歴ログ -世界史専門ブログ-

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奥深き中国拳法の流派(後篇)

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 かなりマイナーな中国拳法の流派

今回もディープな知られざる中国拳法を見ていきましょう。

正直、ぼくもほとんど知らないものばかりでした。

もしお時間ある方は、貼付けた動画も見てみてください。

ホームビデオばかりですが、 興味深いものばかりです。

それでは参りましょう。

 

 

 9. 金鷹拳(きんようけん)

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台湾に伝わる正統派の南派少林拳 

金鷹拳の始祖は、福建省出身の劉明善という人物。

福建省の甫田少林寺で修行していましたが、清王朝時代の道光8年(1828年)に台湾に渡り、雲林県の西螺広興床(せいらこうしょう)という場所に移住。そこで住民に儒学と金鷹拳を教えました。

金鷹拳を修行する者は、五祖を崇めなくてはいけません。

五祖とは、中原の武神・観音仏祖、金鷹拳の崇祖・金鷹先師、棍法の崇祖・布家祖師

兵器の崇祖・練成祖始、猴拳の崇祖・白猴先師のこと。

手技が多く、指を鷹の爪のようにし敵の腕を掴んでの関節技を多様します。

近距離の場合は短打を、遠距離の場合は蹴り技でダメージを与えます。

 

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10. 洪家拳(こうかけん)

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反清復明をかかげる秘密結社の拳法

広東省には南少林寺の流れを汲む五大名拳(洪家、蔡家、李家、劉家、莫家)があり、いずれも清王朝中頃から反清復明をかかげる漢人の秘密結社の母体となりました。 

洪家拳では、足の指に力を入れて決して倒れないようにして立つ「馬歩」の修練が基本。

そこから、木に腕を何度も打ち付けて筋骨を鍛える「手是銅鐘」木に足を何度も打ち付けて腱を強化する「脚是馬」をし、「鉄橋鉄馬(強力な手足)」を作り上げます。痛そう…

これを極めると、「100人の人間をぶらさげることができる」ほど堅く頑丈になるそうです。

 

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11. 劉家拳(りゅうかけん)

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五大名拳のひとつでかつては名門だった

劉家拳法は清王朝末期に、洪家拳と並ぶ名門となった拳法です。

始祖の劉某(名前不詳)は少林寺を修行した男ですが、額に傷がありそれが眼のようだったため「劉三眼(三つ眼の劉)」のあだ名で呼ばれました。かっこいい。

劉家拳の特徴は、「蜘蛛のような」素早い手技と、「エビが縮んだ体を一気に伸ばすような」強靭なバネのような跳躍にあります。

現代ではほとんど廃れてしまい、 わずかに広東省の北に残るのみだそうです。

 

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12. 蔡家拳(さいかけん)

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ネズミとヘビの戦いからインスピレーションを得た拳法 

蔡家拳も同じく、五大名拳法のひとつ。

清王朝末期に、広州に住む蔡伯達という男が、田んぼでネズミとヘビが戦っている様子を見て編み出したと言われていますが、本当かどうか分かりません。

この男が「鼠歩蛇形(そほじゃけい)」という拳法の道場を作り、多くの門下生を抱える一大勢力となって広州一帯に睨みを効かせるほどに成長しました。これも秘密結社化していったのでしょう。

特徴は、人差し指を突き出した「鳳眼拳」を多用する点、相手の見えない位置から短打を繰り出す点にあります。

 

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13. 詠春拳(えいしゅんけん)

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ブルース・リーが学んだ拳法 

南派少林拳の流れを汲む詠春拳は、開祖を少林五老の1人・五枚大師であるとしています。五枚大師は弟子の厳二に教え、厳二は娘の名をとって拳法の名前を詠春拳としました。詠春はその教えを体系化し、夫の梁愽儔(りょうたんじゅ)に伝えました。

女性が創始者なためか、姿勢が高く歩幅は狭く、接近戦を得意としています。

練習には「木人」を用い、手法、歩法、進退の方位角など人と対面せずに鍛錬するため、「無師無対手、対鏡輿椿求(師匠も相手もなく、鏡と木人相手に練習する)」と言います。

この拳法はかつてブルース・リーが学んだことでも有名で、欧米でも愛好者が非常に多いそうです。

 

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14. 六合拳(ろくごうけん)

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内三合と外三合が合致して力となると説く拳法 

六合拳の始祖は満州族のトウ恩瑞という人物で、息子のトウ忠義に受け継がれました。

トウ忠義は1928年から上海で六合拳を教え始め、教え子が中国全土に伝えてそれぞれ独自に発達させています。

名前となっている「六合」という概念をどのように解釈するかで流派が変わってきます。

オリジナルだと、内三合(手、歩、智)と外三合(眼、身、力)が合致して初めて成り立つとされています。

別の解釈だと、「手=眼、歩=身、智=力」がそれぞれ合致することで成り立つと考え、また別の解釈だと、東西南北&上下を表すとされています。

いずれにせよ、内の気や心の動きによって、手や足など外が動き動作として成り立つという教えです。 

 

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15.孫臏拳(そんぴんけん)

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 敵の急所を狙う拳法

孫臏拳の伝説上の始祖は、戦国時代の兵法家・孫臏(そんぴん)であるとされますが、実際の始まりは清王朝末期に、山東省陽穀県阿城鎮の一帯に伝承された外家拳です。

清王朝末期から盛んになり、中華民国時代に広く伝承。国共内戦後は国民党とともに台湾にも渡ったため、台湾にも伝わっています。

孫臏拳の拳打は主に敵の急所を狙います

そのため、拳の握りは中指の第二関節を少し突き出して、突きを行います。

また、屋根瓦を重ねた形の掌法「瓦楞掌(がりょうしょう)」や両足を交差させる歩法「孫臏歩」を用いることに特徴があります。

 

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16. 譚家三展拳(たんかさんてんけん)

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様々な流派が統合して出来た混合拳法

譚家三展拳の始祖は、約200年前に福建甫田九蓮山少林寺で修行した譚義均(たんぎきん)。

彼は「三展拳」「五形拳」「鉄線拳」「鉄包金棍」を学び、独自に昇華させた拳法「五行三展拳」を創始しました。

その後故郷の広東省に帰り道場を設立して門徒に教え、その高弟・譚敏はさらにアレンジを加え、学びやすく実用的な譚家三展拳法を創始しました。

三代目の譚安の時代に、雛家八掛棍の伝承者・雛宇昇(すううしょう)と技の伝道をし合ったことで、古代の馬槍を改良した八掛棍を武器として取り込み、譚家三展拳に雛家八掛棍は付随するものとなりました。

やたら複雑な流れですね…

7代目は香港に移住したため、現在譚家三展拳の拠点は香港にあるのだそうです。

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まとめ

さて、よく分かりましたでしょうか?

はい、分かりませんね。 

少林寺から巣立った弟子たちが色んな拳法を考案して、それがいくつも分割し、また時には統合し、新たな拳法が生まれていく。

まるで料理の世界のようです。由緒ある料亭から暖簾分けで料亭を構えて、独自の技法を構築し、それが大本となってまたいろいろ分かれていくし、西洋料理のエッセンスを入れてみたりするヤツも出てきたり。 

まるで小宇宙のように混沌としており、現在進行形で成長を続けているのです。

すべてを把握し体系化することなど果たして可能なのでしょうか。

 

参考文献:図解中国武術 小佐野淳 新紀元社 

図解 中国武術 (F-Files No.022) (F‐Files)

図解 中国武術 (F-Files No.022) (F‐Files)