本気でいらない、ありがた迷惑な贈呈品の数々
贈り物をいただくと大変うれしいし、ありがたく頂戴するものですが、たまーにマジでいらない時あります。
海外旅行のお土産には地雷が多めです。モチーフが不明な木製の置物とか、絶対着ない民族衣装とか、どうやって食うか分からない調味料とか。
あと、手作りのものとか本当困ります。
趣味の日曜大工で作ったテーブルとかもらった日にはたまりません。捨てようにも捨てられないし、使うには怖いし。
我々庶民ですらそんなですから、偉い立場にある人はさぞかし要らないモノをたくさんもらっていることでしょう。
今回は歴代のアメリカ大統領がもらったことのある、「迷惑な贈呈品」を紹介します。
1. 野獣の骨で作られた椅子
Photo from "Seth Kinman’s Drinking Establishment (1889) " Affictor.com
カリフォルニアの野人からのワイルドなプレゼント
この野趣溢れる贈呈品を贈ったのは、19世紀半ばにカリフォルニアに住んでいたセス・キンマンという男。
彼は本業はハンターで、カリフォルニアの野山に分け入って熊やら鹿やらを撃って暮らしていました。彼はまさに「野人」と言っていい風貌で、髪や髭は伸ばし放題、獣の皮をなめした服を着て、倒した野獣の骨を使って様々な家具を作るのを得意としていました。
その奇人っぷりは当時から有名で、どういうわけか第17代大統領アンドリュー・ジョンソンに「グリズリー・ベア」と「アメリカアカシカ」の骨と角と皮で出来た武骨な椅子を献上し共に写真を撮る名誉を賜ったのでした。
椅子に座るジョンソン大統領と、傍に立つキンマン。
この尖った感じ、なんか北斗の拳とかで悪の親玉が座ってそうですね。
キンマンは存命中、新大統領が誕生するたびにこのワイルドなプレゼントを贈呈したそうですが、だいたいみんな扱いに困ったようで、第16代大統領リンカーンは「こんなもん、座るより食っちまったほうがいいぜ」と言って座らなかったそうです。
第19代大統領ヘイズも受け取っただけで座らなかったのですが、そのおかげかオハイオ州にあるヘイズ大統領の記念館で今でも飾られているそうです。
いや~、これはマジでいらないですね。
2. 夫妻のポートレイトを縫ったカーペット
Photo from azer.com
アゼルバイジャン大統領と国民からの心からの贈り物
1997年、訪米を控えていたアゼルバイジャンのハイダル・アリエフ大統領は、当時の大統領ビル・クリントンと妻のヒラリーに対し、我が国から贈呈できる最高の品物を贈ろうと考えました。
アゼルバイジャンが世界に誇るプロダクトと言えば、手編みの絨毯。
ということで、政府は国内屈指の絨毯職人カーミル・アリエフに大統領夫妻のポートレイトの入った絨毯を作るように命じました。
Photo from azer.com
実はカーミルは世界各国の著名人のポートレイト入りの絨毯を作ったことで有名な人物。別に今回が特別だったわけじゃなく、いつも諸外国の要人にプレゼントしているものをあしらえたわけです。それだけアゼリー人は絨毯に誇りを持っているんですね。
ただし、2人の人物が入った絨毯を作るのは名人カーミルも初めてのことで、
「ワシは心の臓が止まるまで絶対やり遂げようと誓ったのじゃ」
と語ったほどのビッグ・プロジェクトでありました。
カーミルは12人(推定)もの若い女性を助手に雇い入れて何とか作り上げ、無事にお国のために尽くしたのでした。
彼が命を削って作り上げた絨毯ですが、正直言うと本当、もらっても困りますよね…。
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3. ジェリー・ビーンズで作られたポートレイト
Photo by Lora Iftikhar
あなたの大好物で出来た似顔絵をどうぞ
ロナルド・レーガンはジェリー・ビーンズが大好きだったことで有名です。
レーガンの大統領就任式には、ジェリー・ビーンズの製造会社はわざわざ星条旗カラーである青色の「ブルーベリー味」を新開発して提供したそうです。
また大統領専用機エア・フォース・ワンには、レーガン専用の「ジェリー・ビーンズ・ホルダー」があり、飛行機が急な乱気流に巻き込まれたりしてジェリー・ビーンズが機内にあちこち散らばったりしないように、優秀な技術者がアサインされてカスタム開発がなされたほどでした。ちなみにそのコストは60億ドルほどかかったそうです。
さて、そんなジェリー・ビーンズ大好きな大統領にこんなポートレイトを贈ったのは、ドイツ人のアーティスト、ピーター・ローシャ。
彼はジェリー・ビーンズをモザイクのように使って多くの作品を制作していますが、レーガンのジェリー・ビーンズが好きなことを知り、6カ月近くの制作期間をかけて上記のポートレイトを作り大統領に贈呈しました。
(ピーター・ローシャの作品の一部はこちらからご覧になれます。)
レーガンはこの贈り物を大変気に入り、今でもロナルド・レーガン・ライブラリに飾ってあるそうです。
自分のポートレイト貰ったら嬉しいもんなんですかね~?
