歴ログ -世界史専門ブログ-

おもしろい世界史のネタをまとめています。

歴ログ-世界史専門ブログ-は「はてなブログ」での更新を停止しました。
引き続きnoteのほうで活動を続けて参ります。引き続きよろしくお願いします。
noteはこちら

強制収容所・人種差別と闘った日系アメリカ人

f:id:titioya:20200802145612j:plain

様々な形で「収容所」を克服しようとした日系アメリカ人たち

第二次世界大戦中、日系アメリカ人がアメリカ政府の政策により強制収容所に収容されたことは非常によく知られています。

日系人に対する不当な扱いは後に問題視され、1989年に大統領ジョージ・H・W・ブッシュは、存命中の元収容者に対して謝罪と賠償金の支払いを行うことを表明しました。

戦後40年以上たってようやくアメリカ政府が過ちを認めたその背景には、収容所を生き延びた日系アメリカ人の人々の協力で粘り強い働きかけ、そして社会的な成功があってのことでした。

今回は非常に高名な日系アメリカ人で、日系や社会的弱者の地位向上、差別の撤廃を目指す運動など、それぞれの形で「祖国アメリカ」と向き合った人物をピックアップします。

続きを読む

ノルマン人の南イタリア征服 -ノルマン朝シチリア王国の成立-

f:id:titioya:20200626161329j:plain

南イタリアの支配者となったヴァイキングの末裔たち

西ローマ帝国崩壊後、現在の西ヨーロッパと北アフリカはゲルマン系民族によって大部分が占領されました。

イタリア半島ではオドアケルの王国を廃した東ゴート王国が建国されましたが、東ローマ帝国によって倒され再び皇帝の下に再統一されました。しかし6世紀半ばにロンゴバルド族が北から侵入してロンゴバルド王国を築きますが、彼らはイタリア半島を統一できず、北イタリアとスポレート公国、ベネヴェント公国を支配しました。一方で東ローマ帝国はシチリアやカラブリアをはじめ、断片的な領土を支配しました。

その後、ロンゴバルドと東ローマ帝国の領土からは都市国家や公国が分裂していきます。このような複数の勢力が対立する政治的状況が、北方のノルマン人が南イタリアに地盤を築く機会を提供することになります。ノルマンディからやってきたロベール・ギスカールや弟のロジェール一世、息子のロジェール二世らが、武力と政治力を背景に南イタリアを統一し、ノルマン朝シチリア王国を開いていきます。

続きを読む

キーボードの歴史 - なぜQWERTY配列が定着したのか

f:id:titioya:20200722213105j:plain

 なぜキーボードはQWERTY配列が一般的になったのか

我々が使うパソコンのキーボードの配列は、よほどこだわってない限りQWERTY(クワーティ)配列になっていると思います。

別に何かルールで決まっているわけではなく、単に世界中に広く普及しているだけで、色々な配列が世には存在し、こだわりを持つ人も多くいます。ですが、会社や学校で支給されるパソコンはQWERTY配列なので、いくらこだわりがあっても逃げられない感があります。

 QWERTY配列が生まれたきっかけは、タイプライターの性能がよくなく、頻出するキーが近い位置にあると機械が故障するため、わざと頻出キーを遠くに配置しているという説が根強くありますが、この説は現在は疑問が呈されています。

続きを読む

フランコ独裁体制下のスペインの歴史

f:id:titioya:20200904153312p:plain

硬直したカトリック保守体制の正体 

 スペインは1975年まで軍人フランシス・フランコの長期独裁体制下にありました。

当時のスペインはカトリック信仰に基づいた保守的・家父長的な規範が推奨され、国が隅々まで国民を監視し行動や発言、表現に介入してくる極めて息苦しい国でした。スペインは現在は世界でもっともフェミニズム運動が盛んな国の一つなので隔世の感があります。

 フランコ独裁体制のスペインの歴史と社会についてまとめていきます。

続きを読む

西洋絵画に見るギリシア神話『トロイア戦争』の物語

f:id:titioya:20200909091026j:plain

 知ってるようで知らないトロイア戦争の物語

 「トロイアの木馬」は歴史に詳しくない人でも知っているくらい非常に有名なお話です。コンピューターウイルスの名前になっているくらいなので、一般的にもなじみ深いです。

しかしその他のエピソードはあまり馴染みがないのではないでしょうか。

古代ギリシア文化を基礎に発展したヨーロッパではトロイア戦争は非常によく知られており、西洋絵画でもたびたびモチーフにされます。

今回はトロイア戦争がモチーフの絵画をピックアップし、著名なストーリーをまとめていきます。

続きを読む

一代で崩壊した帝国・王国

f:id:titioya:20200708214456p:plain

 創業者の代で崩壊してしまった短命の帝国・王国

いかに短命な王朝・王国であっても、皇帝・国王の代は数代続くのが普通です。大抵は二代目以降に混乱が生じてきます。後継者問題、前王朝・王国の末裔の抵抗、地方有力者の反乱、外国の侵略、自然災害など。

多くの場合、創業者は前王朝・王国の混乱を収束させ治安と安定を回復し、国を開きます。信望があったからこそ支配者となれたわけです。

それだけに、創業者が亡くなるとその王朝・王国も滅びてしまうということは、よほどその人物に問題があったか、かなり無理な状態で国を建設したか、外国の侵略や自然災害など想定外の出来事が起こったか。

いずれにしても異常事態と思われるわけです。

今回は一代で崩壊してしまった帝国・王国をピックアップしていきます。

なお、満州帝国などの傀儡国家は除外して純粋な民族国家のみで選んでいます。

続きを読む

消火器の歴史

f:id:titioya:20200808020252j:plain

これまで数多くの人命を救ってきた消火器の発展の歩み

消火器は1723年にイギリスで発明されました。

19世紀に近代的な消火器が誕生して使い勝手が向上し、20世紀になり性能が向上し普及が進んでいきました。消火器の歴史は、効率と消火能力をさらに高めるために、設計にさまざまな変更を重ねてきた技術改良の歩みです。

続きを読む

アジア・アフリカの10の「民族統一主義運動」

f:id:titioya:20200614152221j:plain

 欧州の考えを輸入したアジア・アフリカ的民族統一主義の形

 以前、ヨーロッパの民族統一主義運動についてまとめました。

過去に自民族が保有していた・または勝ち取っていた領土の回復、自民族のルーツであるが今は他国にある土地の回復、他国に住む自民族の土地の政治的統合、自らの民族に近い言語を話す民族の土地の政治的統合、といったものを目指す国粋主義的な考え方です。

 今は多くの地域で人気を失っていますが、第二次世界大戦前後は大きな影響力を持った考えで、民族主義・国粋主義・排外主義がの加速が悲劇的な戦争をもたらしてきました。

 民族統一主義はヨーロッパだけでなく、アジア・アフリカにも見られます。特にアジア・アフリカでは第二次世界大戦以降の独立後に、民族主義・愛国主義を鼓舞するために利用されました。

続きを読む