馴染みがあるようでない、ヒンドゥー教
みなさんはヒンドゥー教の神様をどれくらいご存知でしょうか。
シヴァ神、ヴィシヌ神、ガネーシャ…
僕も正直これくらいしか知りません。そしてそれらの神様の逸話となるともうお手上げです。
七福神を始め日本の神様たちもヒンドゥー由来のものも多くありますが、インドから日本に渡ってくる途中で、角が取れて丸みを帯びて、親しみやすくなっているようです。
本当のヒンドゥーの神様たちは恐ろしくて、恐怖の大魔王のような連中ばかり。
これは、ヒンドゥーの神様の概要を勉強するためのエントリーです。
ひれ伏せ、人間どもよ。
1. ヴィシヌ神
ヒンドゥー教の最高神の1人
ヴィシヌはヒンドゥー教の最高神である三大神の一人。
雲のような霞を背景に描写されることが多く、青い肌に手は4本。ガルーダという鳥人に乗って移動します。
この世を照らす太陽を神格化しており、「宇宙を維持する神」です。
そのため世界を壊すのも自由自在で、ヴィシヌの3歩の闊歩で宇宙は崩壊します。
妻はヒンドゥーの女神ラクシュミーです。
10の姿に化身して人の前に現れる
ヴィシヌはそのままの姿では人の前に姿を現すことはなく、必ず以下の10の姿に化けて人々を救ってきたのだそうです。
- 魚
- 亀
- 猪
- 獣人
- 小人(ドワーフ)
- 斧を持つラーマ
- ラーマ
- クリシュナ
- ブッダ
最後にブッダが名を連ねていますが、別にブッダに化けて正しい教えを広めた、ということではなく逆の意味で、
敢えて邪教の教えを広めて悪党どもがヒンドゥー教に近寄ってこないようにした、という意味です。仏教は邪教なのね…
2. シヴァ神
三大神の一人で「破壊の神」
シヴァは寿命が尽きた世界を破壊し次の世界を想像する、「破壊の神」です。
シヴァはヒマラヤ山脈で修行をしているとされていて、その姿は修行僧のそれと似ています。移動する時は牛に乗ります。(それ故、インドでは牛は神聖な生き物)
額には第三の目があり、怒ったときはここから灼熱の炎が出て全てを焼き尽くします。
また、頭上からは常に水が吹き出しており、これはヒマラヤ山脈のガンジス川の始まりを表現しています。
また、シヴァは踊りの神としても有名で、よく「破壊と踊りの神」と形容されます。
12世紀にはシヴァの踊りの像が盛んに作られました。
数百人の妻
シヴァには数百人の妻がいるそうですが、代表的な以下の4名。
- サティー
- パールヴァティー
- ドゥルガー
- カーリー
最初の妻・サティーは、シヴァを認めない父と諍いを起こした挙げ句、火に飛び込んで自殺してしまいます。シヴァは嘆き悲しみ、サティーの焦げた遺体を抱えたまま世界を破壊して回ります。
見かねたヴィシヌ神がサティーの遺体を切り刻むと、遺骸はインド各地に散らばり、その肉片全てがサティーとして蘇ったそうです。
もはやホラー映画じゃないかーやだー
3. ガネーシャ
庶民に最も人気がある学問と商売の神様
ガネーシャは頭が象で体が人間の姿をしており、学問と商売の神様としてインドの庶民には慕われており、おそらくヒンドゥーの神様の中では最も人気があります。
もともと障害を持った神様だったのが、障害を取り除く神様に変化し、それゆえ困難を取り払って事業や学問が成功する、と拡大解釈されていったようです。
父・シヴァに殺されかけて象頭になる
ガネーシャの母はパールヴァティ。
パールヴァティは自分の垢をこねて命を吹き込みガネーシャを作ります。
その後、ガネーシャに「見張っておいてね」とお願いして風呂に入ります。
と、そこに父であるシヴァが帰ってきます。ガネーシャは父とは知らず「入るな」と言います。
