読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

歴ログ -世界史専門ブログ-

おもしろい世界史のネタをまとめています。

【コブラ効果】全くの逆効果になった5つの法律

f:id:titioya:20170225133903p:plain

全くの逆効果になってしまった法律

逆効果というのは世の中に溢れています。

ダイエット食品を食べすぎて太ってしまった。

健康のためにサウナに行ったら貧血で倒れてしまった。

コストを下げるためにレイオフをしたら会社の業績が下がってしまった。

そしてこのような逆効果を国単位でやらかしてしまった事例もたくさんあります。

 

 

1. コブラの数が増えてしまった「コブラ駆除法」

f:id:titioya:20170225133903p:plain

コブラの死骸に報酬を出した結果 

大英帝国支配下のインド・デリー。

大のヘビ嫌いのイギリス人知事は「コブラを駆除し届けて出た者には報酬を出す」というお触れを出しました。

当初は人々はせっせと野山に出かけてコブラを狩って報酬を得ていたのですが、次第により大規模により効率的に報酬を得ようとするものが現れ始めます。

なんと、デリーの町中のあちこちに「コブラ農場」がオープン

農場ではコブラを交配して飼育し、ある一定まで成長したら殺害。そして当局に届け出て報酬を得ていたのでした。

 知事はデリー周辺で「大規模なコブラ・マーケット」が成立していることに気づいて法令を撤回したのですが、あちこちで飼育されていたコブラは価値がなくなったので野山に遺棄されてしまい、結果的により深刻な被害をもたらすことになってしまったのでした。

このように「問題解決の方策がまったく逆効果になる」ことを経済用語で「コブラ効果(Cobra Effect)」と呼びます。

以下に紹介する事例も、そのようなコブラ効果の中の一つと言えるかもしれません。

 

 

2. 大気汚染を進めた「自動車台数制限」 

f:id:titioya:20170225130423p:plain

 大気汚染改善のためにクルマの乗り出し制限をした結果

大気汚染の本場と言えば中国を想像しますが、メキシコの首都メキシコシティも相当なもので、1980年代後半には40万台以上のクルマによる排気ガスによってスモッグが街を覆い、健康被害が社会問題になっていました。

そこでメキシコシティ当局は1989年に「Hoy No Circula」という条例を制定しました。これは「クルマのナンバープレートの番号によって利用できる曜日に規制をかける」というもの。もし自分のクルマのナンバープレートの番号が「5」だったら、月曜日は運転してはいけない、というような感じです。

さらに「Hoy No Circula」は適応時間がAM5時〜PM10時と時間制限があり、なるべく人々が夜間に移動し、クルマの日中の利用量を減らしスモッグを減らそうという狙いもありました。

ところがメキシコシティの人々はそんな素直に移動制限に従おうとしなかった。

「使えない曜日に使えるクルマを新たに買ってしまえ」

ということで、メキシコシティの人々はこぞって代替のクルマを買い求め、2号ということなので安価さが最優先され、数十年前の燃費が悪く排気ガスを撒き散らすクルマが大量増加。結果的に大気汚染は改善されるどころかさらに深刻になってしまったのでした。

 

3. 漁獲量制限で逆に漁獲量が増加

f:id:titioya:20170225113014p:plain

 当局による厳密な漁獲管理を導入した結果

世界的規模で海洋資源の乱獲が進み、産業を守りつついかにして資源を保護していくかが焦眉の課題になっています。

 EU(欧州連合)は域内の海洋資源の保護をすべく、共通の許容漁獲量を設定しました。これは定められた量以上の漁獲量と、申請された魚以外の種類の漁獲にペナルティを課すもので、当局が港に駐在し漁から戻ってきた船を一つ一つ審査し、もし違反していたらその場で罰金ないし逮捕されるという厳しいもの。

これにより海洋資源が適切に守られていく、と当局は期待したのですが、結果は散々でした。

なぜかというと、「定められた種類の魚を限度ギリギリ」まで採るために、漁師たちはこれまで以上に大量に魚を採り港に卸せない魚は「海に捨てていた」のです。

大量の魚の死骸は海洋汚染を進めさらに漁獲高を押し下げるかもしれず、完全な逆効果に終わったのでした。

 