個人的には自分の似顔絵なんて、部屋に飾りたくありませんが…。
4. 2匹の熊
探検家が大統領に贈った「珍しく危険な生き物」
18世紀後半と19世紀前半、東部にあったアメリカは次々と西部への探検隊や開拓団を送り出し、「フロンティア」を我が物にしようとしていました。
西部から東部に戻った探検家は、新たな土地を地図に書き起こしたり、見たこともない植物の種を持ち帰ったりしていたのですが、
ゼブロン・パイクという人物が大統領トマス・ジェファーソンのために持ち帰ったのは「生きた2頭のグリズリー・ベア」でした。
ゼブロン曰はく「この大陸の生き物の中で、おそらく最も凶暴」な生き物を、なぜ大統領に贈呈しようと思ったのか、その心中は本人に聞いてみないと分かりません。
本当に「これは大統領閣下が喜ぶだろう!」とでも思ったのでしょうか。
ジェファソンは2か月間ほどホワイトハウスの中で飼ってみたようですが、熊はとにかく人になつかず騒がしく、すぐに別の施設に預けてしまったようです。
5. 約600キロのチーズ
Photo from "The Great Cheese Levee During the Jackson Administration" THE WHITE HOUSE HISTORICAL ASSOCIATION
食べきるのに2年かかったとんでもなくデカいチーズ
1801年夏、マサチューセッツ州チャシールに住むジョン・レランドという人物は、時の大統領トマス・ジェファソンに贈るものを何にしようかで頭を悩ませていました。
大統領閣下がお喜びになるものでありつつ、チャシールの町と私自身の名声を高めるものでなくてはならない。
そこで彼が考えたのが、チャシールの町みんなで「超巨大なチーズを作る」こと。
レランドは町の衆を説得して、大統領にプレゼントするためのチーズ作りに取り掛かった。チーズを作るための巨大な容器や型自体から用意しなくてはいかなかった。900頭の牛から絞った牛乳で作り、出来上がったのは約600キロにもなる巨大なチーズ。
レランドは鼻高々でチーズをホワイトハウスに献上に赴きました。
この怪物のようなチーズを目の当たりにしたジェファソンは度肝を抜かれ、「こんなもの全部食えるか!」とでも思ったのでしょう。市民にこう呼びかけました。
「市民の方はどのような方でも、自由にチーズをスライスしにお出でください、いや、どうかよろしくお願いします」
市民の協力を得て大きく削り取られたチーズでしたが、それでも全部なくならず、最終的にジェファソンが食べきったのは1803年。アメリカ海軍がパーティ用に用意した「モンスター・ローフ(巨大なパン)」に乗っけて食べられたそうです。
ちなみに、同じような巨大なチーズは1837年に第7代大統領ジャクソンの時にも贈られていて、ジャクソンも同じように市民にチーズを自由に削り取って持ち帰れるようにしたようです。
まとめ
せっかくの好意ということもあるけど、何せ大事な国民や外国のお客様であるので、受け取りを拒否するわけにもいかない。
それがいかに「マジでいらないもの」であっても。
国の長ともなると、贈り物一つの処理でも大変ですね。
ぼくがもらったものの中で本当にいらなかったものは、「インド土産のカレー味の歯磨き粉」ですが、レベルが全然低いですね。
もっと偉くなったら、レベルの高い要らないモノもらえるでしょうか。いやまあ、要らないのですが。
参考サイト
"The 5 Most Unintentionally Creepy Gifts Given to Presidents" Cracked.com