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世界の「短命国家」の国歌かっこいいランキングTOP10

20171107212209

 カッコイイ短命国歌の国歌を聞いてみよう

国歌が好きです。

「国の歌」ですから、その国の国民がおおよそ納得できるものに仕上がっているはずで、(基本的には)その国の歴史や文化が集約されているものであるからです。

そして、歴史も何も、成立してすぐにぶっ潰れてしまった国にも国歌はあったはずで、これからの国の発展に希望を託したにも関わらず、願い叶わなかったところに哀愁を感じます。

今回は独断と偏見で、世界の短命国家の国歌ランキングTOP10を発表したいと思います。

それではいきます。

 

10位. ビアフラ共和国(1967年〜1970年)

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 悲劇の国家の単調な国歌

ビアフラ共和国は、現在のナイジェリアの東部州に住むキリスト教徒が、北部のハウサ族が主導を握る中央政府に抵抗して独立したもの。

すぐにナイジェリア軍が反攻を開始し、2年半でビアフラ共和国の臨時首都オウェリは陥落。ナイジェリアに統合されました。ビアフラ内戦では補給路をナイジェリア軍が徹底的に経ったことで、ビアフラの住民に餓死者が続出し、最終的に200万人もの死者を出した、人類史上未曾有の悲劇となりました。

 さてそんな悲劇の国ビアフラの国歌ですが、単調で特徴のないメロディーと歌詞で、急いで作った感じが否めません。あまり記憶にも残らなそうです。

 

9位. ザンジバル王国(1963年〜1964年)

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 イギリス人が作ったっぽい西洋風のメロディー 

ザンジバル王国は現在のタンザニアのザンジバル島にあった島国。 

 オマーン帝国から分離しイギリスの植民地となった後、ザンジバルでは独立に向けた機運が高まりますが、アラブ系と黒人系とで対立が生じます。1963年に独立し国連にも加盟するのですが、アラブ系のスルタンの元で行われたインチキ選挙でアラブ系政党が主導権を握ることになったため、黒人住民がクーデターを起こし、わずか1ヶ月で崩壊しました。

1ヶ月しかもたなかった国の国歌ですが、西洋風の音楽でいかにもイギリス人が作った感じのメロディーです。

ちなみに、YouTubeでは歌詞ありバージョンが見つかりませんでした。

 

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8位. アラブ連合共和国(1958年〜1961年)

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独立と戦いを称える勇ましい歌詞

アラブ連合共和国は、現在のエジプト・シリア・イラクが「汎アラブ主義」のイデオロギーで統合した連合国家。

エジプトのカリスマ指導者ナセルの旗のもと、アラブの復権を目指して集いますが、カイロの政治的実権を握られることを嫌がったシリアとイラクが脱退して連合は崩壊しました。

メロディーは軍歌のような勇ましい感じで、歌詞も独立のために流した血と戦いを称える内容になっています。

私の武器よ、とても長い間であった

戦いではそなたが全てだった

私は無事だと言ってくれたまえ

ああ、何と長い戦いだったか

兵士たちにとっては長い時間だった

騒々しい轟音で前進し、退却は決してしない、画期的な勝利を除いて

(略)

誰が自由エジプトを守るのか?

我々が自分の手で守るのだ

革命の地を、いったい無駄にはできようか?

魂込めて、我々が守るのだ

人民は光のように進み

人民は山や海のように起立する

怒りの火山、噴火する火山

地震が敵を奈落に突き落とす

 

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7位. カタンガ共和国(1960年〜1963年)

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アフリカ音楽の要素が入った国歌

カタンガ共和国は、1960年のコンゴ独立後、南東部のカタンガ州がコナカ党の党首モイーズ・チョンベの元で独立宣言して成立しました。カタンガ共和国の成立によって、コンゴは内戦に突入。結局カタンガはコンゴ軍と国連軍の介入を受けて1963年に消滅しました。

カタンガ共和国の国歌ですが、歌詞はフランス語しかなくて分かりませんが、メロディーはアフリカ的な要素が入っていて個人的にはかなり好きです

 

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6位. キレナイカ王国(1949年)

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 アラブの民謡の趣のある国歌

キレナイカ王国は現在のリビアの東部にわずか5ヶ月のみあった国。

第二次世界大戦中、イスラム神秘主義サヌーシー教団のムハンマド・イドリースという男が、信徒の軍を率いて連合軍に参加。その見返りに、イドリースは東部半分をキレナイカ王国として独立させました。独立とは名ばかりで、実質はイギリスによる傀儡的な国で、旧イタリア領土のリビアを頂戴したいイギリスが、イドリースを使って間接統治をしていたような感じでした。キレナイカ王国は独立後5ヶ月でイギリスの自治国となり、2年後にリビア連合王国に吸収されました。

さて国歌ですが、抑揚のないメロディーにこぶしの効いたボーカル。アラブの民謡といった趣で、あまり国歌っぽくなく、そこが素敵です

 

 

5位. フェロー諸島共和国(1946年)