シヴァはシヴァで「何だこの小僧は」と言ってガネーシャの首をはねて遠くに投げてまいます。
激怒したパールヴァティーはシヴァにガネーシャの首を取りに行かせますが、結局見つからずにそこらへんにいた象の首をはねてガネーシャの首に据え付けました。
…パールヴァティーもこれで良かったのだろうか。
4. パールヴァティ
シヴァの正妻で絶世の美女
パールヴァティはシヴァの正妻ですが、もともとはヒマラヤに落ちたサティーの肉片から生まれた女神。
父はヒマラヤ山脈を司る神ヒマヴァットで、姉はガンジス川の女神ガンガー。
絶世の美女で、穏やかで心優しい女神様です。
ヒンドゥー教には様々な女神様がいますが、ほとんどがパールヴァティの化身だったり、パールヴァティの別の姿を表現してものです。
パールヴァティの化身たち
パールヴァティーの裏の姿(?)である女神たちの中で、代表的なものが後述するドゥルガーとカリー。
恐ろしい殺戮と戦闘の女神です。
5. ドゥルガー
虎に乗り10本の武器を使いこなす戦闘の女神
ドゥルガーはパールヴァティーの化身で、もともと凶暴な悪魔神を退治するために誕生した女神。
あるとき、悪魔神ドゥルガーは戦車1億台、象1000万頭、数えきれないほどの魔人兵士で構成された軍隊を人類に向けて派遣しきます
ここで彼女は負けじと何百万もの兵士を作り出し、最後は悪魔神ドゥルガーを倒しその名前を頂戴してしまいます。
さらなる戦闘の女神を生む
ドゥルガーはシュムバ、ニシュムバとの戦闘中、怒りに我を忘れたため、黒くなった額から純粋に戦闘を楽しむ女神カーリーを生みだします。
この女神は、血と殺戮を好む「バトル・モンスター」です。
6. カーリー
血と殺戮を好む戦闘の神
女神パールヴァティの純粋悪の姿。
4本の手を持ち、首には髑髏か生首でできた首飾りをかけた恐ろしい形相です。
生首を抱えたまま男を踏みつけてペロリと舌を出している絵がよく描かれますがこれは、
戦闘に勝利したカーリーが踊り始めると、そのあまりの激しさに大地が壊れそうになります。慌てたシヴァ神がその足元に横たわり、衝撃を和らげようとします。夫を踏みつけていたことに気づいたカーリーが「いっけね」と舌をペロリと出して、チャンチャン!という図がソレです。
ドゥルガーとカーリーが変化した、10大女神
ドゥルガーとカーリーはさらに、マハーヴィドヤーという10大女神に変化しています。これらには特定の個があるわけではなく、それぞれパールヴァティーの中の1つの因子に過ぎません。
- カーリー(血と殺戮を好む純粋戦闘の女神)
- ターラー(時間と空間を司る女神)
- トリプラスンダリ(美と三都の女神)
- ブワネスワリ(宇宙で最も強い女神)
- バイラヴィ(望みを叶えてくれる女神)
- チンナマスター(自分の頭を右手の刀で切断する女神)
- トゥーマーバティ(死を司る女神)
- バガラムキー(知恵と戦いの女神)
- マータンギー(福徳の女神)
- カマラートミカ(蓮華の女神)
一番えげつないのが、チンナマスターという女神。
横たわる男女の横で自分の首を搔き切っています。
パールヴァティーの従者がお腹をすかせて「なにか食べ物をください」と言ったので、女神は自分の首を切りその血を与えたそうです。
何で男女が横たわっているかというと、首から吹き出る血と男女の性的エネルギーを同一に見立てて表現しているからだそうです。
言わんとしてることは分かりますが、納得はしかねますね・・
まとめ
日本の神様とは比べ物にならないくらい、スケールがデカくて、残酷でしょう。
でもきっとそのぶん、人に対する愛情も深いのだと思います。
インド。奥深いですね。