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歴ログ -世界史専門ブログ-

おもしろい世界史のネタをまとめています。

挑戦者求ム。埋蔵金の場所が書かれた"ビール暗号"

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埋蔵金の在り処が記された、未解読の暗号文書

ビール暗号は1885年にアメリカで発行された、わずか23ページの小冊子に記された暗号文書。

ここには、2000万ドル(約23億円)相当の宝の在り処が記されていると言います。

100年以上に渡って暗号解読のプロたちが挑んでいるものの、その全容はいまだに謎に包まれています。

 

 謎の男 トマス・J・ビール

1820年1月。

アメリカ・ヴァージニア州のリンチバーグにあるワシントン・ホテルに、1人の男がやってきます。彼の名前はトマス・J・ビール。

ホテルのオーナーであるロバート・モリスは、彼の容貌をこう語ります。

目の色は黒。黒い頭髪は当時としてはいくらか長めだった。何より目を引いたのは、黒く日焼けした肌。よほど日差しや雨風にされされたものか。しかし、これほどの美男子は見たことがないと、私は思った。

ビールは2ヶ月半ほどをホテルで過ごし、ある日こつ然と姿を消しました。

 

「非常に価値のある重要な書類」

それから2年後。

ビールは「いっそう黒くなって」ワシントン・ホテルに戻ってきました。

このときも同じく冬をホテルで過ごしますが、立ち去る前、主人のモリスに錠前のかかった鉄の箱を手渡します。

「これは非常に価値のある重要な書類だ」

ビールは言い、そして去っていきました。

モリスはこの箱を金庫にしまい、しばらくその存在を忘れていました。

ところがある日、ビールから一通の手紙が届きます。そこにはこうありました。

その箱には、私と大勢の商売仲間に関する重要書類が入っています。(略)どうか用心してその箱を守り、くれぐれもなくしたりしないようお願いします。仲間が1人も戻らなかった場合、あなたはこの手紙の日付から10年間その箱を保存してください。もしその10年間に、私、または私に委任された人物が返却を求めなければ、あなたは錠前を壊して箱を開けてください。箱の中には、あなた宛の手紙が一通と文書が何枚か入っていますが、手がかりとなるものの助けがなければ文書を読むことはできないでしょう。その手がかりとなるものを、私は封印してあなた宛にしたうえで、この土地の友人に預けました。その封書は1832年の6月以前には配達されないことになっています。その手がかりを使えば、我々があなたにお願いしたいことは伝わるはずです。

モリスは言われた通り10年待ちますが、結局引き取り手は現れず、しかも解読のための手紙も届きませんでした

結局モリスが錠前を開けたのは、さらに13年後の1845年のことでした。

 

ビールからの手紙

箱の中に入っていたのは、3枚の暗号化された文書と、ビールからの手紙。

その手紙によると、

  • サンタフェの北250〜300マイル付近で金・銀を発見した
  • 仲間とともに付近を掘り進め、莫大な財宝を入手した
  • 財宝はヴァージニアに持ち帰り、秘密の場所に宝を埋めた
  • 財宝を隠すにあたって、信頼できる人物に各人の分け前について書かれたものを託すことにした

その信頼できる人物がモリスであって、暗号文書3枚を解読すれば全てが明らかになる、と手紙には締めくくられていました。

 

文書の一枚目は宝の隠し場所。

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文書の2枚目には宝の内容。

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文書の3枚目には分け前を受け取るべき親類縁者リスト。

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モリスは手がかりなしに暗号の解読に取り組み始めました。

 

第2の文書の解読に成功した"匿名男性"

