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おもしろい世界史のネタをまとめています。

【2021年6月版】世界史関連の新刊60冊

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 今月は歴史専門書の数がが多いです

 2021年6月の世界史関連新刊紹介です。

今回は2021年3月~6月までの新刊をご紹介します。今回の特徴は非常に専門書の数が多いことです。また、紹介する本の数も60冊にもなっています。

 今回からはカテゴリに分けて、それごとにコメントを入れるようにします。

買った本

今回紹介する本の中では2冊しか買っている本がありませんでした。

若手の中国史家でご活躍されている佐藤信弥氏の本が3月に出ています。文中、キングダムについても言及されており、古代中国史に関心をもった方のエントリーとしてよろしい本と思います。

 

1. 『戦争の中国古代史』

 佐藤 信弥 著 講談社現新書 2021/3/17 ¥1,100

 群雄割拠! 殷・周・春秋戦国時代に繰り広げられた古代中国の戦争を軸に、「中華帝国」誕生の前史を明らかにする画期的入門書。 「中国」形成史、あるいは華夷思想の形成は国内外の学会でホットなテーマである。また秦の滅亡から漢王朝成立までの過程は、近年日本で活発に研究が発表されている。本書ではこれら最新の研究の成果を随所に取り入れていく。 そしての戦争やその意義だけでなく、軍制、長城などの軍事施設、兵器、軍事にまつわる儀礼や思想、軍事に関わった人物、末端の兵士の状況など、軍事全般を各時代ごとに見ていくことで、文字通り「戦争の中国古代史」を総合的に描き出していくことにしたい。――「まえがき」より 

  

2. 『貿易戦争は階級闘争である』

マシュー・C・クレイン, マイケル・ペティス 著, 小坂 恵理 訳 みすず書房 2021/5/17 ¥3,960

 「貿易戦争は国家間の対立として表現されることが多いが、そうではない。これは主に、銀行や金融資産の所有者と一般世帯の対立、すなわち超富裕層とその他大勢の対立である」(まとめ)
今日の米中2国間に見られるような対立は、じつは各国の労働者・退職者を犠牲にした数十年来の富裕層優遇策に起因している――。貿易黒字国である中国やドイツの国内所得の不均衡がアメリカの巨額な貿易赤字を生み、衝突へと至る構造をあざやかに解明、解決のための道筋を示す。国内の格差が民主主義を毀損し、グローバル経済の繁栄や国際平和をも脅かすメカニズムは、日本にも重大な問いを突きつけている。
中国経済に精通した北京大学ビジネススクール教授と投資金融専門紙「バロンズ」経済論説員が贈る、「グローバル経済にかかわるすべての人が読むべき本」(ダニ・ロドリック)。

 

注目の新書・選書

ビッグタイトルはありませんが、いくつか面白そうなものがあります。

「チャリティの帝国」「宗教と過激思想」「イギリス1960年代」は要チェックです。

 

3. 『チャリティの帝国-もうひとつのイギリス近現代史』

 金澤 周作 著 岩波新書  2021/05/20 ¥946

 イギリス独自の重層的なセーフティネットの中で、社会の「錨」のように今日まで働き続けてきたチャリティ。自由主義の時代から、帝国主義と二度の大戦をへて、現代へ。「弱者を助けることは善い」という人びとの感情の発露と、それが長い歴史のなかでイギリスにもたらした個性を、様々な実践のなかに探る。

 

4. 『戦乱中国の英雄たち』

 佐藤 信弥 著 中公新書ラクレ 2021/5/10 ¥924

 偽君子・劉備を主人公に、毒親・曹操、軍師・司馬懿、影武者・献帝らが成敗争奪する三国志。若き始皇帝・政が天下統一をめざして戦う『キングダム』。中国の歴史物の人気が原動力となって、戦乱中国を描く中国時代劇がいま多くの日本人を魅了している。手に汗握る興亡のドラマやサスペンス時代劇、美男美女の愛がせつない宮廷物やラブ史劇。ドラマに込められた歴史観や夢に迫りながら、教養としての中国史をやさしく解説。英雄たちが駆け抜けた戦乱の世、虚構と史実がせめぎ合う驚きの中国へ飛び込んでいくとしよう。

  

5. 『宗教と過激思想』

 藤原 聖子 著 中公新書 2021/5/20 ¥946

 近年、危険とみなされる宗教に対して、「異端」にかわり、「過激」という表現がよく使われる。しかし、その内実は知られていない。本書は、イスラム、キリスト教、仏教、ユダヤ教、ヒンドゥー教、神道などから、過激とされた宗教思想をとりあげ、わかりやすく解説。サイイド・クトゥブ、マルコムX、ジョン・ブラウン、井上日召、メイル・カハネらの思想を分析し、通底する「過激」の本質を明らかにする。

 

6. 『イギリス1960年代』

 小関 隆 著 中公新書 2021/5/20 ¥946

 第2次世界大戦後のベビーブームを背景に、若者文化が花開いた1960年代。中心にはビートルズが存在し、彼らの音楽・言動は世界に大きな衝撃を与えた。他方、サッチャー流の新自由主義も実はこの時代に胚胎した。今なお影響を与え続ける若者文化と新自由主義の象徴は、なぜイギリスで生まれたか――。本書は、ファッション、アートなどの百花繚乱、激動の社会とその反動を紹介し、1960s Britainの全貌を描く。

 

7. 『「ポスト・アメリカニズム」の世紀 ─転換期のキリスト教文明』

 藤本 龍児 著 筑摩書房 2021/05/12 ¥1,980

 20世紀を主導したアメリカ文明も近年、動揺を見せつつある。アメリカニズムの根底には何がありどう変わろうとしているかを宗教的観点からも探究した渾身作!

