歴ログ -世界史専門ブログ-

おもしろい世界史のネタをまとめています。

【2021年12月版】世界史関連の新刊45冊

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今月は歴史専門書の数が多いです

 2021年10月~12月の世界史関連新刊紹介です。

本記事はざっと流し読みをして気になる本をメモしていただくか、ブックマークして書店を訪れた際に見返すかして使っていただけるといいかと思います。

今回は45冊あります。最近は中国関連の書籍が非常に多いのですが、今回はドイツ、特にナチス関連とソ連、共産主義関連の書籍も多い印象です。 

 

注目の新書・選書

中公新書が非常に充実しています。個人的な大注目はこの三冊です。

  • 古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで
  • 歴史修正主義 ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで
  • ドイツ・ナショナリズム 「普遍」対「固有」の二千年史

 

1. 『古代中国の24時間 秦漢時代の衣食住から性愛まで』

中公新書 柿沼 陽平 著 2021/11/18 税抜1,056円

始皇帝、項羽と劉邦、曹操ら英雄が活躍した古代の中国。二千年前の人々はどんな日常生活を送っていたのか。気鋭の中国史家が文献史料と出土資料をフル活用し、服装・食卓・住居から宴会・性愛・育児まで、古代中国の一日24時間を再現する。口臭にうるさく、女性たちはイケメンに熱狂、酒に溺れ、貪欲に性を愉しみ……。驚きに満ちながら、現代の我々ともどこか通じる古代人の姿を知れば、歴史がもっと愉しくなる。

 

2. 『サウジアラビア―「イスラーム世界の盟主」の正体』

中公新書 高尾賢一郎 著 2021/11/18 税抜902円

1744年にアラビア半島に誕生したサウジアラビア。王政国家、宗教権威国、産油国の貌を持つキメラのような存在だ。王室内の権力闘争や過激主義勢力との抗争、石油マネーをめぐる利権により、内実はヴェールに包まれている。中東の新興国はいかにして「イスラーム世界の盟主」に上りつめたのか。宗教・経済・女性問題は克服できるか。イスラームの国家観と西洋近代の価値観の狭間で変革に向かう、大国の実像を描き出す。

 

3. 『歴史修正主義 ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで』

中公新書 武井彩佳 著 2021/10/18 税抜924円

ナチによるユダヤ人虐殺といった史実について、意図的に歴史を書き替える歴史修正主義。フランスでは反ユダヤ主義の表現、ドイツではナチ擁護として広まる。1980年代以降は、ホロコースト否定論が世界各地で噴出。独仏では法規制、英米ではアーヴィング裁判を始め司法で争われ、近年は共産主義の評価をめぐり、東欧諸国で拡大する。本書は、100年以上に及ぶ欧米の歴史修正主義の実態を追い、歴史とは何かを問う。

 

4. 『ドイツ・ナショナリズム 「普遍」対「固有」の二千年史』

中公新書 今野元 著 2021/10/18 税抜1,056円

アメリカの世界覇権が翳りを見せるなか、欧州で主導権を握り、存在感を増すドイツ。だが英仏など周辺国からの反撥は根強い。そこには歴史的経緯や、経済をはじめとする国力の強大化への警戒感だけでなく、放漫財政を指弾し、難民引き受けや環境保護を迫るなど、西欧的=「普遍」的価値観に照らした「正しさ」を他国にも求める姿勢がある。二千年にわたる歴史を繙き、ドイツはいかにして「ドイツ」となったのかをさぐる。

 

5. 『南北朝時代―五胡十六国から隋の統一まで』

中公新書 会田大輔 著 2021/10/18 税抜990円

中国の南北朝時代とは、五胡十六国後の北魏による華北統一(439年)から隋の中華再統一(589年)までの150年を指す。北方遊牧民による北朝(北魏・東魏・西魏・北斉・北周)と漢人の貴族社会による南朝(宋・斉・梁・陳)の諸王朝が興っては滅んだ。南北間の戦争に加え、六鎮の乱や侯景の乱など反乱が続いた一方、漢人と遊牧民の交流から、後世につながる制度・文化が花開いた。激動の時代を生きた人々を活写する。

 

