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アイルランド独立闘争 - 南北分断と内戦への道

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対英武装闘争・内戦に突き進むアイルランド

アイルランド独立闘争のまとめの続きです。

前編をお読みでない方はこちらよりどうぞ。

イギリス政府とアイルランドのナショナリストの間で自治法案の策定が進んでいましたが、 第一次世界大戦への関わり方でアイルランドのナショナリストの対応は割れ、内部対立が深まります。

そんな中で共和主義派が起こしたイースター蜂起をきっかけに、自治主義は崩壊し世論は急速に共和主義へ傾いていき、イギリスと協調して独立を成し遂げるのではなく、武力で獲得するという武装闘争路線が強まっていきました。

反英感情の高まりは抑えきれず、とうとうゲリラ闘争が始まります。

 6. IRA(アイルランド共和軍)の成立と武装闘争の開始

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1918年11月11日、連合国とドイツの休戦が実現。第一次世界大戦終結。

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シン・フェイン「ワシらシン・フェインはイースター蜂起の精神を受け継ぐ唯一の党や。イースター蜂起で共和国の独立が宣言されているから、ワシらはアイルランド共和国を主導する立場でもあるっちゅーこっちゃ」

→ 1919年1月、シン・フェインはイギリス議会への党員を拒否し、独自にダブリン国民議会を設立。また独自憲法も採択し、イギリスの意向を無視し共和国の政体を作り始める。大統領にはデ・ヴァレラが就任した。

 

デ・ヴァレラ大統領「アイルランド義勇軍の諸君。諸君はアイルランド人を守る部隊だから、アイルランド人を代表するダブリン国民議会政府を守る義務があるということだ。分かったかね?」

アイルランド義勇軍「分かりました!」

→ アイルランド義勇軍、新たにアイルランド共和軍(IRA)と名称を変更し、シン・フェイン率いるダブリン国民議会政府の正規軍と化す

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IRAがダブリン国民議会政府の傘下に組み込まれ組織化。

さらに、第一次世界大戦の従軍者が多数IRAに加わったことで兵力が強化される。

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1919年1月21日、ソロヘドベグ事件発生。

IRAメンバーが警官2名を殺害し、IRAゲリラが対英武装闘争を開始。

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IRAゲリラ「うおー!イギリス人の手先となるヤツはぶっ殺す!」

→ 全土で王立アイルランド警察の駐在所への襲撃事件が多発

 

IRA総司令コリンズ「イギリスのアイルランド支配を担う組織をどんどん潰せ!」

→ パトロール兵の襲撃や諜報員の暗殺など、奇襲・暗殺・諜報活動を拡大させていく

 

チルダーズ「私は間違っていました。小国ベルギーを助けるための戦争だと思っていましたが、イギリスを利するだけだったのです。私は共和国のために戦います」

→ 自治主義者のチルダーズ、路線転換。シン・フェインに入党し、ゴリゴリの武装闘争派となる。

 

チルダース「共和国アイルランド万歳!私の得意分野は言論です。プロパガンダ戦は任せてください」

→ チルダーズ、新聞や雑誌に寄稿し、反イギリス宣伝とアイルランドの武装闘争の正当性を主張する

 

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ダブリン国民議会は一方的な独立宣言に体裁を整えるべく、急速に国家機構を整備。

一方で、総督府による統治の末端である警官や兵士に対し、武装勢力がゲリラ戦をしかける。

これにより、総督府支配を骨抜きにし、国民議会による支配を強めようとした。

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7. 泥沼化する戦い

 イギリス政府「たいがい先延ばしにしてきたけど、いい加減アイルランド自治法を定めるよ。プロテスタントが多いアルスター6州、カトリックが多い南部26州、それぞれの自治権を与えて、ベルファストとダブリンに議会と行政府を設立する。また、両者の連携のために全アイルランド評議会を置く。どうかね?」

 

イギリス議会「異議なし!!」

→ 1920年12月、アイルランド統治法成立。これにより、北アイルランド6州と、南26州に分割されそれぞれ自治をする構図が成立した。

 

イギリス政府「ようやくカタがついた。さて、ではテロ組織が跋扈するアイルランドに治安回復をもたらさなくては。まずは警察組織の改訂。アイルランド警察に国外から大量に人員をリクルートするよ。あとは大戦の復員兵からなる治安維持隊を派遣して、治安維持にあたらせるよ」

→イギリス政府、治安勢力「ブラック・アンド・タンズ」「オーグジズ」結成。イギリス本土から戦闘経験のある熟練の兵士を大量に投入し、IRAのゲリラ戦に対抗させる。

 