 

8. 『甘さと権力 ─砂糖が語る近代史』

 シドニー・W・ミンツ 著 , 川北 稔, 和田 光弘 訳 ちくま学芸文庫 2021/05/10 ¥1,650

 砂糖は産業革命の原動力となり、その甘さは人々のアイデンティティや社会をも変えていった。モノから見る世界史の名著をついに文庫化。解説 川北稔

 

9. 『はじめてのプラトン』

中畑 正志 講談社現代新書 2021/5/19 ¥990

 知、真理、魂のあり方を徹底的に考え抜いたプラトンが導く思考の冒険!プラトニック・ラブからナチス、ネオコンまで……なぜプラトンの哲学は、人をざわつかせ、動かすのか? プラトンの著作はそのほとんどが対話篇という形式で書かれている。実在した政治家や軍人、知識人が登場して、あれこれとやり取りを交わすのだ。 プラトンはどうしてこうした形式を選んだのか。そのように書かれた著作はどのように読まれてきたのか。そして私たちはどのようにそれを読んだらよいのか。(以下略)

  

 

企画本

食やファッション、文化、恋愛など興味深い観点から歴史を切り取って見る企画本。

なにか興味が惹かれるものがあったらぜひチェックしてみてください。

 

10. 『図説 戦争と軍服の歴史 服飾史から読む戦争』

辻元 よしふみ 著, 辻元 玲子 イラスト 河出書房新社 2021/05/26 ¥2,310

古代メソポタミアから最新の制服まで、近現代を中心に、戦争・紛争史とともに読み解く軍服の歴史。歴史的な軍服を正確に再現したイラストで、当時がリアルに浮かび上がる。

  

11. 『図説 英国紅茶の歴史』

 Cha Tea 紅茶教室 著 河出書房新社 2021/05/10 ¥2,112

 大英帝国の発展とともに開花した紅茶文化のすべて! ホテルのアフタヌーンティー、こだわりのティーカップ、おいしい紅茶にティーフード、カントリーサイドの素敵なティールーム。決定版!

  

12. 『《世界史リブレット人》047. 大航海時代の群像 』

  合田 昌史 著 山川出版社 2021/5/31 ¥880

  大航海時代はレコンキスタや十字軍といったヨーロッパの中世的広がりの延長線上にある。騎士的精神をもって海路を開いた3人のポルトガル人の生き様を通して、大航海を担った人々の姿を描く。

 

13. 『《世界史リブレット人》071. 曽国藩』

清水 稔 著 山川出版社 2021/3/3 ¥880

  清代の官僚であり、太平天国の乱の鎮圧に活躍した曽国藩は、読書・学問を愛し、天命に従い勤勉・倹約・清廉を旨とする生涯を貫いた。彼が生身の人間として中国の近代史をどう生きたかに迫る。

  

14. 『インドを旅する55章』

 宮本 久義 ,小西 公大 編著 明石書店 2021/6/10 ¥2,200

悠久の歴史が流れる広大で多様なインド。本書は、長年インドに深く関わってきた方々が、これまではほとんど紹介されてこなかった「ディープ・インド」ともいうべき、多様で深遠なインド世界に読者を誘い、新たなインドを見つける一冊である。

  

15. 『食は世界の歴史をどう変えたか』

 玉造 潤 著 河出書房新社 2021/04/13 ¥792

 じゃがいもをめぐるアイルランドのイギリスへの怨念とは? ドイツをナポレオン打倒に走らせた飲み物とは? 新大陸発見とパスタ料理大発展の関係とは? 世界史の重大事件と食べ物の意外な関わりに驚く!

  

16. 『ロイヤルカップルが変えた世界史』

 ジャン=フランソワ・ソルノン 著 原書房 2021/04/20 ¥2,420

 君主がもつ権力を、配偶者が共有した6世紀から20世紀までの夫婦11組を年代順に取り上げ、2人がどのような経緯でそのような状況になり、どのような形で権力を共有したかを記したもの。 11組中ヨーロッパの君主が9組(うちフランスが3組)、残りは東ローマ帝国とロシアの君主である。

 

17. 『[ヴィジュアル版]インド神話物語百科』

  マーティン・J・ドハティ 著, 井上 廣美 訳 原書房 2021/4/17 ¥3,520

 象の頭のガネーシャから凶暴な青い女神カーリーまで、魅力的な神々を紹介し、インドの宗教の発展、主要な経典や詩・神話・物語をわかりやすく説明。多数の図版・写真により、ヒンドゥー世界とインド神話の歴史を解説する。

 

18. 『[ヴィジュアル版]感染症の歴史』

  リチャード・ガンダーマン 著, 野口 正雄 訳 原書房 2021/04/20 ¥3,960

 新型コロナウイルスによるパンデミックの発生は、グローバリゼーション時代の人類が新しい病気に対して脆弱であることを示した。本書は伝染病の世界的流行がどのように始まり、拡大し、社会がどのように対処してきたかを解説する。

  

19. 『[ヴィジュアル版]貨幣の歴史』

デイヴィッド・オレル 著, 角 敦子 訳 原書房  2021/06/22 ¥3,300

 数千年前に遡る貨幣の起源、銀行券や為替手形などヴァーチャルなお金、マネーの力学と金融バブル、仮想通貨とキャッシュレス社会、行動経済学から貨幣の心理学まで、魅力的な小説のようにも読める人類とマネーが織りなす物語。

  

20. 『西洋美術解読事典』

ジェイムズ・ホール 著, 高階 秀爾 監修 河出書房新社 2021/04/09 ¥4,345

 世界でもっとも人気の高い美術基礎事典。主題・人物・概念・象徴など、美術関係に出てくるキーワードや用語がくまなく掲載された西洋美術の理解に不可欠な決定版。

 