モリスは結局暗号を解くことができず、この解読をとある男性に依頼します。

その男性は匿名で、名前が明らかになっていません。

その匿名男性は何と、2枚目の文書の解読に成功しているのです。

匿名男性は、文書内の数字と何らかの文書を突合することによって、暗号が解読できるのではないかと考えました。

そしていくつかの文書と照らし合わせた結果「アメリカ独立宣言」がその鍵であることを発見します。

文書の最初は115。アメリカ独立宣言の115番目を見ると"instituted"とある。つまり暗号分の最初は"i"であることが分かります。

そうして読み解いていくと、第2の文書は以下の通りです。

ビュフォードの店から4マイルほど離れたベッドフォード群の採掘抗で、地面より6フィートほどの深さに以下のものを埋めた。所有すべき者の名を、同封の文書3に示す。

最初の埋蔵物は1014ポンドの金と3812ポンドの銀で、埋蔵の日付は1819年1月である。第2の埋蔵物は、1821年の12月に埋蔵したもので、1907ポンドの金、1888ポンドの銀、そして輸送の安全のためにセントルイスで銀と交換した宝石類1万3000ドル相当である。

上記の金銀宝石類を、いくつかの鉄の容器に入れ、やはり鉄のフタをした。採掘抗は粗い石垣のようになっているが、容器はしっかりした石の上に置き、さらに石を積んで覆い隠すようにした。第一の書類には採掘抗の正確な位置を書いておいたので、容易に発見できるであろう。

しかし匿名男性は第2の文書までしか解読できず疲れきってしまい、

1885年にビールとモリスの不思議ないきさつや暗号3枚を小冊子にまとめて広く一般に公開しました。

 

ビール暗号に挑んだ人たち

公開後、ビール暗号に引かれて大勢のトレジャーハンターがやってきました。

アマチュアで熱心だったのが、ジョージ・ハートとクレイトン・ハートの兄弟。また、ハイラム・ハーバード・ジュニアという人物も熱心に解読を試みますが、結局何の成果も得られませんでした。

プロのアメリカ軍暗号解読班ハーバード・ヤードリーや、ウィリアム・フリードリマン大佐もビール暗号に取り組みますが、解読がされないまま100年以上が過ぎてしまっています。

 

なぜ解読がなされていないか

第2の文書はアメリカ独立宣言であったため、第1、3の文書もともに、アメリカ独立宣言を中心として分析が進められました。

しかし独立宣言が暗号鍵ではない、という説が現在は主流です。

というのも、第一の暗号には2906という数字が含まれているのに、独立宣言は1322の単語しかないからです。

ここまで暗号が解読できない理由として、いくつかの説が唱えられています。

暗号鍵となる文書が紛失した説

そもそも、第1と第3の文書の暗号鍵はビールが自分で書いた文書であって、

本当はそれがモリスの元に届くはずだったが、何らかの手違いで紛失してしまった。

匿名男性が改ざんした説

匿名男性は文書を公表するにあたり、わざと文書を改ざんして公表し、暗号鍵の文書を持っている人物が名乗り出てくるのを期待した、という説。

もし正しい暗号のまま公開したら、暗号鍵を持っている人物が解読して宝を奪われてしまったかもしれない。

2度暗号化説

第1の文書は、独立宣言を元にして暗号解読し、さらにまた別の解読処理が必要なのではないか、という説。

ビール暗号は手の込んだでっちあげ説

暗号解読者のルイス・クルーは、ビール暗号は「匿名男性」による手の込んだでっち上げであって、文書を公開することで欲に目がくらんだ者たちからカネを巻き上げようとしたのではないか、という説。

クルーは、ビールの手紙と匿名男性の小冊子の文章を分析。

単語の構成比率、1センテンスの中のカンマやセミコロンの平均数、文章の形式(否定形、否定受動、不定詞、関係節等)を比較し、この2つの文章に類似性があると結論づけました。

というか、宝は既に持ち去られているのでは説

アメリカ中の頭脳が集う国家安全保障局がすでに宝を発見し、既に持ち去って国庫に収めてしまっているのでは?という説。

 

 

まとめ

いかがでしょうか?

第3の文書は興味ないでしょうけど、第1の文書はかなり夢がありますよね。

現在でも、このビール文書がほのめかす近辺には、金属探知機やツルハシを持ったトレジャーハンターたちがウヨウヨしているそうです。

頭脳に自信があるあなた。是非挑戦してみてください。

おつむの弱いぼくには無理そうです。

 

参考文献

暗号解読<上> 新潮社 サイモンシン,青木薫

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

 
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