃんと伝統も踏襲しており、エチオジャズの懐の深さを垣間見ることができます。
4-2. Krar Collective
krak collectiveはロンドンを拠点に活動するエチオピア人3人組。
ムラトゥ・アスタトゥケの弟子であり、伝統的なエチオピア音楽の教育を受け、現代のポップ音楽のコンテクストをミックスさせた新しいグルーブの創造を目指しています。
Guragigna
krar collectiveの代表的曲。
アフリカと現代のポップスのフュージョンを強く感じるグルーブです。
Zelesegna
これもライブパフォーマンスですが、この低く情熱的なサウンドは異国の妖艶さを感じさせます。
西洋人が東洋に感じるオリエンタリズムのような、捉えがたい魅力を放っています。
Mr Astatke
師・アスタトゥケの名前がついたこの曲は、アルバム「Ethiopia Super Kurar」に収録されています。
このメロディーはさながら、師や友との平和なエチオピアの日常を表しているかのようです。
4-3. その他
アルバムは持ってないけど、YouTubeで見つけた良曲をいくつか貼り付けておきます。
Ehiopian Groove - Tashamanaletch
Akalé Wubé - Dodo
まとめ
いかがでしょうか。
少しでもエチオ・ジャズの魅力が分かっていただけたら幸いです。
アスタトゥケを聞き始めるなら、こちらの「Mulatu Steps Ahead」がよろしいかと思います。
- アーティスト: Mulatu Astatke
- 出版社/メーカー: Strut Records
- 発売日: 2010/03/30
- メディア: CD
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Imperial Tiger Orchestraであれば最新アルバム「Wax」がおすすめです。
krar collectiveは文中に紹介した「Ehiopia Super Krar」がよろしいです。