通常部隊では無理な任務にあたるプロフェッショナル
特殊部隊といえば、現代ではアメリカ軍の「ネイビー・シールズ」やイギリス軍の「SAS」が有名です。
ゲリラが人質と共に籠っている建物への突入や、テロ組織のVIPが潜伏している拠点への突入作戦など、危険度が高く失敗が許されない任務に当たるプロの部隊。
歴史上もこのような特殊部隊は多くありましたが、単に「強い奴ら」だけで構成されるとは限らず、その専門性を活かしたユニークな特殊部隊が形成されていました。
海外サイトHISTORY LISTSに"7 Unusual Military Unit"という、特殊部隊・精鋭部隊を取り扱った面白い記事があったので、今回はそのネタを拝借してご紹介いたします。
1. ポツダム巨人連隊(ドイツ)
背の高い男だけで構成されたエリート連隊
軍事をこよなく愛した文字通りの"ミリオタ"だったプロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム1世は、「背の高い男」こそ理想的な兵士になると信じており、ヨーロッパ各地を巡って背の高い男を探しまわっては法外なカネで雇い上げ自身の近衛兵としました。
それがプロイセン第6歩兵連隊、別名「ポツダム巨人連隊」。
身長210センチを超える者はザラで、あるスウェーデン人は250センチもあったそうです。
この巨人連隊に入隊すると生活はほぼ保証されたも同然で、通常の兵隊よりもずっと良い待遇を得られました。ヴィルヘルム1世は彼らの結婚の工面までしたそうで、「背の高い女性」との結婚を推奨しました。
王の趣味だった「巨人の行軍」
ヴィルヘルム1世は彼らの一糸乱れぬ行進を見るのが何よりも好きで、外国の大使を招いては彼らの行進を見物させました。何度も見させられる側からすると、「またか」とうんざりだったでしょうね。
病床についたヴィルヘルム1世は気合いで病気を吹き飛ばすべく、巨人連隊にベッドの周りを行軍させてみせましたが結局死亡。
息子のフリードリヒ大帝は父の趣味であった「金食い虫」の特別待遇を止めて榴弾兵大隊として再整備。戦役に参加させましたが、そこそこ優秀な兵だったそうです。
2. ベルセルク(スカンジナビア)
敵味方関係なく殺戮する狂戦士
ベルセルク(バーサーカー)は古代スカンジナビアで見られた、軍神オーディンの力を授かった戦士。彼らは熊や狼の皮をまとうことで我を捨て、まさに獣になって戦いました。恐れというものがないので、めちゃくちゃ強かった。
ただベルセルクは危険な戦士で、目の前にちらつく影は敵であろうが味方であろうが殺戮したため、味方のはずのヴァイキングたちからも恐れられ、かつ憎まれる存在でした。そのため、友人や家族を殺された者から恨みを買ってしまい、平時に復讐として殺害されることもあったようです。
3. 不死隊(アケメネス朝ペルシア)
ギリシア人に最も恐れられた1万人の精鋭部隊
不死隊(Immorals)は、アケメネス朝ペルシアの定員1万人の精鋭部隊。
ペルシアがギリシアを攻めた時、ギリシア兵はこの槍を持った不死隊に散々苦しめられました。古代ギリシアの歴史家ヘロドトスは「もっとも優れた武器を保有した部隊」と書き残しています。
「不死隊」とは、もしある小隊が倒れた際には次の小隊がその穴を埋め、次から次へ補充されて戦い、決して1万人を切ることはないことから名付けられました。
紀元前480年のテルモピレーの戦いでは、スパルタ率いるギリシア部隊を待ち伏せして大いに破っています。
4. 幽霊軍(アメリカ)
ハリボテの軍隊を作るエキスパート
1944年にアメリカ軍が、舞台設計者・イラストレーター・サウンドエンジニアなどを招集して作った部隊が、通称"幽霊軍"。
1943年にイギリス軍が北アフリカのエル・アラメインの戦いで、ダミーの戦車やジープを使って枢軸国軍の目くらましをしたことに影響を受けて結成されたもので、任務は「ハリボテの軍隊を作ること」。