6. 『宗教図像学入門 十字架、神殿から仏像、怪獣まで』

中公新書 中村圭志 著 2021/10/18 税抜1,056円

十字架、仏像、モスク、曼荼羅、地獄絵図、神話の神々、竜――。シンボルマークや聖なる空間、絵画、彫刻、映画などによって形成された「イメージ」は、教義と並ぶ宗教の重要な特徴だ。それを分析する技法が宗教図像学である。本書では、ユダヤ教、キリスト教、仏教をはじめ、世界の主な宗教の図像学的知識を一挙解説。「天界の王族」「聖なる文字」などのトピックごとに、奥深い宗教文化の魅力を余すことなく紹介する。

 

7. 『産業革命史 ─イノベーションに見る国際秩序の変遷』

ちくま新書 郭 四志 著 2021/10/5 税込1,265円

イノベーションこそが、世界秩序形成の原動力である。技術革新が起きる現象を広く産業革命と捉えて、第一次産業革命(一七六〇〜一八三〇年代、軽工業)、第二次産業革命(一九世紀後半〜二〇世紀初頭、重工業)、第三次産業革命(二〇世紀後半、IT・情報)、第四次産業革命(二〇一〇年代以降、IoT・AI)の四段階に分け、世界経済の変遷をたどりなおす。経済体系の変遷や社会経済発展・分業との関係など多様な論点を交え、持続的な世界経済の運動として産業革命を大局的に描き出す試み。

 

8. 『金融化の世界史 ─大衆消費社会からGAFAの時代へ』

ちくま新書 玉木 俊明 著 2021/11/08 税込924円

現在も世界で大きくなり続ける所得格差。富める者は富み、そうではないものは貧しくなっていく。どうしてそんな社会になってしまったのか?本書は、ヨーロッパとアメリカを中心に近世から現在に至る歴史を見なおし、大衆消費社会から金融社会への変化と所得格差拡大の関連を見ていく。大衆消費社会により縮まった格差は、社会の「金融化」により拡大し、現在の構造ができあがった。大航海時代からタックスヘイヴン、GAFAの時代までを見通す一冊。

 

9. 『大企業の誕生 ─アメリカ経営史』

ちくま学芸文庫 A.D.チャンドラー 著 2021/11/10 税込1,210円

世界秩序の行方を握る多国籍企業は、いったいいつ、どのようにして生まれたのか? アメリカ経営史のカリスマが、豊富な史料からその歴史に迫る。

 

10.『スポーツからみる東アジア史』

岩波新書 高嶋 航 著 2021/12/17 税抜1,034円

アスリートたちの活躍を通して、国家が自らの存在を国際社会に誇示する。時に、生々しい政治的闘争の場ともなる。それが国際スポーツ大会だ。とりわけ東アジアで行われた大会には、参加各国の思惑と時々の情勢とが鋭く刻印されてきた。政治が作りだし、深めた分断と、アマチュアリズムの理想はどのように向き合ったのか。

 

 

岩波講座の最新刊が出ていますよ

「岩波講座世界歴史」四半世紀ぶりの新シリーズが刊行になっています。

「第一巻世界史とは何か」は読みました。世界史を専門家だけのものではなく、一般市民の世界史実践という観点で捉えて語る試み。ジェンダー、感染症、歴史認識と対立など今歴史が抱えている課題感に目線が合っています。この感覚はいま、このタイミングで読まないとなかなか体感できないものです。1~2年後だと遅いと思います。ややお高いですが、ぜひどうぞ。おすすめです。

 

11. 岩波講座 世界歴史 第1巻「世界史とは何か」

責任編集:小川幸司 2021/10/05 税抜3,520円

人類の過去の営みを叙述することが、どのように生まれ、変容し、人々にとって政治的・教育的にどのような意味をもってきたのかを概観する。とりわけ日本社会における「世界史」の展開を、専門家だけでない一般市民の歴史実践という観点から分析する。グローバル・ヒストリーやビッグ・ヒストリーの知見も取り入れた新しい「世界史」研究の全貌。

 

