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生で見てみたい「水中に沈んだ都市遺跡」

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ロマン溢れる水中都市遺跡

「天空の城ラピュタ」に印象的なシーンがあります。

ラピュタに着いたばかりのパズーとシータが水の底を覗くと、そこにはかつての都市がまるごと水中に沈んでいた、という描写です。

あのシーンはいつ見ても本当にワクワクするんですよね。この空中島にはどれだけ凄い発見が詰まっているんだ!と視聴者の期待を抜群に高めるんです。

水中に沈んだ都市というのは、どういうわけか陸上にある遺跡よりも興味を掻き立てられるもので、宮崎監督もよくその心理を分かってるのだと思います。

実際に世界中には数多くの水中遺跡があるのですが、今回はその一部をピックアップしてみます。

 

 

 1. ヴィラルヒナ・ダ・フルナ(ポルトガル)

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Work by Benkeboy

 ダムに沈んだ伝統の村

ヴィラルヒナ・ダ・フルナはポルトガルにあった村で、その起源は紀元後80年のローマ時代にまで遡るといいます。

村はジュンタと呼ばれる共産主義的な評議会を持っていました。各家庭から1人代表者を出し、食料品など必要物資の配分、冠婚葬祭といった催事などを集団で協業して行っていくというもので、これは西ゴート王国以来の習慣であったようです。

この古い村は1972年にダムが建設されるにあたって水の底に沈むことになりました。その直前には80軒の家と約300名の住民が住んでいました。

村を離れる前、村人はできるだけ多くの家の壁や屋根瓦、生活用品などを別の場所に移植し、ヴィラルヒナ・ダ・フルナを記念する博物館を建てました。

今でも貯水レベルが下がると村は再びその姿を表しますが、かつての姿は微塵もなく廃墟の姿です。

 

 

2. ヴィッラ・エペクエン(アルゼンチン)

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 海岸線の後退で浸食された観光村

アルゼンチンのラゴ・エペクエン(Lago Epecuen)の海岸沿いにあるヴィッラ・エペクエン(Villa Epecuen)は、1920年代に開発された観光リゾート村。1970年代には5,000人以上の人が居住し大変な賑わいでした。

しかし、年々海が浸食するようになり、特に雨が降ると床下床上浸水が多発。それを防ぐために堤防が造られますが、1985年には土砂崩れが発生し村は水浸しに。

1993年には村の大部分が水に浸かり、ほとんどの住民が出ていきました。

下は航空写真ですが、ヨットハーバーの跡や朽ち果てた街路樹、住居跡が見えます。

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Photo from "The Ruins of Villa Epecuen" The Atlantic

 

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Photo from "The Ruins of Villa Epecuen" The Atlantic

 

2011年当時には、この村には81歳になるパブロ・ノヴァクさんのみが住んでいましたが、現在もお住まいになっているか分かりません。

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Photo from "The Ruins of Villa Epecuen" The Atlantic

 

 

3. パヴリペットリ(ギリシア)

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紀元前5,000〜6,000年前の古代都市

パヴリペットリはギリシャ南部ラコニア海岸の浅瀬に広がる遺跡。

1968年に発見され、当時は紀元前2000年ごろの青銅器時代のものと考えれていましたが、40年後の調査の結果、実はこの遺跡はもっと古い紀元前5,000年〜6,000年前の新石器時代のものだということがわかりました。

ノッティンガム大学を始めとした調査と保護活動が継続して進んでいますが、その全容はまだ分かっていません。

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4. ドワールカー(インド)

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西インドの海中に沈む超古代都市(?)

