歴ログ -世界史専門ブログ-

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アメリカに実在するインディアン国家・イロコイ連邦

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北アメリカにあるインディアン国家

アメリカは50の州の連邦国家である「合衆国」です。

州はそれぞれ法律や軍隊を持ち、比較的独自性を持っていますが、

それよりもはるかに自立性の高い「国内国」が北アメリカに存在します。

その名前は「イロコイ連邦」。インディアン6部族の国家集団です。

保留地はアメリカとカナダにあるものの、国連にも承認されている純然たる独立自治領です。

今回はその概要と、成立の歴史を見ていきましょう。

 

 イロコイ連邦概要

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保留地

イロコイ連邦の保留地は、ニューヨーク州北部のオンタリオ湖南岸からカナダにまたがった地域にあります。

そもそも「領土」という概念はインディアンにはないので、「保留地」という言い方がなされています。

構成部族・人口

連邦は、カユーガ族・モホーク族・オナイダ族・オノンダーガ族・セネカ族・タスカローラ族によって成り、おおよそ12万人前後がいると推定されています。

権限

イロコイ連邦はアメリカ国内にあるものの、

  • 立法権
  • 課税権
  • 免許発行権
  • 交戦権
  • 通貨・紙幣発行権
  • 外交締結権

を独自に有しています。

アメリカ連邦捜査局(FBI)もイロコイ連邦内は捜査権が及ばないそうです。

政治

各部族の代表者からなる合議制を採っており、連邦の意思を内外に表明するのは「調停者」と呼ばれる代表者の役割です。

その調停者の初代が、イロコイ連邦の創始者であるハイアワサとデガナヴィタです。

 

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調停者ハイアワサとデガナヴィタ

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戦士ハイアワサと戦士デガナヴィタとの出会い

16世紀中頃は、アメリカ北東部森林地帯では、各部族が絶えず抗争を繰り広げていました。

モホーク族のハイアワサは偉大な戦士でしたが、絶え間ない殺し合いに心を病み、眠れない日々を過ごしていました。

そんなある日、戦争の即時停止と各部族の同盟を訴えて諸部族を周る、ワイアンドット族の戦士デガナヴィダと出会います。

ハイアワサは一族を集めてデガナヴィダの話を聞きます。デガナヴィダは言います。

私は、天空の大精霊の酋長の良き知らせとともに来ました。国同士の戦いは終わらなければなりません。良き精霊は、人間たちが血を流し合うことを決して望んでいません。

そして、近隣のいくつかの部族は和平案に賛同していると言うと、ハイアワサの一族の中にも和平に賛同する声が相次ぎます。

部族調停

ハイアワサとデガナヴィダは、近隣5部族の調停のために各地を歩き周ります。

 そしていくつもの困難を伴いながら、和平・同盟案をまとめあげ、

カユーガ族・モホーク族・オナイダ族・オノンダーガ族・セネカ族の首長を「和平の火」の周りに集め、歴史的な和解とイロコイ連邦の設立を宣言

18世紀半ばに5部族に加えてタスカローラ族も加わり、6部族による同盟が現在も続いています。

アメリカの連邦制度に影響を与えた?

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イロコイ連邦は当時最も強力なインディアン勢力で、アメリカ人は敵意を持ってイロコイの戦士と戦いつつ、彼らのその先進的な制度に衝撃を受けます。

各部族が独立しつつ強固な同盟を結ぶ、イロコイ連邦の民主主義的な国家像は、アメリカ植民者たちにとって驚嘆の的でした。

後にアメリカ独立13州の統一を築き上げたベンジャミン・フランクリンは、イロコイの調停者や長老たちに接触し、その教えを乞うた、と言われています。

※現在のアメリカの歴史学では、アメリカ連邦制度とイロコイ連邦の関連性は薄いと見るのが主流派のようです。

 

 

まとめ

現在もこの6部族は強固な団結力を保持しているそうですが、

伝統のインディアン社会は現代のアメリカには適応しづらく、貧困にあえいだ結果犯罪に走る者がいるようです。

そのため、セネカ族、モハーク族、オナイダ族は「インディアン・カジノ」と言われるカジノパークを運営しており、その収益で食っているようです。

このインディアン・カジノは、アメリカ政府からインディアンに与えられた特権のようなものです。

まあ、アメリカがインディアンにやった非道を考えれば、これくらいの特権は当然に思えますが、

過去の補償を当然のこととして、特権に甘えて働かないヤツが出てくるのは困りものでしょうね。

そんなヤツに腹が立って敵意が湧いてくるアメリカ人もいるでしょうし。

なかなか難しいです。