歴ログ -世界史専門ブログ-

おもしろい世界史のネタをまとめています。

ふざけてるとしか思えない世界のミクロネーション

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Photo from "History of the Monarchy" Kingdom of Talossa

 「ボクの王国」を実現させてしまった愛すべきバカ野郎の話

子どものころ、近所に作った秘密基地に名前をつけて旗なんか作ったことなかったでしょうか。ぼくはあります。

 この少年時代に卒業するであろう「ボクの王国」を、マジで実現させてしまったバカ野郎が世界には多くいます。当然国際的には認められていませんが、男の子の夢を追いかけ続ける永遠のキッズと彼らの国を紹介します。

 

1. タロッサ王国

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Photo from "History of the Monarchy" Kingdom of Talossa

14歳の子どもが作った最古のミクロネーション

タロッサ王国は1979年12月26日、14歳のロバート・ベン・マディソンによって作られた国で、ウィスコンシン州ミルウォーキーにある実家の2階の寝室を領土として「合衆国からの離脱と独立」を宣言しました。

マディソンは独立後10年、タロッサ国の言語「タロッサ語」の構築に取り組み、35,000もの独自の単語を作り出しました。当初はタロッサ国の国民は、マディソンの友人や家族の数十人だけでしたが、1997年にマディソンがタロッサ国のウェブサイトを立ち上げ「世界中の人に市民権を利用できる」ようにしたところ、各種メディアに取り上げられて一躍有名に。タロッサ国民は急増することになりました。

しかし、インターネット経由で国民になった「移民」は、インターネットを使わない旧国民を排斥するようになります。マディソンはそのような移民の主張に耳を傾けようとせず自らの方針を国民に従わせようとしたため、移民とマディソンの対立が深まり、反体制派がタロッサ共和国を設立するなど混迷が続き、とうとう2005年8月にマディソンは王を辞任しました。マディソンは孫で8歳のルイ・アダムズ皇太子に指名したのですが、ルイの母親がそれを認めなかったため空位の状態がしばらく続き、結局2007年に投票によりジョン・W・ウーリーが新王に選ばれ、共和国を吸収して再統一を果たしました。タロッサは現在も存続しています。公式サイトはこちら

 

2. アブラム大公国

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Image from "Micronations: Grand Duchy of Avram"

 独自に通貨を発行するミクロネーション

アブラム公国は1980年にオーストラリアのタスマニアでジョン・シャルトンという男によって設立されました。「アブラム」とはユダヤ数秘術カバラで「所有する者、世界の基礎」という意味で、これはまた太陽の放射のシンボルでもあり、宇宙レベルで拡散する生命の鼓動それ自体をも表すそうです。

アブラム公国自体はいかなる領土の領有も主張しておらず、その理念に共感する世界中の「国民」と相互に結び付いたネット的な国家で、アブラム公爵は国王であると同時に、タスマニア州議会の議員でもありました。

アブラム公国が特徴的なのは、「王立アブラム銀行」という銀行を構え、独自の通貨を発行しているという点です。

公爵は経営学の博士号を持っており、その時の知識を生かして銀行を設立し、実際にオーストラリア当局の許可まで取得しました。この銀行というのもまたネット的で、取締役はおらず、年次報告書も作らない銀行というには極めてグレーな組織です。しかし王立アブラム銀行は「デュカル」という名の通貨を独自に発行し始めたため、1985年にオーストラリア政府と財務省はオーストラリア銀行法に基づきシャルトンを起訴しました。合計で6件起訴されましたが、いずれも政府・財務省は敗訴し上告もできなかったそうです。

アブラム公国はその後も独自の通貨を発行し続けており、通貨の価値は上がっているそうです。こちらで通貨の写真が見れます。 

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3. クーゲルムーゲル

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Photo by Priwo

当局による建物の破壊から抵抗するために独立

クーゲルムーゲル共和国の「領土」である球体の建物は、もともとは1971年にアーティストのエドウィン・リップブルガーと息子のニコラウス・リップブルガーが工房として建設したものでした。

しかし、オーストリアのカッツェルドルフの地元当局は、このような形状の建築物は認められないとして取り壊しの命令を下しました。

父エドウィンは当局の破壊から建物を保護するために、自作の道路標識で建物を囲んで「クーゲルムーゲルの町」を建設。後に独自の切手や通貨を発行し、オーストリアから独立した「クーゲルムーゲル共和国」の設立を宣言しました。ここはオーストリアではないので建物は違法でないというロジックです。

許可されていない道路標識を建てた罪で父エドウィンは逮捕され10週間拘留されるのですが、アーティスト親子の当局への抵抗の試みはニュースになって人々の共感を呼び、「クーゲルムーゲル国民」になる希望者が続出。2015年に父エドウィンは亡くなりますが、息子ニコラウスはまだ健在で、有刺鉄線に張り巡らされた共和国の領土に住んでいます。

 

4. ノース・ダンプリング島

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セグウェイの発明者によって設立されたジョーク国家

ノース・ダンプリング島はアメリカ・コネチカット州沖合にある小さな島で、セグウェイの発明者であるディーン・ケーメンによって購入されました。しかし、ニューヨーク州はケーメンに発電用タービンの建設を禁止したため、ケーメンはノース・ダンプリング島の独立とアメリカ合衆国からの離脱を発表。