21. 『フォト・ストーリー エリザベス二世』

  ロッド・グリーン 著, 龍 和子 訳 原書房 2021/5/22 ¥4,180

 王室のロマンス、政界実力者との確執、20世紀後半を彩る歴史的事件の影で女王陛下はいかにして激動の時代を駆け抜け、家族や国民の愛を勝ち取ってきたのか。王室文書所蔵の写真や資料で見るエリザベス2世と英国王室の歩み。

 

22. 『カーネーションの文化誌』

トゥイグス・ウェイ 著, 竹田 円 訳 原書房 2021/05/14 ¥2,640

 「神の花(ディアンツス)」の名を持つカーネーション。母の日に贈られる花、メーデーの象徴とされたのはなぜなのか。品種改良の歴史から名画に描かれた花など、カーネーションが人類の文化に残した知られざる足跡を追う。

 

23. 『中国史で読み解く故事成語』

阿部 幸信 著 山川出版社 2021/5/1 ¥1,980

 中国史のエピソードを添えて、100の故事成語を解説した短編集。言葉本来の意味やその変遷なども踏まえつつ、現代へのメッセージも光る。一般教養としてだけでなく、中国史ファンや漢文の愛好家にも楽しんでいただける一冊。

 

 

文庫化・復刊

今回は講談社の書籍の文庫化がメインです。本棚に持っておきたい名著揃いです。

 

24. 『中国の歴史11 巨龍の胎動 毛沢東vs.鄧小平』

 天児 慧 著 講談社学術文庫 2021/5/13 ¥1,650

 「中国の歴史・全12巻」の学術文庫版、第11巻は、様々な試練を乗り越え中華人民共和国を成立させた建国の父・毛沢東と、経済大国への改革開放路線を敷いた鄧小平の二人を軸に激動の中国現代史を辿る。
1921年の中国共産党結成に参加した毛は、非主流を歩み十数年後の長征中に漸く主導権を掌握する。抗日戦争後は国民党の蒋介石に挑戦、文化大革命では紅衛兵を動員し政敵・劉少奇を追放した。継続革命論者でその政治手法は敵を見据えてからどう打倒するか戦略を練る「軍事芸術」とも言われる。
一方、毛の忠実な部下だった鄧は、黒い猫でも白い猫でも鼠を捕る猫は良いとした「黒猫白猫論」を説いたリアリスト。文革と不倒翁・周恩来の逝去後に二度も失脚したがいずれも復活。毛沢東夫人の江青ら文革「四人組」逮捕後の再復活後は改革開放路線に邁進して経済大国の道を切り拓く。変わりゆく状況を的確に判断し次々と最適の選択をする「政治芸術」の人とも評される。この対照的な二人の生涯を縦糸にして清朝末期から中華民国成立、日本の侵略、国共内戦、1949年の中華人民共和国建国宣言を経て朝鮮戦争、中ソ対立、プロレタリア文化大革命などの激動を丹念に描いた渾身の力作。文庫化にあたり、習近平時代を加筆。〔原本:2004年11月、講談社刊〕

  

25. 『中国の歴史10 ラストエンペラーと近代中国 清末 中華民国』

菊池 秀明 著 講談社学術文庫 2021/4/15 ¥1,485

 学術文庫版「中国の歴史・全12巻」の第10巻は、アヘン戦争後の19世紀半ばから、日中戦争がはじまる直前の1936年「西安事変」にいたるまでの中国近代史。二度のアヘン戦争で叩きのめされ、日清戦争の敗北によって亡国の危機にさらされた清朝末期。本書では、この時代を「中国史上初めて南の辺境から吹いた新しい時代の風」という視点でとらえ、「中華再生」の苦難のドラマを描く。
太平天国の蜂起に始まり、辛亥革命、国民革命、そして中国共産党の長征に至る革命運動は、いずれも南の大地から北に向かって展開した。この北伐に情熱を傾けた洪秀全、孫文、蒋介石、そして新時代の種をまいた毛沢東らの政治運動はどのように展開したのか。運動を支えた日本人の存在にも光をあてる。
また、辛亥革命によって退位した大清帝国の皇帝、宣統帝溥儀は、退位後、関東軍によって満洲国皇帝に祭り上げられ、日本の敗北とともに亡命・抑留生活を余儀なくされる。ラストエンペラー溥儀の数奇な運命と、激動する世界情勢に翻弄されつつみずからの手で運命を切り開き、近代中国を築いてきた人々の歴史。現在の日中問題のすべては、ここから始まる。〔原本:2005年9月、講談社刊〕

  

26. 『中国の歴史9 海と帝国 明清時代』

上田 信 著 講談社学術文庫 2021/3/11 ¥1,815

 学術文庫版「中国の歴史・全12巻」の第6回配本・第9巻は、明朝と清朝、ふたつの大帝国を1冊で通観する。出口治明氏(立命館アジア太平洋大学学長)が「名著ぞろいのシリーズの中で、まさに名著中の名著。内藤湖南に匹敵するのでは」とイチオシする話題作。
2003年3月、雲南省昆明の空港で、著者は不思議な一行に出会う。聞けば彼らは、台湾の港町・花蓮から、海の女神「媽祖」を奉じて、雲南省の麗江を訪ねた帰路だという。台湾の海の女神が、なぜ中国内陸の観光地を?――この謎から、海に囲まれた東ユーラシア500年の歴史が浮かび上がってくる。
14世紀半ば、朱元璋が開いた明朝は、万里の長城の修築や、鄭和の南海遠征など、古代的な性格の色濃い王朝だった。それに対し、16世紀に登場したヌルハチに始まる清朝は、少数の満洲族のもとでさまざまな人々が闊達に生き、近代的な活気に満ちていた。古代的な明代から、近代的な清代への跳躍はなぜ可能だったのか。それを解明するには、「海に向かい合う中国」を見ることで、従来の中国史の枠を超える必要がある。倭寇と朝貢、銀の流通と世界経済、清朝皇帝とチベット仏教。地球規模の視点から、ふたつの帝国を描き出す。そして19世紀、アヘン戦争や太平天国を経験し、中国社会は近代への脱皮に備えて大きく変化していく。〔原本:2005年8月、講談社刊〕

