歴ログ -世界史専門ブログ-

おもしろい世界史のネタをまとめています。

人類の歴史を変えた火山大噴火

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 人類に破壊的な惨事をもたらした自然の禍

 人類は常に自然の気まぐれに振り回されてきました。

農業や漁業はモロに気候や天気に左右されるため、異常気候や天災があった場合直ちに凶作となり、食えなくなる者が続出し、治安が不安定になり、内乱や戦争が起こり、王朝がひっくり返ったり革命が起きたりする。

 特に地震や津波、噴火などの破壊的な自然のエネルギーがもたらす被害は、近隣だけでなく世界的に影響を与えました。

今回は、かつて人類の歴史を変えてしまった火山噴火をピックアップします。

1. 1600年 ワイナプチナ火山噴火(ペルー)

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 ヨーロッパで大飢饉を引き起こした南米の大噴火

ワイナプチナ火山はペルー南部にある火山で、現地の言葉で「新しい火山」を意味します。

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1600年2月19日に起こったワイナプチナ火山の噴火は、これまで南米で起こった噴火で最大のもので、少なくとも2週間は噴火が続き、最初の2日で噴出された大量の火山灰で12平方キロメートルは埋め尽くされました。

1600万〜3200万トンの二酸化硫黄が吹き出し、その一部は大気圏まで到達しオゾンを破壊すると同時に、火山灰は空一面に広がり太陽光を遮りました。

その結果、1600年〜1602年はヨーロッパで冬の気温が史上最低を記録し、北欧や東欧では飢餓が発生。スウェーデンでは記録的な雪量に見舞われ、春には大洪水が起きて甚大な被害が出ました。

ロシアではこの寒さによって食料が不足し、当時の人口の3分の1に相当する200万人が死ぬ「ロシア大飢饉」が発生。

この混乱により皇帝の求心力は失われてロシアは弱体化し、偽皇帝が乱立し、ポーランド=リトアニア王国に国を占領される「動乱時代」に突入したのでした。

 

 

2. 1902年 サンタ・マリア火山噴火(グアテマラ)

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 中米のコーヒー産業を壊滅させた大噴火

グアテマラにあるサンタ・マリア火山は標高3772メートルほどで富士山と同程度の山。世界的にはさほど大きくない山ですが、1902年に起きた噴火は20世紀に起きた噴火の中で2番めに大きなものでした。

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1902年10月24日の午後5時ごろから地震が激しくなり30分ほど轟音が続き灰が降り始め、7時頃には白熱が現れ始め、8時頃には巨大な黒い雲が空に上がり始めました。

噴火柱は28キロに達し、10立方キロメートル以上に灰を撒き散らし、一部は4000キロも離れたカリフォルニア州にすら達したと記録されています。

火山灰と地すべりにより約5000名が死亡し、その後衛生状態が悪化してマラリアが発生しさらに多くの犠牲者が出ました。また、火山灰を受けてグアテマラ一帯のコーヒー産業は壊滅しました。

 

 

3. 10世紀 白頭山噴火(朝鮮半島)

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Photo by Bdpmax

渤海王国崩壊と関係する説もある巨大噴火

白頭山は北朝鮮と中国の国境地帯にある火山で、朝鮮半島では伝説の王朝・檀君朝鮮の始祖檀君が生まれたのが白頭山であると言われており、神聖な山と見なされています。

ちなみに、北朝鮮では故金正日主席が生まれたのは白頭山であると信じられており、檀君の神話と関連付けて「金王朝」の神性と正当性をアピールしていたりします。

さて、その白頭山は10世紀に大噴火を起こしており、その火山灰は北海道や東北地方で今でも普通に見られるほどで、有史以来2番目に巨大なものだったと考えられています。

ところがこの噴火は規模の割にはあまり歴史書には残っておらず、どういうものだったか謎が多いそうです。あまりにも巨大だったため、行政機能含む周辺の街や集落が全て消え去ってしまい、証言者や記録に残す人が誰もいなかったためと思われます。

現在の北朝鮮・中国東北部・ロシア極東にあった渤海王国は926年に遼によって滅ぼされているため、長年この白頭山噴火が原因だったのではないかとされてきました。

 

しかし最近の研究によると、噴火が起きたのは渤海王国の滅亡の後の可能性が高く、渤海の崩壊は別の要因によると考えられています。

 

 

4. 紀元前1260年 ミノア噴火(ギリシャ)

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 アトランティス伝説の元になったという説もある大噴火

サントリーニ・カルデラはギリシャ南部に浮かぶ巨大な海中カルデラ。

元々は全部が一つの島でしたが長い間の噴火で大部分が海中に没し、火山の外輪山に当たる部分がサントリーニ島、ティラシア島、アスプロニシ島として浮かび、カルデラの中心にネア・カメニ島とパレア・カメニ島が浮かんでいます。

過去少なくとも4回の噴火、18万年前、7万年前、2万年前、そして3600年前の噴火によってにこの形状が形成されたと考えられています。

紀元前1260年に発生した噴火は、高度に発達した東地中海の青銅器文明に破壊的な惨事をもたらし、ミノア文明より以前に栄えたキクラデス文明はこの噴火によって荒廃したと考えられています。

