歴ログ -世界史専門ブログ-

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続・マイナーな世界の格闘技7選

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まだまだあるぞ、マイナーな世界の格闘技

世界には本当にたくさんの格闘技があります。

人間が人間を倒すための方法なので理論はどうしても似てきますし、いくつかの格闘技は元をただせば起源が同じだったりするのですが、それぞれ全く別物と認識されます。

格闘技はナショナル・アイデンティティと強固に結びついているもので、国軍の兵隊を訓練するにあたって、「歴史と伝統・民族性に適した格闘技」を教える必要に迫られるからです。

第1回目はこれらのマイナー格闘技を紹介しました。

  1. ングニ棒術(南アフリカ)
  2. ナクバブカ(ケニア)
  3. カラリパヤット(インド)
  4. プンチャック・シラット(インドネシア)
  5. オキチタウ(カナダ)
  6. コンバーテ・デ・スミシオン・カリーベ(ベネズエラ)
  7. ティレ・マチェット(ハイチ)

ご覧になりたい方はこちらよりどうぞ。

今回もとびきりマイナーな格闘技を7つ選んでみました。

 

 

 1. ルミ・マキ(ペルー)

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引用:forosperu.net

インカ帝国時代の打撃術 

ルミ・マキとはインカ語で「石の手」という意味で、今でいうボクシングに近いものでした。長らく忘れらていましたが、1970年代にペルーの格闘技雑誌に紹介されたことをきっかけに復興運動が起こり、残った文献を元に再現されました。

インカ帝国時代のルミ・マキは、格闘術はもちろんですが、祭りや儀式など精神的な側面の役割も大きかったようです。日本で言うと相撲みたいなもんでしょうか。

ちなみに現代版ルミ・マキは、ゴリッゴリのストイックなマーシャルアーツになっております。

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引用:dailyherald.com

 

2. エスグリア・クリオーラ(アルゼンチン)

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放牧民・ガウチョのナイフ格闘術

南米アルゼンチンやその周辺のパンパ(平原)で、先住民やメスティソ(スペイン人と先住民の混血)の人々が牛などの放牧を行っており、彼らのことをガウチョと呼びました。ガウチョの男たちは気性が荒く、しばし放牧地を巡った争いが起き、流血自体に発展するほどでした。

普段から腰につけているナイフを武器に、来ているポンチョを盾にして戦います。スペインの闘牛士のようなスタイルですね。

蛮勇さで名を馳せていたガウチョは、南米諸国のスペインからの独立戦争時に重要な役割を果たしたそうです。

YouTubeに動画があったので貼付けておきます。


Esgrima Criolla técnicas de poncho - YouTube

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3. フエゴ・デル・パーロ(カナリア諸島)

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相手がガードすることを前提に打つ棒術

スペイン・カナリア諸島独自の棒術で、カナリア棒術とも言われます。

似たような棒術はイベリア半島にもあるようですが、1590年代の記述に登場するため、少なくとも16世紀にはカナリア諸島に存在していた格闘技です。

1.2〜1.8Mほどの棒を両手で持ち、左右に動かして相手の棒を打ちます。ちなみにプロテクターはつけません。これは、相手が自分の攻撃をガードすることが前提になっているからです。

そのため、ちゃんとやろうとするとかなりの技術が求められるようです。

 

4. モランギー(マダガスカル)

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 青少年の心身鍛錬のための格闘技

17〜19世紀に存在した、マダガスカル島のサカラヴァ王国で発展した格闘技。

1年に1回、祝祭の場で格闘技大会が催されました。若者たちはここで活躍して自分の強さをアピールできると、出世や良い見合い話が期待できたわけです。

異なる村の者同士の一騎打ちで、流血したり、立てないほどの重傷を負うと負けとなりました。

これもYouTubeがありました。正直、素人目にも格闘技というには技術が低く、素人のケンカレベルです。でもこういうのが見ていて一番面白いのですよね。 

もっとやれ!とかヤジを飛ばしたくなります。


Moraingy - YouTube

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5. ダンベ(ナイジェリア)

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お祭りと戦争のためのトレーニング

西アフリカ・ハウサ人の格闘技。もともとはレスリングのようなものに近かったと考えられていますが、現在はボクシングに近いものになっています。

男たちが戦争のために日々鍛錬するための格闘術として編み出され、同時に祝祭の時期の儀式的な格闘演舞としても用いられました。

現代では有力な戦士にはスポンサーがついてスターになっちゃうみたいで、先進国のプロ格闘家と同じです。

これはCNNニュースがYouTubeにあったので解説付きです。

この映像、めっちゃエグいです。

ある程度のところで勝負あり!とレフェリーが介入して止めてますが、闘争本能むき出しの男が、マジで相手を殺しにいってるくらいぶん殴ってます。


[CNN] Traditional Nigerian 'Dambe' Boxing 2008.07.14 - YouTube

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6. マウ・ラーカウ(ニュージーランド)

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マオリ族の武器を使った格闘術の総称 

ニュージーランドの先住民マオリ族では、こん棒や棒、槍などを武器を用いた格闘術は総称してマウ・ラーカウと呼ぶそうです。

ツー・タウアと呼ばれる格闘学校があり、戦士たちはそこでそれらの格闘術を学びました。

ニュージーランドの高校生のマウ・ラーカウのトレーニングの様子です。

この映像の中によく分かってない子が1人います。気になる。


OSA MAU RAKAU - YouTube

 

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7. クンフー・トーア(イラン)

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 1960年代、イブラヒム・ミルザエイという人物がイランで作った格闘術です。

 ミルザエイは国王の支援を受け、イランの国軍のための近代格闘術を極めにアジアに武者修行の旅に出ます。そこで学んだカンフーやヨガなどの技の数々を組み合わせ、クンフー・トーアを確立しました。素早い動作、強い打撃の組み合わせが特長です。

イラン革命によってミルザエイは国を追われ、そのまま行方不明になってしまいます。しばらくはイランではクンフー・トーアは禁じられていましたが、現在はかなり人気になっているようです。

形の動画がありました。なんか、手首、足首など関節の動かし方が独特です。笑っちゃいけませんよ。


Traditional Kung Fu To'A , Master Mostafa Dehghanian - anatoa - YouTube

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まとめ

格闘技の技術体系は、武器生成にも似て精度がかなり違います。

一遍の曇りなく精錬された切れ味鋭い日本刀と樫の木で作られたこん棒とでは、まともに戦うと勝負になりません。

柔術や空手、ボクシング、ムエタイ、テコンドーが世界的に普及しているのは、それだけ「格闘技としての精度が高い」ことなのだろうと思います。

日本刀が完璧を極めているように、空手や柔術も格闘技としては完璧を極めています。

ただ、既に完璧なものがあるとしても、今後も新たな格闘技や流派は生まれていくのでしょう。

いかに戦争がコンピューター・ゲームとなっても、戦う者同士が機械でなくて人間である以上、格闘技の進化は続くのでしょうね。