「ウソをついたら死後に地獄で痛い目にあうんだよ」
小さいころに母親にそう脅かされた人は多いと思いますし、実際にそう言って子どもを脅かしているお父さんお母さん方も多いかと存じます。
じゃあ実際に地獄に落ちたらどうなるか知ってますか?
えーっと、血の池地獄でしょ、針山地獄でしょ、あと舌を抜き取られるとか…
死んだあとどうなるか知っている人は誰ひとりとして存在しません。
もしかしたら本当に地獄というものがあるのかもしれない。そしてもしかしたら地獄に行くことになるかもしれません。
死ぬ前に、ちゃんと地獄というものがどんな場所であるか知っておいたほうがいいはず。
宗教によって地獄の考え方も違いますが、今回は我々に馴染み深い仏教の地獄について学んでいきましょう。
1. 仏教の死後の世界
仏教ではこの世の生命は輪廻転生を繰り返すとされています。
常に人間界に出現できるわけではなく、六道と呼ばれるいずれかの世界に生まれ変わります。六道は具体的には以下です。
- 天道
- 人道
- 阿修羅道
- 畜生道
- 餓鬼道
- 地獄道
どの世界に生まれ変わるかは生前にどのような行いをしたか次第で変わってきます。
少し良い行いをした者は阿修羅道。そこそこ良い奴は人道。めっちゃ良い奴は天道に行けます。
下3つはその逆。ちょっと悪い奴は畜生道。そこそこ悪い奴は餓鬼道。極悪人は地獄道に行くわけです。
簡単ですね。
須弥山を中心とする世界
仏教の世界では、世界は以下の図のようになっています。
まず我々の人道は平たく、海の上にある4つの大陸にあります。動物や虫の世界である畜生道も我々の世界にあります。
世界の中心には7つの山脈があり、その中心には須弥山という高さ16万由旬(1由旬=7または14キロ)の山がそびえている。須弥山の上には天界が伸びており、30階もある高層タワーになっています。
一方で地下には悪人どもの世界が広がります。
一番浅く、南瞻部州から地下500由旬のところには餓鬼道、東勝神州の地下には阿修羅道、そして地下5000由旬のところには地獄道が縦に重なっています。
2. 死後の旅
2-1. 閻魔王の裁判
さて、あなたは死にました。
まず閻魔王に謁見し、罪を裁かれねばなりません。
閻魔王のいる場所は論争があるそうですが、「世記経」によると南の大陸のさらに南、大金剛山という山にある王宮に暮らしているそうです。
閻魔はあなたの前に老人、病人、死人の3使者を連れてきます。
「お前は生きている間に、白髪になり、腰が曲がり、すっかり弱った老人を見なかったか?それを見て何か思わなかったか?」
と問いつめられます。
人間の哀れな姿を生前に見ていたにも関わらず、自分もいつかはそうなると悟らず傲慢に生きていたあなたは、見事に地獄行きに決定してしまいました。
3. 畜生道・餓鬼道
もし地獄行きとまではいかなくても、比較的悪いことをしていた奴が落ちる畜生道と餓鬼道とはどんな場所なのでしょうか。
3−1.畜生道
畜生道は我々の世界と同じ次元にありますが、人間以外の動物や虫などとなって生きねばなりません。
「生法念処経」によると畜生の種類は34億種おり、どうやって次の生物に決まるかも生前の行い次第です。
例えば、財を貪るために亀、スッポン、魚、カニ、ハマグリなどを殺した者は、ヒル、ノミ、シラミに生まれ変わる。
また町を襲撃した強盗は、シカに生まれ変わって常に人間に殺される恐怖を感じながら生きなくてはならない。
3-2. 餓鬼道
地獄道の次に過酷なのは餓鬼道です。
ここに落ちるのは、精神的にも物質的にも傲慢で貪欲な暮らしをしていた者。
餓鬼道にあるのは絶え間ない飢餓の世界で、ここに生まれた餓鬼は骨と皮だけだけど腹だけが異常に膨れ上がった醜い姿をしています。
人間にモンゴロイドとかコーカソイドとかがいるように餓鬼にも種類があるらしく、口が針のように小さく飲み喰いできない針口餓鬼(しんこうがき)、食べたら必ず吐いてしまう食吐餓鬼(じきとがき)、ウジ虫や糞尿しか食えない食糞餓鬼(じくふんがき)などがいるそうです。
絶対なりたくねえ!