12. 岩波講座 世界歴史 第5巻「中華世界の盛衰 4世紀」

責任編集:冨谷至 2021/11/05 税抜3,520円

先秦時代から西晋に至るまでの東アジア世界は、いかなる思想のもとにあり、どのような制度を備えていたのかーー政治史のみならず、文学や家族制度・性差、地方行政のあり方から日本を含む周辺諸国とのかかわりまで射程に収め、考古資料も駆使して新たな時代区分でダイナミックに描き出される「中華世界」の栄枯盛衰。

 

13. 岩波講座 世界歴史 第3巻「ローマ帝国と西アジア 前3~7世紀」

責任編集:大黒俊二 2021/12/03 税抜3,520円

ローマ帝国を「古典古代」「地中海世界」の視角から解き放ち、西アジアとの共時性やつながりを重視しつつ「帝国」としての実像を探究。両地域の双方向的な政治史はもちろん、都市や生活のあり方、被支配者やマイノリティの主体性、文化・世界観の多彩で選択的な「翻訳」、ユーラシア規模での経済活動の実態など、最新の知見で活写する。

 

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企画本・選書

特定のテーマにトピックを当てた企画本・選書です。リーズナブルな価格で専門的でおもしろい切り口の内容の書籍が読めます。

今回は個人的にこれらが注目です。

  • 教養としての写真全史
  • 図説 チェコとスロヴァキアの歴史
  • 世界を変えた100のポスター 上

 

14. 『教養としての写真全史』

筑摩選書 鳥原 学 著  2021/10/12 税込2,090円

21世紀に入って、写真のもつ意味と役割は劇的に変わった。スマートフォンが普及し、誰もが気軽に写真を撮ってSNSにUPするようになったからだ。だがこれまでも、機材やメディアの変化とともに写真の役割は常に変化してきた。単なる記録の手段として始まった写真が、次第に報道・広告・表現などへとその役割を広げていき、やがて芸術の一ジャンルとして確固たる地位を築くまでの道筋をたどる。歴史を知り、写真を読み解くリテラシーを身につけるための一冊。

 

15. 『アフガニスタンを知るための70章』

前田 耕作,山内 和也 編著 明石書店 2021/9/30 税抜2,000円

東西冷戦や宗教原理主義の台頭、いわゆる「テロとの戦い」の舞台となるなど、数十年にわたり苦しい状況に置かれているアフガニスタン。日本との国交樹立90周年を迎えるにあたり、その歴史と文化、人びとの暮らしを、平和と復興への期待を込めて幅広く紹介する。

 

16. 『「感染」の社会史 科学と呪術のヨーロッパ近代』

中公選書 村上 宏昭 著 2021/11/9 税抜2,200円

コレラなどの疫病が「感染」するものと認識されてから、たかだか一五〇年ほどにすぎない。だが病気をもたらす不可視の微生物への恐怖と不安は、呪術的思考と絡み合いながら、人と人とのつながりや社会のあり方を一変させた。それは効果的な感染予防の福音を伝えた一方で、ジェノサイドを招く火種ともなった。本書は十九世紀末の「細菌学革命」にまつわる光と影、その後のヨーロッパ世界の激動を、臨場感溢れる多数の図版と共に追う。

 

17. 『図説 チェコとスロヴァキアの歴史』

河出書房新社 薩摩 秀登 著 2021/10/27 税抜2,100円

強大な周辺勢力に翻弄され、激動の歴史を歩みながら、黄金に輝くプラハをはじめ、豊かな文化を育んだ2つの小国。農村社会や庶民史、ユダヤ人史にもアプローチした新たな通史の誕生。

 

18. 『人類の歴史をつくった17の大発見 先史時代の名もなき天才たち』

河出書房新社 コーディー・キャシディー 著 2021/11/25 税抜1,620円

火、衣服、外科手術、ビール、石けん、ジョーク……。さまざまな「はじめて」はいつどこでどんな人物が達成したのか? 最新研究を駆使して、先史時代の「天才」の偉業をいきいきと描く!

 

19.『図説 ソ連の歴史 増補改訂版』

河出書房新社 下戸米 伸夫 著 2021/11/27 税抜2,100円

ソ連崩壊から30年。この間、新たな資料も明らかとなるが、今なお、ソ連時代をめぐる議論は尽きない。世界情勢の鍵を握る現代ロシアを知るためにも、新たな見解を増補した決定版!