▼残忍さでアイルランド人を恐怖に陥れた「ブラック・アンド・タンズ」の兵士

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治安勢力「IRA、てめえら、よくもやりたい放題やってくれたな。プロテスタントの同胞が味わった苦しみを味わせてやる」

→ ブラック・アンド・タンズとオーグジズの兵、IRAに苛烈な報復戦を敢行。殺害、暗殺、暴行、焼き討ち、略奪などあらゆる手段で残虐行為を行う。カトリックと見るやIRA兵でなくても攻撃した。

 

▼1920年12月11日、治安勢力がコーク市を焼き討ち

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チルダース「世界のみなさん、アイルランドを助けてください!ブラック・アンド・タンズとオーグジズの蛮行はあまりにもヒドい!やつらが通った後はぺんぺん草も生えません!」

 

イギリス市民「…確かにこれはひどすぎる。人道主義とか何とか言って政府は嘘つきだ。またボーア戦争の二の舞を演じたいのか!?」

 

イギリス政府「いや、そんなつもりは…。そもそもIRAがゲリラ活動してるのが悪いのであって…。アイルランドの反乱を押さえ込むためにはこれしか方法が…」

→ チルダーズの宣伝活動もあり、国内外でイギリス政府の対応に対する抗議が増加、対応への圧力が強まる

 

デ・ヴァレラ大統領「国際世論を味方につけなければ。IRAによるテロ行為をやめさせて正規的な戦いをする軍に改変する!お前たち、今すぐ民間人を巻き込むのをやめろ!」

→ デ・ヴァレラ、IRAにゲリラ攻撃をやめるように通告。

 

IRA司令官コリンズ「いやいや、ゲリラ戦じゃないと治安勢力には勝てねえよ。IRAはもう壊滅寸前だ!」

→ IRA、路線変更を図るも、イギリス治安勢力の攻勢の前に壊滅寸前に陥る。

 

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自治法成立以降、治安維持に躍起になったイギリス政府は、本国から熟練の兵士を治安部隊として大量にアイルランドに送り込んだ。

しかし報復の鬼と化したブラック・アンド・タンズ、オーグジズの兵士は、IRAの兵はおろか、カトリックであれば民間人でも平気で殺害したり、乱暴狼藉を働いた。

IRAの勢力は次第に衰えていくも、手段を選ばないやり方に国内外から批判が高まる。泥沼のボーア戦争の記憶も根強く、反戦世論が高まり、イギリス政府はダブリン国民議会と妥結を迫れることになった。

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8. アイルランド自由国の成立

 

 イギリス政府「ダブリン国民議会政府の諸君、ちょっと話しましょう」

 

ダブリン国民議会「ゼエ、ゼエ…、なんや、話って。耳だけやで」

 

イギリス政府「内外からの世論の圧力が凄まじくてな。またイギリスはボーア戦争第二弾やるんかとか言っておる」

 

ダブリン国民議会「ワシもそう思っとったわ」

 

イギリス政府「あんなひどい戦争は二度と御免だ。そこで我々としては休戦したいと思う。もちろん交渉相手は、自治政府議会ではなく、ダブリン国民議会だ。どうだね?」

 

ダブリン国民議会「…悪くないがな。乗ったろうやないか」

→ 1921年7月9日、休戦協定締結。イギリス政府が譲歩し、ダブリン国民議会政府と共和国を実質的に承認。

 

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元イギリス下院議員、アーサー・グリフィス登場

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グリフィス「我々はもう戦う力がない。民衆も疲弊している。いったんはイギリスと妥協し、再度力を蓄えた上で完全な独立を目指そうじゃないか」

 

シン・フェイン指導部「賛成。ワシらが南の代表と承認されただけでも勝利に等しいものや」

 

チルダーズ「なんてことをおっしゃるのです?我々は必死に戦いました。条件は即時の南北アイルランド完全独立。これしかありません!」

→ チルダーズ率いるシン・フェイン右派、あくまでアイルランド全島の即時独立を要求。対立が深まる。

 

1921年7月20日、英首相ロイド・ジョージが講和条約の概要を発表

  • アイルランドには帝国自治領の地位を与える
  • アイルランドには引き続きイギリス軍が駐留する
  • 英国王に忠誠を誓わなくてはいけない
  • アイルランドは北アイルランドを承認しなくてはいけない

 

