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歴ログ -世界史専門ブログ-

おもしろい世界史のネタをまとめています。

【平和】スイスが永世中立国家になるまで(前編)

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なぜスイスは永世中立国になったのか

スイスは国是として「永世中立国」を掲げているのは誰でも知っている事実です。

平和論者によって「日本もスイスのように永世中立国となるべきだ」という語られ方をすることもあるんですが、

彼らはスイスという国がなぜそのような選択をしたか知った上で言ってるのか甚だ疑問です。

平和を愛する理想を追い求めた結果ではなく、理性的に生き残りの手段を追い求めた結果出来たのが、永世中立なのです。

今回はスイスの国家形成から永世中立国の成立までの歩みを見ていきたいと思います。

 

 

1. 同盟都市の形成

ハプスブルグ家出身・アルブレヒト登場

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アルブレヒト「オレたちハプスブルグ家が強くなりすぎることをみんな恐れてやがる。そのせいでオレが皇帝になり損ねたじゃねえか。こうなったら支配領域拡大して力つけて皇帝になってやる」

→ アルブレヒト、諸地域をハプスブルグ家の傘下に入れるべく画策

 

中央スイス三地域(ウーリ、シュヴィーツ、ニートヴァルデン)登場

三地域「せっかく自由で栄えているのに、ハプスブルグ家に占領されるとかたまったもんじゃねえ。同盟結んでお互い助けあおうぜ」

→ 1291年8月1日「永久同盟」成立

シュヴィーツ農民「アインジーデルン修道院クソうぜえ。無駄に土地広いんだよバーカ」

→ シュヴィーツ住民、修道院の土地を勝手に開墾。役員や巡礼者を襲い始める

ハプスブルグ家「勝手なマネは許さんぞ!討伐する!」

シュビーツ農民「ハプスブルグ家のカスどもや!ヒャッハー!血祭りにあげろぉぉぉ!」

ハプスブルグ騎士団「…うげっ…ぼごっ…こ、こんなヤツらに…」

→ 1314年 モルガルデン狭間の戦い。ハプスブルグ騎士団が農民歩兵に惨敗

「永久同盟」は強化され、「モルガルデン同盟」結成。

1316年 国王ルートヴィヒによって承認される。

 

同盟の拡大

都市ルツェルン「ウチらハプスブルグ家の支配下にあるけど、湖対岸のウーリと貿易したほうが儲かるんだよね。仲間に入れてよ」

→ 1332年 三地域とルツェルンとの間に「ツルェルン同盟」成立

都市チューリヒ「オレんとこもハプスブルグ家に支配されてるし、大商人の寡占統治はもう我慢ならん。同盟を結ばせてくれ」

→ 1335年 「チューリヒ同盟」成立

アルブレヒト「チューリヒめ、裏切り追って。許さん!」

モルガルデン同盟「ハプスブルグぶっ殺せ!ヒャッハー!殺っちまえぇぇ!」

アルブレヒト「ぎえええええ」

→ アルブレヒト、チューリヒを包囲するも、同盟都市軍に敗れる

近隣諸都市「同盟都市強すぎwwww俺らも仲間に入れてくれ!」

→ ベルン、ツーク、ウンターヴァルデン、グラールスがそれぞれ三地域と同盟

1332年〜1353年にかけて5つの同盟追加。

八邦同盟が成立し、緩い連邦体である、スイス盟約者団結成

 

2. スイスの膨張

ハプスブルグ家レオポルト3世「ルツェルンは大事な金づるや。このまま見逃すわけにはいかんやろ。支配拡大すっぞ」

三地域「まだ懲りねえか!オレたちを怒らせたことをあの世で後悔しな」(バキボコ

ハプスブルグ家レオポルト3世「…ぶげらっ」

→ 1379年 ネーフェルスの戦い レオポルト3世を含む多数の騎士が討ち死に

ハプスブルグ家「こいつら何なんや!野獣人間か。勝てねえ…」

→ 1389年 休戦協定成立。ルツェルン、ベルン、ゾーロトゥルンが盟約者団の傘下に入る

1411年 東スイスのアペンツェル、盟約者団の傘下に入る

1414年 ハプスブルグ家の根拠地アールガヴを共同支配地として獲得

1460年 ハプスブルグの所領トゥールガウを傘下に入れる

 