 

20.『一冊でわかる韓国史』

河出書房新社 六反田 豊 監修 2021/12/01 税抜1,700円

韓国とはどういう国か。その歴史を図やイラストを使いながらわかりやすく、ていねいに描く。コラム「そのころ、日本では?」「知れば知るほどおもしろい韓国の偉人」も役に立つ。

 

21.『図説 クリスマス全史』

原書房 タラ・ムーア 著     2021/11/05 税込3,850円

クリスマスの起源や慣習、 世界各地で独自に発展した祝い方まで。強大な影響力を持つ祝祭として時に禁じられ、時に政治利用されてきたクリスマスの多面的な歴史を 豊富な図版(85 点)で解説するクリスマス史の決定版。

 

22.『ヴィジュアル版 世界のティータイムの歴史』

原書房 ヘレン・サベリ 著 2021/11/13 税込3,080円

英国アフタヌーンティーの誕生、シャネルの愛した紅茶、アメリカのティーダンス、インドのイラニ・カフェ、日本の茶懐石――世界地域別にティータイムの歴史が総覧できる茶文化本の決定版。図版130 点!

 

23.『世界を変えた100のポスター 上』

原書房 コリン・ソルター 著 2021/12/11 税込2,640円

ベル・エポックから21世紀まで、300年間のポスターの傑作、社会や人々に強いメッセージを与えたポスター、時代のアイコンとなった象徴的なポスターとその背景にある物語を解説した視覚デザインの歴史をめぐる紙上のポスター博物館。

 

お得な専門書

4,000円以内で買える書籍を「お得な専門書」というカテゴリに入れています。

4,000円がお得か?という議論は置いといて、個人的な大注目は「黒人と白人の世界史」です。ジェンダーや人種、LGBTQをどう歴史的に解釈するかが歴史学に課された大きなテーマとなっていますが、人種問題に一石を投じる本であると注目されています。2700円と比較的手に取りやすく、これは「買い」でしょう。

 

24.『黒人と白人の世界史』

明石書店 オレリア・ミシェル 著 2021/10/25 税抜2,700円 

「ヨーロッパ人は、アフリカ人を奴隷にしたために人種主義者になった」。本書は、大西洋奴隷貿易、奴隷制、植民地主義とともに、「人種」がどのように生み出され、正当化されていったのかを歴史的に解明する。ル・モンド紙が「まるで小説のように読める」と評す、人種の歴史の新たな基本書。

 

25.『ベトナム戦争の最激戦地中部高原の友人たち』

めこん グエン・コック著 2021/10/5 税込2,750円

最も苛酷な戦場だったベトナムの「中部高原」とはどんなところなのか…。
30年余の従軍体験の中でこの地の人と自然に魅せられたベトナム随一の作家が綴った回想記。ベトナムで最も権威ある文学賞「ハノイ作家協会賞」を受賞しています。
「中部高原」については、フランスの人類学者による著名な研究記録がありますが、日本にはほとんど紹介されていません。また、ベトナム戦争の報道においても、この地の地政学的・歴史的分析はありませんでした。
本書は、ベトナム現代史と文化人類学、さらには開発と自然保護問題の面で重要な意味を持つエッセイです。解説「タイグエン略史」はベトナム研究の第一人者古田元夫氏によるものです。

 

26.『破綻の戦略 私のアフガニスタン現代史』

白水社 髙橋博史 著 2021/11/29 税込2,090円

本書は、大学卒業後、ダリー語修得のためカーブル大学に留学して以降、一貫してアフガニスタンに関わり続けてきた元大使によるメモワール的なドキュメントである。現地にどっぷり浸かり、体験し、長年にわたって蓄積した知見をもとに書き下ろした。
物語は、カーブル大学在学中の一九七八年に起きた軍事クーデターから始まる。直後のソ連軍による侵攻から、ムジャーヒディーン同士の内戦、ターリバーンとアル・カーイダの出現、九・一一同時多発テロ事件を経てターリバーン政権崩壊へと続く一連の流れのなかで中心的に語られるのは、「アフガン人の生き方を守るため」の戦いに殉じた三人の人物―ターリバーンの創設者ムッラー・ウマル、北部同盟の司令官アフマッドシャー・マスード、義賊とも英雄とも評されるマジッド・カルカニー―だ。本人の肉声を聞き、関係者と議論を重ねた著者の視点や評価は、主要メディアから伝わる情報とはときに大きく異なる。
ジャーナリストによるルポや研究者による分析とは一線を画す、異色のノンフィクション。

