歴ログ -世界史専門ブログ-

おもしろい世界史のネタをまとめています。

歴ログ-世界史専門ブログ-は「はてなブログ」での更新を停止しました。
引き続きnoteのほうで活動を続けて参ります。引き続きよろしくお願いします。
noteはこちら

「黒い聖母」と中南米の民衆カトリシズム

 f:id:titioya:20190928005655p:plain

土着の宗教とカトリックが混ざった独自の信仰が生まれた中南米

「民衆宗教」とは、一般の人々に広まって信じられている宗教で、社会の支配層が定めた教義や儀礼ではなく、なんとなく広まっている、組織化されていない教義や儀礼を信仰する宗教のことを言います。

南米では、支配者のスペイン人によってカトリックがもたらされましたが、アメリカ原住民の土着の宗教と、アフリカから奴隷として連れてこられた黒人の部族宗教が根強く、これらのローカルな宗教が土台にありその上にカトリック信仰がかぶさるという独自の信仰体系が生まれました。この南米の民衆宗教を「民衆カトリシズム」と呼びます。

続きを読む

テディベアの歴史

f:id:titioya:20210111125200j:plain

畏敬の対象から愛玩動物へ

熊は古代ヨーロッパでは畏敬の対象でした。戦士は熊の皮を被って戦いにいきパワーを得ようとしたし、家には骨や首などを飾って魔除けとしました。

中世以降は熊は庶民ではサーカスの動物として人気者になり、王侯貴族の間では狩猟の対象として人気となりました。ですが長い間、熊をぬいぐるみやおもちゃなどにする習慣はなく、19世紀以降のことです。

続きを読む

感染症の薬を開発し多くの命を救った医学者列伝

f:id:titioya:20210107182034j:plain

人類の脅威に立ち向かってきた偉大な医学者たち

2021年現在も新型コロナウイルスは全人類の脅威であり、世界中の医療従事者がこの強力なウイルスと日夜を問わず戦っています。心から感謝申し上げなくてはなりません。

 また、世界中の製薬会社や医学者たちが、新型コロナウイルスに有効なワクチンや製薬の開発、科学療法や物質の発見を急いでいます。感染症・伝染病に対するワクチンとしてはこれまでにないスピードで開発・治験・接種が進んでいます。ゲノム解析が完了してから1年も経っておらず、驚くべきことです。

 このような医療技術の発展も、これまでの先達の医学者たちの研究があってのことです。今回は歴史上の偉大な、感染症の特効薬を発明した医学者たちをピックアップしてみます。

続きを読む

電子レンジの歴史 ‐軍事用レーダーからキッチン家電へ-

アイリスオーヤマ 電子レンジ 17L ターンテーブル 単機能 出力3段階 【東日本/50Hz】 ブラック PMB-T176-5

「20世紀のキッチン革命」電子レンジの歴史

電子レンジが家にない人はそういないと思います。

料理はしない人も買ってきたお惣菜やお弁当を温めることはあるはずで、シンクやコンロよりも電子レンジを使う機会のほうが多い、という人もいるのではないかと思います。

電子レンジが発明されたのは1945年のことです。第二次世界大戦期のレーダー技術開発の副産物として生まれた電子レンジは、20世紀のキッチンに革命を起こした偉大な発明となりました。 

続きを読む

2020年に読んでおもしろかった本10冊

f:id:titioya:20201116003001j:plain

「歴史に残る2020年」に読んだものたち

2020年もそろそろお終いです。

今年は新型コロナの影響で 在宅時間が増えて、読書時間が増えた人も多かったのではないでしょうか。そんな私は図書館にしばらく行けなくて、ネット書店でのお取り寄せ頻度が去年比で2倍以上になりました。

図書館にあるやや古い本ではなく、比較的新しく出た本を読む機会が増えたわけです。せっかくですので、2020年に読んだ本で面白かったものを10冊紹介してみます。

続きを読む

中世ポルトガルの歴史 -ヨーロッパの辺境から海洋帝国へ-

f:id:titioya:20030726124316j:plain

Photo by Abelson 

どうやって辺境国ポルトガルは海洋帝国になったのか

 ポルトガルは1143年に、カスティーリャ=レオン王国から独立してできた国です。

もともとはレオン王国の前身であるアストゥリアス王国のアルフォンソ3世が9世紀半ごろからアル・アンダルスの内乱の隙を狙ってガリシア人の農民を入植させ、ポルトゥカーレ伯領を設立したことに始まります。

 ポルトガルは長年ヨーロッパの辺境、言葉を選ばずに言うと超ド田舎国だったわけですが、15世紀から大航海時代の先駆者として時代を先駆けていく存在になっていきます。

今回は大航海時代以前、どのようにポルトガルという国が作られていったかをまとめていきます。

続きを読む

「幸せの国」ブータン王国の歴史

f:id:titioya:20201104211851p:plain

ヒマラヤの山岳小国の歴史

ブータンという国名の由来は二つあります。

一つ目はサンスクリット語の「ボータンガ(チベットの手足)」から来ているという説。もう一つが同じくサンスクリット語で「ボーターンタ(チベットの辺境)」から来ているというもの。いずれにせよ、ブータンはチベットの外縁として成長した国です。

 ちなみにブータンの共通語ゾンカ語では国名を「ドゥク・ユー」と言います。これは「ドゥク派の国」という意味で、チベット仏教のドゥク派のことで、ブータンという国の成り立ちを端的に表した国名です。

続きを読む

強制収容所・人種差別と闘った日系アメリカ人

f:id:titioya:20200802145612j:plain

様々な形で「収容所」を克服しようとした日系アメリカ人たち

第二次世界大戦中、日系アメリカ人がアメリカ政府の政策により強制収容所に収容されたことは非常によく知られています。

日系人に対する不当な扱いは後に問題視され、1989年に大統領ジョージ・H・W・ブッシュは、存命中の元収容者に対して謝罪と賠償金の支払いを行うことを表明しました。

戦後40年以上たってようやくアメリカ政府が過ちを認めたその背景には、収容所を生き延びた日系アメリカ人の人々の協力で粘り強い働きかけ、そして社会的な成功があってのことでした。

今回は非常に高名な日系アメリカ人で、日系や社会的弱者の地位向上、差別の撤廃を目指す運動など、それぞれの形で「祖国アメリカ」と向き合った人物をピックアップします。

続きを読む