歴ログ -世界史専門ブログ-

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中世・キリスト教の聖人たちの凄いエピソード

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マンガのような中世の聖人たちの活躍物語

皆様ご存知の通り、聖書はモーセやイエス・キリストなどのミラクル・エピソードが目白押しですが、中世ヨーロッパにも負けず劣らず凄い聖人たちの話があります。

それをそのまま歴史として見ることは難しいですが、当時の人の神への畏怖と、偉い神父様を称える気持ちがお話になっている感じがします。

 

 

1. アンティオキアのマルガリータ

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 絶対死なない不死身の修道女

アンティオキアのマルガリータは現在のトルコ・アンタクヤに5世紀頃に住んでいたとされる修道女で、いかにも伝説的なお話が多いので本当に実在したかどうかよく分からない人物です。

彼女が有名なのは、「絶対に死なない」不死身の逸話によるもの。

彼女は若い頃から熱心なキリスト教徒でしたが周囲から疎まれ、ある官吏から棄教する代わりに結婚を申し込まれますがこれを断ってしまいます。怒った男はマルガリータに拷問をして地下牢にぶちこんでしまう。

さらに追い打ちをかけるように、魔王サタンがドラゴンに化けて現れ、マルガリータを飲み込んでしまった!しかしマルガリータがドラゴンの腹の中で十字架を持って祈ると、聖なる力でドラゴンの腹が破けてマルガリータは脱出できたのでした。

翌日ローマ人たちはマルガリータを水の中に沈めたり火あぶりにしたりして殺そうとしますが、傷ひとつ付かず生還したのだそうです。というのも、前日にドラゴンの血を浴びたため、物理的な攻撃には一切効かない体になっていたのだった

すげえ、ドラゴンの血欲しい!

 

 

2. クリストフォロス

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気づかないうちにキリストを背負って川を渡っていた男

聖人クリストフォロスには地域や宗派によって様々な物語があります。ヤマトタケルノミコトみたいに、色んな人の活躍や物語が1人の人物に集約されたのかもしれません。

カトリックの神話によると、もともとクリストフォロスは異教徒でレプロヴォスという名前でしたが、キリスト教徒の隠者に弟子入りして信者になりました。隠者はレプロヴォスに「お前は背が高いから、川を渡るのを手助けして人々に奉仕せよ」と命じました。

レプロヴォスはそれを受け入れ、船の渡れない急流で人々をおぶって渡す奉仕をしていました。ある日、小さい子どもが向こうに渡してほしいと頼んできました。お安い御用とレプロヴォス。

子どもをおぶって川を渡るも、どういうわけか子どもはどんどん重くなっていく。子どもの体重とはとても思えないほど重くなり、まるで巨大な岩を担いでいるようになった。

レプロヴォスはただごとではないと思い、子どもに名前を尋ねてみた。すると子どもは「我の名はイエス・キリストである」と応えたのでした。キリストが重かったのは、彼が全人類の罪を背負っていたからだったのだ!

重さに耐えて向こう岸にイエスを運びきったレプロヴォス。イエスは彼を祝し、レプロヴォスに「クリストフォロス(キリストを運ぶ者)」という名前を与えたのでした。

 

別のエピソードだと、クリストフォロスは北アフリカに住むベルベル人で、頭が狼で体が人間の人狼でした。

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元々異教徒でしたがキリスト教徒に改宗し、多くの人々を改宗させましたが、当局によって捕らえられ処刑されたとのことです。

どっちのエピソードも「火の鳥」っぽいなあ。

 

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3. パリのデュオニュシウス

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Photo by Thesupermat

首が切れた状態で人々に説教をした司教

 パリのデュオニュシウスはその名の通りフランスのパリ出身で、キリスト教がまだ一般的でなかった3世紀のローマ時代を生きた人物。半ば伝説的な人物と考えられ、本当に実在したかは定かではありません。

キリスト教の司教として彼はたくさんの人をキリスト教に入信させましたが、当時フランスに住んでいたケルト人の大半は伝統的なドルイド教の信者だったため、地元の有力者の怒りを買い、死刑の宣告が下ってしまいました。

パリ近郊の山にて剣で首を切り落とされたのですが、なんと彼の胴体はむくりと起き上がり、首を持ってスタスタと歩きだした!