 

27.『戦争の文化 (上) パールハーバー・ヒロシマ・9.11・イラク』

岩波書店  ジョン・W.ダワー 著 2021/12/03 税抜3,080円

自らに都合の良い思考、異論や批判の排除、過度のナショナリズム、敵の動機や能力の過小評価、文化的・人種的偏見――今もなお世界を覆う「戦争の文化」の本質を、真珠湾攻撃から原爆投下、九・一一事件、イラク戦争に至る日米の愚行を通じて描き出す。『敗北を抱きしめて』で知られる碩学の長年にわたる研究の集大成。

 

28.『アフガニスタン史』

河出書房新社 前田 耕作, 山根 聡 著 2021/10/06 税抜2,350円

2021年8月、タリバン政権が樹立したアフガニスタン。古代から現代まで、文化・民族・政治史を詳しく分かりやすくまとめた名著を新装版で復刊。現在の複雑な背景を知るには必携の一冊。

タリバン新政権樹立! この国はどこへ行くのか?
2021年8月、アメリカ軍の撤退とともにアフガニスタン政権は崩壊し、
イスラーム過激派のタリバン新政権が樹立した。
情勢は20年前に逆戻りしたかに見える。
かつてタリバンは残虐さで知られたがこれからどう推移するのか、
国際社会は固唾を飲んで見守っている。

 

29.『北東アジアの地政治 ― 米中日ロのパワーゲームを超えて』

北海道大学出版会 岩下 明裕 編著 2021/12/1 税込3,850円

伝統的な地政学を批判的に継承し、国家や領土を所与のものとせず、表象や言説なども視野に入れ、政治に対する地理的な要因をより多角的・多層的に分析する「地政治(geo-politics)」。地域協力が後景に退き、特に海域での緊張が高まっている北東アジアを、国家を主体としたパワーゲーム的な分析に目配りしつつも、地政治の重層的な視角から読み解く。

 

30.『イノベーション概念の現代史』

名古屋大学出版会 ブノワ・ゴダン 著  2021/10/29   税込3,960円

現代社会のキーワードとして君臨する「イノベーション」。いかにして考え出され、政策や経営に組み込まれていったのか。また、研究はどのように商業化に巻き込まれたのか。国際機関や省庁・企業の実務家たちに焦点を合わせ、科学・技術の「有用性」を問い直す、私たちの時代の概念史。

 

31.『世界史のなかの東南アジア【上巻】』

名古屋大学出版会 アンソニー・リード 著  2021/12/13   税込3,960円

世界史を動かし続けた東南アジアを、先史から現代までの全体史として描く、第一人者による決定版。上巻では、近世=初期近代へと至る展開を各国史や大陸/島嶼の区別をこえた一貫した視点でとらえ、環境、宗教、ジェンダー、商業などから、豊かな多様性を生み出す人びとの姿に迫る。

 

高額専門書

4,000円以上の専門書を高額専門書としています。主に研究者や図書館が購入する書籍ですが、個人でも興味があれば是非買っていただきたいラインアップです。私もたまに5000円以上する本買います。

さて、今期は怒涛のみすず書房ラッシュです。みすず書房の書籍は私は大好きなんですが、このラインアップはすごいですね。特に「エッセンシャル仏教 教理・歴史・多様化」は気になります。

 

32.『野蛮と宗教Ⅰ』

名古屋大学出版会 J・G・A・ポーコック 著  2021/10/19    税込5,940円

ヨーロッパの文明につきまとう「野蛮と宗教」という主題。それを壮大な世界史のなかで描き上げた歴史家ギボンの生涯を軸に、多様な啓蒙思想との出会いから、『百科全書』との対決、ローマ帝国史の着想までをたどる。『マキァヴェリアン・モーメント』の著者によるもう一つの主著、ついに邦訳開始。

 

