歴ログ -世界史専門ブログ-

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なぜ「666」は不吉な数字なのか - 皇帝ネロのことを指している?

666: Apocalypse of St John

神を侮辱し、悪魔を讃える数字

日本人にとって不吉な数字と言えば「4(死)」「9(苦)」くらい。

それでもマンションやホテルの部屋番号で避けられてるくらいで、あまり過剰に意識するものでもないです。

一方、キリスト教徒にとって不吉な数字は「13」と「666」だそうです。みなさんも聞いたことくらいはあると思います。

13が不吉な理由は、最後の晩餐でイエスと12使徒がテーブルに座り、最後の13番目に座ったのが「裏切り者」のイスカリオテのユダだったという伝説から来ています。

じゃあ666は何なんでしょうか?

 

ヨハネの黙示録の獣 

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ヨハネの黙示録の謎かけ

ヨハネの黙示録によると、この世の終末の間際に海から「角が10本、頭が7本」の獣が上ってきて、この世界を42ヶ月もの間支配します。 そしてその獣が人々に刻む数字が「666」なのです。

ヨハネの黙示録 第15章 16〜18節

すべての人々に、その右の手あるいは額に刻印を押させ、この刻印のない者はみな、物を買うことも売ることもできないようにした。この刻印は、その獣の名、またはその名の数字のことである。ここに、知恵が必要である。思慮のある者は、獣の数字を解くが良い。その数字とは、人間を指すものである。そして、その数字は666である。

なので、なぜ「666」が不吉な数字かの問いは、「聖書にそう書いてあるから」が答えです。

では、聖書が暗喩している「666」とは一体誰のことを指しているのか?

 

666の意味=皇帝ネロ説

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キリスト教徒を大弾圧したネロ

一番有力な説が、暴君として知られるローマ帝国第5代皇帝ネロ。 

ネロはキリスト教徒を大弾圧した初めての皇帝で、古今問わずキリスト教徒からは蛇蝎のごとく嫌われています。最も有名なものとしては、ローマを襲った大火事の原因を「キリスト教徒のせい」と決めつけて弾圧したことです。

多数派の多神教ローマ市民からしたら、キリスト教徒は過激派の不満分子にすぎなかったので、いつかは弾圧しなくてはいけないと思っていただろうし、共通の敵ができたことで市民の団結を図れたので、特に大きな問題にはなりませんでした。

また、ネロはローマ大火からのいち早い復興策の実行や、東方の国パルティアとの国境安定策など、後世に良い影響を与えた政策を実行しているので一方的に暴君とは言えない人物でもあります。

 

皇帝ネロ=666

さて、皇帝ネロ=666説は、現代の聖書学でも最も支持をされています。

カバラ数秘術ゲマトリアでは、アルファベットにそれぞれ数値が割り付けられています。それを用いて「皇帝ネロ(nrwnqsr)」を計算すると、

N=50、r=200、w=6、n=50、q=100、s=60、r=200 合計=666

ということで証明ができてしまいました!

加えて、「獣の像を拝まない者はみな殺させた」という黙示録の記述と、不満分子を徹底的に弾圧した強権的なネロの政治姿勢も整合性があるとみなされています。

 

ネロ=アンチキリスト伝説の流布

ネロは68年に自殺しますが、実はネロは自殺せずに東方のパルティアに逃れており、やがて異教徒の兵を引き連れてローマ再建のために戻ってくる、という噂が流れました。

それはそのままアンチキリストとしての描かれ方で、アルメニア語の「アンチキリスト(nerhu)」はそのままネロを指しています。

 

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666恐怖症

キリスト教圏では「666」という数字を異常に怖がったり、終末的な陰謀論にたびたび登場します。 

 

1980年代のアメリカの予言者 メアリ・スチュアート・レルフ

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1980年代のアメリカ人預言者メアリ・スチュアート・レルフの著作"THE NEW MONEY SYSTEM"によると、「この世は終わりに近づいている」のだそうです。その証拠に、

クレジットカードやバーコードには「666」が入り込んで広く流布しているではないか!

これはアンチキリストによる陰謀で、いまのクレジットカードを使うことは悪魔に加担する行為なのだ!

終末が近づくと、真の予言者が現れキリスト者のための特別なクレジットカードを作るから、それまで待つべし!

そう来たか、と思わせる独特な発想ですね。

一応筋は通ってるけど、そもそも立っている土俵が違うから反論する気にもなりません。

 

ロナルド・レーガン夫妻・飛行機搭乗便の変更

1989年、ロナルド・レーガンとナンシー夫妻は、ロサンゼルスから自宅に戻る時に飛行機に乗ろうとしました。しかし、その搭乗便ナンバーが666であったため、668便を取り直したとのこと。

 

ゼッケンナンバーが666だった!

2013年、ケンタッキー州ウィリアムスバーグに住むある高校生が、州大会をかけたクロスカントリーに予選に出ることを拒否しました。理由は、ゼッケンが666だったから。

 

まとめ

666って数字は最初は「バレないように暗号化した悪口」だったのに、いつのまにか恐怖を象徴する数字になっちまっていて、黙示録の作者も天国で「どうもおかしなことになったなあ」とでも思っているかもしれません。

 

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