  

27. 『スウェーデンボルグ 科学から神秘世界へ』

高橋 和夫 著 講談社学術文庫 2021/5/13 ¥1,100

 18世紀のスウェーデンが生んだ稀代の科学者にして神秘思想家、エマヌエル・スウェーデンボルグ(1688-1772年)。この異才の存在こそが、カントに『視霊者の夢』(1766年)を書かせ、またバルザックをして『セラフィタ』(1834年)の執筆にむかわしめました。日本では、禅学の大家である鈴木大拙(1870-1966年)が紹介したことで知られています。
スウェーデンボルグは84年の生涯のうち、その半分を科学者として過ごします。11歳でウプサラ大学に入学したあと、イギリスやフランスに遊学して天文学や機械工学を学び、先駆的な航空機を含め多彩な発明品の設計図を残します。その後、スウェーデン国王カルル12世の知遇を得たことをきっかけに、王立鉱山局の監督官として59歳まで働くことになります。監督官として勤めるかたわら、地質学をはじめ数学、宇宙学、解剖学など多岐にわたる分野で精力的に執筆活動を続け、科学者として当時のヨーロッパに名を馳せますが、50代のときに大きな転機が訪れます。それが相次ぐ神秘体験でした。
スウェーデンボルグを科学者から神秘主義神学者へと変貌させた、神秘体験とは一体どのようなものだったのでしょうか。それはこの天才にとってどのような意味をもっていたのでしょうか。そして、彼が見た死後の世界とはどのようなものだったのでしょうか。科学から神秘世界へ、大きな飛躍があるように見え、ともすれば矛盾に満ちたものになりそうなその生涯は、実のところ極めて合理的な精神に貫かれていたのです。(以下略)

 

28. 『メッカ イスラームの都市社会』

後藤 明 著 講談社学術文庫 2021/4/15 ¥1,012

 カーバ神殿を擁する巡礼地・メッカ。七世紀初頭、アラビア半島の灼熱の岩肌に囲まれたこの地が、なぜ都市に発展し、世界の<聖地>となったのか。ムハンマドの生涯や、コーランはじめ文化、風習、儀礼など、ムスリム知識人が守った伝承“ハディース”から、多角的に考察。西欧的学問の思考からは見落とされてきた、イスラーム精神の本質に迫る。

  

29. 『オスマンvs.ヨーロッパ 〈トルコの脅威〉とは何だったのか』

新井 政美 著 講談社学術文庫 2021/3/11 ¥1,115

 オスマン帝国を通して読むと、世界史が違うすがたを見せ始めるーー

ヨーロッパが「トルコの脅威」と力説するオスマン帝国は、決して「トルコ人の国家」だったわけではない。「イスラムの脅威」に対し十字軍が何度も組織されたが、オスマン帝国にはキリスト教徒もたくさんいた。宗教的寛容性と強力な中央集権体制をもち世界帝国を目指す先進国へのおそれ、その関わりこそが、「ヨーロッパ」をつくり、近代化を促したのだ。数百年にわたる多宗教・多言語・多文化の共生の地が、民族・宗教紛争の舞台になるまで。

  

30. 『暗殺教団 「アサシン」の伝説と実像』

バーナード・ルイス 著, 加藤 和秀 訳 講談社学術文庫 2021/3/11 ¥1,221

 〈「山の老人」は実在したか? 狂信者集団としてヨーロッパで伝説化された彼らの歴史的実像を、中東学の権威が丹念に描く!〉

イスラム教・シーア派の分派であるイスマーイール派からさらに派生したニザール派。彼らは敵対集団の要人を暗殺することも厭わない信徒集団とされ、その活動は歴史が下るとともに伝説的な色彩を帯びてゆき、大麻を用いる狂信者教団として語られるようになっていた。その伝説からは「アサシン」という名もうまれ、それは現在において暗殺者そのものの意味となっている。

イスラームという宗教の成り立ちの基礎的なことを手際よく解説しながら、ニザール派の歴史実像を描きだし、優れた啓蒙書として欧米圏では長く読まれ継がれている本書を復刊文庫化。

さらに、ペルシア圏の諸宗教について造詣の深い青木健氏(『ペルシア帝国』講談社現代新書、『ゾロアスター教』講談社選書メチエ)による、その後の研究進展をふまえた補足的解説も掲載。

 

31. 『異端審問』

 渡邊 昌美 訳 講談社学術文庫 2021/3/11 ¥1,221

 ――皇帝ジギスムントが宮中伯ルートヴィッヒに向かって命令する。「囚人を受け取り、よろしく異端者として扱え」。今度はルートヴィッヒがコンスタンツの帝国代官に向かって命令する。「我ら双方によって断罪されたる者としてこの者を受け取り、よろしく異端者として焼け」。――
 1415年に異端として裁かれた宗教改革の先駆者、ボヘミアのヤン・フス処刑の克明な描写にはじまる本書は、中世のヨーロッパで異端審問がどのようにして生まれ、そして制度として定着していったのかを、具体的なエピソードを丁寧に積み重ねながら、当時の人々の息遣いもあざやかに描き出す。法も手続きも無視して「すべて殺せ」という13世紀の異端狩りの熱狂から、ウンベルト・エーコの小説『薔薇の名前』にも登場した、世界で最も有名な異端審問官ベルナール・ギーによって組織化・マニュアル化された14世紀の冷徹無比な異端審問を経て、15世紀末スペインでの過酷な弾圧に至る、その道のりの背後には、いかなる時代精神が見いだせるのか。
 西洋中世史不朽の名著『異端カタリ派の研究』(岩波書店、1989年)の著者が、多彩な史料を駆使して知られざる中世世界への扉を開く!(原本:講談社現代新書、1996年)