チルダーズ「反対!反対!絶対反対!アイルランドは即時に全島共和国として独立するし、イギリスとの関係も独立後の共和国政府が決める!」

 

コリンズ「おい、誰かこいつどうにかしろよ。チルダーズのせいで交渉が破談したらどーすんだよ」

 

チルダーズ「はーんたい!はーんたい!」

 

グリフィス「異論もあろうが、イギリス側の提示した条件が今得られる最高の条件に違いない。この条約は、将来的な独立に向けた踏み石となるのだ」

 

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1921年12月6日、アイルランド自由国成立。

自治法制定時よりもはるかに大きな自律性を得る。

南部アイルランドは連合王国から離脱し、イギリスの国名は「グレートブリテンおよびアイルランド連合王国」から、「グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国」に変更される。

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9. 議会・IRAの分裂

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1922年1月14日、南アイルランド議会が召集され、コリンズを議長とする自由国暫定政府が樹立。 ダブリン国民議会は同年8月にアイルランド議会に統合される。

 

グリフィス「本条約を可決する。これにてIRAはアイルランド自由国軍となることを宣言する」

 

条約反対派IRA「絶対反対!オレは自由国軍などに入らない!戦いを続けるぞ」

→ IRA分裂。条約反対派のメンバーは反政府IRAとしてテロ活動を再開。自由国政府への攻撃を行う。

 

グリフィス「内戦は避けなくてはならない。まずは憲法を制定し、選挙を行って国民の信を問おう」

→ 自由国憲法が制定され、国民議会選挙が実施される。

 

グリフィス「みなさん、共和主義への道はまだ遠いですが、まずは共に国づくりを進めていきましょう」

 

アイルランド国民「賛成。もう戦いはこりごり。小難しいこと興味ねえから、政治家は早く具体的な政策立案に取りかかってよね」

→ 1921年5月の国民議会選挙で条約賛成派が議席の7割を獲得。チルダーズも落選する。

 

チルダーズ「条約はイギリスの隷属化への道であり、共和主義への道を閉ざす愚行です!」

 

デ・ヴァレラ「このままでは条約は受け入れがたい。再度イギリスと交渉すべきだ」 

 

 

条約反対派議員「こんな結果は認めない!はんたーい!絶対反対!」

→ 議会、軍ともに賛成派と反対派に決定的に分裂。

 

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戦いに疲れた人々は条約を受け入れ、建設的な政策の立案と実行に写移ることに望むも、チルダーズやデ・ヴァレラ、条約反対派議員、条約反対派IRAは即時の全島完全独立やイギリスとの再交渉を主張。対立が決定的となる。

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10. 内戦勃発

 

1921年6月22日、北アイルランド軍事顧問ヘンリ・ウィルソンがロンドンでIRA活動家に暗殺される

 

イギリス政府「あーあ、反政府IRAやっちまったなあ。暫定政府さん、連中をぶっ潰しなさいよ」

 

 コリンズ「…分かりました」

→ イギリスの支援を受けた自由国暫定政府、フォー・コーツに篭る反政府IRAへの攻撃を開始。アイルランド内戦が勃発する。

 

▼炎上するフォー・コーツ

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チルダーズ「皆の者!立つのだ!立ってイギリス傀儡の自由国政府を打倒せよ!」

 

自由国軍総司令官コリンズ「反政府勢力を叩き潰す」

→ コリンズ、暫定政府議長を辞職し、自由国軍の総司令官に就任。イギリスから1万5,000人の傭兵を集め反政府IRAへの攻撃を開始する。

 

自由国軍「一気に反政府軍を潰すぞ、オラアーッ!」

 

デ・ヴァレラ「やばい、南西部へ撤退だ!」

 

反政府軍「マンスターの住民は条約反対派が多い。そこで戦いを継続するぞ」

→ 自由国軍の攻勢の前に反政府軍は本拠地であるマンスターに撤退。

 

マンスター住民「うげっ、反政府軍来んなよ!戦闘協力だの食料・衣服の提供だの、うんざりなんだよ。協力しねーぞ俺たちは」

→ 反政府軍、マンスター住民からも総スカンを食らう

 

自由国軍「反政府軍の拠点コークを一気に奪還する。かかれ!」 

 

反政府軍の要地スライゴー、カールスバー、クロンメル、ウォーターフォード陥落。

8月9日に反政府軍の最大拠点コーク陥落。8月11日に最後の拠点ファーモイ陥落。

 

自由国軍総司令官コリンズ「チルダーズよ、もうお前たちが勝てないのは分かっただろう。降伏しなさい」

 

