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おもしろい世界史のネタをまとめています。

【2021年9月版】世界史関連の新刊50冊

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今月は歴史専門書の数が多いです

 2021年7月~9月の世界史関連新刊紹介です。

本記事はざっと流し読みをして気になる本をメモしていただくか、ブックマークして書店を訪れた際に見返すかして使っていただけるといいかと思います。

今回は50冊あります。目下の国際関係を反映してか、中国関係の書籍が非常に多いのが特徴です。それではどうぞ。 

注目の新書・選書

新書・選書からは9冊。個人的な注目は『高地文明―「もう一つの四大文明」の発見』『書物と貨幣の五千年史』です。

 

1.『日韓関係史』

  木宮 正史 著 岩波新書 2021/7/20 税込924円

 日韓関係は、なぜここまで悪化してしまったのか。交流が増えるにつれて、日韓の相互理解は進むはずではなかったのか。――その謎を解明するため、本書は一九四五年から現在に至る歴史を、北朝鮮・中国など国際環境の変容も視野にいれながら、徹底分析する。一つの生命体のように変化を遂げる日韓関係の履歴と未来とは。

 

2.『ネルソン・マンデラ』

  堀内 隆行 著 岩波新書 2021/7/20 税込880円

 二七年間の牢獄生活の後、アパルトヘイト撤廃に尽力、一九九四年に南アフリカ共和国黒人初の大統領となったマンデラ。不屈の生涯ゆえ「聖人」視されることも多いが、実際は冷静なプラグマティストだった。偏狭な国家主義と分断が再び広がる時代に、想像を超える「和解」を成し遂げた類まれな政治家の人生を改めて振り返る。

  

3.『東南アジア史10講』

  古田 元夫 著 岩波新書 2021/6/18 税込990円

 ASEANによる統合の深化、民主化の進展と葛藤。日本とも関わりの深いこの地域は、歴史的にさまざまな試練を経ながらも、近年ますます存在感を高めている。最新の研究成果にもとづき、世界史との連関もふまえつつ、多様な民族・文化が往来し東西世界の要となってきた東南アジアの通史を学ぶ。「歴史10講」シリーズ第五弾。

  

4.『ユーゴスラヴィア現代史 新版』

  柴 宜弘 著 岩波新書 2021/8/27 税込990円

 民族、国家、宗教、言語……。独自の社会主義連邦の道を歩んできたユーゴの解体から三〇年。暴力と憎悪の連鎖が引き起こしたあの紛争は、いまだ過ぎ去らぬ重い歴史として、私たちの前に立ちはだかっている。内戦終結から現在にいたる各国の動向や、新たな秩序構築のための模索などについて大幅に加筆。ロングセラーの全面改訂版。

 

5.『古代文明と星空の謎』

 渡部 潤一 著 ちくまプリマ―新書 2021/8/5 税込924円

 ストーンヘンジは夏至の日の出を示し、ピラミッドは正確に真北を向いている。古代人はどうやって計測したのか。当時の星空をシミュレーションして読み解く!

 

6.『高地文明―「もう一つの四大文明」の発見』

山本紀夫 著 中公新書 2021/6/22 税込1,115円 

 「四大文明」は、ナイルや黄河などの大河のほとりで生まれたとされる。しかし、これら以外にも、独自の文明が開花し、現代の私たちに大きな影響を与えた地がある。それが熱帯高地だ。本書はアンデス、メキシコ、チベット、エチオピアの熱帯高地に生まれ、発展してきた四つの古代文明を紹介。驚くほど精巧な建築物から、環境に根ざした独特な栽培技術や家畜飼育の方法、特色ある宗教まで、知られざる文明の全貌を解き明かす。

 

7.『戦争はいかに終結したか』

千々和 泰明 著 中公新書 2021/7/22 税込1,012円 

 第二次世界大戦の悲劇を繰り返さない――戦争の抑止を追求してきた戦後日本。しかし先の戦争での日本の過ちは、終戦交渉をめぐる失敗にもあった。戦争はいかに収拾すべきなのか。二度の世界大戦から朝鮮戦争とベトナム戦争、さらに湾岸戦争やイラク戦争まで、二〇世紀以降の主要な戦争の終結過程を精緻に分析。「根本的解決と妥協的和平のジレンマ」を切り口に、真に平和を回復するための「出口戦略」を考える。

 