 

お得な専門書

2000円~5000円ほどで歴史専門書を集めました。

この中では個人的には「さまよえるハプスブルク 捕虜たちが見た帝国の崩壊」「スコットランド通史」「ナチス絵画の謎」が気になります。

 

32. 『さまよえるハプスブルク 捕虜たちが見た帝国の崩壊』

 大津留 厚 著 岩波書店  2021/04/09 ¥2,750

 多民族帝国の崩壊と国民国家の成立は何をもたらしたか。第一次大戦下のロシアで捕虜となった二〇〇万を超えるハプスブルク帝国軍兵士の膨大な回想録と外交文書から、極東をさまよった彼らの経験をたどり、帝国崩壊の現場を描き出す。国民国家のゆきづまりとともに再考が進む多民族国家の終焉から現代世界を逆照射する試み。

  

  33. 『スコットランド通史』

 木村 正俊 著 原書房  2021/06/04 ¥3,520

 日本におけるスコットランド史研究の泰斗が、最新の知見をもとに新たに提示する通史。有史以来さまざまな圧力にさらされながらも独自の社会・文化を生みだし、世界に影響を与えてきた北国の流れを総覧した決定版。図版、コラム多数。

  

34. 『地中海圏都市の活力と変貌』

 神崎 忠昭 編著, 長谷部 史彦 編著 慶応大学出版会 2021/03/31 ¥3,850

 海が織りなす「都市のダイナミズム」

「偉大なる海」を交通の基盤とした地中海地域は、紀元前3千年紀から近世・近代に至るまで、人類史における先導的な都市文明の舞台でありつづけた。地中海圏都市の活力の源泉や様態、空間的・社会的な変化や発展について、各地域・時代で注目すべき都市と研究課題に照準を合わせて論じる。

 

35. 『地中海世界の中世史』

小林 功 編著, 馬場 多聞 編著 ミネルヴァ書房 2021/3/30 ¥2,750

地中海世界の中世史

地中海世界の中世史

  • ミネルヴァ書房
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 本書は、中世の地中海世界の歴史について、キリスト教世界とイスラーム世界の対立よりも、両者の緊密な関係を意識して説明する入門書です。複眼的な視野でわかりやすく解説しているので、中世の地中海世界の歴史を味わうためのよきガイドブックとなるでしょう。

[ここがポイント]
◎ 中世の地中海世界へ多面的にアプローチするテキスト
◎ 中世ヨーロッパとイスラームの関係を解説するはじめてのテキスト

 

36. 『中世ヨーロッパ』

ウィンストン・ブラック 著, 大貫 俊夫 監訳 平凡社 2021/4/21 ¥3,520

 中世ヨーロッパは古代ローマとイタリア・ルネサンスに挟まれた暗黒時代だった? 狡猾なカトリック教会の言いなりで、迷信を好んで科学を拒み、野蛮で不潔だった? それとも、騎士が華麗に戦い、魔法と妖精が出てくるおとぎの世界? 本書は中世ヨーロッパに関する11のフィクションをとりあげ、私たちの中世観がどのように作られてきたのか、実際どうだったのかを、豊富な一次史料とともに提示する。

試し読みがこちらからできます。

 

37. 『イスラーム文明とは何か』

 塩尻 和子 著 明石書店 2021/03/20 ¥2,750

近現代科学文明が欧州で発祥したことは確かだが、その礎にあるイスラーム文明が等閑視されがちであることに著者は警鐘を鳴らす。古代ギリシア・ローマ文明の知を継承し、宗教や民族の壁を越えて千年にわたり発展させてきたイスラーム文明の歴史を平易に紹介する入門書。

 

38. 『古代ローマ人の危機管理』

堀 賀貴 編 九州大学出版会 2021/4/23 ¥1,800

 「人類の歴史の中でもっとも平和な時代はいつか?」という問いに答えるのはとても難しい。時代だけでなく、場所も限定して考えなければならないが、前1世紀から後3世紀にかけて栄華を誇り、パクス・ロマーナと呼ばれる平和を実現した古代ローマ帝国は、その有力な候補と言えよう。本書では、その古代ローマ帝国の「平和な時代」を、「戦争のない時代」ではなく、「危機管理に成功した時代」であったと捉える。古代ローマの歴史家、ウェッレイウス・パテルクルスは、アウグストゥス帝が帝国の隅々までもたらした平和によって、人々は追いはぎ、山賊の恐怖から解放されたと書き記しているが、だからといって無防備で郊外を歩くことができたわけではなく、様々な制度によって、あるいは皇帝の威光によって、犯罪の抑止が可能になったと考えるべきであろう。強盗、泥棒などの犯罪、あるいは水害や火災に対してもリスクマネジメントが効いていた時代なのである。(以下略)

  

39. 『よくわかるアメリカの歴史』

梅崎 透 編著, 坂下 史子 編著, 宮田 伊知郎 編著 ミネルヴァ書房 2021/6 ¥3,080

   