歩きながら彼の首は信者に対してありがたい説教をしゃべり続け、数キロ程度歩き、ある場所で首は言葉を止め胴体はドサリと倒れた。

その場所は現在のパリのサン=ドニ大聖堂なんだそうです。

パリの人々にとってデュオニュシウスは地元の守護聖人であり、歴代のフランス王の遺骸はサン=ドニ大聖堂に安置されるのでフランス人にとっても重要な聖人でもあるのですが、このエピソードを知らないと妖怪か何かかと思いますよね。

 

 

4. 聖コルンバヌス

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フランスのリアル金太郎 

聖コルンバヌスは6世紀半ばにフランスで活躍したアイルランド出身の司教。

アイルランド修道会をフランスに持ち込み中世修道院を活発化させた人物で、逸話に様々な尾ひれがついており、実際にどの程度が本当に彼の功績なのかよく分かってない人物です。

聖コルンバヌスのミラクルストーリーもたくさんありますが、代表的なものが彼が金太郎も顔負けの「熊使い」だったこと。

聖コルンバヌスは世俗を棄てて山に篭もることを決意し、瞑想のために洞窟の中に居を求めました。しかしその洞窟は巨大なメス熊の住処だった。彼は朝起きると寝ぼけ眼のメス熊に命令し、二度とこの洞窟に戻ってこないように命じました。熊は聖コロンバヌスの偉大さに恐れて洞窟から出ていってしまったのだった。

しかしこの熊は聖コルンバヌスの臣下になり、鹿の死体を皮の部分がキレイに残るように食べて皮で彼の靴ができるようにしたり、金太郎のように熊の背中に乗って森の中を移動していたりしたそうです。

かつてのムツゴロウさんだったら出来るかもしれませんね。もしかしたらあんな感じの人だったのかもしれません。

 

 

5. 聖クリスティーナ

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Photo by Patrick3Lopez

煉獄から生還したベルギーの女性

13世紀ごろに生きたベルギー出身のクリスティーナという女性は、20歳前後で発作で死んでしまいました。

家族は嘆き悲しみ彼女のために葬儀を行いますが、なんと葬儀の途中で目を覚まして起き上がった!そして、人々がいかに不信心かを説き始めたそうです。

クリスティーナは「死んでいる時」煉獄に落ちていたと証言し、その模様を語りました。煉獄では、生きたままオーブンで焼かれる人々や、凍った氷に閉じ込められた人々、イヌたちに噛まれまくる人々、 製粉機で粉々に砕かれる人々などを目撃したそうです。彼女は煉獄では木や建物の上に隠れて無事で、頃合いを見て飛んでこの世に帰ってきたと証言しました。

 

 

6. クパチーノの聖ヨセフ

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自由に飛ぶことができたイタリアの僧侶

 クパチーノの聖ヨセフは17世紀にイタリアに生きた僧侶で、驚くべきことに「空を飛ぶことができた」そうです。

17世紀って結構最近ですし、こんな近代の逸話にそんなミラクル・ストーリーがあるのはちょっと信じられないのですが記録に残っています。

ヨセフが最初に空を飛んだのは、アッシジの聖フランチェスコの祝祭日。彼の上司が、飛び降りるように命じヨセフは降りてみると、なんと宙に浮かび人々の上を自由にスイスイと飛び回った。人々は度肝を抜かれましたが、当の本人が一番驚いており、驚きのあまり実家に帰って「お母さん!ぼく飛んだよ!」と報告したのだそうです。

その後たびたび宙を飛び、奇跡を見ようと多くの人が詰めかけるようになったのですが、彼自身は読み書きもできず知性に欠けており、それでも奇跡を起こしたため、現在ではヨセフは知的障害者の守護聖人として知られているとのことです。

 

 

 

まとめ

たぶん、1人の逸話だけじゃなくて、尊敬される僧侶の偉大なお話が誇張されて、その地域の寓話や昔話がひっついたりして、色んなお話が生まれていったのだろうと思います。これはこれで、ファクトだけでなくその地域の歴史が詰まった大切な文化だし、歴史そのものなのですよね。

 キリスト教には聖書に登場する人物だけでなく、他にもたくさんの聖人がいて、ミラクル・エピソードも数多くあります。

 

他にもいくつか聖人の記事を書いていますので、併せてご覧ください。

reki.hatenablog.com

 

reki.hatenablog.com

 

 

参考サイト

"6 Saints With Superpowers Straight from the Marvel Universe" Cracked

 

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