歴ログ -世界史専門ブログ-

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ベンジャミン・フランクリンに学ぶ「幸せになる方法」

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プラグマティズムの体現者

ベンジャミン・フランクリン(1705-1790)は、アメリカの政治家・発明家・学者。

印刷屋の子弟から身を起こし、豊臣秀吉ばりに出世を遂げ、アメリカ植民地議会の外交官にまで上り詰めます。

そしてアメリカの独立運動に貢献し、建国の父の1人となりました。 

彼がその人生で体現したプラグマティズム(実践主義)は「理想のアメリカ人」を現しているとされます。実際、フランクリンが実践した様々なセルフ・マネジメントは、現在の日本人にも大いに参考になる部分があると思います。

アメリカが生んだ偉大な実践主義者から、幸せになるヒントを学びましょう。

 

 

ベンジャミン・フランクリンの人生

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 フランクリンはボストンの船主の両親の元に生まれますが、17歳で一念発起して、当時北米で最も繁栄していたフィラデルフィアに上ります。

 印刷屋の子弟となったフランクリンは、早くも24歳に自分の印刷所と新聞を持つようになり、30歳の時にはペンシルヴェニア議会の書記となりました。

フランクリンは科学者・発明家としても著名です。例えば、雷の正体が電気であることを発見したのはフランクリンです。

1757年、ペンシルヴェニア議会を代表してイギリスに赴きます。深刻化するイギリスとアメリカ植民地の対立を解消することがミッションでした。

当初フランクリンはアメリカの独立には懐疑的でしたが、後にアメリカ独立を積極的に支持。戦争に勝利し、アメリカが独立するにあたっては、独立宣言の文章の起草もおこなっています。

 

フランクリンが考える「幸せになる方法」

フランクリンは規律と自己規制を重んじた人でした。それは

「いかにして自分自身の努力でこの世における成功を手に入れるか」

を実行した結果であり、全ての事柄を理性的に解決し、自らコントロールしようとしました。

フランクリンが実践した「幸せになる方法」はズバリこれです。

理性に基づきコツコツと努力を重ねて、自己改善を繰り返していくこと。

 

貧しいリチャードの暦

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 フランクリンの哲学は「貧しいリチャードの暦」に凝縮されていると言います。

これは1733年に発刊された日めくりカレンダーで、フランクリンが考えたり集めたりした格言が暦とともにに書かれています。

ここで書かれた格言は「貧しく野心のある者が金持ちになるための心構え」です。 

その一部を紹介します。

  • 眠っている狐には鶏は取れない
  • 墓場に入ればじゅうぶん眠れる
  • 台所が太ると意志が痩せる 
  • 生きるに食べよ、食べるに生きるな
  • 世に多きは、腹すら管理できない秀才
  • 蜜より甘きはお金のみ
  • 早寝早起きは健康と富と知恵の源
  • 時間があればこそ待つな

貧しいリチャードの暦の中でフランクリンが一貫して主張しているのは

「労なくして得るものなし」

です。ただ同時に、理性に導かれない努力は無駄になるだけだとし、 素朴で質素に慎ましく暮らし、浪費せず贅沢せず、金と時間は利益をもたらすことに用いなさいと説いています。

貧しきリチャードの格言はこちらのサイト(英語)にまとまっているので、興味ある方はご覧ください。

 

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プラグマティズムの実践

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 フランクリンはフィラデルフィア移住の3年後、20歳の時に日誌にて

「今後あらゆる点に関して、理性的な生き物らしく生きること」

を決心。

人生の幸・不幸を運や神に委ねるのではなく、全ての事柄を理性と科学によって解明することで人生を拓いていくことを表明しました。

 

人生の究極目標

フランクリンは人生の究極目標を「幸福」としました。 

 ではその幸福を達成するためにはどんな要素が必要か。

フランクリンはその要素に、健康、富、知恵、効用を置きました。

 

「幸福」になるために

フランクリンはこう考えました。

「幸福の4要素」を手に入れるための手段は、実用性以外ない。

もしある信念や行動が自分に幸福をもたらすならそれは善だが、役立たないのなら全くの悪にすぎない。一般的に善や悪とされている考えであっても、現在自分を取り巻く環境とそれがもたらす結果との関係なしには、まったく意味をなさない。

つまり全ての価値は「役に立つかどうか」で決まるのであって、結果を出したものは「善」結果を出さないものは「悪」なのです。

 

今日はいかなる善をなすか?

フランクリンは毎日の予定をスケジュール管理していましたが、

1日の始まりに、

「今日はいかなる善をなすか?」

を書き記し、夜ベッドに入る前に、

「今日はいかなる善をなしたか?」

を書き記し、就寝したそうです。

 

フランクリンの「13の徳目」

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1728年頃、フランクリンは「道徳的完全に到達する大胆で難儀な計画」を思いついたと自伝に書いています。 

「いついかなる時も、いかなる過ちを犯すことなく生きる」ことを願い、それを実行するために「13の徳目」を整理しました。

  1. 節制 
  2. 沈黙 
  3. 秩序
  4. 決断
  5. 節約 
  6. 勤勉 
  7. 誠実 
  8. 正義 
  9. 中庸 
  10. 清潔 
  11. 落ち着き
  12. 貞節
  13. 謙譲 

 

幸福達成度 進捗管理表

フランクリンは自分がちゃんと「幸福」に向かって進んでいるか管理するために、

「幸福達成度 進捗管理表」のようなものを作り、毎週記録しました。

とある1週間は13の徳目のひとつに注力して実践し自己採点し、翌週は次の徳目を実践。翌々週はその次。毎週それをやると、1年で13徳目を4回ローテすることができます。

 

ジャントゥ・クラブ

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理性的善でいるための公共奉仕

ここまで書くとフランクリンは相当利己的な人間な印象を受けますが、

「人類のために善を行う」として公共奉仕を積極的に行いました。

全ての物事を理性的に判断すると、自分自身も他人から理性的に判断されるわけで、

他人から悪と判断されずに善でいられるには、他人に対する奉仕を行うことは理性的に善、と判断したわけです。

 

地域改善組織

 1727年、フランクリンはフィラデルフィアに「ジャントゥ」と呼ぶ青年会議所の先駆とでも呼べる組織を結成しました。

組織の設立にあたってフランクリンは、

「ジャントゥ・クラブが人類に奉仕し得る方途について、現今の貴方の考えや如何に?」

と問いかけたそうです。

ジャントゥ・クラブはフィラデルフィアの地域改善のための施策を次々と実行。

貸し出し図書館の設立、消防隊の組織、夜警団の組織、外灯会社の設立、道路舗装運動の組織などなど。

このとき作られたペンシルヴェニア・アカデミーは後にペンシルヴェニア大学となります。

 

 

 まとめ

すごい自己抑制の人ですね。

ここまで自分自身を管理できるかは分かりませんが、

 「人生・10年後・1年後・明日の目標を立て、自己管理しながら理性の力で高めていくための努力」は、できるかもしれませんね。

何でもいいんです、きっと。小さなことからコツコツと。

1日10本だったタバコを、来週は9本にしよう。

明日からいつもより5分早く起きるようにしよう。

人生は長い。小さな努力が積み重ねなって、人生を幸せにしていくんだと、そう思います。

 

参考資料:人物アメリカ史(上)ロデリック・ナッシュ

人物アメリカ史(上) (講談社学術文庫)

人物アメリカ史(上) (講談社学術文庫)