8.『書物と貨幣の五千年史』

永田 希 著 集英社新書 2021/9/27 税込990円

 情報化社会の到来にともなって、ひとびとの行動や情報は電子機器上で完結し「見えない」ものになっている。
その最たる例が電子書籍(書物)と電子決済(貨幣)だ。
「読む」「支払う」といった手間をデバイス上で不可視化することで、人間の行動をブラックボックス化しているのである。
ブラックボックスが溢れる時代を、我々はどう生きるべきか。
Pay Payやマンガアプリ の登場から古代メソポタミア文明までを遡りながら、現代思想や文学作品に書かれた様々な「ブラックボックス」を読み解き、不可視化されたものに向うすべを説く。

 

9.『中国共産党帝国とウイグル』

 橋爪 大三郎, 中田 考 著 集英社 集英社新書 税込968円

 「中国夢」「一帯一路」のスローガンの下、習近平体制以降ウルトラ・ナショナリズムに傾斜する中華人民共和国。
急速な経済発展の陰では、ウイグル人をはじめとした異民族に対する弾圧が強化されていた。
中国共産党はなぜ異民族弾圧、自国民監視を徹底し、さらに香港・台湾支配を目指すのか?
そもそも中国共産党は法的根拠のない、憲法よりも上の任意団体にすぎない。
その共産党がなぜこれほど力を持つのか?
本書はウイグル問題を切り口に、異形の帝国の本質とリスクを社会学者とイスラーム学者が縦横に解析する。
日本はこの「帝国」にどう対するべきか?

 

 

企画本

 

多様な切り口やグラフィックなどで歴史を切り取る企画本。今回気になったのは『20世紀のグローバル・ヒストリー』『世界の奇習と奇祭:150の不思議な伝統行事から命がけの通過儀礼まで』です。

また、『一冊でわかるトルコ史』はコラムと人物紹介の執筆を私が担当しています。

 

10.『20世紀のグローバル・ヒストリー』

  北村 厚 著 ミネルヴァ書房 2021/9/2 税込3,080円

 高校歴史教科書から読み解く「歴史総合」に対応する新しい現代史
グローバルに連鎖する20世紀の世界と日本
戦争とジェノサイド、そして核の恐怖……。

高校歴史教科書の知識をベースに、西洋史・東洋史と日本史を結びつけ、複雑に入り組む20世紀の歴史を同時的に描く。人種主義やジェノサイドなど、人類共通の問題群を主軸に据え、各国の視点からではなく、世界史上の出来事のトランスナショナルな関係性を重視するグローバル・ヒストリーの視点から、世界現代史の再構築を試みる。大人が学び直すための世界現代史入門として最適。

 

11.『絶対に解けない受験世界史3:悪問・難問・奇問・出題ミス集』

 稲田 義智 著 パブリブ 2021/8/10 税込2,570円

数々の出題ミスを暴露してきた本シリーズ
早慶悪問激減・上智世界史ほぼ撤退・センター試験終了
シリーズ継続すら危ぶまれたが杞憂に!
次から次へと出てきて過去最多ページ数に!

×「ビ」が「ピ」になる等、頻発するOCRミス (該当複数)
×大学が発表した公式解答例が文字数オーバー(島根県立大 2020年)
×設問と無関係な事実誤認に基づく反原発運動を押し売り(専修大 2020年)
×ブレグジット直後にイギリスを「EU現加盟国」(早稲田大 2020年)
×正解が前の試験時間の英語の設問に書いてあった(慶應大 2019年)
☆ヒット曲『デスパシート』出題するも歌詞覚えていれば解答可能(慶應大 2019年)
☆解答選択肢で「アンコール=ワットの修復・保存に上智大学は協力している」とPR(上智大 2019年)

……等などヘンな問題を徹底的に調査・検証・解説・糾弾!

「世界史用語の変化」「大学入学共通テストの導入騒動の記録」等のコラムも

  

12. 『ウイスキー・ウーマン』

フレッド・ミニック 著, 浜本 隆三, 藤原 崇 訳 明石書店 2021/8/20 税込2,970円

 紀元前のシュメール時代から、女性たちはビールを発明し、エジプト文明では蒸留器を考案、中世では薬草を扱い「命の水」を蒸留した。アメリカでは独立戦争で傷ついた兵士を女性たちが蒸留したウイスキーで癒した。南北戦争中、戦地に駆られた男性に代わって、バーボンの味を守ったのは女性たちだった。
男性中心の酒の歴史を相対化するだけにとどまらず、酒の歴史に登場する女性たちの実像に迫り、ヴァイタリティ溢れる不屈のその姿を浮き彫りにする。