ドワールカーはインド西部グジャラート州の所属する都市ですが、この町の沖合には古代都市が沈んでいることが確認されています。

伝説によると、ドワールカ―の町を作ったのはヒンドゥーの神クリシュナ。

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Photo by AngMoKio

クリシュナは地上の平和と繁栄を実現するために地上に降りてきた神で、戦いがめっぽう強く、円盤を投げて敵の頭を確実にかち割ることができたし、敵に合わせて体の大きさを自由自在に変えることもできました。

ドワールカ―はクリシュナが建築の神ヴィシュワカルマの助けを借りて建築した町で大変栄えますが、クリシュナがジャラという猟師の男が誤って撃った矢に当って死んだ後、神の怒りで洪水が起こりインド洋に沈んだ、と言われています。

超古代やオカルトの信者に言わせると、ドワールカ―は紀元前3万年前に栄えた古代のハイテク都市で、爆撃機や核兵器が開発され古代インドの叙事詩マハーバーラタで描かれた古代核戦争のモデルになった、そうです。

 

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5. マハーバリプラムのパゴダ(インド)

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Work by Pspk

 神により水没させられた6つの大パゴダ

マハーバリプラムはチェンナイの南東60キロに位置する港町でベンガル湾に望み、海運の要衝にあったため古代から港湾都市として大いに栄えました。

歴代のヒンドゥー系王朝の重要都市で、パッラヴァ朝時代には首都が置かれたこともあり寺院建築が昔から盛んで、現在でもマハーバリプラムには多くのヒンドゥー寺院があります。

 

▽マハーヴァリプラムの海岸寺院

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Photo by Brand Robins

 

神話によると、マハーバリプラムにはかつて7つの寺院に7つの大パゴダがあり、その壮大さと贅沢さは神をも羨ましがらせたそうです。

嫉妬に狂った神は大洪水を起こし、海岸寺院(上記の写真)以外の全ての寺院を6つの寺院を水没させてしまった、と言われています。

神々の指紋」で有名なグラハム・ハンコックが率いた探検隊は、マハーバリプラムの海底から一つの寺院の遺跡を発見することに成功しました。2005年にはさらに2つの寺院の跡が見つかっており、さらなる発見が期待されています。

 

www.youtube.com

 

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6. 獅城(中国)

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観光スポットして人気が高まる「中国のアトランティス」 

獅城は中国浙江省杭州市の淳安県と建徳市にまたがる人造湖「千鳥湖」の湖底に沈む城郭遺跡。

 

▽千鳥湖

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Photo by ZHart

この城は漢の時代に建設が始まり、サッカー場62個分の広さがある広大な遺跡。明から清の時代にかけては、徽州商人が拠点を構えたこともあり大変に栄えたそうです。

1950年代にダムとして千鳥湖が建設されると、丸ごと湖底に没することになりました。しかし、湖底に沈んだことで文化大革命の大量破壊を免れ、豪華絢爛な明清時代の彫刻や城壁の意匠が残っており、現在ではダイビングスポットして人気が高まっているようです。

 これは行ってみたい!!

 

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7. ポートロイヤル(ジャマイカ)

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 地震で破壊された「海賊町」

ポートロイヤルは17世紀ごろ、カリブ海に海賊がウヨウヨいた時代に栄えた「海賊町」。

スペイン船を襲う海賊が持つカネを目当てに商人が集まって歓楽街が作られ、そのおこぼれにあやかろうとヨーロッパ各地から落伍者・売春婦・犯罪者・ゴロツキが集まり、旧約聖書のソドムとゴモラもかくありなん、と思われるほど堕落した富と快楽の町でした。

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ポートロイヤルは1692年6月7日に起こった地震と津波で破壊され、港の2/3が海中に没したため、人々はこの町を遺棄し、新たにニュー・プロヴィデンス島に海賊の理想郷を築きました。

継続して海中探査が行われていますが、地震が起こった11時43分で止まった懐中時計が発見されています。何というか、ロマンですね。

 

 以下の動画では沈んだポートロイヤルの遺構の潜水調査の模様が見れますが、かつての歓楽街の様子は微塵もなく、ただ魚が泳ぐ海底と化しています。

www.youtube.com

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まとめ

かつては大変に栄えた都市が、気候変動で崩壊して人が住まなくなり水の底に沈んで行く。

それ時代がすでにドラマですし、水の底だから謎めいていて、いったいどんな都市だったのだろう、どんな生活が営まれたのだろう、と人々の興味を駆り立てるのです。 

いつかはダイビングで海底都市を巡ってみたいものです。

 

 

参考サイト

"Drowned Towns: 10 Underwater Ghost Cities & Buildings" WEB URBANIST

"10 Artifacts Discovered From The Depths Of The Sea" LISTVERSE

 

 関連書籍

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