「東坡肉(トンポーロー)」の生みの親
少しちゃんとした中華料理の店に行くと、必ずといっていいほどある「東坡肉(トンポーロー)」。豚バラ肉を甘辛いタレで煮たもので、脂がトロリとしてこくがあって、大変おいしいものです。
東坡肉の生みの親は、蘇軾(別名・蘇東坡)であるというのが定説になっています。
政治家にして詩人・書家、そして無類の美食家
蘇東坡は中国・北宋の時代の1037年、現在の四川省の生まれ。
北宋時代最高の芸術家と呼ばれ、詩・書の達人。
また各地の知事を歴任し、文部大臣にまで出世したエリート中のエリートです。
加えて無類の美食家。特に豚肉を愛することこの上なかったとのこと。
蘇東坡はその生涯の中で様々な作品を残しましたが、同時に中国の食文化に多大な功績を残した人物でもあります。
左遷先で豚肉との運命の出会い
蘇東坡は若くして科挙に合格したあと各地の知事を歴任し、文部大臣にまで登り詰めましたが、王安石の改革法に反対したかどで左遷。44歳の時には朝廷を批判する詩を作った疑いで投獄され、死罪は免れたものの黄州という田舎町に流されてしまいます。
この黄州は揚子江のほとりにある町で、地味豊かで産物が豊富。特にコメと魚は当時から有名でした。
ほぼ文無しで追放されてしまった蘇東坡は、食うものがなかったので、当時は下賤の者が食うとされていた豚肉ばかり食っていました。
最初は抵抗があったのかもしれませんが、徐々に豚肉を食う底辺の暮らしにも慣れ、変なプライドもなくなったのか、開き直って「豚肉の詩」なるものを創作します。
著名な豚肉の詩「食猪肉詩」
黄州好猪肉、価賎等糞土。
富者不肯喫、貧者不解煮。
著火少著水、火候足時他自美。
毎日起来打一盌、飽得自家君莫管。
黄州の素晴らしい豚肉は、値段がゴミのように安いんだ。
金持ちは見向きもしないし、貧乏人は煮て食うということを知らない。
少量の水でじっくり煮てご覧なさい、充分火が通るとたまらない旨さだ。
毎日起きて一杯ずつ食べているが、これで満足。とやかく言われても何ちゃないね。
出世欲とか自己顕示欲とか、そういうものから開き直って「こんな旨いものが食えてるんだから、わしゃ満足」という心境に達していて、ある意味うらやましいですね。
その後中国各地を転々とするのですが、蘇東坡の豚肉への愛はどこへ行っても深く、
その土地で旨いと言われる豚肉を片っ端から取り寄せては食っていたそうです。
そのため、現在でも蘇東坡が赴任した土地には、その土地ならではの「東坡肉」料理が伝わっています。
河南省・開封の「東坡肉」
ある時、文人の酒宴に招かれた蘇東坡はこんな詩を披露しました。
無竹令人肥、無肉令人痩。
不肥又不痩、竹笋加猪肉。
竹なくば人は脂ぎるし、肉なくば人は痩せこける。
太りも痩せもしないものはつまり、タケノコと豚肉の料理。
これが出席者に大ウケし、文人たちの間でタケノコと豚肉の料理が大流行り。
河南省・開封では東坡肉と言えば、これを指すそうです。
開封風東坡肉のレシピ
- 皮付きポークリブ肉 1kg
- タケノコ 200g
- 調味料(塩4g、醤油50g、砂糖10g、化学調味料3g、酒10g)
- ポークリブは骨を取り除き、8センチほどに揃える
- タケノコは0.3センチほどにスライスする
- 底が平らな鍋に、皮が下になるように肉を並べ、隙間にタケノコを入れる
- 調味料を肉とタケノコが浸るまで注ぎ、弱火で煮る
- 調味汁が少なくなってきたら残りを注いで再び煮る
- 調味料がなくなるまで煮えたら出来上がり
江西省の「東坡肉」
江西省では、わらに包んだ豚肉を刃物で切って食す料理を東坡肉と言うそうです。
これにもエピソードがあります。
ある日蘇東坡が道の木陰で休んでいると、道の向こうから農民の父母が泣きながら子どもを抱えて走ってきました。
少しだけ医学の心得がある蘇東坡が診てあげると、子どもは無事に回復。
喜んだ農夫は、蘇東坡を家に招いて3日3晩ごちそうをふるまいました。
ある朝、豚肉を手に入れた農夫がどのように調理すればいいかを聞こうと蘇東坡の部屋を訪ねました。
「もしもし、豚肉を手に入れたんですが、どのように調理なさいましょうか」
ちょうど蘇東坡は朝露に濡れた外庭を眺めながら詞(ツェー)の創作中。集中しており、農夫の言葉は耳に入ってこない。
「禾草珍珠透心香(香り高い草の香りが体の芯を抜ける)・・・」
ところが農夫は勘違い。
「和草整煮透心香(草と一緒に火が通るまで煮てくれ)ですね、分かりました」と言って、わらと豚肉を煮て蘇東坡に供しました。
出てきた料理を見て蘇東坡はびっくり。食べてみて想像以上に旨くてさらにびっくりしたとさ。
浙江省・杭州の「東坡肉」
蘇東坡はこの地で住民を動員し、災害で荒れた湖を整備しました。橋をかけ、泥で堤を作り、風光明媚な場所に生まれ変わりました。
住民は大喜びし、上等の酒と豚肉を献上しました。
蘇東坡は家の者に命令し、「酒と豚肉の煮込みを住民たちに贈れ」と指示。
ところが家のものが勘違いをし、豚肉を酒で煮込んでしまいました。
ところがこれが香り高い上等の豚の煮込みになったため、杭州ではこれを東坡肉と呼ぶようになったそうです。
杭州風東坡肉のレシピ
- 皮付き豚肉 750g
- 豚骨 2本
- 植物油 30ml
- 調味料(砂糖35g、醤油20ml、玉ねぎ 生姜15g、酒50ml、塩4g)
- 中華スープ1000ml
- ブロッコリー
- 肉を洗い血や汚れを取り除き、ブロッコリーは茹でておく
- 鍋に油をひいて砂糖を入れ、色が変わったら中華スープ30mlを入れ、取り出しておく
- 別の鍋に油をひき、中火で皮を下にしてきつね色になるまで焼く
- 豚骨、調味料、2で作った糖汁、中華スープを鍋にいれ、弱火で2時間煮る
- 焼いた豚肉を投入し、30分ほど弱火で煮る
- 豚骨、玉ねぎ、生姜を取りのぞき、皿に盛る
※下手な中国語翻訳なので間違っているかもしれません。あらかじめご了承ください。