 

13.『インドを旅する55章』

 宮本 久義, 小西 公大 編著 明石書店 2021/6/21 税込2,200円

 悠久の歴史が流れる広大で多様なインド。本書は、長年インドに深く関わってきた方々が、これまではほとんど紹介されてこなかった「ディープ・インド」ともいうべき、多様で深遠なインド世界に読者を誘い、新たなインドを見つける一冊である。

 

14.『一冊でわかるトルコ史』

関 眞興 著 河出書房新社 2021/8/27 税込1,870円

 トルコとはどういう国か。その歴史を図やイラストを使いながらわかりやすく、ていねいに。コラム「そのころ、日本では?」も便利。

 

15. 『近代アジアの啓蒙思想家』

岩崎 育夫 著 講談社選書メチエ 2021/7/15 税込1,850

 香港に国家安全維持法を導入した習近平の中国、ミャンマーの軍事クーデタ、フィリピンで強権をふるうドゥテルテ大統領など、現在、アジアの国々で、自由と人権の尊重、民主主義といった近代の潮流とは逆方向の動きが目立っている。アジアではこの100年余り、西欧起源のこうした思想と原理で自国を作り替える試みが続いてきたが、いまだ完全に自らのものとするに至っていないのである。しかもこうした「逆方向の動き」は、アジアのみならず、欧米社会でも起こっている。
そもそも、ヨーロッパに生まれた「啓蒙思想」は、アジア各地の知識人にどんな衝撃を与えたのか、そして、彼らはどんな社会をめざしたのか。アジア各国の啓蒙思想家の生涯から、近代アジアの苦闘の歴史と、現代にいたる矛盾をとらえ直す。
序章では、その最初期のモデルとしての福沢諭吉を取り上げる。以下、中国で革命を志した陳独秀と胡適、インドネシアの女性運動の先駆者カルティニ、インドのネルーとガンディー、朝鮮の儒教知識人・朴泳孝、日本に近代化を学んだベトナムのファン・ボイ・チャウ・・・。いずれも、アジアの進むべき道をしめした「道先案内人」であり、日本の啓蒙思想家・中江兆民が言うところの「種を播いた人」であった。そして、「啓蒙思想」は過去のものではなく、それを実現するための運動は今も受け継がれて「現在進行形」なのである。

 

16.『中東・イスラーム世界への30の扉』

 西尾 哲夫 編著, 東長 靖 編著 ミネルヴァ書房 2021/7/20 税込2,970円

 「中東・イスラーム世界」と聞くと何を思い浮かべ、どんなイメージをもつだろうか? エキゾチックな魅力、特徴的なベール、テロや戦争……。はたして中東・イスラームは日本から遠い“別世界”なのだろうか? 本書は、「歴史」「宗教・社会」「経済・産業」「政治」「文化・精神」の5つに分けた30のトピックから、現代中東・イスラーム世界をひもといていく。彩り豊かな世界に触れることで、日本と“世界”の見え方が変わる一冊。

 

17.『よくわかるアメリカの歴史』

 梅崎 透 , 坂下 史子, 宮田 伊知郎 編著 ミネルヴァ書房 2021/6/30 税込3,080円

 アメリカ史を一冊で分かりやすくまるごと学ぶ。大航海時代の「新世界」であったころから、オバマ、トランプ政権に至るスパンでアメリカの歴史をとらえる。各項目に地図、図版、写真を配置し、ビジュアルでも理解しやすく考慮した、アメリカの歴史を学ぶ学生に最適のテキスト。

 

18.『酔っぱらいが変えた世界史』 

 ブノワ・フランクバルム 著, 神田 順子, 村上 尚子, 田辺 希久子 訳 2021/7/31 原書房 税込2,200円

 酒にまつわる愉快で意外なエピソード満載の本。ユーモアたっぷりの洒脱な文体に助けられて、すらすら読みすすめることができる。 酒と歴史が好きな人にとって興味がつきないエピソードの連続であるが、下戸にとっても楽しい蘊蓄本となっている。

 

19.『[ヴィジュアル版]地図でたどる世界交易史』

 フィリップ・パーカー 著, 花田 知恵 訳 原書房 2021/7/15 税込4,180円

 文明を生み世界史を変えた立役者といえる「交易」を、時代を表す地図とともに、新石器時代から8000年にわたる長いスパンでたどる。
黒曜石の「交換」から黄金交易、茶、スパイス、そして「情報」にいたるまで、フルカラーでわかりやすく紹介。

