歴ログ -世界史専門ブログ-

おもしろい世界史のネタをまとめています。

歴ログ-世界史専門ブログ-は「はてなブログ」での更新を停止しました。
引き続きnoteのほうで活動を続けて参ります。引き続きよろしくお願いします。
noteはこちら

日本よ、これが無能だ!世界のダメな王様たち 7選

f:id:titioya:20111229223123j:plain

聡明な君主がいれば、その逆も・・

このブログでは、偉人・賢人・傑人を多く紹介してきました。

ところが実際に歴史の教科書を開いてみると、有能な人物よりダメな人物のほうが多かったような気がします。

そしてそんなダメな人物が王様になってしまって、国中を混乱させるケースも多くありました。

今回はそんなダメな王様の中でも、とびっきりダメな人たちを集めてみました。

母さん、日本は平和です。

 

 1. ジョン失地王(1167-1126)イギリス

f:id:titioya:20111229223123j:plain

とにかく人望がなかった

無能な王様の代表格と言えばこの人。

当時イングランドは現在のフランスに領土を持っていました。

ところが、強力なカリスマ性を持っていたフランス王フィリップ2世は、これを奪還することを宣言。

イングランド臣下のフランス諸侯の多くは、何か頼りないジョンよりも有能なフィリップ2世を選びます。

結果、援軍を欠いたジョンは戦いにことごとく敗退。イングランドは全フランス領土を失ってしまいます。

 腰砕け、弱腰

ジョンはカンタベリー大司教の後任人事問題で教皇インノケンティウス3世と対立。

怒った教皇はジョンを破門にして、フランス王にイングランド征伐の認可を与えます。

ジョンはあせってイングランドを教皇に寄進して許しを乞うという屈辱的な事態に。

教皇は、「よしよし、誰が偉いか分かったならいいんだ」という形で破門を解き、

イングランドをジョンに「貸し与える」ことで決着します。

 

フランスを失ったことで税収が減ったので、ジョンは民衆に重税を課します。

それだけでも腹が立つのに、大陸でフランス王と戦ってまた負け(ブーヴィーヌの戦い)、のこのこ帰ってきたのでこれにイングランド諸侯・民衆の怒りが爆発。

王の権限を制限する「マグナ=カルタ」の承認を迫り、ジョンはしぶしぶこれを認めます。

 本当に、気の弱い男だったんですね…

 

2. カリグラ帝(12-41)ローマ帝国

f:id:titioya:20150504123946j:plain

就任時は熱狂的に迎えられる

カリグラがローマ帝国第3代皇帝に就任した際、庶民は熱狂的に歓迎します。

第2代皇帝ティベリウスは緊縮財政を敷いたため庶民に不人気だったことに加え、カリグラが人気のあった将軍ゲルマニクスの息子だからでした。

カリグラは軍に恩給をばらまき、庶民には大規模なイベントを開催。当初、庶民はこれを喜びカリグラを大いに讃えます。

イベント狂いで財政が疲弊

カリグラはこれに気を良くしたのか、イベント自体が気に入ったのか、大規模イベント何度も何度も開催。庶民が飽きてきても、しつこく開催。

 前皇帝ティベリウスが健全化させた財政が破綻寸前にになるまでカネを使い続けます。

さらには、イベントが日常にまで入り込んできたのか、公の場に「神様」の格好をして現れるようになります。

自身が神に扮することで神格化を進めようとしたらしいのですが、そのような行為はローマの伝統を著しく逸脱させる行為でした。

結局、カリグラは叔父のクラウディウスの軍に暗殺されます。

人気取り政策もやりすぎると逆効果、と。

 

PR

 

3.燕山君(1476-1502)李氏朝鮮

f:id:titioya:20101020230636j:plain

引用:prorok.tistory.com

学問の殿堂を快楽の殿堂に変えた破廉恥男

李氏朝鮮第10代国王。

18歳で国王に就任した燕山君は、当初は比較的安定した政治を行いますが、次第に悪行が目立つようになります。 

自身に反対する一派を粛清し、独裁体制を強化。

仏教や学問を軽蔑し、仏教の研究機関である円覚寺や、当時の最高学府である成均館を、自身が快楽を楽しむための施設に変えてしまいます。

そこに朝鮮各地から妓生(遊女)を連れてきて、放蕩三昧に明け暮れる日々。

 憂いて諌言する臣下はことごとく殺しまくったため、最後は宮廷内のクーデーターで失脚しました。

今だと「それなんてエロゲ?」と言われるやつですね。燕山君が主人公のエロゲ作ったら面白い気がする。

 

PR

 

