百科事典を発明した古代の知識人
セビリアのイシドールス(567?-636)は、現在のスペイン・セビリアで活動した古代末期の知識人。
西ローマ帝国崩壊後、ゲルマン民族の侵入で様々な書物が紛失したり焼かれたりする中、地道に書物を収集し情報をまとめ、ローマ帝国の知識を中世以降に残し、ルネサンスにつながる知識の礎を築いた人物です。
その「情報を収集・整理・伝達した」功績により、ローマカトリックから、
インターネット、コンピューター、ITエンジニア、プログラマーの守護聖人に認定されています。
このエントリーでは主に、イシドールスの業績を中心に見ていこうと思います。
イシドールスの生涯
「野蛮」な西ゴート族
イシドールスは現在のスペイン・カルタヘナで生まれたと言われています。
当時のスペインは、西ローマ帝国が崩壊後にスペインの実権を握った西ゴート族の西ゴート王国の支配下でした。
西ゴート族は自分たちの「野蛮」な風習を持ち込みローマ的なものを軽視したため、学問や文化水準が著しく下がっていました。
また、西ゴート族は異端のアリウス派を信仰しており、そこも「ローマ人」たちからすると、とてつもなく野蛮なものに見えたのでした。
西ゴート王国の学問・文化発展に尽くす
イシドールスは、兄のレアンデルの後を継ぎセビリア司教に就任。
西ゴート族にアリウス派信仰を止めさせ、正統派のカトリックに改宗させることに成功。
また、イシドールスは戦乱の中で各地に散らばっていた古典の書籍を収集し、世界最初の百科事典である「語源論(Etymologiae)」を編纂します。
地味なようですが、この業績の意味はことさらに大きく、
語源論がなければ古代ローマの貴重な知識は、ヨーロッパから消えうせていたであろうと言われています。
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古代の知識が集約した百科事典「語源論」
語源論は全20巻448章に渡る分厚い図鑑。1巻から20巻までの内容を羅列してみます。
- 第1巻:文法
- 第2巻:修辞学・方言
- 第3巻:数学・幾何学・音楽・天文学
- 第4巻:薬学
- 第5巻:法律・編年
- 第6巻:聖職本・要職
- 第7巻:神・天使・聖人
- 第8巻:カトリック教会・ユダヤ教会・異端・予言者・シピュラ
- 第9巻:言語学
- 第10巻:語源
- 第11巻:人類学
- 第12巻:獣・鳥
- 第13巻:物理・原子・自然現象
- 第14巻:地理学
- 第15巻:公共建築
- 第16巻:鉱学
- 第17巻:農学
- 第18巻:軍事、ゲーム、法哲学
- 第19巻:船舶、家、衣服
- 第20巻:食べ物、道具、インテリア
なんか図書館にいるみたいですね。
そしてこのように、あらゆる情報をカテゴリーごとに分類して整理しなおすことが、イシドールスが生み出した最大の発明だったのです。
その延長線上に、いま私たちが触っているインターネットがあります。
データベースなんてもろ、「情報をカテゴリーごとに分類して整理する」ことですからね。
IT業界に勤める方は、是非ともイシドールスのご尊顔をプリントアウトして、デスクに飾ってください。
きっとご利益があると思います。