 

20.『[ヴィジュアル版]中世の騎士』

フィリス・ジェスティス 著, 大間知 知子 訳 原書房 2021/8/7 税込4,950円

 騎士は、ほぼ500年間、ヨーロッパの戦争における究極の戦士だった。11世紀半ばから1500年代初頭にかけて、これらの高度に訓練されたエリート戦闘員たちは、すぐれた突撃の力でヨーロッパの戦場を支配した。
しかし、騎士は単なる戦闘員ではなかった。騎士道の行動規範によって、彼らは神に仕え、礼節を重んじ、音楽をたしなみ、誌を書き、法の仲裁者となり、主君を支援し、宮廷の婦人たちに奉仕し、人々を保護することが期待されていた。

本書はテーマ別に、中世の騎士の戦闘技術、武器と鎧甲冑、さまざまな騎士団、洗浄における騎士による支配の衰退など、騎士のあらゆる側面をヴィジュアルに解説する。

 

21.『[ヴィジュアル版]貨幣の歴史』

デイヴィッド・オレル 著, 角 敦子 訳 原書房 2021/6/22 税込3,300円

 数千年前に遡る貨幣の起源、銀行券や為替手形などヴァーチャルなお金、マネーの力学と金融バブル、仮想通貨とキャッシュレス社会、行動経済学から貨幣の心理学まで、魅力的な小説のようにも読める人類とマネーが織りなす物語。

 

22.『[図説]100のトピックでたどる月と人の歴史と物語』

 デイヴィッド・ウォームフラッシュ 著, 露久保 由美子 訳 原書房 2021/8/13 税込2,750円

 つねに神話や科学の仮説の中心となってきた「月と人類の関わり」を、歴史に刻まれた数々の「時」にスポットを当てて、NASAの宇宙生物学者がわかりやすく図版とともに案内。スコット・パラジンスキ(スペースシャトル宇宙飛行士)も絶賛!

 

23.『世界の奇習と奇祭:150の不思議な伝統行事から命がけの通過儀礼まで』

  E・リード・ロス 著, 小金 輝彦 訳 原書房 2021/08/13 税込2,200円

 赤ん坊に唾を吐きかける、蟻に噛まれる儀式、殺人凧揚げ……。世界各地に残る、現在まで連綿と受け継がれてきた嘘のような伝統行事、理解不能の風習、過激な祭り、そして愉快な馬鹿騒ぎの数々をユーモアある筆致で一挙紹介。

 

24.『サボテンの文化誌』

  ダン・トーレ 著, 大山 晶 訳 原書房 2021/8/13 税込2,640円

 痛い棘と美しい花、恐ろしい形と極上の甘み…複雑で不思議なサボテンは大昔から人間を魅了してきた。その生態、食材としての価値、栽培法、コレクター達の秘話ほか、サボテンと人間の歴史を多面的に描く。カラー図版約120点。

 

25.『ひまわりの文化誌』

  スティーヴン・A・ハリス 著, 伊藤 はるみ 訳 原書房  2021/07/16 税込2,640円

 ひまわりとその仲間(キク科植物)はどのように世界中に広まり、観賞用、食用、薬用の植物として愛され、またゴッホをはじめ多くの芸術家を魅了してきたのか。人間とひまわりの六千年以上の歴史を探訪する。カラー図版約100点。

 

26.『柳の文化誌』

 アリソン・サイム 著, 駒木 令 訳 原書房  2021/06/22 税込2,640円

 人類の生活のあらゆる場面に寄り添ってきた柳。古代の儀式、唐詩やシェイクスピアなどの文学、浮世絵やラファエル前派の絵画、柳細工、柳模様の皿の秘密など、実用的でありながら神秘的である柳に迫る。カラー図版約100点。

 

 

お得な専門書

2000円~4000円ほどで歴史専門書を集めました。

『遊牧の人類史:構造とその起源』『チェコスロヴァキア軍団』『コード・ガールズ 日独の暗号を解き明かした女性たち』は多分買います。

 

27. 『未完の革命 韓国民主主義の100年』

金 惠京 著 明石書店 2021/7/20 税込2,420円

 植民地からの独立、朝鮮戦争による荒廃、急激な経済発展、民主的な社会の建設……。エネルギーに満ちた韓国現代史を、朴正煕・金大中・朴槿恵・文在寅という1960年代から現在までの保守と革新を代表する4人の大統領を縦軸に、韓国民衆意識と動向を横軸に描く。

