多くの人が騙された!?微妙に本当っぽいニセ記事
4月1日には企業やメディア媒体がエイプリルフールのウソ記事を出していて、
その面白さを競うのが恒例行事になりつつあります。
ここ10年くらいですかね、そういう流れが出来たのは。日本にもエイプリルフールが定着してきた証だと思います。
特に欧米圏などエイプリルフールの伝統が長い国では、昔からニセ記事が掲載されて読者を楽しませ、時には微妙に本当っぽく書かれて騙されてしまうことまでありました。
ということで、伝説的なニセ記事を集めました。
1. タコベルが「自由の鐘」を買いました
1996年4月1日、アメリカの大手6紙(フィラデルフィア・インクワイア、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、シカゴ・トリビューン、ダラス・モーニング・ニュース、USAトゥデイ)が同時に、
「ファーストフードチェーンのタコベルが自由の鐘を購入した」
と報じました。
「自由の鐘」はアメリカ・フィラデルフィアにあり、1751年にペンシルベニア州議事堂の鐘として鋳造されて以来、独立戦争や南北戦争、奴隷解放などアメリカの歴史的な出来事を知らせ続けてきた鐘で、アメリカ人にとっては「アメリカの歴史の証人」のような存在です。
タコベルはプレスリリースを出し、目的は「国の借金を減らすため」であり、「これまでと変わらず一般公開をする」こと、そして「名前を"Taco Liberty Bell"と変更する」と発表しました。
反響はすさまじく、直ちにタコベル社と自由の鐘を管理するフィラデルフィア国立公園の事務局に電話が殺到。
公園のスタッフは困惑した。「こんなことがあるとは思ってもみなかった。非常に遺憾だ」。
あまりに問い合わせが殺到したため、昼前に国立公園は記者会見し、「自由の鐘は安全だ、誰にも販売していない」という異例の声明を発表。
そして午後にはタコベル社は2度めのプレスリリースを発表し、
「前のプレスリリースはいたずらだったこと、タコベル社は自由の鐘の保全活動のために5万ドルを寄付すること」を発表しました。
日本で例えたら、森ビルが皇居の土地を買って「皇居ヒルズ」を建設します、とか発表した感じですかね。めちゃくちゃ怒られそうですね。
2. インド洋の小国「サン・セリッフェ」の特別レポート
1977年4月1日、イギリスの新聞紙「ザ・ガーディアン」は7ページも渡る「特別レポート記事」を掲載しました。
それは独立から10週年を迎えたインド洋の小国「サン・セリッフェ」に関するレポートで、島の地理から住民の文化までが詳細に書かれていました。
7ページはすべてこちらの外部サイト(英語)でご覧になれます。
記事をかいつまむと以下のとおり。
・サン・セリッフェは15世紀にはスペインとポルトガルによって支配されていたが、17世紀にイギリスの保護領となった
・1967年にイギリスから独立したものの、複数の独裁者が乱立していた
・1971年、マリア・ジェス・ピカという若い将軍が無血クーデーターで権力を手に入れ大統領になり、政治は安定した
・サン・セリッフェでは、すべての取り決めは1年後に失効され、大統領の二番目の従兄弟であるアントニオ・"チェ"・ピカによって再交渉される
・ 非常に治安がよく、観光客は多様な文化、モダンなハイウェイ、エアコンの効いたホテル、そしてビーチを満喫できる
・リン酸塩、観光、石油産業のおかげで空前の好景気にある
・以前は農業国だったサン・セリッフェは急激に輸出国として変わりつつある
この記事はもちろん全部ウソなんですが、歴史・文化・政治・地理・経済まで事細かに書かれており、しかも広告までニセモノという手の込んだもの。
ギネス社「サン・セリッフェはいかにギネスをひっくり返らせたか」
テキサコ社「ジェームス・ハントの客になったような豪華サン・セリッフェの旅2週間を当てよう」
反響はすさまじく、掲載された当日から「もっとサン・セリッフェについての情報を教えてくれ」という電話が殺到。数百の手紙が編集部に届いた。
さらには「自由サン・セリッフェ戦線」を名乗る団体から、「この記事は体制側にあまりに寄りすぎており公平性に欠ける」という抗議の手紙すら届いたそうです。
調子に乗ったガーディアン紙は「サン・セリッフェに行ってきました」と書かれたステッカーやTシャツまで作ってしまい、これまた大反響となりました。
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3. 南スイスではスパゲッティの収穫がピークを迎えています
1957年4月1日、英BBCは南スイスで行われているという「スパゲッティの収穫」に関する3分のニュースを放送しました。
ニュースでは、「スパゲッティの木」に見事に成ったスパゲッティを女性たちが一つ一つ収穫し、天日干しにしたあと、茹でて食べる様子が収められています。
この放送は大反響を呼び、BBCには
「私もスパゲッティの木を育てたいのだが、どうすればいいのか」
という問い合わせの電話が100件以上もかかってきた。
1950年当時、スパゲッティはイギリスではそんなにポピュラーなものではなく、本気でスパゲッティは「木に成るものだ」と信じてしまった人が大勢いたそうです。
4. 白黒テレビがカラーで見える方法が発見されました
1962年4月1日、スウェーデンのテレビ局SVTが
「ナイロンストッキングをかけるだけで、あなたがお使いの白黒テレビがカラーになります」
というウソニュースを放送しました。
ニュースでは、シェル・ステンソンという名の「専門家」が登場し、白黒テレビの前に座って「いかにして白黒テレビがカラーで見えるか」の理論を等々と説明する。
彼の語る内容は非常に専門的で小難しく、「光のプリズム」や「二重スリット干渉」などそれっぽいんだけどよく分からない内容で視聴者を置いてけぼりにする。
そしてとうとう最後に
「画面の表面がメッシュ状になっていると、光の屈折によりもともと物質が持っていた色素が見えるようになる」
と言い、お手持ちのナイロンストッキングをかぶせて試してみてください、と視聴者に呼びかけました。
ステンソンは「光のスペクトルに合わせるために、頭を前後に動かさなくてはなりません」と付け加えました。
実際に多くの視聴者が騙されて、ストッキングをテレビに被せて、頭を前後に動かしてカラーに見えるかを試したらしく、
現在の初老のスウェーデン人たちの中には彼らの父母が「一生懸命頭を前後に動かしていた」のを覚えている人も多いらしいです。
ちなみに、スウェーデンでホンモノのカラー放送が始まったのはこのウソ放送の4年後の1970年だそうです。
まとめ
昔は結構思い切ったウソニュースが流れていたんですね。
毎年エイプリルフールネタは楽しませていただいてるのですが、置きに行ったいかにもウソっぽいウソも多いので、議論を巻き起こすような面白いウソニュースを期待しています。
毎年エイプリルフールの企画で頭を悩ませる担当者の皆様は、ぜひご参考になさってくださいませ。
参考
"The Swiss Spaghetti Harvest" Museum of Hoaxes
" Instant Color TV" Museum of Hoaxes
"The Taco Liberty Bell" Museum of Hoaxes
"San Serriffe" Museum of Hoaxes
・この本超おもしろそう