これがエクストリーム3K労働だ
キツイ、汚い、キケンの3K労働は昔から言われていますが、
今では、キツイ、帰れない、給料安いの新3K労働なんてのも登場しています。
前者は主にブルーワーカー、後者はIT企業や飲食、テレビ制作会社なんかに使われているようです。
時代によって様々に過酷な仕事はありますが、想像するだにキツイ、「エクストリーム3K労働」とでも表現したくなる仕事が過去にはありました。
今回は、トニー・ロビンソン著「最悪の仕事の歴史」より、イギリスの歴史上本当に存在した、究極に最悪な仕事の数々を抜粋して紹介します。
1. ゲロ収集人
客人のゲロを集め掃除する仕事
古代ローマ人、特に貴族たちの饗宴はたいへん贅沢なものでした。
山のように供される肉、魚、ワイン、デザート…
彼らはそれをもれなく楽しむために、食べたものを吐き、胃の中を空かせてさらに食べ、また吐き・・ということを繰り返していました。
嘔吐物は専用の容器に吐き出されることもありましたが、床に直接吐き出されることも多かったようです。
そして客人のカウチの間を回ってひざまずき、ゲロを回収して回るのがゲロ収集人のお仕事。
完全に消化しきれず形が残った状態の肉や魚を含む、アルコールが胃液と混じったツンとするニオイの液体をかき集めるのです。
絶対にやりたくない!!
2. ウミガラスの卵採り
死の危険性が最も高い仕事
ウミガラスは海岸沿いの高い崖に巣を作り、そこで卵を産みます。
ウミガラスの卵は大きくて高タンパク、しかも大量に採れたため、危険を冒してまでも採る価値がある資源でした。
採取人はロープを体に巻き付けカゴを持って、荒れ狂う海を眼下にしながら断崖絶壁を降っていく。崖の上では2〜3人がロープを引っ張っていました。
中世のロープはイラクサで出来ており、尖った岩でロープがすり切れたり、結び目がほどけたりして採取人が転落することも多くありました。
また、鳥たちは卵を盗もうとする人間に激しく襲いかかり、下手をするとバランスを崩してせっかく採取した卵を崖下に落としてしまう。
絶対にやりたくない!!
3. ヒル採取人
自らの身体をエサにしてヒルを集める仕事
現代でもヒルは医療の現場で使われていますが、中世イングランドでも悪い血を出す治療のためにヒルが必要でした。
そう、医療用ヒルを集めるのがヒル採取人の仕事。
採取の仕方は簡単。
脚をむき出しにして芦の生い茂る浅瀬に入り、ウロウロするだけ。
するとヒルが脚にピタッと取り付いてくる。
一瞬チクリとするので、採取人はそれをカゴの中に入れ、再びゆっくり歩き始める。
ある程度稼ぐためには結構な量のヒルが必要なので、採取人の脚はヒルの噛み傷だらけだっただろうし、
しかもヒルに噛まれた傷は10分ほど出血するため、傷口にばい菌が入り化膿し病気になる可能性も非常に高かったようです。
絶対にやりたくない!!
4. お便器番
国王の排便を管理する仕事
お便器番は国王の排便の専門家、つまり排便の手助け、肛門拭き、便から王の健康状態を調査するのが仕事です。
王にお仕えする仕事なので社会的な地位は非常に高かったようです。
お便器番はいつでも王がもよおしてもいいように、携帯式の便用具、洗面用の水差し、タオルを常に抱えて王にお仕えしていました。
便が済むと最上級のやわらかい生地で王の尻を丁寧に拭き、バケツに落ちた便をまじまじと観察。記録につけるのです。
王が体調不良で便秘気味の時は、浣腸を挿して上げるのもお便器番の役目でした。
絶対にやりたくない!!
5. ヒキガエル喰い
カエルを丸呑みしてみせる実演販売の売り子
ヒキガエルの皮には微量の毒があるためか、昔のイギリスではヒキガエルを丸呑みすると死ぬと信じられていました。
これを利用し、イギリスの薬売りたちはパフォーマーを雇っていかに自分たちの薬が効くかのコマーシャルをやりました。
その実演をやったのがヒキガエル喰い。
さあさあ、寄っておいで!見ておいで!
街角に立って人を呼び集めるヒキガエル喰い。何だ何だ?と集まる群衆。
さあ皆の衆、この薬をご存知かい?なんとヒキガエルの毒にも効くってえすげぇ薬なんだ
そうして薬を飲んだ後で、ヒキガエルを丸呑み。
ヒエー!ギャー!という観客たちの悲鳴が聞こえるようです。
本当に彼らがヒキガエルを飲んでいたのか分かりません。もしかしたらトリックのようなものだったのかもしれませんが、マジで飲んでいたら体にいいわけがない。
絶対にやりたくない!!