40. 『毛沢東論』

中兼 和津次 著 名古屋大学出版会 2021/5/10 ¥3,960

 その男は中国に何をもたらしたのか ——。大躍進政策や文化大革命によって大量の犠牲者を出しながら、現在なお大陸で英雄視される稀代の指導者。「秦の始皇帝+マルクス」とも言われる、その思想と行動を冷静かつ大胆に分析。中国経済研究をリードしてきた碩学が、現代中国の核心に迫る。

目次はこちらからご覧になれます。

  

41. 『マオとミカド』

城山 英巳 著 白水社 2021/05/31 ¥3,080

工作と諜報に明け暮れた日中裏面史

「支那通」からチャイナスクールまで、帝国陸軍から自民党・共産党まで、蒋介石や毛沢東と渡り合い、大陸を暗躍した人々の群像。

 

「天皇陛下によろしく」――。毛沢東や周恩来ら中国共産党の歴代指導部は一九五〇年代以降、訪中した日本の要人に必ずこう語り掛けた。
日中戦争の記憶も生々しいこの時期、激しい反日感情を圧してなぜこうしたメッセージを発したか? 一九二〇年代から五〇年代にかけての米ソ日中の史料や証言を掘り下げて解明していくのが本書の基本視角だ。
まず指摘できるのは「向ソ一辺倒」から「平和共存」へと、中国の外交方針が大きく転換したことだ。超大国として米国が台頭する中、米国務省日本派が練り上げた「天皇利用戦略」を換骨奪胎しつつ、西側諸国を切り崩す外交カードとして天皇工作を焦点化していったという。
他方、毛沢東は戦争中、のちに「闇の男」「五重スパイ」などと語り継がれる日本共産党の野坂参三と延安で頻繁に接触していた。
野坂は共産党関係者を一斉摘発した三・一五事件で逮捕されて以降、「君主制ノ撤廃ニ異論」を唱えており、野坂との交流が「皇帝」毛沢東をして「万世一系」の天皇が持つ不思議な求心力について喚起せしめたという。「志那通」からチャイナスクールまで、帝国陸軍から自民党・共産党まで、大陸で暗躍した人々の群像!

 

42. 『明末清初中国と東アジア近世』

岸本 美緒 著 岩波書店 2021/03/09 ¥3,850

 社会の大きな揺らぎのなかで、新たな秩序への模索と葛藤が繰り広げられた一六―一八世紀。著者は明清史をフィールドに、東アジアの共時性としての「近世」を考察してきた。総説「東アジア・東南アジア伝統社会の形成」をはじめ、時代区分、皇帝権力、国家観、市場構造などの論点から、世界史へと開かれた課題を提示する。

 

43. 『二つの文化と科学革命【新装版】』

チャールズ・P・スノー 著, 松井 巻之助 訳 みすず書房 2021/4/09 ¥4,070

〈スノーの講演の題名は「二つの文化と科学革命」だった。彼が認定した「二つの文化」とは、(彼の呼び方によれば)「文学に造詣の深い知識人」の文化と自然科学者の文化であり、彼は、両者の間には深刻な相互不信と無理解が見られ、それが今度は世界が抱える問題の軽減のために科学技術を応用しようという展望に害を及ぼす結果をもたらすのだ、と主張した。……スノーは実際には、自分が認定したと信じた二つの文化の関係はどのようなものであるべきかを問いかける以上のことを行なっていたからであり、さらに両部門の知識を人々に適切に教育するには小中高等学校や大学のカリキュラムをどのように整えるべきかを問いかける以上のことまでも行なっていたからだ。〉(S・コリーニ「解説」)

自然科学と人文科学、各々の知的・精神的風土の乖離と無理解がもたらす社会的危機を訴え大論争を巻き起こした書。科学と文化を語る必須文献で、科学社会学が精緻化された現在も、常にルーツとして参照される名著。原書1993年版にもとづき70頁余の新解説を付す。

 

44. 『ナチス絵画の謎』

前田 良三 著,  みすず書房 2021/3/10 ¥4,180

 「ナチス絵画」とは何か。戦争画をはじめ、そのプロパガンダ的要素や国民にとっての「わかりやすさ」については、ほぼ周知であろう。だが、より広い文脈で考えたとき、そこにはさまざまな要素や背景が絡んでいることがわかる。


本書は、1937年に「頽廃美術展」と同時にミュンヘンで開催された「第1回大ドイツ美術展」、とりわけそこに出品され注目を浴びたアドルフ・ツィーグラーの絵画作品『四大元素』を主な対象に、狭義の美術史やナチス研究とは異なる複合的視点から、ナチス美術のあり方をさぐる考察である。具体的には、ツィーグラーという人物とその背景、ナチスの芸術政策の展開、ミュンヘン造形美術アカデミーの歴史、美術アカデミー制度とモダニズム美術の関係、ナチス美術における絵画技術と複製技術メディアの問題、ドイツ・近代美術史におけるミュンヘンの位置、世紀末ドイツ美術界における「ドイツ芸術論争」などの論点を手がかりに、その全体像に迫る試みである。
「大ドイツ美術展」に展示された無名に近い画家たちの絵画はどのようなものであったか。「頽廃」の烙印を押されたミュンヘンの画家たちは? さらにナチス建築の折衷主義、ヒトラーやゲッベルスの発言を含む歴史的資料の検討、メディア史の理論的考察などを通じて、文化史におけるナチス美術の意味を明らかにする。

 

 

高額専門書

5000円以上の高額な専門書シリーズです。

研究者や創作の参考にする以外はなかなか買うのに勇気がいるのですが、いくつか面白そうなタイトルがあります。「テンプル騎士団全史」「ベトナム:ドイモイと権力」は買おうかどうか真剣に迷っています。

 

 

