職業ごとに担当守護聖人がいる
カトリックには「守護聖人」という概念があります。
ある地域や職業を偉大なるキリスト者が守護しているという思想です。
看護学校の卒業式にナイチンゲールの銅像に灯りをつけるのも、こういう思想の延長なのでしょう。
日本にはこんな概念はないのでなかなか想像しづらいのですが、
あなたの担当聖人はこの人ですよと言われたら、確かに何となく心強いし、仕事もやる気が出てくるものでしょうか。
ということで、職業ごとの担当聖人を集めてみました。
全部ではないのですが、そこそこいそうな職業をピックアップしています。
是非あなたの職業の担当者を探してみてください。
・漁師
アンデレ
12使徒の1人であるシモン・ペトロの兄弟でガラリヤ湖の漁師。
アンデレはパンと魚を持った少年をイエスに紹介すると、イエスはそれを増やしてみせ、たくさんの人達のお腹を満たしたそうです。
・化学エンジニア
アンプロジウス
4世紀ミラノの司教。教区からアリウス派を駆逐して、正統派を守った業績から「純粋なものを取り出す」=「石油精製」&「化学エンジニアリング」と結び付けられているようです。
・作家、ジャーナリスト
フランシスコ・サレジオ
16世紀スイスの司教。ジュネーブの司教となり、わかりやすい説教と著作活動でカトリックの普及に尽くした人物です。真のキリスト者が普段生活の中で心がけるべきポイントを要約した「信心生活入門」が有名です。
・建築家
使徒トマス
トマスはイエスに付き従った十二使徒の一人で、とても疑り深い人間だったそうです。イエスの身体に触れて本当に肉体があるかを確かめたり、イエスが復活したと聞いても、自分は見てないので信じない、と言ったりしたそうです。
トマスはイエスの死後伝道者となってインドで布教活動をし、そこで王のために天空の宮殿を建てました。それを見たインドの王はキリスト教に帰依したのだそうです。
・プログラマー、エンジニア
聖イシドールス
イシドールスは6世紀頃スペインに生きた司祭。
蛮族の侵入で失われた書物を集めて百科事典を作り、ローマ帝国の貴重な知識の数々を後世に伝える功績を残しました。
・お笑い芸人
ローマのラウレンティス
ローマ帝国の時代にキリスト教がまだ禁じられていた時代に生きた人で、貧しい人々への施しと布教活動を行いました。
ローマ当局に逮捕されて火あぶりの刑を受けたときに処刑人に、
「こちら側はもう焼けたから、裏返してもう片方を焼くといい」
といい人々の度肝を抜いたのだそうです。
・船乗り
エリザベス・アン・シートン
シートンはアメリカの生まれで、家はプロテスタントの一派・エピスコパル教会に所属していましたが、カトリックに改修し最初のアメリカのカトリックの学校を開校しました。そのため「新天地開拓」=「船乗り」という文脈で船乗りの守護聖人に認定されています。
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・医者、薬剤師
聖コスマスと聖ダミアン
ローマ時代の3世紀頃にダマスカスに生きた兄弟で、兄のコスマスは医学、弟のダミアンは薬学を極め、無償で貧しい人たちに施し尊敬を集めたのだそうです。
ところが、ディオクレティアヌス帝のキリスト教弾圧により処刑されました。
・看護師
ローマのアレクシウス
4世紀頃に生きた人で、彼自身も貧しかったのに関わらず、受け取った施しを他の貧しい人に分け与えたのだそうです。
・歯科医
聖アポロニア
アポロニアは、ローマ帝国でまだキリスト教が国教でなかった時代にアレクサンドリアに生きた女性。
キリスト教徒は敵視されており、アポロニアは暴徒に襲われて暴行を受け、歯を全部砕かれてしまいました。そして暴徒は生きながら火にくべてやる、として火をおこしはじめます。一瞬のすきをついて、アポロニアは自分で火の中に飛び込んで自殺してしまいました。
・消防士
エウスタキウス
もともとローマ帝国の軍人でしたが、ある日キリストを姿を見て改心し信者に。
そのことで社会から迫害されますが信仰は捨てず、最後は「ファラリスの雄牛」と呼ばれる牛の形をした金属の容器に入れられ、下から火であぶられ処刑されました。
ううむ、だから消防士の守護神ですか…
・警察官
大天使ミカエル
ミカエルはキリスト教のみならず、ユダヤ教、イスラム教でも重要な位置を占める大天使で、ガブリエル、ラファエルと並ぶ3大天使の一人です。
ミカエルは剣を持って描かれることが多く、守護天使と認識され転じて警官や兵隊の守護聖人とされています。
・パン屋
聖ホノラトゥス
7世紀に生きた人で、アミアンの名家の生まれ。アミアンの助祭を務めていましたが、トップの司祭に選出されました。
伝説によると、彼にいつもパンを焼いていたメイドはその話を信用せず
「あたいがいつも使っているピール(オレンジの皮)がその場で木になったら信じてもいいさ」
といってピールを投げ出すと、その場でみるみる成長し花をつけ果実を実らせ、その奇跡を見たメイドは畏れ敬ったとのことです。
・テレビ、ラジオ関係者
聖ガブリエル
聖ガブリエルは実在の人物でなく、旧約聖書に登場する天使です。
ガブリエルは処女マリアに「受胎告知」を伝えており、そのような「神からのお達し」を伝える天使として描かれています。そのため、テレビやラジオ関係者、アナウンサーの守護聖人とされています。
・広告関係者
シエンナのベルナルディーノ
シエンナのベルナルディーノは14〜15世紀に生きた説教者。
ユーモアあふれる説教で人気になりましたが、清廉潔白で、賭博や卑猥さを嫌い、彼の説教を聞いた人はすぐにバクチを打つのをやめたと言われています。
・出版関係者
ヨハネ・ボスコ
ドン・ボスコは19世紀イタリアの修道士・教育者。
貧しい少年たちが教育も受けられず肉体労働をしている様に心を痛め、彼らのために教育事業をスタート。世界中から共感と称賛受け、彼が始めた教育プログラムは世界中に普及しました。
・オートバイ乗り
コロンバヌス
6世紀のアイルランドの修行僧で、アイルランド各地に修道院を作りますが、迫害を受けてスコットランドに逃れ、その後イングランドや西ヨーロッパ各地にケルト系教会を広めるきっかけを作った人物です。たぶんそのフィールドの広さがバイク乗りと結びついていると思われます。
・教師
グレゴリウス1世
グレゴリウスは中世を代表する教皇で、聖ベネディクトゥスの伝記を含む多くの著作を残した当代きっての知識人でもありました。また聖歌も多く作詞し、中世教会を導いた人物として尊敬されています。
・学生
ジェンマ・ガルガーニ
イタリア・カミリャーノの貧しい家庭に生まれ、金持ちの家に奉公に出されるも、結核にかかってしまう。すると両手と両足に聖痕が出るといった奇跡を発露させ、奇跡の少女と言われ教会から注目されるも、25歳で死亡しました。
・無職
聖カエタン
聖カエタンは15世紀ごろ生きた司祭。
24歳の若さで教皇に仕えるというエリートコースを進むも、肩書を持つことを嫌い、ヴェネツィアの貧民街の病院設立に携わって生涯貧しい人たちを助けて生きた人です。
まとめ
無職の守護聖人までいるとは、カトリックは実に優しい宗教ですね。
ぼくはこの中でいうと広告製作者にあたるので、「シエンナのベルナルディーノ」の写真はプリントアウトしてデスクに飾ろうと思います。
きっとご加護があることでしょう。
みなさんは、自分の担当聖人は見つかりましたでしょうか?