6. シラミとり
かつらについたシラミを除去する仕事
昔のイギリス人は毎日風呂に入る習慣がなかったためか、貴賎問わずシラミと同居していました。
また当時貴族が使用していた「かつら」は人毛からできていたから、そこにもシラミがわく。最初はシラミがついてないかつらでも、保管中に他のかつらからシラミが移ってきて繁殖してしまうのです。
ある程度大きい貴族の家になると、かつらについたシラミを専門に駆除する「シラミとり」がいましたし、そんな余裕がない家は業者を招いて「かつらの定期メンテナンス」を行いました。
櫛でかつらを丁寧にすき、シラミの成虫や卵をひとつひとつ丁寧に取り除いていく。
慣れたらどうってことないかもしれませんが、不快な仕事に変わりはない。
絶対にやりたくない!!
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7. 硝石集め人
便所の土をかき集めて硝酸ナトリウムを作る仕事
鉄砲を打つ火薬を作るためには、硝石という物質が必要です。
ところがフランスやドイツと違い、イギリスは天然の硝石がほとんど採取できない土地でした。
ただ、戦時ともなれば大量の硝石が必要となる。
そこで国は大量の硝石集め人を雇い、家々を巡って便所の下の土を掘り返し、大規模に硝石を生産させました。
尿がたっぷり染み込んだ土は、良質の硝酸ナトリウムを含んでいたのです。
硝石集め人は、まず便所の土を味見し、質のいいナトリウムが含まれているか確認した後、臭い土を掘り返して持ち去りました。
その後集めた便所の土を灰と混合し、水に溶かして煮詰めて晶析させる。次に血と混ぜあわせ、残留有機物を取り除き、さらに晶析させて洗浄すると、硝石の完成。
想像するだに鼻が曲がりそう。
絶対にやりたくない!!
8. 骨拾い
人骨を集める仕事
ヴィクトリア朝の時代のイギリスでは、人骨は立派な資源。
歯ブラシや髭剃りの柄、赤ん坊のおしゃぶり、ナイフの柄などに加工されました。
小さいものや欠片は茹でてゼラチンと脂肪分が取り除かれ「せっけん」として販売されました。
骨拾いは、墓場を巡っては人骨を拾い集め加工業者に売りさばいていました。当時の最底辺の職で、大変な割にはあまりカネにもならない仕事でした。
絶対やりたくない!!
9. どぶさらい
Photo by Laurie Avocado
地下のお宝ハンター
19世紀にはロンドンの地下は約1700キロの下水溝トンネルが通っており、
ロンドン市民の生活排水はそこを通って全てテムズ川に排出されました。
ところが汚水だけでなく、金貨、宝石、金属など人びとが誤って落とした品物も下水にゴロゴロしており、それを専門にかき集める「どぶさらい」と呼ばれる連中がいました。
2メートル近い金属製のクワのようなものを持って下水のドブ川に浸かり、何か金目のものが落ちてないか探るのです。
急な増水や有毒ガスのせいで命を落とすこともあったし、ドブネズミの大群に襲われることもあり、極めて危険でしたが結構儲かる仕事だったようで、
イギリス政府の禁止令にも関わらず、一攫千金を目指した男たちは地下を目指したようです。
もしかしたらやりたいと思う人がいるかもしれませんが、少なくともぼくは、
絶対にやりたくない!!
10.ネズミ採り師
伝染病を媒介するネズミを捕まえるプロフェッショナル
ヴィクトリア朝時代のイギリスでは、都市部にネズミが大量発生し伝染病が媒介され、深刻な社会問題になっていました。
増えすぎたネズミを処理したのが専門のネズミ捕り師。
専門性が高く、ジャック・ブラックのように成功した人物もいました。
彼は現場につくと、まず一箇所を除いて全ての穴を塞ぐ。そしてその穴から凶暴なフェレットを侵入させる。パニックになったネズミが怒涛のように穴から出てきたら、それらを一匹ずつ捕まえる、という段取り。
捕まえたネズミも売りさばくことが出来たので、なかなかいい商売でした。
ところがネズミに噛まれて伝染病をもらってしまうこともあり、
ジャック・ブラックも一度はネズミに噛まれて体が膨れ上がり3ヶ月も寝込んでしまいました。ジャックは「黒ビールを飲むことで」かろうじて治すことができたそうです。
絶対にやりたくない!!
まとめ
まさにエクストリーム3Kと言っていい仕事内容ですね。
しかし当時は本当に、こういうことをやるしか食っていけない人びとが大勢いたということだし、実際にこういう人たちの支えによって社会が成り立っていたのです。
現代の豊かな社会も、そういうキケンでキツイ仕事をする人たちの貢献によって成り立っているのですよね。
そう考えると、昔のことだからといって笑えない、とても身近な話に感じられないでしょうか。
参考文献
図説「最悪」の仕事の歴史 トニー・ロビンソン 原書房
- 作者: トニー・ロビンソン,日暮雅通,林啓恵
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2007/09/21
- メディア: 単行本
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