 

28. 『遊牧の人類史:構造とその起源』

松原 正毅 著 岩波書店 2021/8/5 税込3,300円

 人類は定住する以前から移動しながら生きてきた。その長い営みの中から遊牧という文化は生まれてきた。にもかかわらず、人類の歴史において遊牧文化はどこか傍流として位置付けられてきた。遊牧民の生活様式そのものを凝視する著者の研究は、遊牧の起源と、その生態の隠れた体系性を明らかにし、人類史的な意味を考察する。

 

29.『チェコスロヴァキア軍団』

  林 忠行 著 岩波書店 2021/7/26 税込3,520円

 第一次世界大戦下、潰えゆくハプスブルク帝国の一員だったチェコ系、スロヴァキア系の移民と捕虜たちは、新国家「チェコスロヴァキア」の樹立を目指して義勇軍を結成した。大戦とロシア内戦を戦った彼らは、列強の政治的野心に翻弄されながら「未来の祖国」を希求した。新しい国民国家の創出と中東欧の再編をめぐる、激動の世界史。

 

30.『古代ローマ人の都市管理』

 堀 賀貴 編 九州大学出版会 2021/7/15 税込1,980円

古代ローマ人にとっては、都市そのものが国家であり、都市は彼らにとって投資の対象でもあった。彼らは都市を建設しただけでなく、資産として管理したのである。

後1世紀のローマは人口100万人を擁する帝国の首都であり、人類史上かつてないほどの過密都市であった。一方、現在のナポリ湾に面するポンペイは、人口1万人余りの豊かで美しい地方都市であったが、後79年にウェスウィウス火山の噴火によって消滅する。このとき、首都ローマで巨大な円形闘技場、すなわちコロッセウムの建設が進む一方で、この地方都市は後62年の大地震による大きな被害からの復興の途上でもあった。

本書は、首都ローマで勃発する金融危機、政変、大火、あるいは地方で発生する公共投資の失敗など、中央の為政者たちが直面した都市管理上の危機に対する対応を、最新の研究成果と豊かな文献史料を参照しながら描くものである。また、上下水道や交通など、ポンペイが抱えていた都市インフラ上の問題について、都市消滅が迫る直前までポンペイの人々が如何に対処したのかを、精密な実測結果と多くの図版によって読み解く。

 

31.『中国共産党の歴史』

高橋 伸夫 著,  慶応大学出版会 2021/7/30 税込2,970円

中国共産党の歴史

中国共産党の歴史

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日中戦争、大躍進、文化大革命、天安門事件など、幾多の困難にもかかわらず成長し続け、国際的影響力を強める中国とその政権を握る中国共産党。
壮大な理想とリアリズムの間で揺れ動いた毛沢東、鄧小平、習近平らの思想と行動、そして彼らが引き起こした歴史的事件を通じてその実像を解き明かす。

 

32.『中国共産党、その百年』

石川 禎浩 著 筑摩書房 2021/6/15  税込1,980円

 創立百周年を迎える中国共産党。いかにして超巨大政権党となったのか、この組織の中核的属性はどのように形作られたのか、多角的に浮き彫りにした最良の通史!

 

33. 『ハプスブルク帝国1809−1918』 

 A.J.P.テイラー 著 , 倉田 稔 訳 ちくま学芸文庫 2021/8/10 税込1,860

 ヨーロッパ最大の覇権を握るハプスブルク帝国。その19世紀初から解体までを追う。多民族を抱えつつ外交問題に苦悩した巨大国家の足跡。

 

 

34.『歴史をどう語るか 近現代フランス、文学と歴史学の対話』

小倉 孝誠著  法政大学局 2021/8/11 税込3,840円

 大革命以降の二世紀間、フランスの文学と歴史学は、旧い世界の神話を解体し、新しい社会の現実を表象・再現・記録しようとしてきた。法や文明を問うユゴーやフロベールらの実験小説、ミシュレからコルバンにいたる社会史、そして近年の「エグゾフィクション」の流行に至るまで、リアリズムと虚構の方法を発明し、互いに深く影響しあった両者の関係を、19世紀文学研究の第一人者が描き出す。

 

 