PR
4. 地獄へようこそ
さて、あなたは無事に地獄に到着しました。
実は地獄にもランクがありまして、大きく8つの地獄があります(八大地獄)。罪の重さによってより苦しみが大きい地獄に行くことになります。
- レベル1 等活地獄
- レベル2黒縄地獄
- レベル3衆合地獄
- レベル4叫喚地獄
- レベル5大叫喚地獄
- レベル6焦熱地獄
- レベル7大焦熱地獄
- レベルMAX無間地獄
殺生、盗み、邪淫、酒の売買、ウソ、レイプ、父母殺害などなど、悪行の数が多ければ多いほどレベルが上がって重い地獄に行くというわけです。
あなたはどの地獄に落ちるでしょうか。
それぞれの地獄の詳細を見ていきましょう。
レベル1. 等活地獄
等活地獄は、生き物をむやみやたらと殺した者が落ちる地獄。
この世界では亡者同士が終わりなき殺戮を続けており、お互い殺し殺され合う。
亡者は細く鋭い爪が生えており、これで他の亡者の肉を切り落とて殺す。しかし冷たい風が吹くと肉や皮が再生し、決して死ぬことはないのだそうです。
レベル2. 黒縄地獄
黒縄(こくじょう)地獄に落ちるのは、殺生と盗みを犯した者。
ここに落ちた亡者は、獄卒たちによって熱鉄の上に押し倒され、熱鉄の縄で体を引き裂かれ、斧や鋸でギッタギタにされてしまいます。
あるいは、鉄の山と山の間に縄を張り、その上を綱渡りさせられる。縄の下にはグツグツと大鍋が煮えており、例外なく落ちてしまう。
レベル3. 衆合地獄
衆合地獄に落ちるのは、殺生、盗みに加え、邪淫の罪を犯した者。
亡者たちは武器をもった獄卒に追いかけられ、鉄の山と山の間に追い込められる。すると突然鉄の山が動いて亡者どもをペシャンコにしてしまう。
あるいは、鉄の刀の山の上に美人が出現し、亡者どもは美人を目指して山を進むも刀に肉が削がれて身が無くなっていく。運良く頂上にたどり着くも、いつの間にか美人はさらに奥の山に移動しており、いつまでも辿りつけない。
レベル4. 叫喚地獄
叫喚地獄に落ちる者は、酒を売買したり、他人が酒を飲むように仕向けた者。(あ、アウトじゃん…)
この地獄では、亡者どもは浅い鍋の上に投げ込まれ、煮たり焼かれたりして苦しみ、挙句焼けた銅を口から流し込まれたりする。
その悶え苦しむ声が凄まじく、叫喚地獄といわれる所以です。
レベル5. 大叫喚地獄
大叫喚地獄は、叫喚地獄をさらにパワーアップしたもので、酒の売買の他にウソをついたものが落ちる場所です。(あ、やっぱこっちだった…)
叫喚地獄より大きな鍋でさらに大きな道具で焼かれ、さらに嘘つきが落ちるだけあって、灼熱の銅を舌に流し込まれたり、炎の口を持つ虫に舌や喉を食われたりなど、執拗に舌や口を攻められます。
レベル6. 焦熱地獄
これまでの罪に加えて、仏教の教えとは相容れない教えを説いた邪見の罪を犯した者が落ちるのが焦熱地獄。
その名の通り、ここに来たら徹底的に体を焼かれて苦しむことになる。
獄卒によって体に鉄棒を何本もさされて、焼き鳥状態になってジュージューと焼かれます。獄卒によっては、いったんミンチ状態にして焼く器用な者もおるようです。
レベル7. 大焦熱地獄
これまでの罪に加えて、尼や童女などの清い者を殺害した者が落ちる地獄が大焦熱地獄。
焦熱地獄と基本的には同じですが苦しみは遥かに大きく、等活から焦熱までとその間の小地獄の全てを足した10倍の苦しみがあるそうです。
刑は死ぬ前から始まるらしく、死ぬ3日前から既に大焦熱地獄の苦しみを味わうことに成るのだそうです。
レベルMAX. 無間地獄
これまでの罪に加えて、父母殺しや聖者殺しといった、仏教において最も罪深いことをやらかした者が落ちるのが無間地獄。
もうとにかく最悪で、考えられる限りの苦しみを全てぶち込んだのがここ無間地獄なのです。
地獄の中で最も深い場所にあり、罪人たちは穴に落とされて無間地獄に着くまで2000年間も落ち続ける。
到着すると、そこに炎があがっていない場所はなく、あちこちに恐ろしい姿の獄卒がいて罪人を追い回し、背丈が4由旬で64の目をもつ奇怪な鬼もいる。
罪人どもはこいつらに追い回され、燃え盛る熱鉄の山を永遠に登り降りさせられる。
ある時は舌を出されて100本の鉄釘を打たれたり、毒蛇や虫たちに体を蝕まれたりする。
無間地獄から見たら、大灼熱地獄など天国に思えるほど、その苦しみは途方もないものだそうです。
まとめ
さて、あなたはどの地獄に落ちるでしょうか?
ぼくはレベル5の大叫喚地獄にどうやら落ちることになりそうです。
これを書きながら酒を飲んでいますから、もう言い逃れができません。
これから酒絶ちをしたら閻魔様は許してくれるでしょうか?
許してくれなそうなら、せめて死ぬまで楽しみたいから飲み続けたほうがよさそうです。
参考・引用 図解天国と地獄 草野巧 新紀元社