舞台設計者・イラストレーターには紙や木、布を加工してニセモノの戦車や自走砲、ジープを作らせ、サウンドエンジニアには通信音やエンジン音を作らせる。
実際にヨーロッパ戦線で20回ほどのミッションをこなし、ある時にはパットン中佐の防衛ラインで欠けた"穴"を幽霊軍が埋め、全然気づかれなかったそうです。
幽霊軍で活躍した人物のうち著名な人物は、ファッションデザイナーのビル・ブラスや画家のエルズワース・ケリー、アルスール・シンガーがいます。
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5. グルカ兵(イギリス)
精悍なネパール山岳民族のエリート兵
1814年から始まった英・ネパール戦争で勝利したイギリスは、ネパール山岳民族の優秀さに目をつけ、彼らがイギリスと傭兵契約を結べるようにネパールに認めさせます。
グルカ兵は「恐れ」を持つことを最も恥なことと考えており、それゆえ死をも恐れず勇敢に戦う。また、山岳地帯で鍛えられた足腰と、幼い頃からの格闘技のトレーニングにおかげで、戦闘能力が非常に高い。さらにインド人と違って怠惰なところがなく、真面目で忠誠心が高い。
イギリスはグルカ兵を重用し、その後のイギリスが関わった戦争にはほぼ全て参加させています。最も危険度が高い戦線や難易度の高い任務に当たっており、太平洋戦争のビルマ戦線でも日本兵は彼らに散々苦しめられています。
現在でもイギリス軍はグルカ兵からなるグルカ旅団があり定員は約3万。毎年200名ほどの新兵を雇っているそうです。
6. モルモン大隊(アメリカ)
モルモン教徒で構成された大隊
モルモン大隊は1846年に設立された、モルモン教徒のみで構成された軍隊。
西部開拓に送られたモルモン教徒たちを、インディアンやメキシコ人の攻撃から守ることが目的で、教団のリーダーのブリガム・ヤングとアメリカ陸軍の協力のもと作られました。
500名のモルモン教徒で構成された部隊は、アイオワ-サンタフェ、アリゾナ-南カリフォルニア、サンディエゴ-ロサンゼルスなどの開拓民の移動を警護しました。
彼ら自身も軍隊というより武装開拓団のような面が強く、目的に着くと土木作業員となって農地の開拓や建物の建設に従事しました。
なお、一度だけメキシコ人部隊と衝突になりそうになったことはありましたが、一度も戦火を交えたことはないそうです。
7. モニュメンツ・マン
ナチスの手から貴重な美術品を守る部隊
モニュメンツ・マンとは、ナチスの手から貴重な美術品を保護する目的で組織された部隊で、連合軍各国の美術史研究家、美術愛好家、美術学者が招集されました。
まともな軍事訓練も受けてない素人丸出しで銃弾が飛び交う前線に赴き、歴史的に価値が高い建造物の破壊や崩落を防いだり、「重要建造物マップ」を持ち込んで爆撃機に搭乗し、「その地区は爆撃するな!」のディレクションをしたりしました。
戦争末期になると、ナチスの手に落ちていた美術品を回収し、損傷を受けたものはリカバリーし、持ち主の元に返す任務にあたりました。
彼らは数千もの美術品を保護しており、中にはレンブラント、ミケランジェロ、ダ・ビンチ、ヴァーマー、ボッティチェリなどの傑作も含まれていました。
2013年にジョージ・クルーニー主演で「The Monuments Men」というタイトルで映画化もされています。(邦題は「ミケランジェロ・プロジェクト」)
The Monuments Men - Official Trailer (2013) George Clooney, Matt Damon [HD] - YouTube
まとめ
特殊部隊といっても様々ですが、その特性に応じた任務に当たったプロフェッショナルたちはめちゃくちゃカッコいいですね~。
幽霊部隊も資料を探せば面白いエピソードがいろいろ出てきそうです。
あと、 The Monuments Menはツタヤで借りてみようと思いました。