これは半ばジョークで、合衆国政府には通達されていませんが、ケーメンは友人でもある大統領ジョージ・W・ブッシュ(当時)と個人的に不可侵条約を結んだため、ニューヨーク州も何も言えなくなってしまいました。ケーメンは独自の旗と国歌を書き、これまた友人で、アイスクリームチェーンBen&Jerryの創業者ベン・コーヘンとジェリー・グリーンフィールドを「アイスクリーム大臣」に任命しました。

堂々と風力タービンと太陽光パネルを島に建設したケーメンはまんまと電力を手に入れ、島にストーンヘンジのレプリカや灯台を作ったり、「海軍」である水陸両用車を導入したりなど、新国家建設を楽しんでいるようです。やっぱ金持ちはスケールが違いますね…。

 

5. 西アークティカ大公国

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 南極大陸西部の領土を主張する国家

2001年8月、アメリカ・バージニア州に住むアイルランド系のトラヴィス・マクヘンリーは、南極大陸の西部のマリーバードランドという地域が、どこの国からも領有権の主張がない「無主地」であることを知りました。マクヘンリーはさらに勉強し、南極条約は「国家が新たに南極の領有を主張する」ことは禁止していますが、個人については言及がないことも知ることになります。

そこでマクヘンリーは、南極の領有を主張する7つの国、イギリス、フランス、ノルウェー、オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチン、チリにロシアとアメリカを加えた9カ国に「マクヘンリーとその家族と友人」がマリーバードランドの領有を宣言する手紙を送りつけました。

どの国も相手にしなかっただけだと思いますがどの政府からも反応がなかったため、マクヘンリーはこの主張が国際社会に認められたと解釈しました。

そして次のステップとして、マクヘンリーは2004年6月10日にマリーバードランドを領土とする国家「西アークティカ大公国」の設立を宣言しました。

西アークティカ大公国の中には、エルスワース公国とバード公国という大きな公国が2つあり、その他にも公爵夫人領、男爵領など小さい領土がいくつかあったそうです。本格的な移住計画が持ち上がり、インターネットで集めた五十人ほどの国民がいましたが、突如公式サイトは閉じられ移住計画は白紙になったそうです。

ですが一応まだ西アークティカ大公国は存在し、マクヘンリーから王座を譲位された情報大臣のラヴェンクラフト大公が国の相続権を持っているとされています。

 

6. オーステナジア帝国

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 世界中に領土があるミクロネーション

オースタナジア帝国は2008年に、ジョナサン・オースティンという13歳の少年が、自宅を「ライスシティ」と名付け、父を皇帝に、自らを皇太子としてイギリスからの独立を宣言しました。現在の領土はブリテン島、南北アメリカ大陸、ユーラシア大陸、アフリカ大陸に領土があり、面積はおよそ0.3763㎢とのことです。

独立して以降は「領土拡張」「国際関係構築」「法整備」が進んでいき、陸軍も創設されたそうです。2010年2月15日に初代皇帝テリー1世が退位し、ジョナサン1世が帝位継承を辞退したため、エズモンド3世が2代皇帝になりますが、新皇帝とキャロライン王女との間で対立が起こり、将軍マーシャル・ウィリアムが政府に宣戦布告しました(オーステナジア内戦)。この内戦は政府側の勝利に終わりますが、エズモンド1世は共産主義導入を目指したため、王党派との対立が勃発し王党派が勝利し、デカラン1世が共同皇帝に即位。その後エズモンド1世、次いでデカラン1世が退位し、現在は創立者のジョナサン1世が皇帝となっています。

日本語のウェブサイトも存在し、かなり活発に情報を発信しています。

今回かなりはしょってまとめてますが、オーステナジアの歴史がまとめてあって超面白いです。

 

7. ウィートランド

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サイバー空間に存在する国家

ウィートランドは2008年に設立された、サイバー空間のみに存在する国家です。

民主的・平和的に国境がなく世界中の人々が一つになる国を目指しており、ウィートランド国民で成り立つサイバー経済圏の構築を目指しています。2009年にはネットのみでオーダーできる金貨も発行し、国民同士で流通可能です。

2010年にウィートランド・インスティチュートと呼ばれるマニフェストのようなものを発行しています。彼らの思想はこちらに詳しくまとまっています。

ちなみに、18才以上申請すれば誰でも国民になれます。(こちらからどうぞ

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まとめ

半分以上ジョーク国家ですが、人類の幸福を求めた高尚な理念に基づいてできている国家もあって、「時が時ならどうなっただろう」と思いました。

現在は世界が狭くなり、未発見の土地もなくなり、国家間の争いも法によって定まるようになったので、パッと出の国家が広く認められるようになるのは、今の国際秩序がぶっ壊れない限りはないと思うのですが、このようなミクロネーションの国家の存在が何となく許される寛容な社会であり続けて欲しいと切に思います。

 

参考サイト

 "History of the Monarchy" Kingdom of Talossa

"The Strange History of Talossa, a Bedroom That Was Also a Country" VICE

"Avram" Chiefa Coins

"Grand Duchy of Westarctica" Chiefa Coins

 "Republic of Kugelmugel - A spherical "micro-nation" in the heart of Vienna. " Atlas Obscura 

 "10 Bizarre Micronations" ODDEE