本当に「聖」なる人なのか
「聖人(Saint)」とは、キリスト教会が認定する「他のキリスト教徒の模範となるべき偉大な信者」のことで、これに認定されることを「列聖」といいます。
カトリックや正教会など、流派によって選定の基準は異なるらしいのですが、
例えばカトリックの場合、聖人になるには2回「奇跡」を起こす必要があります。(不治の病を直したりとか)
なので、列聖されている人たちはみんな、スーパーミラクルすごい人たちなのかと思うのですが、
よくよく列聖者リストを見てみると、「本当にこの人が聖人なの?」と首を傾げるような人がちらほら見うけられます。
キリスト教関係者に怒られそうですが、このエントリーでは「列聖されてるのが不思議な人たち」をピックアップしてみたいと思います。
1.至聖生神女の母聖アンナ
キリストの祖母
伝説によると、アンナは聖母マリアを生んだ時かなり老齢だったらしく、
マリアを授かったときは、天使からお告げがあったそうです。
それはいいとして、そもそも時系列的におかしくないですか。
キリストすら生まれてないのに、何でバアちゃんっていうだけで聖人になっちゃうんだろう。
2. 予言者アンナ
キリストを褒めた人物
アンナはエルサレムの神殿で神官を務めていた女性。
84歳の時に、神殿を参詣するイエスを見て
「この子は大物になるわよ!」
と言ったとか。
どこにでもいる婆さんじゃないか!
3. 聖ヴェロニカ
キリストにハンカチを差し出した人
エルサレムの敬虔な信者で、キリストが十字架を背負ってゴルゴタの丘に向かって歩いている際に付き添います。重い十字架を背負って、キリストの額から汗がにじみます。
それを見て、ヴェロニカはとっさにハンカチを差し出します。
すると奇跡が起きて、ハンカチにキリストの顔が浮かんだとのことです。
奇跡はキリストの手柄だから置いといて、ハンカチ渡しただけでしょ?何で聖人になるんだ?
4.聖アポロニア(?-249)
歯の守護聖人
聖アポロニアは、ローマ帝国でまだキリスト教が国教でなかった時代にアレクサンドリアに生きた女性。
キリスト教徒は敵視されており、アポロニアは暴徒に襲われて暴行を受け、歯を全部砕かれてしまいました。そして暴徒は生きながら火にくべてやる、として火をおこしはじめます。一瞬のすきをついて、アポロニアは自分で火の中に飛び込んで自殺してしまいました。
この人が聖人なら、なんでヴァチカンは尊厳死に反対してるんでしょう?矛盾してませんか?
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5. エイレーネー(752-803)
東ローマ帝国初の女帝
エイレーネーは第4代皇帝コンスタンティヌス6世の母。10歳で帝位についた息子を執政として支えます。
息子は成長するにつれて、エイレーネーと度々ぶつかるようになります。
そこでエイレーネーは息子を引っ捕らえて目をくり抜いて追放し、自分が皇帝についてしまいます。
こんな人、聖人に任命しちゃダメでしょ!
※ちなみに、エイレーネーはカトリックでは聖人認定されていません。
6. エドワード懺悔王(1004-1066)
草食系国王
エドワードはアルビノ(先天性白皮症)で、虚弱体質でしたが心も弱かったらしく、
子づくりをして後継者作るべきところを、「純潔を守る」といって童貞を貫いたそうです。
死後は跡継ぎを巡って内乱が起き、ノルマン人によるイングランド征服(ノルマン・コンクエスト)の発端を作ってしまいました。
この人が聖人なら、いまの日本にはたくさんの聖人がいるんじゃないでしょうか。
※ちなみに、エドワード懺悔王は正教会では聖人認定されていません。
7. 新致命◯◯
「新致命」という名称がつく人物は、聖人にされている理由が、「かわいそうだから」という理由以外にありません。
新致命女アナスタシヤ
新致命者エリザヴェタ
新致命者聖オリガ
いずれも、ロシア・ロマノフ王朝の王族の娘たち。
ロシア革命が起きた際に、革命勢力によって殺害されている人たちです。
美しく若い女性が革命の毒牙にかかった、というゴシップめいた点が人々の注目を引き、また革命ソ連の非難の的となりました。
特に人類に貢献するような素晴らしいことをしたわけではないです。
※ちなみにアナスタシア以外はカトリックでは聖人認定されていません。
まとめ
「なんでこいつが聖人なんだ」と文句言ったところで、ぼくはキリスト教をどうにかしたいわけではないんですが。
ただ結局は列聖なんてその時の政治情勢がモロ絡んでくるもので、
よくわからない列聖者とその列聖タイミングを調べてみると、
その裏側の政治情勢が見えてきて案外面白いかもしれません。