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 賛美歌風の重厚なメロディ

フェロー諸島は現在はデンマークの自治領ですが、第二次世界大戦後に同じくデンマークから独立したアイスランドのように、自分たちも独立しようと住民投票を実施したのですが、過半数の賛成ではなかったため、デンマーク政府から独立の停止を命じられわずか6日で解散させられてしまいました。

フェロー諸島の国歌ですが、はっきり言ってカッコイイです。歌詞はサッパリ分かりませんが、賛美歌風の重厚なメロディー。ぜひ一度お聞きください。

 

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4位.ジンバブエ=ローデシア共和国(1979年)

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なぜかベートーヴェンの第九「歓喜の歌」が国歌

ローデシアは現在のジンバブエにあり、旧国名ローデシアではイギリス系白人が支配層で、アパルトヘイトのような人種隔離政策を採って世界中から非難されていた国です。

英領ローデシアは1965年、イギリスから一方的に独立を宣言するも、国連から経済制裁を食らって経済が低迷。黒人の暴動を抑えるために、国名をジンバブエ・ローデシア共和国に改名し、首相に黒人を指名するなど、汚名返上に必死になりました。

しかし結局うまくいかず、1979年にいったんイギリスの植民地に戻った上で、1980年に再度正式にジンバブエ共和国として独立しました。

わずか半年間だけ使われた国歌ですが、どういうわけかメロディがベートーヴェンの第九「歓喜の歌」になってる。何が起こったんだろう…。

かっこいいというか、珍しさで4位にランクインしました。

 

 

3位. 台湾民主国(1895年5月〜10月)

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合唱コンクールで歌いたい美しい歌 

日清戦争の講和条約である下関条約の締結によって、台湾は日本に割譲されることになったのですが、一部の清国人官僚と台湾住民が結託し、日本の上陸前に勝手に「台湾民主国」の独立を宣言しました。ところが日本軍が上陸すると台湾民主国の軍はコテンパンにやられ、政府の主だった連中も次々に本土に逃亡。半年もたたずに崩壊しました。

台湾民主国の国歌ですが、かっこいいというより大変美しい歌で、合唱コンクールで歌いたい感じの歌です。ぜひお聞きください。

 

 

2位. アザワド共和国(2012年4月〜7月)

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音楽好きのニイチャンが作ったような国歌(?)

アザワド共和国は、サハラ砂漠の民トゥアレグ族の武装勢力・アザワド解放国民運動(MNLA)がマリ政府に対し反乱を起こし、マリ北部を占領。トゥアレグの独立国アザワド共和国の独立を宣言しました。

しかし、国際社会に一切認められず、しかも共同戦線を張っていたイスラム原理主義組織アンサル・ディーンは独立を拒否して離反。MNLA軍はアンサル・ディーンに敗れ、わずか1ヶ月とちょっとで崩壊してしまいました。

そんなアザワド共和国の国歌なる音源がYouTubeに上がっていたのですが、これ本当かどうか分かりません。なんか、MNLA軍の中の音楽が得意なニイチャンが「ちょっと国歌作って」「いいっすよ」という感じで作ったような、手作り感溢れる音楽。でも聞けば聞くほど味わいがあって、個人的にはすごく好きです。

 

 

1位. ブガンダ王国(1962年〜1964年)

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 アフリカ的な美しいコーラスの国歌

1位はブガンダ王国の国歌です。

ブガンダ王国は、現在のウガンダにあった国で2年間ウガンダの国内国として存続した後、正式に独立宣言をして4日後にウガンダ軍によって占領され崩壊してしまった国です。

聞いていただいたらわかりますが、アフリカの土着的な音階が素晴らしく、また男女混声のハモリが美しい。国歌というより、何か大自然や神々を称えるような、村のお祭りで歌うような素朴な歌です。とってもいいのでぜひ聞いてください。

歌詞は現地のガンダ語で歌われていますが、英訳を見つけたので翻訳してみます。

祝福された、祝福された

私たちのブガンダ

ブガンダの誇りは時代をさかのぼる

その誇りは永久のものなり

古の時代から

我が国ブガンダ

その名は世界に轟く

Twesiimye nnyo, twesiimye nnyo
Olwa Buganda yaffe
Ekitiibwa kya Buganda kyava dda
Naffe tukikuumenga
Okuva edda n'edda eryo lyonna
Lino eggwanga Buganda
Nti lyamanyibwa nnyo eggwanga lyaffe
Okwetoloola ensi yonna

 

番外編. イスラム国(2014年〜)

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イスラム国は 2017年12月時点ではまだ崩壊してませんので番外編としました。

厳密には国歌ではないと思うのですが、いわゆる「テーマ曲」ではあるようです。

そして、これがカッコイイんですよね。イスラム国のメディア戦略は優れてるといいますが、こういう所からもよく分かります。シンプルなメロディーと強いメッセージがあり、それを自分たちでリミックスして拡散するところまで計算されて作られています。

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まとめ

 無くなってしまった国歌はもうほぼ聞く機会はありません。

テキトーな運営ですぐに崩壊してしまったお粗末な国だったのかもしれませんが、中には忘却させるにはもったいない良い国歌もあるので、ぜひお聞きになってみてください。