タイで一番有名な日本人「小堀」
タイでは日本のカルチャーが絶大な人気を誇っています。
特に首都バンコクの多くの若者たちは、日本の文化に夢中で、嵐だ、EXILEだ、AKB48だと、日本の若者ばりに日本の芸能人に詳しいです。
ただ、タイの全世代の人を対象にすると、最も有名な日本人は「小堀(こぼり)」という人物になるのではないか、と言われています。
いったい「小堀」とは何者かと言いますと、日本軍青年将校の名前です。
タイで絶大な人気を誇るドラマ「クー・カム」
「クー・カム」はタイの女性作家トムヤンティが発表した小説の名前で、1973年に映画化されたタイの国民的ドラマ。タイ政府高官の娘と、日本軍青年将校「小堀」との切ない恋愛ストーリーです。
あらすじは以下の通り。
第二次世界大戦中、タイに駐屯した日本軍の青年将校「小堀」と、タイ人女性「アンスマリン」の複雑な愛を描く。アンスマリンの父は、抗日組織・自由タイの指導者。父の命令でアンスマリンは小堀と偽装結婚させられてしまう。小堀はアンスマリンに一途な片思いをよせるが、アンスマリンは偽装結婚を嫌い「性交渉はしない」と約束を交わさせる。しかし小堀に約束を破られ自暴自棄になってしまう。だが最後は小堀こそ運命の相手なのだと気づく。
「クー・カム」とは「運命の相手」という意味で、仏教の輪廻転生の教えに基づいていています。1973年の映画化以来、何度もリメイクがなされていて、直近だと2013年に映画化されています。
YouTubeに予告編があったので、興味がありましたらご覧ください。
小堀役は日本人とタイ人のハーフであるクギミヤさんが演じています。
実在の人物がモデル
「小堀」には実はモデルがいます。
タイ国駐屯軍司令官の中村明人陸軍中将です。
中村中将は「ホトケの中将」と呼ばれ、タイ人からも慕われたほど仁義に厚い人だったようです。
「クー・カム」作者のトムヤンティは父から中村中将の話を聞き、自分の理想の男のイメージを重ね合わせて「小堀」を作り上げました。
タイ人の対日感情を変えた作品
タイは開戦当初、日本軍に積極的に協力しますが、敗戦の色が濃くなると日本に宣戦布告。ギリギリで戦勝国の仲間入りを果たします。
「クー・カム」を見るタイ人は、2人の関係をそのまま国家間関係に当てはめ、タイに秋波を送る日本と、戸惑いながらも日本に心惹かれるタイという構図で捉える人が多いようです。
「クー・カム」の影響力は大きく、「小堀」の実直さと誠実さが日本人のイメージと結びつき、戦後の対日感情を良い方向に変えたとさえ言われています。
タイに行くと、
「お前は小堀を知っているか?」
と聞かれることもあるようなので、日本人としては知っておいたほうがいいかもしれないですね。