35.『始皇帝の地下宮殿 隠された埋蔵品の真相』

鶴間和幸 著 山川出版社 2021/10/2 税込1,760円 

 中国史上最初の皇帝となった秦の始皇帝。彼が眠る始皇帝陵の地下宮殿は、2200年以上もの間、立ち入られることなく、その様相を知る手がかりは永らく司馬遷の『史記』など歴史書のみだった。
近年、陵墓の周辺や中国各地で発見が続いた様々な考古学的成果と照らし合わせることで、地下宮殿の構造と埋蔵品の可能性がより具体的に検討できるようになってきた。
司馬遷の記述の真偽やそこに語られていない地下宮殿の真相について、始皇帝研究の第一人者が最新の研究成果を紹介する。

 

36.『食で読むヨーロッパ史2500年』

 遠藤 雅司 著 山川出版社 2021/8/31 税込1,980円

 歴史上の文献から当時の料理を再現する活動を続けてきた著者が、食の視点から2500年にわたるヨーロッパの歴史を概観。
歴史上の様々な出来事のかげで、食卓にはどんな影響が及んでいたのか。王侯貴族、哲学者、文筆家、科学者、音楽家、画家…さまざまな立場の人物とその食卓のエピソードを通して、
歴史を身近に感じられる一冊。巻末には、歴史上の料理を再現できるレシピを掲載。料理を作って楽しめる体験型の歴史教養としてもおすすめ!

 

37.『スコットランド通史 政治・社会・文化』

 木村 正俊 著 原書房 2021/6/4 税込3,520円

 日本におけるスコットランド史研究の泰斗が、最新の知見をもとに新たに提示する通史。有史以来さまざまな圧力にさらされながらも独自の社会・文化を生みだし、世界に影響を与えてきた北国の流れを総覧した決定版。図版、コラム多数。

 

38.『資本主義だけ残った 世界を制するシステムの未来』

ブランコ・ミラノヴィッチ著, 西川 美樹 訳 みすず書房 2021/6/16 税込3,960円

 二つの資本主義が世界を覆っている。米国に代表されるリベラル能力資本主義と、中国に代表される政治的資本主義だ。この両者がはらむ、不平等の拡大と腐敗の進行という病弊の根本原因を喝破し、欧米の社会科学界を震撼させたベストセラー。「われわれの未来についての、重要な問題をすべて提示している」ゴードン・ブラウン(元英首相)「経済統計の第一人者[による]豊かな議論だ」ジェームズ・K・ガルブレイス(テキサス大学オースティン校教授)「北京に住むのか、ニューヨークに住むのか、決断のときは近づいている」エドワード・ルース(『フィナンシャル・タイムズ』紙)「この二つの資本主義が世界情勢を支配している。両者の共進化が今後数十年の歴史を形成することになるだろう」『エコノミスト』誌「データの収集、評価において、類まれな最高の経済学者だ」ロバート・カトナー(『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』誌)「現存する(おそらく)唯一の社会経済システムへの理解を刷新しようとする、あらゆる読者、研究者にお薦めする」ロバート・ラコノ(LSEレビュー・オブ・ブックス)

 

39.『コード・ガールズ 日独の暗号を解き明かした女性たち』

ライザ・マンディ 著, 小野木明恵 訳 みすず書房 2021/7/16 税込3,960円

 日本軍の真珠湾攻撃が迫る1941年11月、アメリカ海軍から東部の名門女子大に宛てて「秘密の手紙」が送られはじめた。そこには、敵国の暗号解読に当たれる優秀な学生がほしいと記されていた――。
第二次世界大戦中、米陸・海軍に雇われ、日本やドイツなど枢軸国の暗号解読を担ったアメリカ人女性たちがいた。外国語や数学をはじめとする高等教育を受けた新卒者や元教師らが全米各地から首都ワシントンに集い、大戦末期には男性をしのぐ1万人以上の女性が解読作業に従事した。
その働きにより、日本の外交暗号(通称パープル)や陸軍の船舶輸送暗号が破られ、枢軸国側に壊滅的な打撃を与えた。ミッドウェー海戦での米軍の勝利、山本五十六連合艦隊司令長官の殺害作戦の陰にも彼女らがいた。一方、大西洋戦域においてはドイツのエニグマ暗号を解明してUボートの脅威を排除し、ノルマンディー上陸時の欺瞞作戦でも活躍した。こうした功績がきっかけとなり、それまで女性には閉ざされていた政府高官や大学教授など高いキャリアへの道が切り拓かれることになる。
戦後も守秘義務を守り、口を閉ざしてきた当事者らへのインタビュー、当時の手紙、機密解除された史料などをもとに、情報戦の一翼を担った女性たちに光をあて、ベストセラーとなったノンフィクション。口絵写真33点を収録。解説・小谷賢。

  