33.『交隣と東アジア 近世から近代へ』

名古屋大学出版会 岡本隆司 編 2021/11/15 税込5,940円

交隣とは、たんに日朝の善隣友好を示すものではない。朝貢一元体制の矛盾の露呈を防ぎ、各国の通交を成り立たせた朝鮮外交の意外な役割から東アジアの秩序体系を明らかにし、西洋の到来によるその解体過程も精細にとらえて、世界史的近代の日・朝・中・琉球の姿を映し出す。

 

34.『共振する帝国 朝鮮人皇軍兵士と日系人米軍兵士』

岩波書店 タカシ・フジタニ 著 2021/11/11 税抜4,950円

日本とアメリカ。一見対照的な二つの国は総力戦下、多人種を統合した「帝国」へと変貌するなかで、マイノリティ動員とレイシズムの形態において奇妙な「共振」を見せてゆく。朝鮮人と日系人をめぐる政策が、排除と包摂の間で揺れ動きながら変容しゆく過程、マイノリティの経験と表象をつぶさに描き出し、トランスナショナル・ヒストリーへと結実させた決定的名著が待望の邦訳。

 

35.『世界史の発明』

河出書房新社 タミム・アンサーリー 著 2021/10/29 税抜4,290円

世界史には未来を生きるためのヒントが詰まっている!ビッグバンからAI社会まで、常に巨大な一つのネットワークの中で、互いに結びついていた人類の歴史を、圧倒的スケールで描く!

 

36.『ドイツ=東アジア関係史 1890-1945財・人間・情報』

九州大学出版会 熊野直樹・田嶋信雄・工藤 章 編 2021/11/26 税抜6,200円

1940年に日本と軍事同盟の関係を築く以前に、ドイツはそもそも中国との間に広範な通商関係を持っていた。とりわけ第一次世界大戦後に中国における植民地を失うことになったドイツにとっては、武器の販路や天然資源の供給元として中国は依然として重要な存在であった。また中国にとっても進出の野心を強めつつある隣国の日本に対してドイツとの関係強化を図ることは必然の流れであった。

本書は、帝政ドイツ・ヴァイマル共和国・ナチスドイツ、清朝・中華民国・「満洲国」、そして日本(大日本帝国)と、国家の形態や国家間の関係はさまざまに変わりながらも、皇帝ヴィルヘルム二世によって開始された「世界政策」から第二次世界大戦終結までの時代(エポック)と「ドイツ=東アジア」という「場」を主たる対象としている。こうした時代と「ドイツ=東アジア」に着目しながら、国家だけでなく、国家以外のアクター(主体)が織りなす国家横断的(トランスナショナル)な関係と、国家内部の政府、社会、共同体(コミュニティ)、経済、文化、生活といった諸レベルの関係や影響の分析を行っている。

とりわけ本書では、日独関係、中独関係、日中関係、独「満」関係、日「満」関係といった二国間の関係を横断的・縦断的に媒介するものとして、武器、製鉄製鋼設備・技術、大豆・落花生、阿片といった「財」、在上海ドイツ人コミュニティを中心とする「人間」、新聞を通じての対華プレス政策などの「情報」に着目している。

近現代における「ドイツ=東アジア関係」をトランスナショナルに捉え、二国間のインターナショナルだけでなく、インターソーシャルな関係を分析するとともに、国家内部の諸構造を縦断的に分析することにより、二国間の枠を超えた「場」としての「ドイツ=東アジア」関係の歴史の再構成を試みる。

 

37.『第3インタナショナルへの道 リュトヘルスとコミンテルン創設』

九州大学出版会 山内 昭人 著 2021/12/25 税抜6,800円

著者のインタナショナル (国際社会主義) 史研究は、1919年3月コミンテルン創立大会への西欧からの数少ない出席者のひとりとして知られるオランダ社会主義者兼土木技師S. J. リュトヘルスの国際的活動への一国史的な枠組みを超えた追跡調査を手がかりに、『リュトヘルスとインタナショナル史研究』より始まった。4冊目の著作となる本書によって、ようやくコミンテルン創設という本テーマのクライマックスにまで辿り着いた。第1次世界大戦勃発によって第2インタナショナルが事実上「崩壊」したあと起こった国際反戦社会主義運動であるツィンメルヴァルト運動を主たる契機としてめざされた「インタナショナルの再建」は、果たしてロシア10月革命を背景としたコミンテルン創設によって実質的に実現したのであろうか? その帰趨を見極め、なぜ、どのようにしてそうならなかったか、を旧ソ連の文書館史料公開によって新たに発見した第1次史料等を駆使し、実証的に解明する。

