歴ログ -世界史専門ブログ-

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奇妙で怪しげなキリスト教聖人の「聖遺物」

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血、腕、生首そしてアソコ

偉大な宗教家で人々から尊敬された人が亡くなった時、その亡骸や愛用品を人々はこぞって求めました。聖遺物というやつです。

その人の功績や徳を忘れまいとする愛情表現や敬愛・尊敬の気持ちもあったでしょうが、人々が求めたのは聖遺物の「効能」でありました。

聖人の逸話にも依りますが、聖遺物がある街は厄災が降りかからないとか、触れると不治の病が治るとか言われました。

昔からヨーロッパの人々は超自然的な効能を求めて聖遺物を拝みに行ったし、街や教会は「箔をつけるために」なんとかして聖遺物を手に入れようとしました。

ヨーロッパの教会に行けば、結構いろんな街で聖遺物を見ることができます。中には出自怪しげな物も多いのですが。

今回はそんな聖遺物の中でもとびきりの珍品を集めてみました。

 

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スコットランドとウェールズの独立運動とナショナリズム

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スコットランドとウェールズのナショナリズムはいつから火を吹いたか  

ご存知の通り、イギリスとは正式名称「グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国」で、グレートブリテンとは「イングランド王国(ウェールズ含む)とスコットランド王国」の連合王国です。

ウェールズは13世紀末に早くもイングランド王国の支配下に入り、スコットランドは17世にイングランドと同君連合王国となっています。

両国はまごうことなき「イギリス」ですが、サッカーは主要3カ国と北アイルランドが独自にチームを立てていますし、それぞれ同時に議会も持っており、緩い独自性を保有し続けています。

ですが、2014年に行われたスコットランドが分離独立の可否を問う投票が行われるなど、イギリスの分解の動きが加速し始めていますのはご存知の通り。

今回は独自性を志向するウェールズとスコットランドのナショナリズムの歴史をまとめていきます。

 

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インド大反乱と民衆コミュニケーション

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Photo by Executioner

「チャパティを5枚焼いて、先の村々に配れ」

1857年2月の早朝、デリー県インドラプートの村番が1枚のチャパティ(未精製の小麦粉で焼いたパン)を持ってパハルガンジの警察署長を訪ねてきました。

そうしてこう言って去っていった。

「同じようなチャパティを5枚焼いて、近くの5村に配れ。その際、今私が言ったことと同じ口上を述べよ」

署長は不思議に思っていたところ、同じ日に「5枚のチャパティ配布」がデリー県の各地で発生していることが発覚しました。

チャパティの配布リレーはその後、恐ろしい勢いでインド各地に伝達されましたが、誰が、いったい何にために行っているか一切不明。

イギリス植民地当局は気味悪がり、チャパティの配布を禁止しました。

するとまもなく 、インド大反乱(セポイの乱)が勃発。

反乱はチャパティの配布が行われた道筋をたどるように発生していったのでした。

「チャパティを配る」行為は、イギリス人には分からないがインド人には分かる暗黙のメッセージを含んでいました。

 

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ワインの王様・ボルドーワインの歴史

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Photo by Alex Brown

ワインと言えばフランス。フランスワインと言えばボルドー。

15年くらい前から、日本でも日常的にワインを飲む人が多くなってきました。 

チリ産やオーストラリア産など手頃な価格のワインが手に入りやすくなったことが大きいと思います。消費者にとっては選択の幅が広がるのは大変嬉しいことです。

一昔前のワインは安くても3000円〜4000円程度はしたようで、日常的に飲むにはちょっと手が届きにくいものでした。そして昔の日本でワインと言えばフランス産のことを意味したし、フランスワインと言えばボルドーワインを連想する人が多かったようです。

ワイン=フランス=ボルドー=高級品

の図式がはっきりしていたわけですね。

今でもボルドーワインは揺るぎないブランド力があるし、後に触れますが等級の高いボトルは大変高級品で金銀宝石のごとく取り扱われます。

世界にワインの名産地は数多くあれど、なぜボルドーワインが他を寄せ付けないブランド力を持つに至ったかが今回のテーマです。 

 

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アメリカ大統領に贈られた迷惑な贈呈品

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本気でいらない、ありがた迷惑な贈呈品の数々

贈り物をいただくと大変うれしいし、ありがたく頂戴するものですが、たまーにマジでいらない時あります。

海外旅行のお土産には地雷が多めです。モチーフが不明な木製の置物とか、絶対着ない民族衣装とか、どうやって食うか分からない調味料とか。

あと、手作りのものとか本当困ります。

趣味の日曜大工で作ったテーブルとかもらった日にはたまりません。捨てようにも捨てられないし、使うには怖いし。

我々庶民ですらそんなですから、偉い立場にある人はさぞかし要らないモノをたくさんもらっていることでしょう。

今回は歴代のアメリカ大統領がもらったことのある、「迷惑な贈呈品」を紹介します。

 

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100粒で奴隷が買えた!?メソアメリカ文明のカカオ豆経済

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メソアメリカ文明ではお金だったカカオ

今ではスーパーやコンビニで100円たらずで買えてしまうチョコレートですが、原産国のメソアメリカでは、それもう大変な貴重品だったそうです。

王侯貴族の飲み物であり、庶民には到底手が届かないもの。

アメリカ大陸に進出したヨーロッパ人は、原住民が金貨や銀貨を使わずにカカオで買い物の支払いをしているのを見て、非常に驚いたそうです。

チョコレートを飲むということはお金を飲むということなので、そりゃ超ぜいたく品になりますね。万札でお尻を拭くようなもんですからね。

メソアメリカ文明の「カカオ本位経済」を、チョコレートの文化誌 八杉桂穂 世界思想社から抜粋して 紹介します。

 

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【我々は媚びる】ナチス占領に協力したヨーロッパの団体

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抵抗せずにナチスに協力したヨーロッパの人々

「悪逆非道のナチスの支配に対し、ヨーロッパの人々は雄々しく立ち向かったのだ!」

映画や小説はもちろん歴史本に至るまでそんな文脈が主流で、実際抵抗運動も激しかったのですが、話はそう単純ではなさそうです。

ナチス・ドイツが圧倒的な武力でヨーロッパを席巻し支配を強めていく中、占領下の国々の中には結構、ナチス支配に協力をする者がいました。

どの時代・場所にもいる「世渡り上手」な人だったのでしょうか。

今回はそんなナチス支配に協力した団体をピックアップします。

 

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実はふさわしくない?神話をモチーフにした企業名・ロゴ

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企業のロゴや名前に似つかわしくない「本当の意味」とは

企業のロゴやブランドの名称というのは、 実は相当時間をかけて作られています。

企業の向かう方向性をとりまとめてステークホルダーに了承を得、整合性が取れる形状やトンマナ、モチーフを選んでデザインし、他国・地域に展開した時に問題は起きないかを確認し…等々。

「企業がロゴを一新しました」

と言われても、一般の人ならふーんで終わりますが、その後ろではたくさんの大人が血へどを吐きながら作り上げているんです。

さて、「信頼」や「安心」を伝えたい場合は、トラディショナルな意匠やモチーフ、名称を借用することも多くあります。ロゴやブランド名が何やら見なれた / 聞きなれたものだと、人はなにかしら安心した気持ちになり、その会社や製品・サービスと受け入れることができるからです。

ですが、よくよく背景を知ると「このモチーフで本当にいいのか?」と思うものもあったりします。

 

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