不思議・不条理な古代マヤの神話
ポポル・ヴフは、中米グアテマラ付近に11世紀ごろに住んでいたマヤの1部族・キチェー人によって書かれた神話。
古代マヤ文明が1000年近く受け継いだ物語をまとめて記されたものと考えられています。ポポル・ヴフとは「共同体の書」という意味で、スペイン人神父フランシスコ・ヒメーネスによって発見され書き写されたものです。
肝心の中身ですが、これが不思議・不条理のオンパレード。脈略も無茶苦茶で、どういう意味があるのか長年研究者を悩ませています。
少し長い部分は省略したり、補足で付け足しながら書いていくことにします。途中、全然意味が分からない部分がたくさん出てくると思いますが、がんばってついてきてください。
では、いきます。
1. 世界のはじまり・人類の誕生
はじめ、世界には空と海だけがあった。
水の中にいる蛇の神グクマッツと支配者テペウは、天の心フラカンと出くわした。3神は言葉を発し語り合った。ここに言葉が生まれた。
話し合いの末に、神々は創造をすることにした。大地・山・谷・林を作っていった。
次に動物を作った。神々は、動物に自分たちを崇拝することを期待したが、ヤツらはギャーギャーと騒ぐだけ。神々は動物たちを見限って、新しく作る生命の糧とすることにした。
神々は次に泥で人間を作ろうとしたが失敗。そこで2人の占い師、イシュピヤック(爺さん)・イシュムカネー(婆さん)に相談した。2人は木で作るが良いと言い、神々は木で人間を作った。
だが木人は神々を崇拝することなく、4つんばいで意味なく歩き回るのみ。神々は絶望して洪水を起こして木人間を一掃した。それを生き延びた者たちは、樹脂の雨で体を折られ、神々に体を食われた。そればかりか、棒や石、食器などあらゆる道具に殴られた。木人間はコテンパンに叩きのめされたが、それでも一部は生きながらえた。それがサルである。
(…とここでなぜか人類誕生の話が中断して、よく分からない神々のバトルが始まります)
2. 怪鳥ヴクブ・カキシュ退治
巨大な怪鳥ヴクブ・カキシュは傲慢な鳥。
溢れんばかりの野心や、その財産の自慢っぷりを見せつけられた双子の兄弟・イシュバランケーとフンアフプーは、憤ってヤツを退治をすることにした。
双子は待ち伏せしてヴクブを奇襲。ヴクブはフンアフプーの片腕をちぎって何とか逃げ出した。家に逃げ帰ったヴクブは妻のチルマットに、暴漢に襲われてあちこち痛い、特に歯が痛むと泣き言を言っては甘えまくっていた。
双子は他の神2人にヴクブを殺す相談をした。
2人の神と双子は、物乞いのフリをしてヴクブの家を訪れ「食べものを分けてくれ」と頼む。
「食べ物はいいんだけど、それより歯が痛くてどうしようもない」というヴクブ。
「そうですか、私は歯の治療がよく分かっていますからお見せなさい」と神。
そしてヴクブの歯を抜き取って、代わりにトウモロコシの粒を入れた。
するとヴクブの体が麻痺し、残りの歯も全部抜きとられて目玉もえぐりとられた。
ヴクブ・カキシュはみるみる弱って死んでしまい、妻も弱って死んでしまった。
ヴクブの財産は神々が没収(!)。フンアフプーも片腕を取り戻した。
双子はさらに、常日頃から偉そうなことばっか言っていたヴクブの息子2人も殺した。
(…ここでなぜか時計の針が戻って、双子が生まれる前の時代の話に)
3. 死者の国の大王たち
双子の父もまた双子であり、名をフン・フンアフプーとヴクブ・フンアフプーと言った。ヴクブ・フンアフプーは独身だったが、フン・フンアフプーには妻がいて、2人の息子(フン・バッツ、フン・チェルン)がいた。
父と弟、その息子の4人は仲が良く、いつも球技をして遊んでいた。ところが、4人のレクリエーションは地下にある死者の国・シバルバーの大王たちを騒音でひどく不快にした。
大王たちは兄弟をとっちめて、かつ球技道具を略奪しようと計画。4匹のミミズクが地上に派遣された。
「是非、われらが大王たちとお手合わせ願いたい。あなた方の球技道具も忘れずにお持ちください」
そうして2人はシバルバーに出発した。(言われたのになぜか球技の道具は置いていった)2人は地下界に降り、膿の川や血の川を超えてシバルバーへ到達。
シバルバーの王たちは、2人が来るのを見計らって広間に棒で作った人形を置いておいた。
間違って2人が棒人形にあいさつすると、大王たちは大爆笑。さらに、あらかじめ火であぶっておいた椅子に案内。双子が座ろうとしてたまらず飛び上がると、さらに大王たち大ウケ。
