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強いオカマは歴史上、実在したか?

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(c) 臼井儀人 / 双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

オカマちゃん=強い?

アニメ見てるとたまに出てきませんか?強いオカマちゃん。 

ピエロ的キャラなんだけど、実は武闘派で戦うとやたら強い。そしてすごくいい奴。

ONE PIECEの「Mr.2ボン・クレー 」とか、TIGER&BUNNYの「ネイサン・シーモア」とか。

劇場版クレヨンしんちゃんの「ハイグレ魔王」あたりからでしょうか、「オカマ=強い」という描写が出てきたのは。

そもそも「武力」と「オカマ」は、対極の位置にあるもの。

これは何か裏付けがあるのでしょうか?

実際に強いオカマちゃんが歴史上に存在したのでしょうか?

 

オカマちゃんを定義する

本題に入る前に、ここで述べる「オカマちゃん」を定義しておきます。

 wikipediaによると、

「オカマ」は元々は肛門を意味する江戸時代の俗語であり(略)おカマを掘る・掘られることもある女装をする男娼を指し、1980年代頃から女性的な男性全般(非同性愛者含む)への名称になった。

 とあります。

ここではそれをとって、以下のように定義します。

(1)女装・メイクをした(2)男性器を取っていない(3)ホモ・バイ・ノンケいずれかの男性

最近だと「オネエ」とも言われてますね。

 

オカマちゃんの歴史 

ゲイやレズ、ホモセクシャルの存在は古代から現在まで枚挙にいとまがないほど例がありますが、ここでは「女装男性」だけに例を絞って話をします。

アメリカインディアンの "ベルダッチェ"

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一部のアメリカインディアンは、男性・女性の他に第3の性があると考えていました。それが「ベルダッチェ」と呼ばれるもので、「1つの体に男性と女性の2つの性が共存している状態」の人を指して言いました。

ベルダッチェは特に社会的に差別を受けたわけではないようですが、女装男性は「男らしさ」を喪失した者と見なされ、戦争には従軍したものの料理など「女の仕事」に携わることが多かったようです。

 

 南アジアの "ヒジュラー"

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インド、パキスタン、バングラディシュなどの南インドの地域には、古代から「ヒジュラー」と呼ばれる女装男性のグループがおり、その存在は古代インドの性愛論書「カーマスートラ」にも記述があります。

地域によって認識は異なっており、宗教的儀礼に参加するケースもありますが、多くの場合カースト外に置かれ堅気の仕事はできないため、売春によって生計を立てることが多いようです。

 

古代ローマの "インファミア"

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皇帝ハドリアヌスにアンティノーという名の男の恋人がいたように、古代ローマでは同性愛は一般的で、上の図のように男娼もいたようです。

ただホモセクシャルの人は「インファミア」と呼ばれてローマ市民権を剥奪されたため、売春婦や踊り子、貴族や高官の愛人として生きざるを得ませんでした。

 該当しそうな人物はわずか2人

歴史上のオカマちゃんの例を挙げていくときりがないので、ここらで本題に行くとします。しかし上記の例を見ていても、一部を除いてオカマちゃんたちは社会的な枠組みの中から外され、堅気とは言えない仕事をして生きざるをえなかったことが分かります。

アニメに出てくるような「武闘派のオカマちゃん」は存在したのか。歴史上のホモ、ゲイ、女装男性の人物のリストを調べてみたところ、わずかに2人該当する人物がいました。

 

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1. シュヴァリエ・デオン(フランス)1728-1810

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 実在した"女装スパイ"

シュヴァリエ・デオンは幼少時との時から華奢な体で、見た目は女の子そのものだったと言います。 成長しても外見はまるで女性でしたが、力が強くまた頭もよかったため多くの女性を虜にしたそうです。