ブルゴーニュ戦争勃発

ブルゴーニュ公国シャルル突進公登場

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シャルル「オーストリア大公ジクムントから上エルザスとシュヴァルツヴァルトを安く買えるっぽいぜ。早速購入してこれをオレの所領ブルゴーニュ公国に併合しようかの」

エルザス4都市「ブルゴーニュの勢力がオレたちのすぐそばまで来るのはマズい。何としてでも防がねば」

→ エルザス4都市、費用を出して両地域の担保所領を請け負う

オーストリア大公ジクムント「お、いいのかい?じゃあオレもブルゴーニュ公国なんぞに売却する筋合いはねえわ」

シャルル「おい!こら!ふざけんな。力づくでも奪い取るぜ」

盟約者団「ダダーン。シャルル、アウトー」(バギボコ

シャルル「うぐっ…」

→ 1474年 ブルゴーニュ戦争勃発

スイスに派遣されたブルゴーニュ軍は盟約者団軍の前に惨敗。ナンシーの戦いでシャルル突進公は討ち死に。ブルゴーニュ公国は解体され、所領はハプスブルグ家の手に落ちる。

この戦争の後、盟約者団参加地域により「シュタンス協定」成立。

外の勢力と抗争をするときは必ず盟約者団の仲裁を受けるなど、主権の一部に制限が加えられ、地域同士の緩い連合体が、盟約者団国家としてより結束された。

 

ヨーロッパ諸国「やべえ。あのブルゴーニュ公国ぶっ潰しよった。アイツら無敵やん。ちょ、お金上げるからウチで働いとくれ」

盟約者団「住民増えて土地が飽和状態やし、ええよ。代わりに穀物売れよな」

→ 諸国からスイス人傭兵のオファーが相次ぐ。以降、19世紀まで続くスイス傭兵産業のスタート

 

ミラノ戦争勃発

フランス王ルイ12世登場

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ルイ12世「スイスの傭兵諸君、ゼニようけあげちゃるけん、はげんでやぁ」

スイス傭兵「ヒョーォッ!カネやカネやあ」

→ ルイ12世、スイス傭兵を率いて北イタリアに侵攻。ミラノを占領する。

スイス傭兵「おいこら、フランスさんよ、いつになったらカネをくれるんだ」

ルイ12世「もう、あせらへんといてやぁ。もう少ししたらたんまりあげちゃるけん」

スイス傭兵「もう少しもう少しって、もう我慢できん」

→ スイス傭兵、北イタリア諸都市を略奪

盟約者団「へっへっへ、チャンスだ。盟約者団の領土を広げるぜえ」

→ 北イタリア・ベリンツォーナ占領。

盟約者団、ミラノに傀儡政権を立てて傘下に置く。

 

フランス王フランソワ1世登場

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フランソワ1世「これ以上、盟約者団の好きにはさせへんでえ。総力戦や」

→ 1515年 フランス軍の大軍の前に盟約者団軍敗れる

盟約者団「ミラノはやっぱ遠いから支配ムリや。フランスさん、講話や」

→ ミラノはフランス支配下に入り、代わりにフランスから多額の賠償金を得る。

以降、スイスは膨張政策をあきらめ中立政策に転換。フランスと「永久平和」条約を結び、傭兵契約を始め緊密な関係を築く。

 

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3. スイス分裂の危機

チューリヒの司祭ツヴィングリ登場

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ツヴィングリ「傭兵が主産業とか、アホのやることじゃ。自分の血肉を売るなんて愚かじゃけえ」