大王たちは双子に寝室に案内するが、なぜか宿題を出す。それは「たいまつとタバコの火」を一晩中絶やさないようにし、かつ形を崩さずにしろ、というもの。
双子はなすすべがなく火を絶やしてしまい、大王たちは翌朝2人を殺した。
フン・フンアフプーの首は木に吊るされた、すると木にたちまちヒョウタンの身が成った。大王たちはこのヒョウタンの木に近づくことを禁止した。
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4. シバルバーの娘・イシュキック
ところが、1人の大王の娘で好奇心の強いイシュキックが評判のヒョウタンの木をこっそり見にいった。
すると、木に成ったフン・フンアフプーの頭蓋骨が喋り始めた。
「お前、この身が欲しいのか?これはみんな骸骨だぞ」
「え、いや、まあ…欲しいです…けど…」
するとフン・フンアフプーの頭蓋骨がイシュキックにツバをはきかけた。そうして言う。
「いまのツバで、お前はオレの種を宿した。私の姿は消えても私の資性は受け継がれていくだろう、さあ地上へ行くがいい」
半年後、本当にイシュキックは妊娠してしまい、父親の大王は大激怒。父親が他の大王に相談すると、「そんなふしだらな女は生け贄にするしかない」ってことで合意。
4匹のミミズクにイシュキックを殺すように命ずるが、ミミズクがイシュキックに懐いてしまって殺すのを中止。ちょうど血の色のような樹液を出す木があったから、その実を液にからめて大王に出すと、大王たちは娘の心臓と勘違い。
イシュキックは無事に地上に脱出することができた。
5. 双子フンアフプーとイシュバランケー
意地悪な母イシュカムネー
地上に出たイシュキックは、フン・フンアフプーの母イシュカムネーの家に行き、フン・フンアフプーの子を宿していることを伝える。しかし母はこれを信用せず意地悪をする。
「トウモロコシを網いっぱいにとってこい」と命じて畑に行かせるも、そこには1本だけしか生えてなかった。
そこでイシュキックはトウモロコシのヒゲを抜いて網に入れると、網いっぱいのトウモロコシになった。それを見たイシュカムネーは、イシュキックの言うことを信じて嫁として迎い入れた。
双子と異母兄たちの確執
しばらくしたらイシュキックは双子を生んだ。これが、怪鳥ヴクブ・カキシュを殺したフン・アフプーとイシュバランケー。
祖母は双子が眠らずに泣いてうるさいという理由で、家には入れずに外で眠らせた。
双子の父フン・フンアフプーの子である兄2人(双子からしたら異母兄)は、双子に強い嫉妬を見せる。
双子は成長すると、毎日野山に出ては鳥を穫って持ち帰るが、食べさせてもらえることはなかった。それなのに、異母兄は家の仕事はせず毎日遊んでばかり。双子はだんだん腹がたってきた。
そこで一計を案じることに。
ある日、撃った鳥が高い木の上に引っかかってとれなくなった、と言って兄たちを呼び出した。しょうがねーなー、と木に登る兄たち。すると、たちまち木が大きくなって降りれなくなってしまった!
助けを求める兄たちに、双子は「はいているフンドシの後ろを長く伸ばせば降りやすくなりますよ」と言う。
言われた通りにする兄たち。すると兄たちはたちまちサルになってしまった。
笑ってはいけない祖母の挑戦
兄たちがサルになってしまったことを嘆き悲しみ、元に戻してほしいと双子に懇願する祖母。
双子は「おばあさんが絶対に笑わなければ兄たちは元の人間に戻ります」と言う。
そうして双子が楽器を奏でると、サルが木からするすると降りてくる。
そして2匹は、楽器の音色に合わせて踊りだした。それを見て思わず爆笑する祖母。
笑い声にびっくりして逃げてしまう2匹。
「ああっ逃げてしまった!もう一回チャンスをおくれ」と言ってはサルを呼び出し、また爆笑してを4回繰り返し、とうとうサルは戻ってこなくなってしまった。
双子は嘆き悲しむ祖母を慰め、ここから仲良く4人で暮らすことにした。
繫ぎ
かなり長いので、いったんここで仕切ります。
いかがでしょうか。マジで意味分かんなくないですか?
時系列も無茶苦茶だし、唐突に文明が発達してるし、お笑いの小ネタもよく分からんし。
次回後編では、双子のフンアフプーとイシュバランケーがシバルバーの大王たちに復讐に挑む物語が始まります。
後半はこちら
参考文献:古代マヤ・アステカ 不可思議大全 芝崎みゆき 草思社