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ホットドッグの歴史 - 「ホットドッグ」の名前の由来とは?

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諸説ある「ホットドッグ」の由来 

ホットドッグは軽いランチや子供のおやつとしてごくありふれた食べ物で、特に珍しいものでもありませんが、考えてみると「ホットドッグ」って変な名前ですよね。

普通に考えたら「ソーセージブレッド」みたいな名前になると思うんですが、なんでまた「アツアツの犬」という名前なんでしょうか。

その歴史と由来を紐解いていきます。

 

1. ホットドッグの発祥はフランクフルトかウィーンか

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古代から存在したソーセージ

 「肉の腸詰め」は古くから食べられていました。軍隊の携行食で、かなり一般的だったようです。

ホメロスのオデュッセイアには、以下のような描写があります。

アンティノオスが、脂と血を一杯に詰めた大きい胃袋を彼に取ってやると、アンピノモスは籠から二個のパンを取り上げて与え、黄金の盃で彼のために乾盃しいうには、

「他国の老人よ、そなたの健康を祈るぞ。後々もそなたに幸いあらんことを― 今は、さまざまな不幸に悩まされているようだが。」

 これはソーセージの描写としては最も古いそうです。今のようなひき肉のソーセージではなく、血と脂のソーセージっぽいのですが、パンも添えられてるようなので、古くからホットドッグのようなパンとソーセージの組み合わせは一般的だったと考えられます。

 

ローマ帝国のソーセージ

現代のようなひき肉を使ったソーセージを発明したのは、ローマ帝国の皇帝ネロのお抱え料理人であったガイウスという男だと言われています。

当時のローマでは、豚は食べる1週間前から飢餓状態にさせて清潔にした後に調理するのが一般的でした。

伝説によると、ある時ガイウスは豚を調理しようとしたが、本当に1週間経っているものか確証が持てず、包丁で腹を裂いて確認しようとした。すると、豚の腸が飛び出して来た。その時ガイウスは「いいアイデアを思いついたぞ!」と叫び、鹿肉と牛肉をミンチにし、小麦とスパイスを混ぜて豚の腸に詰め込んで紐で縛って調理しました。

これがソーセージの始まりである、というものです。

 

フランクフルト発祥の「フランクフルト」、ウィーン発祥の「ウインナー」

フランクフルト・ソーセージは1484年にドイツのフランクフルト市で生まれたとされています。フランクフルトの特徴は、分厚く、柔らかく、皮がパリッと中はジューシーというもの。

1852年にはスパイスを効かせてスモークをした、長く湾曲したタイプが発明されました。このタイプを発明した肉屋は看板犬のダックスフンドを飼っていたので、人々は「ダックスフンドのソーセージ」と呼んだそうです。

フランクフルト市は1984年に「ホットドッグ生誕500年」を祝う大規模な催しを開催しており、フランクフルトのソーセージによってホットドッグの誕生とみなしています。

 

別の伝説によると、1690年代にドイツのコーブルグに住む肉屋のヨハン・ゲオルグヘフナーが「ダックスフンド」または「リトル・ドッグ」と呼ばれたソーセージを開発したというのもあります。この伝説では、ヨハンがプロモーションのためにフランクフルト市を訪れたことがきっかけで、フランクフルトでヨハンのソーセージが広まりフランクフルトが生まれたというものです。

 

一方で、オーストリア・ウィーンの人はウィーンのウインナー・ソーセージこそがホットドッグの起源であると主張しています。

1805年にウィーンのソーセージ職人が自分が開発したソーセージを「ウインナー・ブルスト」と呼んでフランクフルトと区別したそうで、ウィーンっ子に言わせると、「ホットドッグに使うソーセージはウィンナーブルストである。故にホットドッグの起源はウィーンである」というものです。

 

ホットドッグに使われるソーセージはウィンナーなのかフランクフルトなのか知りませんが、真ん中を切ったパンにソーセージを挟んだものがホットドッグなのであって、起源を主張するのは無理があるんじゃないかと個人的に思います。

では、ホットドッグを開発した人は一体誰なのか。

 

 2. ホットドッグを発明したのは誰か

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ホットドッグを正式に「発明」したのはアメリカに移住したドイツ人移民というのは確かですが、具体的に誰かというのは様々な説があります。

まず一つ目が、ドイツ人移民のアントノイネ・フォイヒトバンガーが発明したという説。

1880年に、彼はミズーリ州セントルイスの通りで焼きソーセージを販売していました。

彼は顧客がソーセージを食べている間に手が熱くないように、使い捨ての白い手袋を提供していたのですが、使い捨ての手袋は原価がかさみ、利益が全然上がらない。

見かねた彼の妻が、「ソーセージを真ん中を裂いたパンに入れたほうがコストがかからないのでは?」と提案しました。

彼はパン屋である義理の弟に助けを求め、義弟は要望に応えてソーセージに合う長いソフトロールを焼き上げました。

そうして生まれた「ホットドッグ」は、「レッド・ホット」という名前で販売され、一躍ヒットを飛ばすようになったそうです。

 

