天才は痛風患者に多い?
痛風。
尿酸が体内に蓄積して結晶化し、足や腰、手、肩などの関節に溜まって炎症を起こす病気です。
その痛みは耐え難いほどで、ある人いはく「足の指をペンチではさんで締め上げられるような痛さ」だそうです。
それが頻繁にあるわけですから、ほんと生活してるだけで辛いのでしょうね。
痛風発生のメカニズムは謎の部分が多く、研究が昔から続いているの分野です。ところがその研究過程で
実は痛風になりやすい人は天才遺伝子を持っているのではないか?
という説が唱えられたことがあるのです。
ホント?その根拠って何?正当性はあるの?
痛風との原因とは
体に蓄積された尿酸が針状の結晶となり、それが関節や尿管に溜まって炎症を起こすことで痛みが発生します。
原因は、遺伝子的要素、環境・性格も大きく影響しますが、「ぜいたく病」なんて言われる通り、食生活が原因で起こることも多いです。
食品に含まれるプリン体が体内で酸化して尿酸となり、継続して大量に摂取すると痛風の発生リスクが上がります。
プリン体はエビ、レバー、魚の干物、アルコールに多く含まれており、アルコールの中でも特にビールは、ワインや日本酒、焼酎とプリン体含有数が圧倒的に高く痛風の発生確率を格段に上げる可能性が報告されています。
公共財団法人痛風財団サイト 食品・飲料中のプリン体含有量より
お酒を毎日飲む人は痛風の危険度が2倍で、特にビールを飲む人の危険度が高いと報告されています。
なぜ痛風が起こるのか
尿酸は水に溶けにくく結晶化して体内に留まってしまうため、結石や動脈硬化などの原因になります。
多くの生物は尿酸を分解する仕組みを備えているのですが、人間を含む霊長類と鳥類と一部の爬虫類は進化の過程でその仕組みをどこかに忘れてきてしまったようなのです。
ちなみにティラノサウルスにも痛風の個体がいたらしく、1990年に発見された化石の骨に痛風の症状がみられるそうです。恐竜の子孫である鳥のフンは白いですが、あの白いのの主な成分は尿酸。鳥は尿酸を体の外に排出するを備えたのに、人間はいまだに尿酸を体に貯め続けているのです。
尿酸と天才には何らかの因果関係がある?
昔から偉大な業績を残した人物や権力者には痛風が多いと言われてきました。
それは単純に、権力を握ったから贅沢をして美味しいものを食べまくり、結果的に痛風になったのだろう、という考えもあります。
ところが、痛風患者の属性を調査すると、社長や大学教授などに多いという驚きの結果が出ました。
一歩進めて「知能指数が高い人」にターゲットを絞って調査すると、通常の2~3倍も痛風患者が多いことが発覚したのです。
実は尿酸には知能と何らか関係があるのではないか?
人間は尿酸を体内に蓄えるリスクを負う代わりに、高い知能を手に入れたのではないか?
という仮説が出来てしまったのです。
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痛風だった歴史上の人物
痛風だった歴史上の人物を挙げていくと、偉人・傑人・大人物が多いことに驚きます。
アレクサンダー大王
アレクサンダー大王は33歳の若さで熱病に倒れますが、実は痛風を患っていたそうです。かなりの酒豪であったらしいし、おそらく征服行を進める中でいろいろ接待や豪勢なもてなしがあったでしょうから、食生活から痛風になったと思われます。
フビライ・ハン
モンゴル王家は伝統的に痛風患者が多かったようです。大元ウルス皇帝のフビライ・ハンも例外ではなかったようです。
モンゴル人は肉や乳製品が主食ですから、尿酸をためやすい食生活ではあったのかもしれません。
メディチ家
フィレンツェの銀行家で大富豪だったメディチ家の一家にも痛風持ちが多く、コジモ、息子のピエロ、孫のロレンツォがいずれも痛風だったと言われています。
3代続けて痛風となると、いくら贅沢な食生活をしていたとはいえ、やはり遺伝の影響があるように思えます。
ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ
そのメディチ家をパトロンとしていた天才画家のダ・ヴィンチもミケランジェロも痛風を患っていました。
その他
ダンテ、ゲーテ、スタンダール、モーパッサン、ミルトン、ニュートン、ダーウィン、ルター、カール大帝、フリードリヒ大王などなど…
天才が先か、痛風が先か
痛風患者には偉人が多いことは分かりましたが、本当にそれは痛風(=高尿酸値)が原因だったのか?当然反論はたくさんあります。
反論1. 毎日ビールを飲んでスルメ食ってりゃ天才になるのか?
そんな天才もいるかもですが、そんな晩酌大好きなオッサンが全員天才なわけもあるまい。
反論2.患者の9割は男性だ。女性に天才はほとんどいないとでも言うのか
あまり論理的な議論ができそうにない反論ですが、仮に男女の能力を平等とした場合たしかにバランス的におかしいですね。
反論3. 結果を出す働き方をしている人が痛風になりやすいだけでは
痛風になりやすい性格として、完全主義者でせっかちで、仕事に打ち込みやすい人が傾向としてあるようです。
尿酸値が高い → 天才のような働きをするようになる
ではなくて因果関係が逆で、
天才のような働きをする → 尿酸値が高くなる
ではないのか?
尿酸と知能の関連性を裏付ける新発見
上記のような反論から、尿酸と知能の関連性の研究はストップしていたのですが、
90年代に入って「尿酸の存在下では神経細胞が死ににくくなる」ことが判明。
神経細胞が死ぬとその分知能が下がるので、「尿酸=知能向上物質説」の裏付けの一つにはなるかもしれません。
まとめ
皆様はどう思いますでしょうか。
何らかの因果関係はありそうな気もしますが、
「鶏が先か、卵が先か」の議論と同じで相互に関連していて、どちらが原因でどちらが結果であると断定できないのではないかと思います。
願わくば、痛風にならないで天才になりたいですね。
参考資料:「炭素文明論」佐藤健太郎 新潮社