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【まとめ】イザベラ・バードの見た明治日本(新潟〜秋田)

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イザベラ・バードの旅 新潟〜秋田

前回の記事では、イザベラ・バードの日本旅行の概要と、東京〜会津までに立ち寄った町の印象を書きました。前回書いた町は

  • 東京
  • 粕壁(春日部)
  • 栃木
  • 日光
  • 田島(南会津)
  • 車峠〜津川(西会津)

です。ご覧になりたい方はこちらよりどうぞ

今回は新潟〜秋田までです。

 

 

新潟

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画像転載元 city.niigata.lg.jp

バードは新潟の町の設備や景観、清潔さを誉め称え、故郷のエディンバラも新潟を見習うべきだ、とさえ言っています。少し長くなりますが、引用します。

しかし新潟は美しい繁華な町である。人口は5万で、富裕な越後地方の首都である。(略)このような隔絶された町に、大学と言う名にふさわしい学校が見られるのは興味深いことである。(略)新潟の官公街は、西洋式に文明開化の姿を見せているが、純日本式の旧市街とくらべると、まったく見劣りがする。旧市街は、私が今まで見た町の中で最も整然として清潔であり、最も居心地の良さそうな町である。(略)町は美しいほどに清潔なので、日光のときと同じように、このよく掃ききよめられた街路を泥靴で歩くのは気が引けるほどである。これは故国のエディンバラの市当局には、よい教訓となるであろう。(略)この町は、日本にきわめて珍しい美しさをもっている。奥深いベランダが街路に沿ってずらっと続いているので、冬になって雪が深く積もった時に、屋根のついた歩道の役目をするようになっている。運河に沿って並木道があり、りっぱな公園もあり、街路は清潔で絵のように美しいので、町は実に魅力的である。

 

山形

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新潟から山形までの道のりは酷いものだったので、久方ぶりに見る近代都市に心がほっとした様子です。

山形県は非常に繁栄しており、進歩的で活動的であるという印象を受ける。上ノ山を出るとまもなく山形平野に入ったが、人口が多く、よく耕作されており、幅広い道路には交通量も多く、富裕で文化的に見える。(略)山形は県都で、人口2万一千の繁昌している町である。少し高まったところにしっかりと位置しており、大通りの奥の正面に堂々と県庁があるので、日本の都会には珍しく重量感がある。どの都会も町外れはとても貧弱だが、新しい県庁の高くて白い建物が低い灰色の町並みにの上に聳えて見えるのは、大きな驚きを与える。山形の街路は広くて清潔である。良い店があって、長く軒をつらねて装飾的な鉄瓶や装飾的な真鍮細工しか売っていないものもある。

 

新庄

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明治新政府の県庁となった町とは対照的に、かつての大名お膝元の町は寂れ始めていることが記述されています。雨、蚊、鼠もバードのテンションを下げているようです。

新庄はみすぼらしい町である。ここは大名の町である。私が見てきた大名の町はどこも衰微の空気が漂っている。お城が崩されるか、あるいは崩れ落ちるままに放置されていることも、その原因の一つであろう。新庄は、米、絹、麻の大きな商取引があるから、見た目ほど貧弱なはずはない。蚊は何千となく出てくるので、サゴ椰子の澱粉粉とコンデンスミルクのあわれな食事を終わらぬうちに、私は寝床に入って蚊を避けねばならなかった。一晩中、暖かい雨が降った。私のあわれな部屋は汚くて息がつまるようであった。鼠は私の靴をかじり、私のきゅうりをもって逃げ去った。

 

 湯沢

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ここでは町の雰囲気というよりは、外国人珍しさに集まってきた群衆に心底うんざりしている様子が描かれています。何かイヤなことがあると、風景から雰囲気、食べたものまで何から何までネガティブな描写になるのはバードの文章の特徴かもしれません。

湯沢は特にいやな感じの町である。私は中庭で昼食をとったが、大豆から作った味のない白い豆腐に練乳をかけた貧弱な食事であった。何百人となく群集が門のところに押しかけてきた。(略)まことに奇妙な群集で、黙って口だけ大きくあけ、何時間もじっと動かずにいる。母の背中や父の腕に抱かれている赤ん坊は、目をさましても少しも泣かない。群衆が大声で笑ってくれた方が、たとえ私に対してであっても、ほっとした気持ちになるであろう。群集が皆じっと憂鬱げに私を見つめているのは、私を堪らない気持ちにさせる。

 

久保田(秋田市)

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明治政府の行政の中心である久保田(秋田市)は、城下町ですが近代的な設備が整っていて、バードにも好印象だったようです。また、ここでビフテキ、カレー、きゅうり、外国製の塩、辛子を食べたことで活力が蘇ったようで、「眼が生き生きと輝く」と描写しています。そのことで全体的に好意的な印象が残ったのかもしれません。

久保田は秋田県の首都で、人口3万6000、非常に魅力的で純日本風の町である。(略)商売が活発で、活動的な町である。青と黒の縞や、黄色と黒の縞の絹物を産する。これで袴や着物を作る。また横糸を盛り上げた一種の白絹のクレープは縮緬として東京の商店では高値を呼ぶ。またふすまや下駄を生産する。城下町ではあるが例の「死んでいるような、生きているような」様子はまったくない。繁栄と豊かな生活を漂わせている。商店街はほとんどないが、美しい独立住宅街が並んでいる街路や横通りが大部分を占めている。住宅は樹木や庭園に囲まれ、よく手入れをした生垣がある。どの庭にもがっしりした門から入るようになっている。このように何マイルも続く快適な「郊外住宅」をいると、静かに自分の家庭生活を楽しむ中流階級のようなものが存在していることを思わせる。

 

次は最終回です。

黒石から北海道のアイヌの部落を旅します。


【まとめ】イザベラ・バードの見た明治日本(黒石〜北海道) - 歴ログ -世界史専門ブログ-

 

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