 

高額専門書

魅力的だけど個人の読書にはちょと迷う5000円以上の書籍です。 

『アイヌ通史:「蝦夷」から先住民族へ』『ベトナム近代美術史 フランス支配下の半世紀』これは凄く読みたい。。

 

40.『フランク史Ⅰ クローヴィス以前』 

佐藤彰一 著 名古屋大学出版会 税込7,920円

 ヨーロッパのもう一つの起源 ——。欧州はギリシア・ローマからまっすぐに生まれたのではない。世界システムの大変動後、遠隔地交易、ローマ帝国との対抗、民族移動などを経て誕生した、500年にわたるフランク国家。「自由なる民」の淵源から王朝断絶までをたどる初めての通史。本巻では、初代王にいたる波乱の歴史を描く。

 

41.『ドレフュス事件 真実と伝説』

アラン・パジェス 著, 吉田 典子, 高橋 愛 訳 法政大学出版局 2021/6/11 税込4,080円 

 文書改竄、証拠捏造で、国家が真実を隠蔽し、冤罪を作り出す。「世論を真っ向から分断するような論争があるとき、人々が考えるのはドレフュス事件である」。「国家の重大事件とは、ある過ちが犯されて起こるのではない。関係する権力者がその過ちの存在を否定し、あらゆる手段を使って、その存在をもみ消そうとするときに起こる」と著者は言う。ジャーナリズム、知識人、作家、軍人、政治家が果たした役割から、人種差別の問題、文学や映画まで多角的に検証し、現在もなお参照すべき先例として時事問題に応じて絶えず立ち現れる《事件》の全貌を明らかにする。

 

42.『アイヌ通史:「蝦夷」から先住民族へ』

  リチャード・シドル 著,マーク・ウィンチェスター訳 岩波書店 2021/7/28 税込5,830円

 辺境の民から搾取の対象へ、そして人種的に劣った「滅びゆく民」へ、また単一民族神話における不可視の存在へ……。アイヌを従属化していった和人と、そのプロセスに介入・抵抗し、自らを先住民族として再定義してゆくアイヌの複雑に交差する歴史。コロニアリズム/レイシズム研究を導入した画期的アイヌ史、待望の翻訳。

 

43.『ドゥルーズ派の誕生:聖典『英知の書簡集』の思想史的研究』

 菊地 達也 著, 刀水書房 2021/7/15 税込5,500

 イスラム教内の極端派的伝統とイスマーイール派を比較対象として, 11世紀前半に活躍した創始者ハムザ・イブン・アリーの思想=ドゥルーズ派思想の源流を解明。二元論的世界観・終末論・輪廻思想・信仰偽装論に着目。

  

44. 『緑の工業化-台湾経済の歴史的起源』

 堀内義隆 著 名古屋大学出版会 2021/8/18 税込6,930円

 植民地下の台湾は、たんに帝国の食糧供給基地にとどまったのではなかった。見過ごされてきた工業化の契機を、豊かな農産品の加工・商品化と、それに伴う機械化・電動化に見出し、小零細企業が叢生する農村からの発展経路を実証、戦後台湾経済の原型をとらえた注目の成果。

 

45.『毛沢東時代の経済-改革開放の源流をさぐる』

 中兼和津次 編 名古屋大学出版会 2021/7/9 税込5,940円

 現代中国のブラックボックスを開く ——。破壊的だったとされる毛沢東時代。ではなぜその後、急速な発展をなしえたのか。人民公社、重化学工業優先、三線建設など、当時の制度・政策の効果をはかり、現在への「遺産」を問う。歴史的視野のもと、冷静な経済学的分析をくわえた画期的著作。

 

46.『政治的暴力の共和国-ワイマル時代における街頭・酒場とナチズム』

原田昌博 著 名古屋大学出版会  2021/9/24 税込6,930円

 苛烈な暴力を許容する社会はいかにして生まれたのか ——。議会制民主主義を謳うワイマル共和国。だが、街頭は世論を左右する新たな公共圏として、ナチスや共産党のプロパガンダの場となり、酒場を拠点とした「暴力のサブカルチャー」が形成されていく。実像を初めて描きだした力作。

 

47.『ロマノフ朝史 1613-1918(上)』

 サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ 著, 染谷 徹 訳 白水社 2021/7/30 税込7,480円