一説によると、アトランティスの繁栄と崩壊の物語は、サントリーニの噴火がその下敷きにあるとされています。

高度に発達したアトランティスの島は、激しい地震や洪水によって海の底に消えてしまったとされていますが、プラトンはサントリーニの噴火の記録や証言を元にしてこの物語をまとめた可能性があるというのです。

詳しく書き出すと大変なので、詳細は「Santorini and the legend of Atlantis」にてご覧ください(英語です)。

 

 

5. 535年 イロパンゴ噴火(エルサルバドル)

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 世界中に干ばつや飢饉をもたらした噴火

中米エルサルバドルにあるイロパンゴ湖は、5〜6世紀に起こった大噴火によって出来たカルデラに水が溜まって出来たカルデラ湖です。

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535年に起こった大噴火によって巻き上げられた二酸化硫黄と火山灰は、地球全体を寒冷化させるほど凄まじいものだったらしく、535年から536年にかけて世界各地で「寒冷による農業不振」や異常気象が記録されています。

例えば、ビザンチン帝国では「太陽が光なく輝く現象」が観測され、アイルランドでは「パンの不足」が起き、中国では「8月に雪がふり収穫が遅れた」、中東やヨーロッパでは「濃く乾燥した霧」が観測され、ペルーのモチェ文化では干ばつが発生しました。

研究によると、これはイロパンゴ火山の噴火の後、彗星や隕石の衝突があったらしく、複合的な要因で535年の「異常気象」が起こったようです。

 

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6. 1883年 クラカタウ大噴火(インドネシア)

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世界各地で爆発音が確認された大噴火

 インドネシアのジャワ島とスマトラ島の間にあるクラカタウは、いくつかの火山の島で成り立っており、元々は一つの大きな島でしたが何度も噴火を重ねてカルデラ部分は海に沈み、現在のような姿になっています。

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1863年8月27日午前5時半に噴火が始まり、4時間半の間に4度の大爆発が発生。最後に起こった午前10時の爆発の音は凄まじく、北西に約2100km離れたインドのアンダマン諸島や、東に3200km離れたパプアニューギニア、西に4800km離れたロドリゲス島でも「轟音が聞こえた」と記録が残っているほど。

その衝撃波は地球を数週し、ローマ、パリ、ベルリン、ニューヨークでも気圧の上昇が観測され、それぞれ3回から4回ほど観測されたそうです。中には7回も観測された箇所もあったほど。威力の凄まじさが伺い知れます。

この噴火によって発生した大津波で少なくとも3万5000人が死亡し、大気圏にまで巻き上げられた火山灰で地球の気温は数年間低下しました。

 

・関連書籍 

クラカトアの大噴火

クラカトアの大噴火

 

 

 

7. 1815年 タンボラ山大噴火(インドネシア)

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Photo by Jialiang Gao

 全世界で「夏のない年」となった1815年の異常冷夏の原因

インドネシア・スンバワ島にあるタンボラ火山は、標高2851メートルと決して高くない山ですが、1815年の大噴火は世界中に影響を与えました。

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歴史家のジョン・デクスター・ポストは1815年を「夏のない年」と呼びました。

その原因はタンボラ火山の噴火によって火山灰が大気圏に達し、日光を遮って地球全体の温度を低下させたためでした。この時巻き上げられた二酸化硫黄は、最大で1億2000万トンと推量されています。この時の異常冷夏は世界中で記録されています。

  • アメリカ・ニューハンプシャー州など5州で6月に下が観測される
  • アメリカ・ニューヨーク州で6月に雪が降り、農作物が壊滅
  • カナダ・ケベック近郊で6月に30センチの雪が降る
  • アイルランドでジャガイモが壊滅的な被害を受け飢饉が発生
  • ドイツでは食料価格が高騰し、19世紀で最悪の飢饉となり暴動・放火・略奪が発生する
  • ヨーロッパ南東部と地中海東部で発疹チフスが流行
  • ベンガル地方で季節外れの大雨が振りコレラ菌が蔓延
  • 清国では寒さのために稲作と牧畜が被害を受ける

噴火による直接的な死者は1万人とされていますが、噴火によって起こった冷夏により発生した飢饉によって、推定で7万人から12万人が死亡したとされています。

 

 

 

まとめ

めったに起こらないとは言え、世界的規模で影響を与える噴火は、考えるだに恐ろしいものです。局所的な被害をもたらすだけでなく、世界中に影響を与えるわけなので、お互い助け合うことすらままならない状態に陥る可能性もある。

戦争は人間の努力で防ぐことはできますが、火山の噴火は、もうどうしようもないので、非常食を切らさないなどの防災対策をとるくらいしか考えられません。

あるいは「起こらないように神さまに祈る」くらいでしょうか。

 

Newton 富士山大噴火

Newton 富士山大噴火

 

 

 

参考サイト

"Peru's Huaynaputina Volcano Eruption of 1600 had Worldwide Impact" THE DAILY GALAXY

 "October 25, 1902: Santa Maria Erupts!" AGU blogosphere

"巨大噴火の爪痕" 東北大学総合学術博物館のすべて 白頭山の謎

"I N T R O D U C T I O N - S A N T O R I N I V O L C A N O"

Extreme weather events of 535–536 - Wikipedia

"1883 Krakatoa erupts" HISTORY THIS DAY IN HISTROY

"1883年のクラカタウ大噴火は人類の歴史に残る最大の爆発音だった" GIGAZINE

"Tambora Erupts in 1815 and Changes World History [Excerpt]" Science American

 

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