45. 『スピノザと十九世紀フランス』

上野 修 編 , 杉山 直樹 編 , 村松 正隆 編 岩波新書  2021/02/25 ¥6,490

 革命の混乱から秩序回復へと至る過程において、解読し得ない「暗号」のように影響を与え続けたスピノザの思想。その光と影のもとに十九世紀フランス哲学を読み解き、魅力的な相貌を描き出す。かつてない哲学史の試み。

  

46. 『フランス絶対主義』

ファニー・コザンデ 著 , ロベール・デシモン 著 , フランス絶対主義研究会 訳 岩波新書  2021/04/09 ¥7,370

 それは、本当に「絶対権力」であり、また特殊フランス的な事象だったのだろうか──膨大な先行研究を消化して、絶対主義の理論と実践、さらには歴史観をとらえ直す。ヨーロッパ近世の歴史・思想を考えるために必読の書。

   

47. 『テンプル騎士団全史』

ダン・ジョーンズ 著, ダコスタ 吉村花子 訳 河出書房新社 2021/04/19 ¥5,390

 十字軍における、最強の軍事組織テンプル騎士団の血塗られた闘いの歴史と、彼らの莫大な富と金融ネットワーク、そして屈辱的な滅亡を、これまでにないスケールで描いた世界的ベストセラー。

  

48. 『ボリショイ秘史』

サイモン・モリソン 著, 赤尾 雄人 監訳 白水社 2021/05/31 ¥7,260

 舞台裏にあるもうひとつのスペクタクル
華麗にしてスキャンダラスなボリショイの物語

世界中のバレエ・ファンを魅了するボリショイ・バレエ――その華麗な舞台裏で紡がれてきた、劇場、国家、そして人々をめぐる物語=歴史。

 

国家と芸術のアマルガム

「ロシアといえばバレエ、バレエといえばボリショイ」―ロシアをとりまくイメージが多様化した今日においても、このような常套句を想起する人は少なくないだろう。だが、いったいなぜ芸術の一ジャンルが、その一劇場が、国家を代表する存在にまでなりえたのだろうか。ボリショイの華麗な舞台裏で紡がれてきた、劇場、国家、人々をめぐる物語を繙くことで、この疑問に答えんとするのが本書である。
たとえば、本書の導きの糸となる、劇場のバレエ監督であったセルゲイ・フィーリンが襲われた2013年の事件。世界のバレエ・ファンを騒然とさせたこの醜聞はしかし、「ひとつの恐ろしい突然変異というよりも、むしろボリショイの豊かで複雑な歴史の中になにがしかの先例がある」と著者はいう。そこから本書は、18世紀の劇場の前身にまで遡り、劇場内外の人間模様やスキャンダルという視点も盛り込んで、ボリショイの歴史を丹念かつ大胆に辿っていく。
その物語を通して読者は同時に、国家を象徴するまでになった芸術機関であるボリショイ劇場のもつ凄み、鑑賞者をはるかな高みへといざなうその上演の崇高さ、それら魅力の秘密の一端を垣間見ることになるだろう。

 

49. 『17世紀フランスの絵画理論と絵画談義』

 今村 信隆 著 北海道大学出版会 2021/3/31 ¥6,820

 17世紀後半から18世紀初頭にかけてフランスで書かれた絵画論や会議録、小説等を読解し、美術理論や美学が成立していく過程で背後に追いやられてしまった、紳士的で社交的な思索の態度、非専門的で愛好家的な鑑賞の営み、生身の個人間での語らい、そこから生じる共感の喜びや作品理解の価値について再考する。

目次はこちら

 

50. 『戦争障害者の社会史』

北村 陽子 著 名古屋大学出版会  2021/3/12 ¥5,940

 国家に奉仕した「英雄」はどのようなその後を生きたのか。公的支援や補助具の発展と、他方での差別やナチへの傾倒などの実態を丁寧に描き、現代福祉の起源を示す。

 

51. 『イスラームの都市社会』

 アイラ・M.ラピダス 著 , 三浦 徹 訳 , 太田 啓子 訳 岩波書店  2021/05/11 ¥5,390

 一三─一六世紀、マムルーク朝下のカイロやダマスクスでは、支配層から一般民衆に至る人々が結びあうさまざまな関係性のなかで、社会が営まれた。ヨーロッパ/アジアという二分法を超えてイスラームの都市社会を描いた社会史・都市史の名著。中国社会とイスラーム社会を比較した補論「ヒエラルヒーとネットワーク」を併載。

  

52. 『女たちの日韓キリスト教史』

 神山 美奈子 著 関西学院大学出版会 2021/03/10 ¥4,840

 日本帝国主義による朝鮮植民地支配の時代から20世紀の終わりまで、日韓女性キリスト者たちの近代史をフェミニズムの視点から考察

 目次はこちらでご覧になれます。

  

53. 『ヨーロッパ複合国家論の可能性』

岩井 淳 編著, 竹澤 祐丈 編著 訳 ミネルヴァ書房 2021/5/1 ¥7,700

 「複合国家」の歴史的展開とその思想史的な意味とは――。今日の世界では主権国家に根ざしたナショナリズムが温床となり、分断や不寛容のあらしが吹き荒れている。本書では、こうした状況を相対化するため人文学が取り組みうる作業の一環として、歴史学と思想史という異なる分野の研究者が協同し、主権国家論を前提とする従来の議論では注目されてこなかった、ヨーロッパの国家が抱える重層性や可塑性に光を当てる。

[ここがポイント]
◎ 西洋史と思想史の研究者による共同研究の成果。
◎ 注目を集める複合国家という観点の総合的検討。

 

54.  『ものがつなぐ世界史』

桃木 至朗 責任編集, 中島 秀人 編集協力 ミネルヴァ書房 2021/3/30 ¥6,050

 現代の歴史学において、人・もの・カネ・情報・技術などの動きや交流を切り口として世界史をみるという視点が、もはや主流になりつつあるといっても過言ではない。本書は、「馬」に始まり「ウラニウム」に至るまで、古代から現代にわたって世界史を動かした17の「もの」を取り上げ、それらがいかに世界を結び、どのような影響を及ぼしたかを考察することで、重層的な世界史像を描き出す。


[ここがポイント]
◎ 世界史上の「もの」が果たした役割、影響を具体的事例から考察する。
◎ 考古学・社会経済史・科学史・技術史などさまざまな分野の第一人者が、それぞれの「もの」にフォーカスした歴史を書き下ろし。

 

55. 『スターリン』

オレーク・V・フレヴニューク 著, 石井 規衛 訳 白水社 2021/05/31 ¥5,060

ソ連崩壊後30年、真のスターリンに肉迫する!

