歴ログ -世界史専門ブログ-

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世界で最も堕落した町・ポートロイヤル

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密輸、賭博、売春で栄えた港町

ポートロイヤルは、17世紀ごろ現在のカリブ海の国・ジャマイカにあった港町。

当時のカリブ海は、交易船や輸送船を襲って荷物を奪う海賊たちが跋扈していました。

ポートロイヤルには海賊たちのブラックマネーが大量に流入。密売業者や賭博屋・売春婦などもやってきて大いに賑わいました。

その町の品位と言ったら最低のレベルを下回っており、イギリス人牧師が言うには「世界で最も堕落した人々からなっている町」だったそうです。

今回は堕落した町・ポートロイヤルの歴史を見ていきましょう。

 

 

なぜカリブ海に海賊が出るようになったか

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新大陸の覇者スペイン

コロンブスの新大陸到着以降、南北アメリカ大陸の豊富な物資を求めて、

列強は我先に進出し、町の開拓、資源の開発、そして原住民の排除を行いました。

列強の中で先行したのはスペインでした。スペインは北アメリカのフロリダ、西インド諸島、ほぼ全ての南アメリカ大陸(ブラジルを除く)を傘下に収めます。

メキシコのサカテカスやボリビアのポトシでは莫大な量の銀がとれ、スペインはせっせとそれを船で本国に運びます。

新大陸の銀はスペインを一気に強国に押し上げ、 最大の陸軍と海軍を持つ、今で言うアメリカのような覇権大国にまで成長しました。

海賊に転向した「くんせい肉野郎」

新大陸には、スペイン人の他にもイギリス人やオランダ人、フランス人、アイルランド人などが一旗揚げようとやってきていました。

ところが、オイシイ部分は全てスペインが牛耳っており、働き口と言えば冷酷な農園主が経営する大農場しかなく、そこで奴隷のごとく酷使されました。

そこから逃げ出した人たちは、コミュニティを形成して船乗りに提供するくんせい肉を作り始めました。彼らのことをバッカニアと言います。日本語にすると「くんせい肉野郎」とでもなりましょうか。

しかしスペインは不法滞在する他国人を排除しようとしたため、行き場を失ったバッカニアたちは海賊になってスペインの銀輸送船を襲い手っ取り早く金儲けをするようになります。

 

ポートロイヤルの繁栄

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海賊を使ってスペインの富を略奪するイングランド

もともとポートロイヤルがあるジャマイカはスペインの領土でしたが、17世紀半にイングランドが買収。ポートロイヤルは500艘の船が停泊でき、カリブ海でも随一の港湾都市でした。

イングランドはバッカニアら海賊たちの入港を拒まず、むしろ歓迎しました。

なぜなら、当時新大陸でのイングランドの立場は弱く、今後自分たちが参入していくにはスペインの牙城を崩す必要がありました。

そこで海賊たちを使ってスペイン船を襲わせ、奪ったカネをイングランド領内で盛んに消費させることで、間接的にスペインの富を略奪する方法を思いつきます。

悪どい・・・

 マネー大狂乱時代

ポートロイヤルは海賊たちが持ち帰る略奪品であふれかえるようになります。

金貨、銀貨、宝石、金銀の延べ棒、真珠等々…

その繁栄ぶりは、ロンドン以上の貨幣が流通したと言うから驚きです。

海賊たちが持ち込むカネを狙って、パブ、売春宿、カジノも林立します。

バッカニアたちは航海から戻るたびに、歓楽街でバカ騒ぎしました。

業者もできるだけ海賊たちからカネを搾り取ろうとし、あの手この手を尽くします。

ポートロイヤルの繁栄が聞きしに及ぶと、ヨーロッパ大陸からもそのおこぼれにあやかろうと、落伍者、ヤクザ、売春婦、犯罪人などが大挙して押し寄せます。

これを見てイギリス出身の牧師は「ここは世界で最も堕落した人々からなっている」と評しました。

漫画「ブラックラグーン」に出てくるロアナプラみたいですね・・・

 

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ポートロイヤルの海賊ロッシュ・ブラジリアーノ 

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 ここポートロイヤルを本拠にした有名なバッカニアの1人に、オランダ人のロッシュ・ブラジリアーノがいます。

ロッシュとは岩のことで、「ブラジルの岩男」という意味のあだ名です。

ビッグバン・ベイダーのようにデカくて頑丈な男だったのでしょう。

この男は酒癖が異常に悪く、酔っぱらうと通行人を誰彼かまわずぶん殴って回ったそうです。

機嫌がいいときはワイン樽を道の真ん中でズボーンと開け、

「今日はおれのおごりだ!みんな飲んでいってくれ!」

と言って、通行人に振る舞ったそうですが、拒否すると

「てめえ!おれの酒が飲めねえってのか!」

とピストルを突きつけて脅したそうです。 

リアルジャイアンじゃないかーやだー

 

地震で壊滅

1692年7月7日、カリブ海で発生した巨大地震と津波によって、ポートロイヤルは壊滅します。

 先立ってスペインとイングランドとの間には、ジャマイカの正式な主権委譲の条約が締結されましたがその条件が、「島からバッカニアを排除すること」でした。

そのためポートロイヤルからは急にイングランドの資本が撤退していき、またバッカニアの拿捕も行われるようになり、ポートロイヤルは衰退していきました。

そこにとどめをさすように起こった地震で、ポートロイヤルは完全に息を止めます。

 

新たな本拠地バハマ・ニュープロヴィデンス島

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これまでスペイン船のみを襲撃の対象としていたバッカニアは、取り締まりが厳しくなったので、今度はどの国籍の船でも襲う純然たる海賊集団・フリーバスターに変貌します。

フリーバスターはイングランド領バハマにあるニュープロヴィデンス島を新たな本拠地とし、イングランドもこれを見て見ぬ振りをします。

ニュープロヴィデンス島には、海賊が持ち込む略奪品を売りさばく密売業者がやってきて、また歓楽街も大いに賑わいました。

まさに第2のポートロイヤルでした。 

 

カリブ海賊の終焉

18世紀初頭、イギリスは北アメリカ植民地の経営に注力をしていました。

そして、その航海を妨害する海賊たちが邪魔になってきます。

 1716年、元バッカニアのウッズ・ロジャーズを責任者に、大規模な海賊討伐隊を結成。自身が元海賊であっただけに、その鎮圧方法も見事なものがありました。

 投降した海賊を使って、芋づる式に別の海賊を捕まえ、投降しない者は容赦なく縛り首に。

1772年、大海賊のバーソロミュー・ロバーツが戦死し、ここに海賊たちの一時代は幕を閉じたのです。

 

 

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