その後、ルイ15世の秘密機関「機密局」に加わり、女装してロシアに潜入。女帝エリザヴェータに近づき、フランスとの国交を回復させます。

晩年は女性として過ごす

病気をしてフランスに帰国したデオンは、その功績が認められ竜騎兵連隊隊長に就任。7年戦争に従軍し活躍します。

戦争終結後はイギリスに渡り大使の秘書として再びスパイ活動に当たり、一時的に大使に就任しますが、自らが抱える借金の返済のために後任大使の資金に手を出してしまいます。

フランス政府はこれをきっかけにしてデオンの帰国を拒否し、帰国した暁には男色の罪で逮捕しようとしていました。デオンはここで噂を逆手にとって「自分は女である」と宣言。逮捕を免れた代わりに、死ぬまで女装をして暮らしました

デオンのフェンシングの腕前は相当なもので、60歳にして真剣で決闘をし相手を倒したそうです。その時もドレスを着ており「最強の女性剣闘士」と称してショーをして金を稼いでいました

 

2. オシュ・ティスチ(アメリカ)19世紀後半〜20世紀前半

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引用:willsworld.org

女装暗殺者

 アメリカインディアン・クロウ族の暗殺者。オシュ・ティスチとは、クロウ語で「奴らを見つけ、殺戮する」という意味です。

クロウ族はベイテ(baté)と呼ばれる女装男性の暗殺者を持っており、敵対勢力の有力者に取り入り、隙を見て暗殺する手段を得意としていました。

ティスチも伝統的な暗殺者の1人として育ちますが、ブリスコーと言う名のアメリカ政府のエージェントによって、他のベイテと共に収容所に送られ、そこで女装を解かれて教育を施され、クロウ族の保有地に送り返されています。

 

 現代日本の「強いオカマちゃん」

記録が残っている2,000年以上の歴史にはほとんど存在しない「強いオカマちゃん」は、実は現代日本でにわかに活躍を始めています。

男色ディーノ 

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 DDTに所属するゲイレスラー「男色ディーノ」選手です。

相手の股間をわしづかみにしてスクリューする「男色クロー」や、

相手の唇を奪って(いわゆるキス)呼吸をさせなくする「男色ベーゼ」

相手の顔をパンツの中に入れたパイルドライバーで、フィジカルとメンタル両方のダメージを与える「男色ドライバー」などなど、 ゲイキャラを活かした技が持ち味の選手です。

若干ふざけた技も多いですが、7回もDDTの王座に就いておりそのプロレスの技術は本物です。

レディービアードちゃん

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引用:ceron.jp

2013年に衝撃デビューを果たした「ヒゲ女装パフォーマー」。

CM・テレビ出演、音楽活動などマルチに活躍中。

 何だろう、髭もじゃのオッサンなのに可愛く見えてしまう…

2013年秋の来日以降、そのカワイイ?姿を見るだけで何故か元気になってしまうと大評判の謎の癒し系。プロレスラー、ヘビーメタルシンガー等、ジャンルを問わないあらゆるパフォーマンスで各地で話題沸騰。一度見たら忘れられない破天荒なヴィジュアルと、頭を揺さぶる前代未聞のミュージック!さあ、開闢の時は来た!「歌え!踊れ!破壊せよ!!」

 レディービアードちゃんについて詳しくは公式サイトをご覧ください。

 

 

まとめ

かなり色々資料を探したのですが、歴史上の「強いオカマちゃん」はあまり見つかりませんでした。 日本武尊が女装して熊襲の王を暗殺したように、一時的に女装をすることはあるのですが、常に女装をしている例はほとんどありません

 やはりアニメに出てくる「強いオカマちゃん」は、歴史を参考にしているわけではなく、オリジナルに創造されたキャラクターのようです。

しかし最近ではフィクションの「強いオカマちゃん」が定着した結果、男色ディーノやレディービアードちゃんのようなイロモノのキャラクターも市民権を得つつあります。

もしかしたら、「強いオカマちゃん」の歴史はこれから始まっていくのかもしれませんよ。

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