 本書は、上巻がピョートル大帝からエカチェリーナ大帝、ナポレオン戦争まで、下巻がクリミア戦争から、日露戦争、第一次大戦、ロシア革命までの三〇〇年間、愛憎相半ばする一族、戦争と革命、陰謀と謀反、弾圧と殺害、性愛と嗜虐……王朝の絢爛たる歴史絵巻と血にまみれた「秘史」を、赤裸々に物語る通史だ。欧州の公文書館の膨大な史料、未刊行の日記類、未公開の書簡などに基づいて、ロマノフ朝の栄枯盛衰を追いながら、登場人物たちの心理の襞にまで分け入り、臨場感あふれる筆致で描き出している。著者は本書の主題を、「ロマノフ家は偉大な王朝であるだけでなく、絶対的専制支配の象徴であり、その歴史は絶対的権力につきまとう愚昧と傲慢の物語集に他ならない」と述べている。

 

48.『中世の写本ができるまで』

 クリストファー・デ・ハメル 著, 加藤 磨珠枝 監, 立石 光子 訳 白水社 2021/06/29 

 写本制作は盛期ルネサンスまで千数百年にわたって、多様な環境のもと、ヨーロッパの津々浦々で行なわれてきた。その特徴としてすべての事例にあてはまるものがないほどだ。本書はそんな中世の彩飾写本(彩色だけでなく金か銀が施されているものをこう呼ぶ)が作られる工程を、制作に携わったひとびとの視点に寄り添う形で、写本研究の第一人者が解説していく。
中世に使われていたインクやペンは、今日使われているものとは性質も製法も異なった。挿絵の中の写字生は現代のペンとは違った持ち方をし、文字もじっくり観察すれば、現代のアルファベットとは書き順が異なる。同様に、「挿絵のデザインは誰がどうやって決めたのか?」「インクで書き間違えてしまったら、どう対処したのか?」「羊皮紙ヴェラムの最高級品は本当に牛の胎児の皮製なのか?」といった、写本を鑑賞するうちに浮かんでくる疑問の数々が、オックスフォード大学ボドリアン図書館所蔵の写本を中心とする多数の図版とともに検討される。
西洋中世写本の愛好家にその魅力を伝えつつ、専門家にも貴重な写本の細部について、新たな世界を開いてくれる一冊。

 

49.『スペイン内戦と国際旅団 ユダヤ人兵士の回想』

シグムント・ステイン著, 辻 由美 訳 みすず書房 2021/7/20 税込4,400円 

ポーランドで育ち、早くから共産主義運動にコミットしたステインにとって、1936年8月のモスクワ粛清裁判は背筋の凍る衝撃だった。ソヴィエト権力の中枢にいたジノヴィエフやカーメネフがスターリンによって粛清されたのだ。
スペイン内戦が勃発したのはそんな時だ。「ファシズムと解放勢力の戦い……世界はふたつの陣営に分かれようとしている。古くて反動的な者はフランコ将軍側につき、夢と自由を担う者は、危機にあるスペイン共和国と隊列を組むだろう」。彼はスターリンに対する「疑念の叫びを戦場で叩きつぶすため」に、国際旅団の志願兵となった。
世界中から、理想を同じくする何千という若者が、聖なるオーラを漂わせて集結した。迎えたバルセロナ市民も熱狂した。若いオーウェルもヘミングウェイもいた。
しかし日を追うごとに、「国際旅団」がスターリン主義のプロパガンダにもってこいの神話にされたことが見えてくる。「私はベールをはぎとり、国際旅団をその現実の姿で描きだすつもりだ。……革命という語に託されたイメージは共産党の最悪のウソのひとつであり、類をみないほどの事実の歪曲であることをしめすためだ」。この回想記は、筆致を抑えて書かれた稀有な参戦記だ。ステインが属したユダヤ人部隊には武器も食糧も支給されず、肉弾戦を強いられた。部隊は壊滅し、彼自身は奇跡的に生還した。

 

 

50.『ベトナム近代美術史 フランス支配下の半世紀』

二村 淳子 著 原書房  2021/06/30 税込5,500円

 1887年から1945年までのフランス領インドシナ政府統治下で出現したベトナム美術の発展の歴史を解明する。本国と植民地、前近代と近代、東洋と西洋と、文化が幾重にも交錯するその成立過程を、比較文化研究、ポストコロニアル批評のアプローチで描き出す。

 

 

まとめ

 お疲れさまでした。ざっと見るだけでも疲れたと思います。

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【2020年12月版】世界史関連の新刊45冊

【2020年9月版】世界史関連の新刊50冊

【2020年6月版】世界史関連の新刊30冊

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