PR

 

4. 銃の買い替えを進める「銃買い戻し」 

f:id:titioya:20170225112403p:plain

 犯罪率抑制への効果が乏しい「銃の買い戻し」

銃の規制はアメリカのみならず世界中の国々の課題です。

アメリカやオーストラリア、ブラジルなどの国では、「銃の買い戻しプログラム」が存在し、所持する銃を当局に提供すれば一定額がキャッシュバックされます。

オバマ政権下のアメリカでも推進され、その効果がどのようなものだったのかの研究が進んでいますが、結果的に「効果がなかった」と言われています。

以下の記事によると、プログラムで申告された銃は数十年前の全く使えないようなボロボロのものばっかで、「現役で使える」銃は多くの人々が手放したがらず家に隠していると指摘しています。

www.usatoday.com

 

長期的には買い戻しプログラムにより結果的に「銃の買い替え」が進むという研究結果すらあるそうです。

特に銃の買い替えの必要性は感じていなかったが、当局に持っていけばキャッシュバックが受け取れるので、それを頭金にして新たな銃が購入されるリスクもあります。

一方でブラジルでは一連の銃規制関連法により銃関連の死亡率が前年比8%も減少したことが報告されており、効果的な銃の規制法の模索はまだまだ続きそうです。

Reductions In Firearm-Related Mortality And Hospitalizations In Brazil After Gun Control

 

 

5. 破産濫用防止法がさらなる破産を産む

f:id:titioya:20150417014102j:plain

 破産申請費用を賄うために住宅を差し押さえた結果

2005年、アメリカ合衆国議会にて「倒産制度濫用防止と消費者保護に関する法律 (The Bankruptcy Abuse Prevention and Consumer Protection Act) 」という名の法律が成立しました。

現在はどうなのか詳しく知りませんが、アメリカ人はクレジットカードの借用額の限度ギリギリまで借金をして買い物をするケースが多く、見境のない借金の結果破産申請する者が数多くいました。破産申請が認められると債務返済の義務を軽減できるので、結構みんな気軽に破産していたようです。

この法律は債権者である大手銀行の強い要望により成立したもので、破産宣告に費用がかかるようになり、以前より個人の破産が困難になりました。これにより銀行は破産に伴う債権の焦げ付きを防ぐことが可能になったのでした。

ところが既に破産申告が認められていた人たちの「破産に伴う追加費用」の支払いは困難で、彼らの住宅ローンを含めた債務が不履行になったため、銀行は個人破産者の住宅を根こそぎ差し押さえにかかりました。

予想外だったのは、追加費用の支払い不可能な人の数があまりにも多かったこと。

全米で同時に破産者の住宅の差し押さえが起き、差し押さえられた住宅が中古住宅市場に一気に流れ込んだ。短期間で住宅価格は下落。大赤字を抱えて債務不履行になる者が相次ぎ、彼らもまた破産を申請し住宅を差し押さえられ、また住宅価格が下落し、という負のスパイラルに突入したのでした。

恐ろしい・・・。

 

 

 

まとめ

全員が合理的に動いた結果、事態がさらに悪化するというのが恐ろしいところです。

規制や法律を作る人間の判断や意図も合理的だけど、頭で考えた結果と実際に現場でどう判断されるかは全く別で、表面的な規制をすればいいものではないことがよく分かります。

とはいえ地域によってはこれらの規制を入れるだけで上手く働く場合もあるでしょうし、なかなか難しいです。

 

 ・関連書籍

経済を支配する2つの法則―神の見えざる手と合成の誤謬の世界

経済を支配する2つの法則―神の見えざる手と合成の誤謬の世界

 

 

 

参考サイト

"The Cobra Effect: A New Freakonomics Radio Podcast" FREAK NOMICS

"5 Laws That Made Sense on Paper (And Disasters in Reality)" Cracked

PR
電子書籍を読むなら、Paper WhiteよりFireがオススメです(絶対!)