4. 周の幽王(前781-771)中国

f:id:titioya:20150504124040j:plain

出典:baike.sogou.com

笑わない王妃

古代中国・周(西周)の12代皇帝幽王は、褒姒(ほうじ)という美貌の妃がいました。

しかし褒姒は決して笑みを見せることがなく、どんなに愉快な芸や話にも笑おうとしません。

褒姒が笑うとどれだけ可愛いことか。

幽王は褒姒が笑うところが見たくてしょうがありません。

あの手この手を尽くしますが、笑うことがありませんでした。

リアル狼少年

ある時、誤って宮殿の狼火(のろし)が上がってしまいます。当時狼火は「緊急事態発生」を知らせるサインだったので、何があっても諸侯は皇帝の元に駆けつけなければいけません。

どたばたと血相を変えて宮殿に駆けつけてくる諸侯たち。

その慌てぶりを見て、褒姒は初めて笑いました。

これを見て嬉しくなった幽王は、この「緊急事態」を頻発するようになります。

そのたびに褒姒は可笑しくて笑い、幽王はその笑顔を見るのが嬉しかったのですが、

諸侯は幽王に対して不信感を抱くようになります。

ある時、異民族犬戎の軍が周に攻め入ってきます。幽王はあわせてて狼火を上げますが、諸侯たちは誰も信用せずに駆けつける者は1人もいませんでした。

幽王は連れさられて殺され、褒姒は行方不明に。ここに西周は滅んでしまいます。

 たまに、重要度を最高レベルにしたメールを頻繁に送ってくる人がいますが、あれは本当にやめたほうがいいですよね。

 

5. 南斉の蕭宝巻(498-501)中国

f:id:titioya:20150504124820j:plain

出典:talent.yahoo.co.jp

暴君の典型

中国の南北朝時代にあった南斉(479-502)の第6代皇帝。「蕭宝巻」=「しょうほうかん」と呼びます。

 とにかく内向的で陰気な男で、宮殿にひきこもり、大臣たちにも会わず、幼なじみで妃の潘玉奴を溺愛し快楽に溺れる日々を過ごします。

妃のために莫大なカネをかけて宮殿や庭園を造成し、国家財政は疲弊。

また、馬に人を踏ませることを異常に面白がり、町に出ては庶民をひざまずかせて馬にその上を歩かせ、その様子を見てケラケラと笑ったそうです。

そのような悪行に不満は募っていき、蕭宝巻の弟である蕭宝融を奉じて内乱が発生。

内乱中も蕭宝巻は宮殿に引きこもっていたそうで、最後は衛兵に殺されています。

やっぱり家に引きこってたら発想に異常をきたすものなのでしょうか。

 

6.フランシスコ・ソラーノ・ロペス(1826-1870)パラグアイ

f:id:titioya:20150504124841j:plain

袋だたきするつもりが、逆に袋だたきにされる

王様じゃありませんが。ロペスは第2代パラグアイ大統領。

領土拡張を狙うロペスは、先代の父親が残した強力な軍隊を率いてブラジルから領土を奪うことを目指します。

ロペスは、ウルグアイとアルゼンチンの反体制派と接触し、パラグアイ軍がブラジルに侵攻したらクーデーターを起こして政権を乗っ取り、ブラジルに宣戦布告をして3国で攻め入る約束を取り付けます。

1864年、パラグアイ軍はブラジルに侵入。主要な都市を制圧しますが、待てど暮らせどクーデーターが起きない。

アルゼンチンの反体制派ウルキーサは単純に約束を破り、 

ウルグアイではブラジルの支援で親パラグアイ派が敗れて親ブラジル政権が誕生。

あろうことか、ブラジル・アルゼンチン・ウルグアイの3国がパラグアイに攻めて来る始末。

ロペスの判断ミスで潰れたパラグアイ

5年に及ぶ凄惨な戦争の結果パラグアイは敗れ、パラグアイの人口は半分にまで減り、国土は4分の3になり、農地所有権はアルゼンチンの地主に奪われ、戦費を借りたイギリスから多額の借金を抱えます。

その経済的損失は計り知れず以降、「大国パラグアイ」は復活しませんでした。

ちなみにロペスは戦争中に、名誉の戦死を遂げています。

 後先考えずにイケイケドンドンで突っ走ってド壷にはまるパターン。

 

7. 衛の懿公(?-前660)中国

f:id:titioya:20150504124905j:plain

出典:baike.sogou.com

臣下よりも鶴を愛した男

衛は、春秋戦国時代に今の河南省にあった小国。 

第19代国王の懿公(いこう)は、とにかく「鶴」が大好きでした。

莫大な費用をかけて立派な飼育施設を建てて何羽も鶴を飼育。 

 お気に入りの鶴は、車に乗せて連れて回したり、禄位を与えたりします。一方で臣下の者たちは放っておかれたため、鶴狂いの王に不満が募っていきます。

ある時、北方異民族が衛に侵入。懿公は軍勢を集めようとしますが、臣下はこう言い捨てたそうです。

「王の愛する鶴に戦わせてはいかがでしょうか?」

結局、懿公は少数の軍で敵に挑み完敗。一時的に衛国は滅びてしまいます。

この人は生まれる場所と時代を間違えましたね。現代日本に生まれたらその才能が活かせるのに。