噂や伝承が作った伝説の土地
現在でも都市伝説の類いは人々を引きつけてやみません。
ぼく自身も就職活動中に「某証券会社の内定を辞退すると、コーヒーやラーメンをぶっかけられる」という噂を信じてしまったクチです。
いま聞いたらバカバカしいですけど、疑心暗鬼になってる就活生なら信じちゃうものです。
昔の人なら、なおさら。
今回はそんな都市伝説の規模がデカい版、「ガセネタだったユートピア伝説」を7つ集めてみました。
1. プレスター・ジョンの国(アジアかアフリカ)
ヨーロッパ以外のどこかにあるキリスト教国
12世紀頃から17世紀頃まで「東方にプレスター・ジョンという偉大な王が治めるキリスト教国がある」と信じられていました。
十字軍の頃に「プレスター・ジョンの軍勢が十字軍を救援すべくペルシアを破ったが、チグリス川を渡れず引き返した」という未確認情報が報告されたのが最初の記録でその後、噂は尾ひれがついて広がっていきます。
1156年、なんとプレスター・ジョン直々の手紙なるものがビザンティン皇帝と神聖ローマ皇帝宛に届いたのです。手紙にはこうありました。
余は72もの王国を統治している偉大なキリスト者である。余の王国は金が豊富に採れ、土地は乳と蜜の流れる土地である。
どこかの詐欺師の仕業だったのでしょうが、この話はヨーロッパ中に広がり教皇はこの「プレスター・ジョン」の国を発見しようと血眼になりました。
プレスター・ジョンの軍がやってきた!
1221年、アッコンの司教が
プレスター・ジョンの孫のダビデ王がペルシアを征服してバグダードに向かっている
という未確認情報を公表し、ヨーロッパの人々はてっきり東方キリスト教の軍勢が十字軍を助けに来てくれたと思い狂喜しますが、実はこの軍勢はモンゴル軍だった。プレスター・ジョンの軍勢ことモンゴル軍は、キリスト教徒を助けるどころかドイツ・ポーランド軍をコテンパンに叩きのめしています。(ワールシュタットの戦い)
後にアフリカのキリスト教国であるエチオピアがプレスター・ジョンの国なのでは?と噂されますが、等のエチオピア側に拒否されて、この噂は次第に消えていったようです。
2. 補陀落(インド洋)
インドの南にある観音菩薩が住む山
補陀落(ふだらく)は仏教世界で信じられた「観音菩薩が住む山」で、天竺のはるか南にある島で八角形をした山であると信じられていました。
唐の僧・玄奘は「大唐西域記」の中で補陀落について言及しており、中国で阿弥陀信仰が盛んになると南にある極楽の島を探す試みが始まりました。
日本の中世では、修行僧の「補陀落渡海」が見られました。これは僧が帆や櫂すら装備してない小舟に食料も持たずに乗り込み、南にある補陀落に向かうという自殺行為のような修行。和歌山県の那智勝浦で盛んに行われたそうです。
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3. ブラシル島(大西洋)
アイルランドの西方にあると信じられた島
ゲール人の民間伝承で、アイルランドの西方には未知の島があると言われていました。これが14世紀にはイギリスの船乗り達に広く信じられ、ブラシル島という島の伝説になりました。
ブラシル島は忘れられたユートピアであり、島は常に霧に覆われているため肉眼では見えず、接近しても通り過ぎてしまうため発見されない。ただし、7年に1度だけ霧が晴れて上陸できる、のだそうです。
天空の城ラピュタみたいですね。
4. トゥーレ(北大西洋)
雪と氷に閉ざされた伝説の土地
北大西洋にある島の伝説は、4世紀ごろのギリシアの旅行家・ピュテアスの記述に起源があります。著作「On the ocean」は失われていますが、ピュテアスの記述の引用が残っています。
それによると、スコットランドのさらに向こうにあるトゥーレでは、日がほとんど当たらず、土地と海と空気がクラゲのように混在したところであると述べられているそうです。
トゥーレはノルウェー、シェトランド諸島、アイスランド、アイルランドいずれかの土地だったとされていますが、謎に満ちた北方の土地は物語や詩に描かれました。
19世紀のドイツでは、「トゥーレこそアーリア人の母国である」というオカルトめいた主張が流布し、これを研究する「トゥーレ協会」は後のナチスと深い関わりを持ったのだそうです。
5. 聖ブレンダンの島(西大西洋)
古代の冒険家・聖ブレンダン
聖ブレンダンは5世紀頃のアイルランドの聖職者。
瞑想の土地を目指して60名の修道士とともに船に乗って航海の旅に出かけます。その物語は「聖ブレンダンの航海」として中世に半ば伝説化しました。
聖ブレンダン一行は、「火の玉を吐く巨人」や「人間の言葉を話す鳥」などに出くわしたり様々な苦難を経てとうとう「霧がかかった島で、果物が溢れ、宝石に満ちあふれた」島にたどり着いたそうです。
一部では、ブレンダンがたどり着いた土地はアメリカ大陸であり、コロンブスよりもはるか以前に西洋人はアメリカに到達していた、と主張されています。
6. エル・ドラド(南米)
南米のどこかにあるとされた黄金郷
16世紀、南米大陸にたどり着いたスペインのコンキスタドール(征服者)たちは、あるインディオの部族が「黄金や宝石を身につけ、黄金の粉をかぶって聖なる湖に浸かる儀式」を行うという噂を聞き色めき立ちます。
アマゾンのどこかに金がザックザク採れる黄金郷がある!
コンキスタドールたちはその貪欲な欲望と行動力で冒険を始めた。
しかし結局、全ての南米大陸を踏破してもそのような黄金郷は存在せず、エルドラドの存在は地図上から消去されてしまいました。
しかし現在のコロンビアにあるグアタビータ湖近辺では、土地のチブチャ族によって実際にそのような儀式が行われていたらしく、スペイン人が想像していたほどではないにしても、金が豊富に採れたのだそうです。
7. サグネの王国(カナダ)
カナダにあるとされた黄金の土地
現在のカナダ・セントローレンス川から遡ってケベックの土地を探検したフランス人ジャック・カルティエが、土地のイロコイ族から聞いたユートピア伝説があります。
それによると「北方には広大な土地の国があり、そこでは香料、毛皮、貴金属が豊富に採れ、ブロンド髪の薄い色の肌の人々が住んでいる」とのこと。
ジャック・カルティエはその真偽を確かめようとしましたが、人不足で実現しませんでした。
その話を聞きつけたフランス人冒険者がカナダをくまなく探索しますが、結局そんな土地は発見できず、単なるガセネタに過ぎなかったことが分かりました。
まとめ
いま考えたらバカらしい話なのですが、隣の国のこともあんまりよく分かってなかった時代、遠くに全ての欲望を満たす桃源郷があったと考えても不思議ではなかったのかもしれません。
もし将来、人類が宇宙開拓に乗り出したら、
あの星はダイヤモンドで出来ているらしいとか、
砂漠の星だが、砂は全部黄金らしいとか、
欲望をかき立てるような噂話が流布し、欲望にまみれた男たちが開拓に乗り出していくのでしょうか。
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