かくして、ツィンメルヴァルト運動からコミンテルン創設直後までの国際社会主義運動の一大再編過程である過渡期のインタナショナル史研究を縦糸にし、「世界を股にかけて旅する人」に因んだ偽名を一時使ったリュトヘルスにスポットライトをあてた「下から」のインタナショナルな「関係史」のケイス・スタディを横糸にして織りこまれた研究となっている。半世紀にわたるインタナショナル史研究が、本書をもって戦争と平和、そして革命の時代におけるインタナショナルの史的研究4部作として完結する。

 

38.『毛沢東の強国化戦略 1949-1976』

慶応大学出版会 山口 信治 著 2021/10/30 税抜5,400円

朝鮮戦争、台湾海峡危機、和平演変の脅威、中ソ関係の悪化などの国際情勢の変動が、いかに毛沢東の脅威認識に影響を与え、強国化に向かわせたかを、一次資料から丹念に検証する。政治・外交・軍事・経済にまたがる意欲作。

 

39.『秘密の戦争 共産主義と東欧の20世紀』

慶応大学出版会 ティモシー スナイダー 著 2021/11/20 税抜4,500円

ソ連なき東欧を夢見て
第一次世界大戦によってヨーロッパの旧秩序が崩壊し、
スターリンとヒトラーが台頭する戦間期の東欧。
二強国の思惑に蹂躙されたポーランドで共産主義と民族主義に抗い、
秘かな戦いをくり広げた一人の男の数奇な生涯を通して
20世紀東欧史の最深部を描き出すティモシー・スナイダーの出世作。

 

40.『ナチ・ドイツの終焉 1944-45』

白水社 イアン・カーショー 著 2021/11/25 税込6,820円

敗戦必至の第三帝国はなぜ降伏せず、全面的に破壊されるまで戦い続けたのか? ヒトラーのカリスマ的支配の構造と人々の心性を究明。

 

41.『SS将校のアームチェア』

みすず書房 ダニエル・リー 著 2021/11/17 税込4,400円

古いアームチェアを修理に出したところ、中から書類の束が見つかった。鉤十字の印があり、一見してナチの文書とわかるものだった。誰が、何のために隠したのか。謎を託された著者は、その行方を追う。
書類の持主は、ローベルト・グリージンガー。SS(親衛隊)将校だった。プラハの椅子職人、シュトゥットガルトに住む甥、二人の娘、遺された日記、各国の公文書館を探るうちに、その人生が徐々に明らかになっていく。
娘たちは父親がSS将校であったことを知らなかった。グリージンガーはSSに所属しつつ、法務官として仕事をしていた。彼のように一見普通の市民として生活していたSSは多くいたが、戦後の裁判の対象ではなかったため、その実態は定かではない。
第三帝国の一部として淡々と職務を果たした「普通のナチ」と、その家族。歴史から忘れられたナチの足跡が浮かび上がる。

 

42.『エッセンシャル仏教 教理・歴史・多様化』

みすず書房 デール・S・ライト 著 2021/10/18 税抜4,180円

「仏教を立体として読者の心に伝達することのできる、知りうる限りで最良の概説書」(「監修者あとがき」より)。

40年にわたり仏教を探究するアメリカの碩学がおくる世界標準の入門書。ブッダ(釈迦)にはじまり2500年におよぶ歴史、上座説と大乗、密教、禅などさまざまな教えと思想の展開、親鸞や道元、ダライ・ラマ、ティク・ナット・ハンらの事績、欧米から各国に広がるグローバルな世俗仏教、注目が高まるマインドフルネス瞑想まで――現代人が知っておくべき仏教の核心を、一問一答形式で的確かつ簡潔に説く。仏教を基礎から知りたい初学者から学びを深めたい本格派まで、入門・再入門のどちらにもふさわしい1冊。