チューリヒ市民「ほうじゃ、ほうじゃ」

→ チューリヒ、ツヴィングリの提案を受け入れ傭兵を禁止

ツヴィングリ「みんな、ルターちゅうお方を知っとるじゃろか。 堕落したカトリック教会を改革しようとしとる人なんじゃ。わしはルターが正しいと思っとるんよ」

チューリヒ市・市民「ルターさんの言っとることはええのう。チューリヒは宗教改革に賛成じゃ」

→ 1523年からチューリヒで宗教改革開始。聖像画の撤去、修道院の廃止、ミサの廃止 

 

盟約者団、内部分裂

盟約者団カトリック五邦(※)「宗教改革はマジクソ。意味不明。死にさらせ」

→ ツヴィングリを破門に

※ウーリ、シュビーツ、ウンターヴァルデン、ルツェルン、ツーク

従属都市ザンクト・ガレン「…わ、わしは正しいと思うんじゃけど…」

盟約者団カトリック五邦「!?」

司教都市コンスタンツ「…ほ、ほうじゃ。ほうじゃ。ツヴィングリは正しい人じゃ」 

盟約者団カトリック五邦「!!??」

バーゼル、シャフハウゼン「みんな、同盟を組むんじゃ」

→ 宗教改革を支持する地域により「キリスト教都市同盟」成立

盟約者団カトリック五邦「ちょっと待て。オレらも徒党組むぞ」

→ 反宗教改革を支持する地域により「キリスト教連合」成立

盟約者団カトリック五邦「まあ、なんだ。オレたちは単なる邦同盟だから、別にカトリックをみんなにゴリ押しする気はないぜ」

→ 第二次カペル平和締結。各邦の信仰の自由が認められる。

改革派司祭「みんな、宗教改革はエエんよ!何てたって生活が豊かになるんよ」

→ 改革派司祭の活動により、徐々に改革派の都市が増えていく

 

盟約者団カトリック五邦「…マズい。有力都市ベルンもジュネーブも改革派についた。ここらでお仲間を引き締めなくては」

→ 1587年 カトリック五邦とスペイン・フェリペ2世との間で同盟が結ばれる

フェリペ2世「これで勇猛なスイス傭兵を契約できる権利を得たよ」

盟約者団カトリック五邦「これでもし宗教改革派と内戦になっても安心だゼぇ」

キリスト教都市同盟「ユグノー戦争で改革派が負けたらヤバいけえ、フランス王応援するよ」

フランス王「おおきに!」

 → 改革派の都市はフランス王に傭兵を送る。一方で、カトリック勢力はマイエンヌ公に傭兵を送っていた。 

結局、外でスイス傭兵同士が争う形にはなりつつも盟約者団内での内紛には発展せず、スイスは現在でも地域によってカトリックとプロテスタントがまだらに混在することに。

 

 

繫ぎ

ここまで前段です。長い前段でした。

スイスのルーツは、ハプスブルグ家の支配を嫌う諸地域の軍事同盟にあります。

屈強な山岳歩兵は次々と強敵を打ち破り、諸地域の信頼を得て影響範囲を拡大していきます。ただあくまで地域の連合体であって、基本的な意思決定権はそれぞれの地域が所有。それゆえ、明確な1つの意志を持つ国家とはなりえず、細かいので省きましたが、諸地域同士の軍事衝突はけっこう起きていますし、都市をフランスやハプスブルグ家に奪い取られたりもしています。

それでも各々の意志を尊重したため、フランスのような血みどろの宗教戦争は起きなかったし、後編で出てくる三十年戦争でも戦火を免れました。

さて後編では 、三十年戦争以降にいかにスイスが統合と中立を成し遂げるかを欠いていきます。後編が本編です。

 

参考文献:

物語スイスの歴史 森田安一 中公新書

物語 スイスの歴史―知恵ある孤高の小国 (中公新書)

物語 スイスの歴史―知恵ある孤高の小国 (中公新書)

 

 

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