歴ログ -世界史専門ブログ-

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レバノン移民の歴史

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多くの人材を輩出したレバノン系移民の光と影

ヨーロッパ系の人はレバノンと聞くと以下のようなイメージを思い浮かべると言います。

地中海リゾート、移民、美女、豪華で瀟洒な建物。 

日本人に同じ質問をしたらこのような答えが返ってくるかもしれません。

内戦、ヒズブッラー、カルロス・ゴーン、爆発事故。

いずれのイメージも一面的ではありますが、間違ってなく、レバノンという国の側面を表しています。 

そうしたイメージに寄与しているのが今回扱うレバノン移民です。レバノン移民は19世紀後半から世界中に拡散し国際的な影響力を高める一方で、レバノン本国に対しても影響力を与え「魔境国家」を形成しました。

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1942年ナチスがカナダを占領した「もしもの日」

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もしもナチス・ドイツがカナダの町を占領したら

新型コロナウイルスの世界的流行は、各地で悲劇や混乱を引き起こしていますが、一方で平時はとてもできない社会実験が行えているという側面もあります。

同じように、平時にはとてもできない実験が第二次世界大戦中という戦時に行われていました。実験というよりはショック療法やドッキリといった方が正しくはあるのですが。

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「敵前逃亡」の罪で処刑された兵たち

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軍紀違反で死刑になった20世紀の人物 

昔から敵前逃亡は軍事の世界では重い罪でした。

最前線で戦う兵士の後方には抜刀した指揮官が控えていて、前線から逃げてきた兵士を「逃げるな!腰抜け!」と罵りぶった切った、などという話は枚挙に暇がありません。

逃亡した兵士は重い罪に問われ、捕まると死刑となることもあったのですが、この慣習は20世紀まで普通にありました。第一次世界大戦では、例えばイタリア軍では750名が処刑されています。イギリス軍では306名が軍紀違反で処刑されました。

第二次世界大戦のアメリカやカナダでも、敵前逃亡の罪で死刑になった人がいます。

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名前は知られていないが大きな戦果をあげたヴァイキング

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ヴァイキング時代に各地を荒らし回った戦士たち 

9〜11世紀のバイキング時代には、ヨーロッパだけでなくロシア、カフカス、中東、北アフリカ、果てはアメリカ大陸にまでバイキングが進出し、盛んに交易・略奪・移住を試みました。

有名な人物だと、ノルマンディーに侵入したロロ(ロベール)、北海帝国を築いたクヌート、ノヴゴロド国を築いたリューリク、グリーンランドに移住した赤毛のエイリークなどがいます。しかし記録が少ししか残っておらず、名前が知られていないヴァイキングは星の数もおり、中には歴史に大きなインパクトを残した者もいます。

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日本海だけじゃない世界の「地名呼称問題」

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 国際標準地名をめぐるナショナリズムの戦い

日本海という呼称をめぐる問題は、日本というよりは韓国・北朝鮮において盛んです。

韓国・北朝鮮は、日本海という呼称は日帝強占期に定着した名であるとして、「東海」または「朝鮮海」の併記または単独表記を求めています。韓国では官民を挙げて「誤りを正す」粘り強い取り組みがなされていますが、「Sea of Japan」が定着しているため、国際的に広く影響が及ぶような成果は上がっていません。

日本海呼称問題(東海呼称問題)は、「本来あるべき」と韓国・北朝鮮が考える理屈を国際的に認めさせようとする試みですが、このような運動や取り組みは、実は世界中に多く事例があります。

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ルクセンブルクの歴史ー翻弄される小国から国際協調の大国へ

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西ヨーロッパの小国の激動の歴史

 ルクセンブルクはドイツ、ベルギー、フランスと国境を接する内陸国で、面積は2,586平方キロメートルと神奈川県よりやや大きい程度。

政体としては立憲君主制に基づく議会制民主主義で、大公により統治される世界で唯一の「大公国」です。

小国のためあまり馴染みはありませんが、いわゆる「ベネルクス三国」の一翼として欧州連合(EU)の中核であり、欧州投資銀行や欧州会計監査院といった国際機関が拠点を構える国です。

こんな小さな国がなぜ起り、国を維持でき、そして国際政治の中心的な存在となりえているのでしょうか。 

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「黒い聖母」と中南米の民衆カトリシズム

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土着の宗教とカトリックが混ざった独自の信仰が生まれた中南米

「民衆宗教」とは、一般の人々に広まって信じられている宗教で、社会の支配層が定めた教義や儀礼ではなく、なんとなく広まっている、組織化されていない教義や儀礼を信仰する宗教のことを言います。

南米では、支配者のスペイン人によってカトリックがもたらされましたが、アメリカ原住民の土着の宗教と、アフリカから奴隷として連れてこられた黒人の部族宗教が根強く、これらのローカルな宗教が土台にありその上にカトリック信仰がかぶさるという独自の信仰体系が生まれました。この南米の民衆宗教を「民衆カトリシズム」と呼びます。

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テディベアの歴史

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畏敬の対象から愛玩動物へ

熊は古代ヨーロッパでは畏敬の対象でした。戦士は熊の皮を被って戦いにいきパワーを得ようとしたし、家には骨や首などを飾って魔除けとしました。

中世以降は熊は庶民ではサーカスの動物として人気者になり、王侯貴族の間では狩猟の対象として人気となりました。ですが長い間、熊をぬいぐるみやおもちゃなどにする習慣はなく、19世紀以降のことです。

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