スターリンから直に由来する新公開史資料に基づいた画期的な大作。ロシアの世界的権威による、学識と読みやすさを兼ね備えた圧巻の書。

 

真に一新されたスターリン像の提示に挑む!

本書は、ロシアの世界的権威が、スターリンに直接由来する文書館史資料に可能な限り基づきつつ執筆した、最初にして第一級のスターリン伝だ。二十世紀を代表する独裁者スターリンの軌跡を辿ることで、それと不可分のソヴィエト・ロシア史および世界史をきちんと把握できる、まさに現代史研究の「基本図書」となるものだ。
解禁された膨大な史資料にあたって、学術的に裏づけしつつ、しかも分かりやすく叙述することで、「独裁者の全貌」が浮かび上がってくる。また叙述の方法にも工夫が凝らされている。章立ての年代記と、スターリンの終末期を背景に彼の人格および支配システムの解読が、交互に記述されている。いわば一種のテキスト上の「マトリョーシカ」(ロシアの入れ子人形)構造になっていて、読者は二通りに読み進むことができる。そのうえ貴重な逸話も数多く盛り込まれており、興味は尽きないだろう。
本書の読者対象は研究者から歴史愛好家、一般まで幅広い。今年はソ連崩壊後三十年、権威主義の台頭と民主主義の衰退に危機感を抱く読者にも、大きな示唆となるだろう。巻頭に口絵写真八頁、巻末に「訳者解説」を付す。

  

56. 『ナポレオン時代の国家と社会』

藤原 翔太 著 刀水書房 2021/4/30 ¥6,900

 ナポレオンの統治とは一体いかなるものであったか。「国境=辺境」たるピレネー地方を舞台に,国家・名望家・民衆の三者が織りなす諸関係を描き出し,ナポレオン時代に形成された地方統治体制の実態とその歴史的意義を解き明かす

  

57. 『アルザス社会経済史』

内田 日出海 著 刀水書房 2021/4/16 ¥8,800

 フランスとドイツの領有交替を5回経験の国境の地アルザス。アルザス研究の第一人者がアルザスから見たアルザス史という視座に立ち、その社会経済史の全体像に挑んだ野心作!

 

58. 『ベトナム:ドイモイと権力』

フイ・ドゥック 著, 中野 亜里 著 めこん 2021/6/10 ¥5,500

 日本ではほとんど報道されていないドイモイ(刷新政策)の現実とホー・チ・ミン以降の権力者たちの闘争について、詳細につづられた大著。初めてのベトナム人自身によるベトナム現代史総括『ベトナムの:勝利の裏側』の続編です。『ベトナム:勝利の裏側』と並び、ベトナム現代史の基本書として長く読まれるでしょう。

  

59. 『エルサレム〈以前〉のアイヒマン』

ベッティーナ・シュタングネト 著, 香月 恵里 訳 みすず書房 2021/5/27 ¥6,280

 強制収容所へのユダヤ人移送責任者として絶滅計画の主翼を担ったアドルフ・アイヒマン。このナチ親衛隊中佐については議論が尽くされた感もあるが、じつは肝心な史料の大部分が放置されていた。アイヒマン自身の文章と音声録音である。
戦後アイヒマンが逃亡したアルゼンチンには旧ナチ共同体が築かれていた。アイヒマンはそこで、元武装SS隊員W・サッセン主催の座談会に参加する。サッセンはそれを録音し、テープ巻数にして70以上になる音声のトランスクリプトを作成していた。アルゼンチンのアイヒマンは大量の独白を記し、エルサレムの囚人となった後も8000枚にわたって自己正当化を書き連ねた。
こうした史料が網羅的に研究されてこなかったのは驚くべきことであるが、それは各所に散在し、分量は膨大で内容は耐え難い。さらに、アルゼンチンでのあけすけな記録を本人が偽と証言したため、史料としての価値を確立する仕事が後の研究者に重くのしかかった。本書は一人の哲学者が成し遂げた気の遠くなるような偉業であり、先駆者ハンナ・アーレントとの対話である。
「エルサレムでのアイヒマンの自己演出が、この犯罪者と、そして彼の殺人者としての成功といかに関係しているかを知りたいと願うなら、エルサレム以前のアイヒマンにさかのぼり、また、後の時代に作られたアイヒマン像に基づく解釈の裏に踏み込むことがどうしても必要である」(序章より)。

  

60. 『ビザンツ 驚くべき中世帝国[新装版]』

 ジュディス・ヘリン 著, 井上 浩一 監訳 白水社 2021/05/31 ¥5,060

 千年にわたる歴史を、政治・宗教・文化・経済など28のテーマを通して、西欧やイスラームとの関係とともに立体的に解説する。

 

 

まとめ

 お疲れさまでした。ざっと見るだけでも疲れたと思います。

 こちらの記事はブックマークしていただき、書店を巡ったりネットで本を探すときにぜひご活用ください。

 

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