もう一つの説が、1867年にニューヨークのドイツ移民のパン屋カール・フェルトマンが発明したという説。

1867年、カール・フェルトマンはパイのワゴン販売をしており、コニー島のビーチに並ぶ宿屋や軽食屋に焼きたてのパイを配達していました。

ある時フェルトマンのクライアントが、「ホットサンドイッチのようなものを提供できないか」と彼に相談しました。しかし彼のワゴンは小さく、色々な種類のサンドイッチを作るのは難しい。

そこで考えた結果、彼はおそらくパンに乗せたホットソーセージのような単純なものが解決策かもしれないと思いつきました。

さっそくワゴンをドノバンという男に依頼して改造し、パンの鮮度を保つための鍵付きの輸送箱と、ソーセージを茹でるための炭のストーブ、ホイールライト取り付けました。

ドノバンはソーセージのサンドイッチは奇妙なアイデアだと思っていましたが、フェルトマンが作った試作品を試して見たところ、大変旨かった。こうしてホットドッグが誕生したのだ、ということです。

起業家精神に溢れるフェルトマンは、ニューヨーク市ブルックリンの6番街と10番街の角にパン屋をオープンさせて成功を収め、後にサーフアベニューに9つのレストランとホテル、ビアガーデン、パビリオンなどを含む商業施設をオープンさせました。

 

その他にも、1860年代にドイツからの移民がニューヨーク市のバワリーで、ミルクブレッドにソーセージとザワークラウトを挟んで売っていたのが始まり、という説もあります。

 

ホットドッグがアメリカで急速に広まったのは具体的には1893年のことで、シカゴ万国博覧会の会場人気を博したことに加え、セントルイス・バーとセントルイス・ブラウンズのメジャーリーグ・チームのオーナーであるクリス・ヴォン・デ・アエが、ビールとソーセージを野球場で初めて売り出し人気を集めたことがきっかけとされています。

 

ただしこの頃はまだホットドッグという名前にはなっていません。

ではいつ、誰がホットドッグという名前を作ったのか。これも諸説あります。

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3. ホットドッグの名前の由来とは?

まず一つ目がハリー・モズリー・スティーブンスという男が販売の掛け声のために言ったという説。

1902年4月、ニューヨークのポロの試合で、スティーブンスは寒い4月の日に、アイスクリームと冷えたソーダを売ろうとしていて大失敗した。挽回を図ってありったけのソーセージとパンをかき集め、ホットドッグにして売ったところ大成功を収めた。

彼はポータブル湯沸かし器とパンを抱えて「熱いよ!(Red Hot!)お熱いうちにダックスフンド・ソーセージ(Dachshund Sausages)をお買い上げください!」と叫びながら売って回ったそうです。

それを見たニューヨーク・ジャーナルの漫画家タッド・ドルガンが、今話題のダックスフンド・ソーセージ屋の紹介記事を漫画で新聞に掲載する時に、スティーブンスの掛け声を漫画に書くために少し省略し、「ホット・ドッグ!」という掛け声で売っていると書いたのが始まり、というもの。

もっともらしいですが、ドルガンが書いた漫画というのは実のところ発見されておらず、証拠がないのがこの説の弱点です。

 

もう一つの説が、1894年にイェールやハーバードなどの東部の大学で生まれたというもの。

1894年の秋ごろから、イェール大学内の寮で「ドッグワゴン」という店が「ホットドッグ」という名前でパンとソーセージを売ったのが始まりというものです。

当時はドイツ人の肉屋が売る肉は「怪しげな肉」の代名詞とされており、ドイツ人移民がドイツから連れてきた珍しい犬ダックスフンドを見たアメリカ人は、「ドイツ人の肉はダックスフンドの肉を使っているのさ」とジョークを言うのが定番でした。

「ドッグワゴン」もスピーカーでこのような掛け声を流しました。

犬は吠えるのと噛むのが大好き

この格言は然り

けどオレはパンに挟まった犬を噛むのが大好きさ

「ドイツ人が売る肉は犬の肉」 というのは、偏見に基づいた悪口ですが、実際のところドイツ人も昔からソーセージと犬を結びつけて連想しており、「リトル・ドッグ」や「ダックスフンド」と昔から呼んでいたので、「ホットドッグ」という名前はドイツ人自身もさほど違和感がなかったのかもしれません。

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まとめ

どうやら、ダックスフンドの細長い胴体をソーセージに例えるのは、かなり昔からドイツ人がやってきていたようです。

ドイツ人がアメリカに持ち込んだソーセージはアメリカ人の好みに合い受け入れられていきますが、その過程である種のドイツ人への偏見やイメージが商品名になり、「ホットドッグ」という言葉が生まれたようです。

 それにしても、ソーセージをパンに挟むだけのシンプルな料理なので、同時多発的に生まれてもおかしくないですし、誰が発案者かを証明するのは無理そうな気がしますし、もともとドイツ人が古くから「犬とソーセージ」の連想を持っていたので、初めて「ホットドッグ」という名前を使った人を証明するのも、これまた難しそうです。

 

 

参考文献

"Hot Dog: A Global History" Bruce Kraig

 

参考サイト

"Hot Dog History" From the National Hot Dog and Sausage Council

"History and Legends of Hot Dogs" What's Cooking America

"Why Are Hot Dogs Called Hot Dogs? The Etymology of America's Favorite Sausage in a Bun" The Spruce Eats