チルダーズ「戦いはまだまだです。私たちは決して降伏しません」

 

反政府軍「そうだ、降伏してたまるか。これより山岳地帯でのゲリラ活動に入る」

→ 反政府軍、マンスターの山岳地帯でのゲリラ戦を開始。

 

自由国軍総司令官コリンズ「もういい加減にしないか!反政府軍と直接話をして戦闘を終結させる。おれはアルスターに向かうぞ」

 

コリンズ、交渉のためにアルスターに向かったところを反政府軍によって暗殺される。

また同時期に指導者の一人グリフィスも病死する。

 

▼コリンズの遺体

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自由国軍は市街地戦では反政府軍を圧倒。アルスターの山岳地まで追い詰めるものの、反政府軍は自由国暫定政府の降伏勧告には応じず、山間部でのゲリラ抵抗を開始。

説得しようとしたコリンズは殺害され、両陣営に顔が効く指導者が不在に。戦闘は泥沼化していく。

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11. 内戦の泥沼化

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自由国政府「こうなったら強硬策で何が何でも反政府軍を抑え込む。少しでも抵抗の意思がある者は全部しょっぴいてやる」

 → 1922年9月「公安法」成立。無許可の武器保持や自由国軍への攻撃に対し、死刑も含む厳しい罰則の適応が可能に。

 

自由国政府「いま投降するなら許してやる。早いところ投降しなさい」

 

反政府IRA兵士「いやなこった。まだ俺たちには勝てるチャンスがある。アルスターの住民も俺たちを支持している」

 

アルスター住民「あんたら、早いところ出て行って降伏してくれ」

→ 反政府軍、住民からの支持を決定的に失い、絶望的な戦いを続ける。

 

自由国政府「我が政権の正当性を明らかにするために、条約に反対する立場の者も取り込まなくてはいけない。賛成派反対派を大団結させた共和国政府を樹立する。デ・ヴァレラさん、大統領に就任してください」

 

デ・ヴァレラ「承知した。条約反対派の諸君、戦闘を辞めて共和国政府に集結せよ」

 

反政府IRA兵士「ふざけるな、俺たちはまだ戦いを続けるぞ」

 

自由国政府「ええ…。デ・ヴァレラも反政府軍を掌握してないのかよ。一体誰を抑えればいいの?チルダーズか?デ・ヴァレラさん、チルダーズを呼び出してよ」

 

デ・ヴァレラ「承知した。チルダーズさん、共和国政府の評議会に参加するためにダブリンへ来てください」

 

 

チルダーズ「最近は私は主張発表の場もなく宛名書きをする日々…。分かりました、行きます」

→ チルダーズ、ダブリンへ向かおうとするも、拳銃を所持していたため治安法適応対象となり逮捕される。

 

チルダーズ、軍法会議にかけられ有罪判決、死刑となる。

 

▼死刑直前のチルダーズ

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反政府軍「偉大なる愛国者、チルダーズを殺した政府を殺害せよ!」

 

自由国軍「望むところだ。こっちも盛大に報復してやる!」

 

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チルダーズの死をきっかけに内戦がさらに泥沼化。

報復に報復を重ねる血の応酬が続く

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12. 内戦の集結

1923年4月10日、反政府軍の強硬派リーアム・リンチが死亡

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デ・ヴァレラ「反政府軍諸君、お前たちの参謀長は死んだぞ。まだ抵抗を続ける気か。いい加減やめないか」

 

反政府軍「リンチがいないともう何もできねえよ。分かった。休戦と武装解除をする」

 

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1923年7月31日、かつての独立戦争の戦友同士が戦いあった内戦は終結した。自由国政府軍の死者はおよそ8〜900人。反政府軍の死者はおよそ450人。

ここにおいて、武力で北アイルランドを含む全島を共和国化する試みは失敗に終わった。

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まとめ

その後、デ・ヴァレラ率いるアイルランド自由国政府は、1937年に「1937年憲法」を制定。ここにおいてイギリス国王への忠誠の先生を廃止し、正式に国名を「アイルランド共和国」に改訂しました。 

結果的には、コリンズが主張した「自由国は共和国に達するための踏み石」というステップは正しかったと言えます。

ただし、1937年憲法には「アイルランド共和国あアイルランド島全体からなる国土」と定義されており、現在のアイルランド政府も建前上は、北アイルランドの共和国化を目指す立場です。

愛国者が目指した「カトリックもプロテスタントも1つのアイルランド」はいまだに成し遂げられていません。

 

参考文献