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歴ログ -世界史専門ブログ-

おもしろい世界史のネタをまとめています。

【ミステリー】「仮面の男」とは何者だったのか

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正体不明の囚人「仮面の男」

「仮面の男」とは、1703年までフランスのバスティーユ牢獄に軟禁されていた、顔が隠された謎の囚人です。

そのグロテスクなイメージと、あまりに確かな情報がないことから、当時から人々の注目を集めており、その正体については様々な噂が流れていました。

監獄の奥で、仮面をつけられ監禁されている囚人は人々の想像力をかきたて、

  • 監獄でも常に鉄仮面を付けさせられている
  • 正体は実はルイ14世の双子の弟だ

など噂がたち、詩や演劇、映画のモチーフにまでなっています。

最近だと、1998年にレオナルド・ディカプリオ主演で映画化がされています。

 

 「仮面の男」の正体に言及した暗号書の発見

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1890年、ルイ14世の軍事行動の研究をしていた歴史家が、暗号化された何通かの書簡を見つけました。

何が書いてあるかさっぱり分からなかったので、彼はフランス軍暗号班のバズリー少佐に解読を委託。その書簡には1ページあたり何千個もの数字が書き付けられていました。

バズリー少佐は、そこに書き付けられているの数字が、650種のアルファベットの組み合わせと対になっており、パターン化されていることを見つけました。

(例:124-22-125-46-345 = les-en-ne-mi-s = 敵)

 

そして何ヶ月もの試行錯誤の結果、ほぼ全ての解読に成功。

そしてその中の書簡の一つに、200年もの間ミステリーとされてきた「仮面の男」の正体について言及されている箇所が発見され、人々の度肝を抜いたのです。

 

フランスの軍人・ビュロンド大将

書簡の作成者はルイ14世の陸相を務めたフランソワ・ド・ルヴィアで、内容はこうありました。

これがどんな結果をもたらすかは、誰よりも国王陛下がよくご存知のことであるし、また陛下は、ここを占領できなかったことで我が国の大義が深く傷つけられたことも理解しておられる。この失敗は冬のあいだに取り返さなければならない。陛下が望んでおられるのは、ビュロンド大将をすみやかに逮捕し、ピニェロール要塞に護送することだ。要塞でのビュロンドの処遇については、夜間は鍵をかけて監視し、昼間は仮面をつけて胸壁を歩いてよいものとする。

ビュロンド大将は、フランスとイタリアの国境の町クネオの攻撃を指揮していましたが、オーストリアから敵軍が進軍してくることを恐れて、弾薬や怪我人を残して逃亡してしまいます。このせいで戦線は危うくなり、ルイ14世はビュロンドに激怒したと言われています。

実際に当時の有力者が記した暗号文であることと、その罪の重さ、そして仮面の男が最初にピニェロール要塞に現れた時期と合致するため、「仮面の男=ビュロンド説」は有力な候補とされていました。

ただ、これにも反論があるのです。

 

仮面の男=ビュロンド説への反論

反論1. ビュロンドの顔を隠す道理がない

そもそもビュロンドの逮捕と監禁は、トップシークレットでも何でも無く当時の新聞でも普通に報じられていたし、ビュロンドは数ヶ月後には釈放されている。

また、ビュロンドの死は「仮面の男」の死の6年後のことである。

反論2. 書簡自体が罠である可能性

もし仮面の男の正体がルイ14世の双子であって、本気でそのことを隠し通したいと思うのなら、後世を欺くための偽の証拠を残しておくに違いない。この書簡は解読されることを前提に作られた、罠である可能性がある。

 

反論2は「仮説」の前提が「仮説」なので信頼性は低いのですが、反論1はどうでしょう。

確かに公にされているなら、わざわざ顔を隠す必要もないですよね。でも何でそれが暗号の書簡になっているのでしょう。もうここの時点で破綻しているんですよね。

その他「仮面の男」の候補一覧

ルイ14世の近親者説

未だに根強く、しかも映画や演劇の題材にされるのが、ルイ14世の双子の兄弟説

映画では、ルイ14世と「仮面の男」が入れ替わってしまう内容のものもあります。

その他近親者説では、ルイ14世の実父説ルイ14世の異母兄説、果てはルイ14世本人説まであります。

チャールズ2世の息子説

1908年刊行の「仮面の男」に載っている説で、厳格なプロテスタントであるイングランド王チャールズ2世と、カトリックのフランス女との間に出来た隠し子である、というのです。

フランスで育った彼は、フランスの事情に詳しくなりすぎたためイギリスに帰還することを許可されずにルイ14世の命令で監禁された、ということらしい。

イタリア人外交官説

マントヴァ伯フェルディナンド・カルロは、自領のカザーレ・モンフェッラートをルイ14世に売却する交渉を秘密裏に進めていました。

ところが、その現場担当者である外交官エルコーレ・マッティオーリという人物が、締結直前に敵であるスペインやオーストリアに暴露して回ります。

マッティオーリはフランスによって拉致されフランス領内に監禁されてしまいます。

仮面の男はそのマッティオーリだったとも、さらに、彼のお付きの者でユスターシュ・ドージェという人物だったという説もあります。

 

 

あまりに混沌 真実は如何に

いかがでしょうか。

何が真実で何がウソかも分からなくなるくらい混沌としています。

しかしそんな色々が噂やゴシップが蔓延するほど、17世紀のヨーロッパの政治は複雑怪奇で、謀略と陰謀に満ち満ちていた、ということだけは確かですね。

 

参考文献

暗号解読<上> サイモン・シン, 青木薫 新潮社

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

暗号解読〈上〉 (新潮文庫)

 

 

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