京都の諸寺から高野山まで各地の寺院を訪ね、日本の仏教学者とも交流を重ねてきた著者が日本との縁を語る序文を収録する。

 

43.『メタフィジカル・クラブ 米国100年の精神史』

みすず書房 ルイ・メナンド 著 2021/11/1 税込7,150円

南北戦争は連邦存続と奴隷解放のために戦われたと理解されがちだが、実際はイデオロギー対立の殺し合いによる解消という側面が強い。62万の戦死者を出して維持された連邦、民主主義とは、一体何だったのか。
この反省に立脚し、現代に至る米国精神の礎石を築いた若き哲学者たちがいた。後の合州国最高裁判事オリヴァー・ウェンデル・ホウムズ、心理学者ウィリアム・ジェイムズ、論理学者チャールズ・サンダース・パース、教育学者ジョン・デューイである。ときに反目した彼らの思想は次の一点で一致していた。すなわち「思想は決してイデオロギーに転化してはならない」。
彼らは米国の近代化に大きな役割を果たしただけでなく、教育、民主主義、自由、正義、寛容についての米国人の考えを変えた。その思想「プラグマティズム」胚胎の場が「メタフィジカル・クラブ」——形而上学批判の意味を込めて命名され、彼らが集った議論集会であった。本書は、歴史上に一瞬あらわれたこの幻のような集会を象徴的中心として、米国100年の精神史を見事に描き切っている。米国研究の要として名高い、現代の古典である。

 

44.『20世紀知的急進主義の軌跡 初期フランクフルト学派の社会科学者たち』

みすず書房 八木 紀一郎 著 2021/10/18 税込4,950円

1923年1月、「社会研究所」はマルクス主義に立つ学術拠点をめざし、フランクフルト大学に附置されて誕生した。やがて「フランクフルト学派」の母体として20世紀の思想史に大きな役割を果たした。同年5月に開催された「マルクス主義研究週間」には「一人の日本人」も加わっていた。
本書はこの研究所の創設期に集った社会科学者たちの行路を描く。大富豪の子息であり、「複数主義的なマルクス主義」を構想した創設者ワイル。研究所の運営を担い、盟友である第二代所長ホルクハイマーを支えた「国家資本主義」の理論家ポロック。資本蓄積の崩壊の法則を論じ、当時のマルクス経済学のキーパーソンだったグロスマン。中国革命をいちはやく紹介し東洋社会の解明を進めるなかで、ソ連体制の根本的な反対者となったウィットフォーゲル。研究所創設時の助手で、コミンテルンにリクルートされ、中国・日本での諜報活動に身を投じながらも学究としての精神を保ち続けたゾルゲ。
そして「社会研究」ということばを鍵にして、日本と西欧で進んでいた社会科学の同時代性が語られる。
「思想」が現れては消える「モード」のようなものでなく、世界大の政治の渦の中での生き方の選択と結びついていた時代を描く。本書はひとつの世代へのレクイエムとなった。

 

45.『映像が動き出すとき 写真・映画・アニメーションのアルケオロジー』

みすず書房 トム・ガニング 著 2021/11/16 税込7,920円

イメージが動くとは。
「アトラクションの映画」の概念で、映画という枠組みを超え映像文化研究に大きなインパクトをもたらした初期映画研究・メディア史研究の泰斗ガニング。その思考はさらに深化して、鮮やかな〈動き〉の視覚文化論を展開し、写真・映画・アニメーションにわたる映像文化圏全体を見晴らす。
映画や写真は長い間、インデックス性を本質とするものとして捉えられてきた。ベンヤミン、バザン、バルト。対して、映像技術のデジタル化した今日、「映画はアニメーションの一ジャンル」とマノヴィッチは大胆な命題を提起した。ガニングはこの衝撃を正面から受けとめつつ反論する。問題は、写真的なリアリティか加工可能なグラフィックかの二項対立ではないのだ。
驚くべき該博な知識に基づき、膨大な論考を精力的に執筆し続けているが、ガニングにはこれまでまとまった論文集がなかった。このたび日本語版独自編集で、英語圏にもまだない初の一書が生まれる。2000年代以降発表されたおよそ100にものぼる中から精選。図版多数。

 

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まとめ

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