歴ログ -世界史専門ブログ-

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【中国史】なぜ明朝は「海禁政策」を始めたのか

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明朝によるグローバルシステム構築の試み

経済発展と科学技術の発展が著しい中国。

中国の政治・経済・科学についてのニュースを聞かない日はないくらい、国際舞台での中国の存在感は増しています。以前は国際秩序の構築には関心を示さなかった中国も、AIIBの創立などで中国発の政治経済交易圏を作ろうとしています。

 これは歴史的に見ると目新しいことではなく、自国と体制の安全保障を確立しながらも、あふれんばかりの旺盛な人々の欲を御しながら、国家の元で適切に対外交易と経済発展を成し遂げようとする試みは、歴代の中国の王朝が常に頭を悩ませていた問題でした。

 その一つの大きな試みが、明朝時代の「海禁政策」でありました。

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東南アジアの火薬庫「タイ深南部紛争」はなぜ起こったか

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 タイからの分離独立を図る「タイ・ムスリム」の武装闘争

「タイ深南部」と言われるナラーティワート県、パッタニー県、ヤラー県にソンクラー県を加えた4県は、現在でもタイからの分離独立を図る武装闘争が盛んな地域です。

元々この地域には、隣国マレーシアのクダ州、クランタン州、トレンガヌ州、プルリス州を含む地域を領有するイスラム王国「パタニ王国」が存在しました。

しかしシャム(タイ)に征服されて以降、連綿と抵抗運動が続いています。

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エレベーターの歴史

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都市の景観を一変させたエレベーター

エレベーターという装置の歴史は実は古く、古代ローマの時代に遡ります。

しかし、エレベーターが人類の歴史に大きく貢献し始めるのは20世紀に入ってから。

安全で安定したエレベーター技術の確立は、超高層ビルの建設を可能にし、ニューヨークの摩天楼の風景を作り上げました。

ただし「安全で安定した」エレベーター技術は、技術者の長年の試行錯誤によって発展してきました。

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複数の国の「共同主権」にある地域

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Photo by Zinneke

なぜその場所は共同地域となったのか 

数は非常に少ないですが、現在の世界でも複数の国の共同主権にある地域というのがいくつか存在します。

基本的に特定の地域は明確にどこか一つの主権によって統治されるのが一般的だし、そちらのほうが統治が容易なのですが、どのような経緯で複数の国の統治になったかを見ていきたいと思います。

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日本軍政下でのインドネシア独立準備の過程

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決断と行動が遅い日本、急ぐインドネシア

インドネシアは太平洋戦争の日本敗戦のわずか2日後、1945年8月17日に独立宣言を発表しました。

その後植民地再獲得を目論むオランダとの戦争、地方勢力や共産ゲリラとの内戦を経て、連邦共和国として独立を果たしたのは1948年のことです。

スカルノやハッタといった独立運動家を中心に組織的に独立戦争を戦い抜けたのは、日本軍政下で独立に向けた準備をおおよそ終えていたからなのですが、日本がこれに積極的に協力したからということではなさそうです。

インドネシア側の粘り強い交渉と努力により、腰の重い日本を動かし、時には無視する形で独立準備を進めていったのでした。

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史上最も多くの人が犠牲になった建物崩壊事故TOP10

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Photo by 최광모

人工構造物の崩壊に伴う大惨事のランキング

毎年どこかの国で、大規模な建物崩壊事故が発生しています。

老朽化やメンテナンス不足、設計の問題、耐久容量を超えたなど、崩壊理由は様々ですが、数十人の犠牲者が出れば大惨事と言っていいと思います。

ところが歴史上は数百人・数千人・数万人規模の建物崩壊事故も起こっています。責任者を大量殺人の罪で逮捕すべきレベルなのですが、いったいどのようなきっかけで起こったのかを見ていきたいと思います。

なお、今回は爆破テロなど「誰かが意図的に壊そうとして崩壊した」事件は含まず、人為的ミスで崩壊した事故のみのランキングとなっています。

※修正(2018/11/1 13:00)永代橋崩落事故の犠牲者の方が多いという指摘に基づき記事を修正しました

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ドイツ空軍の大失態・機密書類流出「メレヘン事件」

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とんでもないミスにより露呈したドイツ軍のベルギー侵攻計画

メレヘン事件とは、ドイツのベルギー侵攻計画に関する機密文書を運んでいたドイツ空軍所属のメッサーシュミットBf 108が、あろうことか誤ってベルギーに不時着。ベルギー当局に機密文書が渡ってしまったという、前代未聞の事件。

事件を知ったヒトラーは激怒し上官たちは罷免され、一から西部侵攻計画を見直さざる得なくなったのでした。

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フィリピン・ミンダナオ島の近代史 - イスラム武装組織が勃興するきっかけとは

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Photo from Keith Kristoffer Bacongco 

フィリピン国家統合の過程で打ち捨てられたモロ人(フィリピン・ムスリム)

2018年8月6日、フィリピンのドゥテルテ大統領は、ミンダナオ島のイスラム自治政府を認める「バンサモロ基本法」に調印し、モロ・イスラム解放戦線(MILF)のムラド議長と握手しました。

長年イスラム法に基づく自治を求め武装闘争を続けてきたイスラム系武装勢力と、キリスト教徒が中心のフィリピン政府との歴史的な和解が成ろうとしています。

そもそもなぜ、彼がフィリピン政府と武装闘争を繰り広げてきたのか。

その直接の原因となった、ミンダナオのイスラム勢力の衰退、アメリカ支配下でのキリスト教勢力の伸張について解説していきます。

 この記事は、以前の記事「海賊の島」スールー王国の歴史の続きです。

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